第7話 恐怖の音! 地獄の始まりを告げる音!
一刀と蓮華は思春との合流地点で思春と会い、桃香が襄陽と呼ばれる別名「鬼の泣く街」に捕らわれていることを知る。
思春「その街は一度収容されたが最期生きて帰ることが出来ない死封の監獄島とも言われている」
一刀「そうか…」
蓮華「ところで一刀。その劉備って言うのはどんな人なの?」
一刀「本当なら北斗神拳の伝承者になるべき人だった」
蓮華「どういうこと?」
一刀「桃香の技の切れ、流れ、速さ、心技体。どれをとっても非の打ちどころがなかった。
だが…桃香は病に蝕まれていた。北斗神拳の秘孔でもどうすることも出来なかった。
桃香はその事があって伝承者の道を辞退したんだ。だけど桃香はこう言ってた」
桃香(私が決めたことなんだから悔いはないよ。それに私は前にも言ったけど拳法じゃなくて医学に活かしたいからね。
医学に活かすことなら伝承者じゃなくても関係ないと思うしね。盧植先生も分かってくれると思うし……。
だから私は死ぬその瞬間まで皆を笑顔にするためにいっぱい人を助けるの♪ それが私の生きた証にもなるからね♪)
蓮華「何だが会いたくなったわね。その劉備に…」
一刀「蓮華ならすぐに真名を許してくれる仲になるだろう」
そして一刀達は襄陽に辿り着いた。
三人が門の前までに行こうとすると……。
一刀「……」
蓮華「……」
思春「どうしたのだ? !?」
思春は二人に遅れてようやく気付く。
その門には銅像と思われていた人の像は実は人であったことに気がつく。
蓮華「あなた達、私が相手よ」
呉懿「我が名は呉懿! この襄陽の衛士!」
呉蘭「同じく呉蘭! ここを通すわけにはいかん!」
そう言うと二人は蓮華を自分達の間に入れようとするも、蓮華は身の危険を察知し、二人の間に入らないようにする。
蓮華は間一髪攻撃をかわしたが服が少し破れてしまう。
蓮華「あの二人、何か妙なものを持っているわね」
呉懿「二神風雷拳!」
呉蘭「二身一体。同じ血、同じ筋肉、同じ感性を持つ者のみが習得可能の拳!」
蓮華「なかなかやるわね……」
蓮華がまだ二人に向かおうとすると一刀が蓮華の肩を叩く。
一刀「俺がやる。道を開けないと死ぬぞ!」
呉懿「我ら襄陽の人間にはその言葉は脅しにならぬ!」
呉蘭「既にあらゆる人間が死に支配されている!」
呉懿、呉蘭「「死ねえ!!」」
二人は先ほどのように一刀を間に挟み込むが、一刀はその二人の間にあった糸を簡単に切った。
呉懿「馬鹿な、俺達の拳が…」
呉蘭「見破られるとは……」
二人が体勢を整え直そうとした瞬間二人の顔面には一刀の広げられた手があった。
一刀「終わりだ」
呉懿「何故殺さぬ!?」
一刀「お前達の目は悲しみに満ちている」
呉蘭(たったこれだけで俺達の事を見切るとは……)
思春「大方人質を取られて衛士にでもなり下がったと言うところか」
呉懿と呉蘭を覚悟を決めたかのように、固く閉じられた門を押し始める。
襄陽兵A「何だ!? 二人が門を開けようとしてるぞ!」
襄陽兵B「押さえろ!」
襄陽兵達が後ろから門を抑えるが、呉懿と呉蘭の力は凄まじいもので、兵士達は耐えられず、門は開けられた。
呉懿「あんたに賭けてみよう! あんたならこの襄陽の伝説を破れるかもしれん!」
呉蘭「そして俺達を含むここに生きる全ての者に再び光と生を!!」
一刀「この門は開けておけ。もう二度と閉ざされることはない!!」
一刀達が門を破り襄陽に入る。
そこで出迎えたのは……。
???「がっはっはっはっは!」
そこに現れたのは襄陽の獄長、蔡瑁(さいぼう)であった。
蔡瑁「よくぞこの地に足を踏み入れたな、北郷一刀。その無謀な勇気だけは誉めてやろう!」
一刀「俺に無謀という言葉はない!」
蔡瑁「それはまだ貴様が恐怖と言うものを味わったことが無いからだ。
だがここで貴様は生まれて初めて恐怖を知ることになる。まずはその見本を見せてやろう」
蔡瑁が指を鳴らすとそこには一人の青年が棒に縛られていた。
呉懿、呉蘭「「法正!!」」
蔡瑁「ふふ、貴様らを衛士と仕立てんがための人質ももう用は無くなった! よってわし自らが処刑してやる!」
呉懿「分かった。法正、許してくれ。この襄陽の住人に再び生を与えたいのだ!」
呉蘭「分かるな、法正。俺達が待ち望んだ救世主がやっと現れたのだ!」
呉懿「先に地獄で待っていてくれ」
呉蘭「俺達も直に逝く」
その言葉を聞いて人質である法正は二人を許したかのような顔をする。
それを聞いた蔡瑁は……。
蔡瑁「がーはっはっはっ! 気が変わった。覚悟を決めたものを殺すのは面白くない!
貴様ら二人がその男に賭けたいちるの希望……それを打ち砕いてからゆっくり処刑してやるわ!!」
そう言うと蔡瑁は鞭を手に持ち、椅子から立ち上がる。
蔡瑁「貴様らの希望が絶望に変わっていくのをゆっくり楽しむがいい!!」
一刀は上着を脱ぎ捨てる。
一刀「話はそれだけか? さっさと掛かってこい!」
蔡瑁「何を!? くらえ! 泰山流双条鞭!!」
蔡瑁は両手に持つ鞭を振るう。
その鞭さばきはかなりのもので並みの人間では動きを捕らえることはできない。
一刀の体は傷ついていく。
蔡瑁「どうだ恐怖の味は!?」
しかし鞭が蔡瑁のところに帰って来ると鞭は蔡瑁の顔面に直撃。
しかも鞭の先端がそれぞれの鞭と結ばれていた。
蔡瑁「貴様……鞭を……」
一刀「それがお前の恐怖か? ならば俺が本当の恐怖を味わわせてやろう!!」
蔡瑁「はーはっはっ! やはり墓を作った甲斐があったわ!」
一刀「その墓は大きめに作ってあるのか?」
蔡瑁「何?」
一刀「その墓に入るのはお前だ!」
蔡瑁「減らず口を! ならば食らうがいい!!」
蔡瑁は自分の肩を前にして突撃する。
蔡瑁「くらえ、蒙古覇極道!!」
一刀「はああああああああ!!」
一刀は六本の指だけで蔡瑁の強靭な肩を受け止めた。
蔡瑁「よくぞ受け止めた! だがこの鋼鉄以上の肩を破ることは出来まい!!」
一刀「ぬああああああ!!!」
一刀は受け止めていた両手の六本の指を片手の五本指だけに変え、蔡瑁の肩を粉砕した。
蔡瑁「ぐぎゃああああああ!!」
一刀「北斗鋼裂把!! 俺の指は鋼鉄すら切り裂く! 貴様の肩の筋は全て破壊した。もうその技は使えない」
蔡瑁「ぐっ……おのれーーーーー!!」
一刀「はあああああああああ!!
ああああたたたたたたたたたたたあおおおおわったあああ!!」
一刀は百裂拳を蔡瑁に浴びせる。
一刀「北斗百裂拳!!」
北斗百裂拳を食らった蔡瑁は作ってあった小さい墓穴に吹き飛んだ!
一刀「墓穴が小さすぎたようだな。だが直にちょうどよくなる。安心して死ね」
蔡瑁「だずげ……べば!!」
一刀はその墓の墓標を粉砕する。
一刀「悪党に墓標はいらん!!」
襄陽兵A「獄長の仇だ!」
襄陽兵達が一刀に一斉に襲いかかろうとするが……。
一刀「また墓標の無い墓穴を増やすつもりか……」
一刀のにらみによる襲いかかろうとし兵士達は武器を捨てた。
襄陽兵達(落ちた…不落の襄陽が落ちた……)
呉蘭「俺達はとてつもない救世主を手に入れた!」
蓮華「ねえ思春気付かない?」
思春「風の音が聞こえない」
一刀「鬼の泣き声が止んだ」
蔡瑁を倒したことにより捕まっていた人達は皆が解放され、自由を喜びあった。
その歓喜の声は牢に居た桃香にも聞こえていた。
桃香(やったね一刀さん。でもここからが始まりなんだよ。頑張って、一刀さん)
牢獄の上からもその歓喜の様子が見える。
襄陽兵V「どうやら本当に終わったようだな」
襄陽兵H「俺達も一緒に喜びに行こう!」
上に居た兵士達も下に行こうとするが、叶わなかった。
何故ならその兵士達を殺した者がいるからだ。
そして殺された兵士の死体が上から降ってきた。
皆がその上を見る。そこには別の兵士が剣を構えていた。
呉懿「あれは……覇王親衛隊!」
襄陽住人A「既に覇王の手が回っていたのか……」
蓮華「覇王とは何者なの?」
呉蘭「覇王とは世紀末覇者を名乗る恐怖の支配者。その正体は誰も知らない。
そしてこの襄陽も覇王に刃向った者を処刑するための街なのだ」
覇王親衛隊A「貴様が北郷一刀か。救世主気取りもここまでにせい! 今なら覇王様も寛大に許して下さる!」
覇王親衛隊B「今すぐ降伏するのだ!!」
襄陽住人B「もうやめてくれ。残念だが……」
一刀はその駆け寄ってきた住人の手かせを破壊する。
覇王親衛隊A「それが返事か……。ならば死ねえ!」
そう言うとどこからか覇王親衛隊の兵士達が一刀達に襲いかかる。
一刀、蓮華、思春が戦う。三人の戦う姿を見て、襄陽の兵士達や住人が武器を取って親衛隊達と戦う。
覇王親衛隊A「ふん。我らは先に劉備の元に行くぞ!」
そう言って先ほど上に居た親衛隊の二人がその場を去る。
襄陽兵士D「あんた達ははやく劉備のところに行ってくれ!」
襄陽住人S「俺達はもう大丈夫だ!」
蓮華「あなた達……一刀!」
一刀「分かった…」
一刀は脱ぎ捨てた上着を着て、三人は急いで先ほどの二人を追う。
そして一番高い建物の中に入り、階段を上がる。
三人は広い廊下に出る。そこから突然刃物が飛んでくるが、一刀が全てそれを受け止める。
広い廊下にはカーテンしかなかったが……。
蓮華「さっさと出てきたらどう」
蓮華がカーテンを破るそこには先ほどの親衛隊の男が居た。
覇王親衛隊A「何でわかるんだ!? こんなに正確に!!」
覇王親衛隊B「まずいぞ!」
二人はなんとかその場を去り、桃香の居る牢獄に辿り着く。
覇王親衛隊A「立て! 襄陽を出るぞ!」
桃香「遅かったみたいです。北郷一刀はもう来てますよ」
桃香がそう言うと、桃香の前にあった壁に亀裂が走る。
覇王親衛隊A「こうなったら劉備を殺すしかない!」
覇王親衛隊B「覇王様の命令は絶対だ!」
二人は桃香に向かって剣を振るうも、桃香は指先に挟んだだけでその剣を止めた。
壁が破壊され、そこから一刀が現れる。
一刀「桃香姉さん……」
桃香「一刀さん……」
蓮華「あの人が劉備……」
一刀と桃香が普通に会話している間にも親衛隊の二人は剣を動かそうにも動かせないでいた。
覇王親衛隊A「こいつは本当に病人か!? 全然動かない!」
そう言われたためか桃香は抑えていた剣を放す。
覇王親衛隊B「何としてでも劉備を殺すのだ!」
覇王親衛隊A「動くな! 動けば劉備の命はないぞ!」
一刀「やってみるがいい。お前達にも劉備と言う女が分かるはずだ」
覇王親衛隊は再び剣を振り下ろそうとするも……。
桃香「はああああああああ!!」
桃香が左右の手を上げる。その闘気は凄まじいもので桃香の手に着いていた手かせを破壊しただけでなく、親衛隊の後ろの壁にも縦に切れた痕が出来たのだ。
桃香「北斗有情破顔拳。せめて痛みも知らずに安らかに死んでください」
すると突然親衛隊達の手足だけでなく首があらぬ方向に曲がっていくが、二人は痛みを感じていなかった。
一刀「桃香の北斗神拳にかかった者は死ぬ間際に天国を感じる」
覇王親衛隊A「ちにゃ!」
二人の親衛隊は快楽を感じたように死んでいった。
桃香は立ちあがる。
桃香「一刀さん」
一刀「桃香……」
蓮華(すごい……。これが劉備の北斗神拳。覇王と言うのがこの二人の再会を恐れてた意味が分かったわ)
桃香「待ってたよ」
一刀「少しやつれたな、桃香」
桃香「でもまだ生きてるよ……ごほっごほっ」
一刀「桃香!」
桃香は咳きこみ、一刀が心配する。
桃香「大丈夫。この体じゃ旅は無理だと思って……。だから待つことにしたの」
桃香と一刀が再会に浸っていると……。
思春「建物が揺れている?」
桃香「私達をこの建物ごと消す気みたいだね」
蓮華「早く脱出するぞ!」
その建物が揺れている様子は外からでも確認できた。
外ではなんとか覇王親衛隊の兵士達を退けた呉懿と呉蘭や襄陽の兵士達や住民達が立っていた。
呉懿「このままでは……」
呉蘭「呉懿。行こう!」
呉懿と呉蘭は崩れそうになる建物に向かって走る。
そして建物の出口に辿り着くと一人の男が居た。
覇王決死隊隊長「俺は覇王決死隊の隊長だ。万が一のことがあったらここで北郷一刀と劉備を始末しろと言われている」
呉懿「そんなことさせん!」
覇王決死隊隊長「どうかな!」
決死隊の隊長はからくりのスイッチを押し、建物の出口をふさぐほどの大きな岩が降ってきた。
呉懿「ぐおおおおお!」
呉蘭「ふおおおおお!!」
呉懿と呉蘭がその岩を支える。
呉懿「これを落とすわけにはいかん!」
呉蘭「俺達はあの男に賭けたのだ!」
覇王決死隊隊長「死ねえ!」
決死隊の隊長は剣をふるい、呉懿と呉蘭を殺す。
その頃一刀達は崩れ行く建物から脱出しようとするも、覇王決死隊に阻まれていた。
蓮華が率先して兵士達を倒していき、ようやく四人が出口にまで到着すると……。
一刀「これは……」
蓮華「なんて壮絶な死……!」
呉懿と呉蘭は岩を支えたまま絶命していたのだ。
桃香「私達を助けるために……」
一刀「呉懿、呉蘭……」
一刀が死んだ二人の目と口を閉ざす。
一刀「安心して眠れ。悪の炎は俺が消す!」
そして建物が崩れ、呉懿と呉蘭の死体もその瓦礫に埋もれた。
その事を法正に告げた一刀。
法正「呉懿、呉蘭。何で先に逝っちまうんだ!」
法正は泣く。そこに先ほどの決死隊の隊長が現れる。
覇王決死隊隊長「お前達をこの襄陽から出すわけにはいかん! かかれ!」
そうするとまた別の決死隊の兵士達が出てくる。
一刀「お前達には地獄すら生ぬるい!」
襄陽兵達『俺達も行くぞ!』
一刀、蓮華、そして襄陽の兵士や住人達が覇王決死隊と戦う。
一刀は決死隊隊長と対峙する。
覇王決死隊隊長「貴様はここで死ぬのだ! 呉懿と呉蘭のようにな!」
一刀「貴様か……。はあああああああ!!」
決死隊隊長が剣を振るうが、一刀はその剣を自分の拳で粉砕し、拳のラッシュを浴びせる!
一刀「北斗百裂拳!」
覇王決死隊隊長「く、くそ……」
一刀「お前はもう死んでいる」
覇王決死隊隊長「な、ななにゃー!」
そして覇王決死隊は全滅した。
蓮華「覇王がここまでするなんて……」
桃香「郭汜さんも劉元起さんも覇王に従ってたにすぎないの……」
一刀「そして覇王は華琳……。その名は曹操!」
蓮華「曹操って北斗の長姉の!?」
桃香「分かってたの」
一刀「ああ……桃香……俺にはまだ鬼の泣き声が聞こえる……」
桃香「この泣き声を止めれるのは一人……。あなたです、一刀さん」
ついに一刀は次姉の桃香と再会した!
だが長姉である華琳は世紀末覇者覇王となっていた!
一刀は覇王華琳の暴挙を阻止すべく行動開始を決意するのであった!
覇王の間の手は思春の村にまで及んでいた!
蓮華は一人村へと急ぐ!
そこに不吉な影が迫るのであった!
次回 北斗の恋姫の拳
不吉な星! その星の名は死兆星!
一刀「北斗の掟は俺が守る!」
おまけ
作者「ヒャッハー! 第7話だ!」
一刀「もう第7話か」
作者「本当は昨日投稿したかったが、あのエイプリールフールの影響か昨日は人そのものがあまり見ていない気がしたからやめた」
一刀「お前もひっかかって大騒ぎしたからな」
作者「でもライガやフウガ、それに獄長なんだが、皆誰になるかと期待していたようだが…」
一刀「完全にオリジナルだな」
作者「死なせるキャラを恋姫キャラにさせたくないからな…。ちなみにライガとフウガ役のあの二人は血縁関係はないみたいだが、この作品ではあることにした。
自ら望んで選んだ道、ためらいはない!」
一刀「なにトキの台詞言っちまってるんだ!」
作者「次回は華琳登場! まあ今日の夕方頃に投稿するつもりだけどな。
後完全に私ごと何だが、コメントで「『死あたぁ』見ているのか」と言うのがあるんだが、俺はその人にはきちんとショートメールを送ってるはずなんだけどな…」
一刀「それがどうした?」
作者「メールがきたらサイトに入ってすぐにお知らせが来るはずなんだがな…。オフに出来たっけ?」
一刀「俺に聞くな!」
作者「とまあメールを送っても返事が来ない時はあるけど、俺はメールを送ったらある程度の返事が欲しい人間だということだ。
それでは!」
Tweet |
|
|
29
|
0
|
追加するフォルダを選択
この作品では特に人が喋っていない部分には「北斗の拳」でおなじみのナレーションの声が出ているものと思ってください。
なお、可能な限り控えめにしておりますが流血表現があることをご了承ください。