No.134550

桂花と一刀 その2

k.nさん

主に桂花メインの話です。
2話目です。

2010-04-05 15:13:49 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5651   閲覧ユーザー数:4772

――それから暫くして、虚ろに目を開いた桂花。

辺りをぼーっと眺めながら、突然きた震えで我に帰った。

 

「……ここは…小屋?屋根がないし…。…たき火…?」

 

桂花の傍に、数十本の木くずが置いてあり、それにかろうじて火がついていた。

今にも消えそうだが、長時間置いてあったのか、その周りは温かかった。

 

それからして桂花は自分に被せてある布の正体を知ったが

藁にもすがる思いでそれを身に寄せた。

 

嫌な男の匂い…嫌な優しさ…嫌な温もり…。

 

男なんていなくなればいいという桂花の揺るぎない感情は強い。

だがそんなことが起こるわけはないので、だから桂花は接触を避けている。

一刀と出会う前は、男とは一切喋らなかったほどだ。

 

でも、不思議とそいつとだけは何とか話せる。

周りから見れば、仲が悪いだけの口喧嘩のようにしか見えないが

これは桂花にとってはとても珍しいことなのだ。

 

それに今…一刀の服を被っている…。

 

一刀を信頼している…とは言い難いが、少なくとも彼自身を認めているようだ。

普段は絶対に出さない桂花の裏の感情だった。

 

 

桂花が起きてからそうも絶たないうちに、一刀が両手に木くずを持って小屋に戻ってきた。

意気荒く、泥だらけであった。

 

「…よぉ。具合はどうだ?」

 

「いいように視える?最悪よ。」

 

アハハっと微笑しながら木くずを火の中に入れ始める一刀。

火が大きくなったところで、改めて一刀の服の汚れが見えた。

 

「あんた…。」

 

「ん?…あぁ、途中こけて田んぼん中入っちゃったんだよ。

おかげで服びしょびしょ…。まぁ、上着は無事だけどな。」

 

一刀の目線は桂花の上着の上着に着目していた。

 

「…っ!」

 

それに気づいた桂花は、勢いよいモーションで上着を払い落した。

 

「着てていいのに…。」

 

「着てたら血液が逆流してたわよっ!」

 

素直になれない桂花に、ただただため息しかでない一刀であった。

 

 

一方的な桂花の愚痴や今日のことの話をしているうちに、

一刀は疲れとともに眠気が襲いかかってきた。

 

コクンコクンと首を上下に上げ下げしている一刀。

朝から警備の仕事、昼には華琳の荷物持ち兼夕方には墓参り。

相当な体力を使っているため桂花の護衛の時点で疲労はピークに達していた。

 

それに今桂花のために木くずを集め火を起こし…愚痴を聞いていた。

そのためもう一歩も動けない状態なのだ。

 

「…ん?どうした、桂花?」

 

「……寝なさいよ。私のことはどーでもいいから。」

 

桂花も察していた。なにしろ魏の軍師。

人の状態を端的に見抜けないわけないのだ。

 

「なに言ってんだよ。お前今不安定だろ?いつ容態が悪化するかもしれないのに…。

桂花こそ寝ろよ…。いろいろあって疲れたろ?」

 

「…そーいう優しさなんていらない…。」

 

ぼそっと呟くようにいった桂花。

一刀には聞こえていなかった。

 

「へぇ?なんていった?大丈夫だよ。寝込みを襲うほど落ちぶれちゃいねーし。」

 

一刀もこの時なんと桂花が言うか大体検討がついていた。

後頭部に手を置き、オーバーなアクションで笑う。

だが華琳の時同様、それは間違いだった。

桂花は胸に手を置き、目を見開いた。

 

 

「そういう優しさなんていらないって言ったのよっ!

どうせ私が寝たら、ずっと起きてるんでしょ!?

小屋には屋根がない。だから火の煙は宙に舞い上がり、ここの位置を知らせてしまう。

結果人が来るかもしれない。でも誰かは分からない。良い人か悪い人か…。

後者に備えて、ずっと見張ってるつもりでしょ!?違う!?」

 

さすがの見抜きに、敬意を払いたいのは山々であったが

軍の配備や戦闘の際の采配などでは、稀にみれない桂花の形相であった。

ここまで責められたのは、初めてかもしれない。

いつものような情の言葉ではない…それは一刀にとっては嫌な情ではなかった。

 

「それに…!………そんな状態…私よりもボロボロじゃない。

そんなので護衛役なんて務まるわけないわよ。任務失敗ね。

後で華琳様に報告を……!!」

 

床にへなりと体全体を着陸させた一刀は「ごめん…」と謝罪しながら目を閉じた。

どうやら限界をこえてしまったらしい。

 

「……馬鹿。類をみない馬鹿ね。男の中でもこれは度を超えてる…っ。

私の一番嫌いな部類に入るわ。大嫌い。いっそここで息の根を…。」

 

なんて言いながら、いつもこいつと喧嘩してきた。

本当は、そこまで嫌いじゃない。けど、嫌い。

華琳様と仲が良いところ、紳士ぶるところ、優柔不断なところ、馬鹿なところ

変態なところ、弱いところ、役に立たないところ…。

嫌いなところなんていくらでも出てくる。

あいつの憎たらしい顔、近づくだけでも虫唾が走る。嫌いだ。気に食わない。

なんて言いながらも、いつもこいつに悪戯してきた。

なんで無視しなかった。なんで喧嘩なんてした。なんで今こいつと一緒にいて

 

…なんで、こんなにも、心配なのだろう…

 

 

桂花は言った。

 

―友達よ―と。

 

その時俺は、桂花のことを分かっているような感じで勝手に自分の中で整理してしまった。

友達なんているのかと。

よく馬鹿だ馬鹿だと言われるが、それは違う。俺は大馬鹿者だ。

外側しかみていなかった。内面をみようとはしなかった。

分かっているつもりになっていたから…。

 

桂花は俺のこと…いや、男を嫌っている。

なのに俺とは話してくれる。助言もしてくれたし、看病もしてくれたこともあった。

俺のことを認めてくれている…?

だとしたら俺は桂花のことを認めているのか?

 

認めている。

 

桂花だって、大事な大事な仲間だ。

それを…俺は…。

 

「ごめん…」

 

限界がきた俺は桂花の話の途中で意識を失った――。

 

 

――何かを感じた。なぜか感じる。水が垂れる音。…雨?

口に流れてきた。吸ってみた。

 

「…しょっぱ。」

 

「…当り前でしょ?…塩水入れてやったのよ…馬鹿…。」

 

光が二人を照らし出す。

 

夜が明けていた――。

 

 

 

はじめましてk,nです。

ご視聴ありがとうございます。

終わり…?かもしれませんが、続くかもしれないです。

 

これから小説書いていくので、温かい目で見守ってください。

よろしくお願いします。

 

 

 

 


 
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