No.129710

真・恋姫†無双 頑張れ一刀くん その1

勢いでやった。
反省はしている。

2010-03-13 05:02:01 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:34359   閲覧ユーザー数:24388

 

「ふむ……もう春じゃというのに肌寒いのぅ」

 

「気候が狂っているのかもね。……世の中の動きに呼応して」

 

 

夜の荒野を二人の美女が歩いている。

 

 

一人は銀髪の女性……黄蓋、真名を祭という。

もう一人は桃色の髪の女性……孫策、真名を雪蓮という。

 

 

どちらの女性も褐色の肌で立派なモノを持っている。

 

 

「……確かに、最近の世の中の動きは少々狂っておりますからな」

 

「官匪の圧政、盗賊の横行。飢饉の兆候も出始めてるようだし。……世も末よ、ホント」

 

 

雪蓮は呆れながら現在の国の状況を口にする。

 

 

 

「真面目に生きるが嫌になる、か。……ま、でも大乱は望むところだわ。乱に乗じれば私の野望も達成しやすくなるもの」

 

 

二人は今、袁術の客将という地位にいる。

雪蓮の母、孫堅が治めていた呉は孫堅が戦死するやいなや領内の豪族や盗賊が反旗を翻し、力が衰えたところに袁術配下に組み込まれてしまったのだ。

 

 

そして旧臣を半ば人質のような形で地方にばらされてしまった。

 

だが彼女らはいつまでも袁術の客将に甘んじる気はなかった。

着々と孫呉の復興に向けて水面下で動いているのである。

 

 

「……だけどまだまだ私たちの力は脆弱。……何か切っ掛けがあれば良いんだけど」

 

 

しかし袁術の目があるのでだいそれた行動はできない。

反乱の兆候あればすぐに弾圧されてしまうからだ。

 

「切っ掛けか。……そういえば策殿。こういう噂があるのを知っておるか?」

 

切っ掛けと聞いた祭が思い出すかのように口を開いた。

 

「どんな噂よ?」

 

「黒天を切り裂いて、天より飛来する一筋の流星。その流星は天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静す。……管輅という占い師の占いじゃな」

 

管輅とは最近エセ占い師として名を馳せている人物だ。

 

 

雪蓮は、胡散くさいわね~、と言って笑い飛ばした。

 

 

「そういう胡散臭い占いを信じてしまうほど、国が乱れているということだろう」

 

 

 

二人はその後も少し話をし、偵察を終えて帰ろうとした。

 

 

そこで何かの音が彼女たちの耳に届いた。

 

 

祭は警戒して君主である雪蓮を後ろに下がらせる。

雪蓮も祭に注意を促す。

 

 

「盗賊か、妖か……。何にせよ、来るなら来なさい。殺してあげるから……」

 

 

二人は武器を取り出し、雪蓮は『南海覇王』を、祭は『多幻双弓』をそれぞれ構えた。

 

 

その瞬間二人の視界一面を眩い光が覆いつくした。

 

 

 

「ん……んん……戻っ……た?」

 

光が消え、二人は恐る恐る目を開けた。

 

 

祭はすかさず雪蓮に怪我はないか確かめる。

 

 

雪蓮は一言、大丈夫と言い、状況確認に努めた。

 

 

二人は何が起こったのか理解できず周囲を見渡した。

 

 

「周囲の状況は?」

 

「先ほどと変わりは……ん?」

 

 

祭が何かに気付いたような声をあげる。

 

「どうしたの?」

 

 

祭の視線の先には先程まで誰もいなかった場所に人が倒れていた。

 

 

「行ってみましょ」

 

雪蓮は面白いものを見つけたような顔をして、祭が止めるのも聞かず人が倒れているところに走り出した。

 

 

祭はため息をついて、雪蓮を追いかけた。

 

「男の子?」

 

雪蓮がたどり着くと、そこには5,6歳の男の子が倒れていた。

 

 

そこにようやく祭が追いついて、雪蓮を諌める。

 

しかし雪蓮は軽く流して再び男の子を見る。

 

 

「それにしてもこの孺子……どこから現れたんじゃ?」

 

「さっきはいなかった。だけど気が付いたら居た。……さっきの光に関連付けるのが妥当でしょうね」

 

 

そこで祭は管輅の占いに酷似していることに気付いた。

 

「占い通り、ねぇ。……ということはこの子が天の御遣いという奴かな?」

 

「占いを信じるのならばな」

 

 

男の子の着ている服を見ると確かにこの世界にはない煌びやかや服を着ていた。

 

 

とりあえずこの場では判断出来そうにないので二人は男の子を連れて帰ることにした。

 

 

 

 

二人が男の子は連れて館に帰ると、長い黒髪の褐色肌の周瑜……真名を冥琳という女性が二人を迎えた。

 

 

「お帰り雪蓮」

 

「あらお出迎え?」

 

二人の帰りが遅かったということで心配していたようだ。

 

 

「なにかあったの?」

 

「拾いモノをしたの」

 

 

雪蓮は祭が抱えている男の子を見ながら答えた。

 

 

冥琳がそれを訝しげに見つめ、なんだあれは、と雪蓮に問う。

 

 

「管輅の占い知ってる?」

 

「なんだいきなり。……確か流星と共に天の御遣いがどうのとかいう」

 

 

あまり興味がなかったのかうろ覚えにしか覚えていないようだった。

 

 

「そ。それ。……その子がそうかも」

 

 

冥琳は呆れたように雪蓮を見た。

 

 

冥琳の知っている雪蓮はそんな妖説の類を信じる人物ではなかったからだ。

 

 

しかし雪蓮からすると信じざるを得ない状況に遭遇したので、その時の状況を冥琳に話した。

 

 

「なるほど。それでどうする気だ」

 

「本物の天の御遣いなら孫家で保護するのが上策。……妖の者なら私が殺す。……どっちに転んでも得でしょ」

 

 

冥琳もその案の利益を考え賛成した。

 

 

「とりあえず明日、この子を尋問してからね」

 

 

冥琳はそう言うと、祭に適当な部屋に寝かせるように指示をした。

 

 

「雪蓮は明日まで部屋に近づかないこと」

 

 

しっかりと雪蓮に釘をさすことをわすれない冥琳であった。

 

 

雪蓮は冥琳に不満をぶつけるが一蹴された。

 

 

こうしてこの場は解散となった。

 

 

次の日

 

 

男の子――北郷 一刀は今日の予定を頭に思い浮かべながら目を覚ました。

 

 

「……………………………ん?」

 

目を開けばいつもと同じ聖フランチェスカ学園の男子寮の天井…………ではなかった。

 

 

(どこだここは?)

 

 

一刀は今自分が寝ている部屋を見渡して昨日の行動を思い返していた。

 

(昨日、深夜まで及川の部屋でゲームして、その後自分の部屋に戻って……)

 

「どうなってんだ?」

 

一刀が茫然としていると部屋の扉が開いて祭が入ってきた。

 

 

「おっ? 目覚めたか、孺子」

 

「へっ?」

 

「気分はどうだ? 怪我はしとらんか?」

 

 

一刀はいきなり知らない女性に質問され、余計に混乱していた。

 

「えっと、どちらさん?」

 

「ん? 儂か? 儂は黄蓋。字は公覆と言う。以後見知りおけ」

 

 

一刀はさらに混乱した。

 

 

「ここはどこですか?」

 

一刀はとりあえず現在の状況確認に努めた。

 

 

「ここは荊州南陽。我が主、孫策殿の館じゃ」

 

 

(孫策って、あの三国志に出てくる孫策か? それにこの人は黄蓋って言ってたな。あの赤壁で苦肉の策を使った……)

 

 

一刀は出身地を聞かれ、東京の浅草と答えたが知らないと一蹴された。

 

 

「お主、名前はなんじゃ?」

 

「えっと、北郷 一刀です」

 

「姓がほん、名がごう、字がかずとか?」

 

「いや、姓が北郷で名が一刀。字って言うのはなし」

 

 

字がないことに多少驚かれ、その後もいくつか質問が続いた。

 

 

そしてますます混乱を深めていく一刀だった。

 

 

そんなところに……

 

「おっ、起きてる起きてる。おはよう少年。気分はどう?」

 

 

微笑みを浮かべながら雪蓮が部屋に入ってきた。

 

 

一刀は整った雪蓮の顔にやや見とれながらも返事を返した。

 

 

そしてお互いに自己紹介を済ませたが雪蓮と祭は一刀の言ったことの半分も理解できなかった。

 

挙句の果てに狂人と言われる始末だった。

 

 

「ねえ一刀、どうしてあなたみたいな小さな子があんなところにいたの?」

 

 

一刀は祭にどんな場所で拾われたかある程度聞いていたので、雪蓮の言うあんなところって言うのは理解できたが小さい子ってのは理解できなかった。

 

 

そこで一刀は違和感に気付いた。

 

 

(なんかベッドに座ってるにしても目線が低いし、声もなんか高い気がする)

 

 

一刀はだんだん状況を理解したのか、顔が青ざめた。

 

 

「ね、ねえ黄蓋さん。……鏡ってあるかな?」

 

「鏡? 鏡ならそこに備え付けのがあるじゃろ」

 

 

部屋に化粧台があり、一刀は恐る恐る鏡の前に立った。

 

 

雪蓮たちはそれを不思議そうに見つめていた。

 

 

「なんじゃこりゃーーーーーーーーー!!!!」

 

 

一刀は鏡に映った自分の姿を見て大声をあげた。

 

 

「ど、どうしたの一刀?」

 

 

いきなり叫んだ一刀を不審に思いながらも雪蓮は声をかけた。

 

 

「か、身体が小さくなっとるがな」

 

 

何故か関西弁になった一刀は両手、両膝を地面つけ、がくんとしていた。

 

 

 

それから一刀が正常な状態に戻るまで10分程の時間を要した。

 

 

「っで、どういうことなの?」

 

 

一刀の大声により部屋に駆けつけた冥琳を交えて雪蓮は一刀に、何があったのかと話を促した。

 

 

 

 

「ふむ。話を纏めると、お前がいた国では本来17歳だったがこの世界に来ると今のような身体になっていたというわけか」

 

 

冥琳は一刀から聞いた話をまとめ確認をとる。

 

「……ああ。……そうみたい」

 

 

見た目まだ小学生にも通っていないような背格好の一刀は、よほどショックが大きかったのか、今だ茫然自失としている。

 

 

このままでは埒が明かないので冥琳は尋問を続けることにした。

 

「二人より、貴様は未来から来たという話や、違う世界云々という話を聞いたがそれを証明することは出来るか?」

 

 

一刀は携帯電話使って、未来から来た事を説明した。

 

 

一刀はちぐはぐながらもなんとか雪蓮たちと違う国から来た事を分かってもらうことが出来たのである。

 

 

そして管輅の占いというのを聞かされ、自分が天の御遣いというものだと説明された。

 

 

そして一刀の処遇は決められることとなった。

 

「行く宛はあるのか?」

 

「あるはずもなく」

 

「生きる術は持っておるか?」

 

「……あるはずもなく」

 

(っつか何もないじゃん俺……)

 

 

心の中で嘆く一刀であった。

 

 

「……じゃあさ、しばらくは私たちと行動しない?」

 

それは一刀にとっての唯一の生きる手段。

 

「そりゃあ、ありがたいけどいいの?」

 

「いいわよ。……ただしいくつか条件があるけど」

 

 

条件と聞いて一刀は考えるが何も浮かばなかった。

 

 

「ひとつは、あなたの知恵を呉の統治に役立てること」

 

それはつまり、天の知識を提供しろということ。

 

「で、もうひとつは私に仕えている武将たちと率先して交流すること」

 

 

一刀はあまり意味が分からず首を傾げる。

 

 

「有り体に言えば、くどいてまぐわれってことね」

 

「なるほど。くどいてまぐ――って、はぁ?」

 

(この人いきなり何言ってんの?)

 

呉に天の御遣いの血が入れば、呉の人間に畏怖、畏敬の感情が起こるということだ。

 

「あっ、もちろん無理やりは駄目だからね」

 

サラッと言う雪蓮に唖然とするが、一つ問題があった。

 

 

「俺、今…………子供だぞ?」

 

 

雪蓮は自分と対等に話す一刀を見て、子供というのを忘れていた。

 

 

 

「忘れてたな」

 

「忘れていたわね」

 

「忘れておるの」

 

 

三人に責められた雪蓮は必死に言い訳をする。

 

 

「わ、忘れてなんかいないわよ? こ、これは一刀が大人になってからの話なんだからね!」

 

 

そんな雪蓮を三人は呆れた目で見つめる。

 

「とっ、とにかくそれが条件ね!」

 

「わかった。受けるよ」

 

 

一刀にとって断るという選択肢は存在しない。

 

 

そして改めて自己紹介を行い、一刀は三人の真名を預かり、そして真名の意味を知った。

 

 

 

(なんという初見殺しの設定だ……。三人が真名を預けてくれたってことは、ある程度信用されてるってことか)

 

 

「責任重大だな……」

 

(相手からの信用の証ってことだからな、裏切ったりは出来ないってことか)

 

 

そして、雪蓮が袁術に呼びだされ、一刀は代わりに入ってきた陸遜と自己紹介をして穏という真名を預かり、その日はそれで解散となった。

 

 

一刀の新たな物語が始まる。

 

 
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