No.127164

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 28話

虎子さん

拙い文章ですが、よろしくお願いします。

2010-02-28 06:07:23 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3967   閲覧ユーザー数:3237

~陳留 曹操政務室~

 

華琳と秋蘭が政務を処理していると、黄巾賊の討伐に行っていた春蘭が報告に来た。

「お疲れ様、春蘭。賊の討伐はどうだったのかしら?」

春蘭は、華琳の言葉に礼を取り、報告を開始する。

そして、その報告が丁度終わったとき

「曹操様は此方に居られますか!」

一人の兵士が扉の向こうに立つ。

華琳は、すぐに兵を招き入れ、報告を聞く。それは、また賊の報告で、数は二千五百人、とのことだった。

(本当に、不味いわね。一つ一つの賊は、数が多いだけ。しかし、件数が多過ぎる。桂花の対策を待つしかないのが歯痒いわね)

華琳は、内心苦虫を噛む様な思いを抱く。しかし、表情には出さない。

「春蘭は戻ったばかりで無理ね。秋蘭!」

「は!」

呼ばれた秋蘭は、起立する。

「千人の兵を預ける。賊の足止めをしなさい。2刻(1時間)以内に出発しなさい。私も本隊として出るわ。行きなさい!」

「は!」

秋蘭は、礼をして退室して行った。

 

 

(全く。賊の数は、増える一方か。いったいどうしたものか)

秋蘭は、廊下を早足で進みながら考えた。

しかし

(ふっ。私が考えたところで、意味は無いか。桂花に任せて置けば良い。今は、賊の足止めだ)

良い考えがすぐに浮かぶことなど無かった。秋蘭は、自嘲気味に嗤い、兵舎へと進んでいった。

 

この討伐隊の将に任命された秋蘭は、この後、彼らとの対面を果たすことになる。

 

~森~

 

『白虎』。それは、豪臣が“天の御遣い”として率いる義勇軍だ。

『白虎』は、現在行軍中。先程、賊討伐とその後の処理を終え、行軍を再開したところだった。

将は、皆馬に乗り行軍中。

そんな中、豪臣が左を向くと、星の高笑いをしていた。

「はっはっは!今回は私の勝ちでしたな、昴(すばる)」

「・・・・・・」

星に声を掛けられ、しかし、黙る昴。

「おや?どうしましたかな?・・・ハ!ま、まさか、認めないというおつもりか!?」

星は、わざとらしく、信じられない、みたいな驚き顔で訊く。

すると、昴は悔しそうに

「分かっている。今夜の酒は、我の分も飲むがいい」

そう言った。

(倒した人数で、賭事すんなよ・・・)

次に、豪臣は右を見る。

此方では、燈(あかり)がご機嫌だった。

「・・・・・・・・・勝った」

「分かっています。今日は、豪臣との同衾(一緒に寝ること)を譲ります」

朔夜は、昴と同様に悔しそうに言う。

「・・・・・・勝った」

「分かっています」

「・・・勝った」

「・・・何回言うつもりですか?」

額に青筋を浮かべる朔夜。

「フッ。ボク、勝った。・・・朔夜、負け」

 

ピキッ!

 

朔夜の我慢が限界に近い。

「・・・殺しますよ?」

「・・・負けたくせに・・・煩い」

「殺りますか?」

「・・・殺りゅ?」

睨み合う二人。

豪臣は、そんな二人を生温かい目で見る。

「二人とも、程々にしとけよ」

(ったく!俺を商品にして賭をするな、賭を・・・ハァ)

と、豪臣が溜息を吐いたとき

突然、森の中から影、黒尽くめの者が現れる。

 

「暗部か」

豪臣が、前を向いたまま短く問う。

「は」

暗部と呼ばれた黒尽くめは、豪臣たちの後方を行軍する兵たちには見えない様に、森の木々に隠れながらついてくる。

 

暗部。それは、間諜や暗殺の役割を担う『白虎』の隠密部隊だ。それを率いる部隊長は朔夜。部隊員数は百人。『白虎』の兵は、豪臣と星たちの対面からの一ヶ月を訓練に使った。この暗部は、その間に朔夜に徹底的に心身を鍛え上げられた最精鋭。しかも、隊員全員が、不完全ながらも気配を消す術『消(しょう)』を修得している。もちろんこれは、朔夜が才能のある者を選別した結果だ。そして、隊員たちは『消』を駆使して、情報収集と潜り込んだ間諜の排除をしている。暗部の気配は、兵はもちろんのこと、将ですら簡単に察知出来ない。各諸侯が、『白虎』の情報を手に入れられないのは、部隊編成の仕方と暗部のその実力故だった。

 

そんな暗部隊員が、報告を開始する。

「この森を抜け、北に約10里(約5km)行ったところにある町が黄巾党と思しき賊に攻撃を受けております」

「「「 !! 」」」

豪臣たちは、暗部の方を見ずに眉を寄せる。

「町を守って居る者は、曹操軍の将・夏候淵と義勇軍の将三名。兵数は約一千百。対する賊は、将足り得る者は居りませんが、兵数が約一万二千。町は東門の損害が大。西、北門の損害は中。南門の損害は小。将兵共に満身創痍の状態であります」

暗部隊員は淡々と報告をする。そして、終わると森の中に消えて行った。

(流石は朔夜の育てた暗部。交戦中の砦内の状況まで調べ上げるか・・・っと、そんなこと考えている暇は無いな)

「よし。みん「豪臣。先に行きます」な・・・って、朔夜!」

「今夜の分を取り戻します」

そう言って、朔夜は走り出した。

「お、おい!独断専「行く」行は・・・って、燈もか!」

「明日の分も・・・貰う」

燈は、朔夜の後を追って走って行った。

「・・・・・・いや、おかしいだろ」

豪臣は、そう呟いて、暫く固まっていた。

 

~町~

 

現在、町では兵たちが慌ただしく補修作業をしていた。賊は、一旦引き、もうしばらくすれば、また攻めてくるだろう。その間の補修作業だ。

そんな中、町を守っていた秋蘭は、隣に居る全身傷跡だらけの少女に声を掛ける。

「・・・凪。後、どのくらい持つ」

「突破されるのは時間の問題かと。特に東門の被害が甚大です。今、真桜が東門の内側にも防柵を作っています。それが完成すれば、門が突破されても半日は持つでしょう」

「やはり、そんなところか」

凪と呼ばれた少女の返答に、秋蘭は苦み切った表情を見せる。

そこに、ドリルを片手に持った少女が走り寄って来た。

「秋蘭様に凪~!東門に、柵作って来たで」

「そうか、すまない。お前たちが居てくれて助かった」

「いえ。我々こそ、秋蘭様がお出で下さらなければ、負けていました」

秋蘭の言葉に、恐縮する凪。

 

凪と真桜、そして、此処には居ないが、沙和という少女の三人は、五百の兵を率いる義勇軍だった。そして、この町が幾度となく黄巾党に責められていることを聞き、駆けつけたのだ。しかし、あまりの数の違いに籠城を余儀なくされ、三日と半日攻められ続けた。そこに、千人の兵を率いた秋蘭が到着。賊は、官軍の登場に一時撤退をしたが、秋蘭の隊が少数であることが分かると再び攻めてきた。秋蘭が到着して一日。必死に賊の攻撃を防いでいた。

 

「真桜。門の様子はどうだ?明日まで持ちそうか?」

(華琳様たちの到着は、おそらく明日。柵もあるが、出来れば門だけで明日まで持たせたい)

しかし、秋蘭の思いとは逆の答えが返って来る。

「あ~、たぶん無理やないかと」

「・・・分かった」

申し訳無さそうに答える真桜。秋蘭は、それに対し短く返した。

(最悪、民だけでも逃がす準備をするか・・・)

と、秋蘭がそんなことを話していると

「夏候淵様!賊が動きました!東です!」

一人の兵士が駆け寄って来て、そう告げた。

秋蘭たちに緊張が走る。彼女たちにも、賊の鬨の声が聞こえてきた。

「凪、真桜。迎撃の準備をする「秋蘭様~!」・・・沙和か」

秋蘭が令を出そうとしたとき、沙和が駆け寄って来た。

三人の前まで来た沙和は、息を切らせながら

「ぞ、賊に、誰かが、突っ込んで、行きまし、た」

と、告げた。

 

 

「「「・・・はぁ!?」」」

 

~東の城壁~

 

【視点・秋蘭】

沙和に言われ、私たちは東の城壁へと登っていた。

そして

「な、何なんだ、あいつらは・・・」

「あかん、あかんて。あれ、人間のやることや無いで」

「・・・信じられません」

「ビックリなの~」

私たちは、四人が四人とも驚愕の表情を見せた。

私たちの眼前では、二人の小柄な人間が、賊を蹂躙していた。

そう、蹂躙だ。既に百を超える賊が地に伏している。

(万を超える軍に、たった二人で正面から突っ込む。それだけの武をあの者たちは有している。・・・化物だな)

「あっ!秋蘭様。南の方から何か来るの~!」

「何っ!」

沙和に言われ、右を見る。

視線の先には、確かに砂塵が上がっていた。四人は、目を凝らす。

すると、凪が声を上げる。

「っ!紫に白い柄!あれは・・・虎?だとしたら・・・」

凪は、砂塵を上げる軍旗を見て目を見開く。

「なんやて!ホンマか!?」

「それって、噂のやつなの~!」

(紫に白い虎?・・・『白虎』か!)

「まさか・・・今戦っている者たちは・・・」

私も驚いた。目の前で戦っている者たちは、先週桂花が報告をしたばかりの義勇軍の将たちであるのだ。

(騎馬隊が突出したな。確か、騎馬を率いるのは趙雲だったか)

 

騎馬隊が黄巾賊の側面から横撃を仕掛ける。そして、凄まじい勢いのまま賊軍を突っ切って行く。続いて現れたのは、大剣を持った者が率いる槍部隊。趙雲の作った隙間に入り込み、賊軍の後方のへ攻撃を仕掛ける。そして、その部隊の後方から盾を持った部隊が隙間に入り込み、賊軍の前方が大剣の槍部隊に攻撃出来ない様に抑え込んだ。さらに、賊軍の後方部隊に弓部隊が斉射を仕掛ける。最後に、最初に戦っていた二人の後方に長い槍を持った部隊が回り込んで突撃を仕掛けた。

 

(速い。速攻を仕掛けて前後に分断。混乱した敵軍を囲んでしまった)

私が、この軍の迅速さに驚いていると

「秋蘭様!我々も!」

凪が声を掛けてきた。

「無理だ」

私は、戦場を見ながら言う。

戦場では、賊軍が見る見るうちに減っていく。後方の方では、逃げ出す者も見受けられる。

「今のあの軍には隙が無い。我々が行っても邪魔になるだけだ」

「くっ!」

凪は悔しそうに拳を握る。

(悔しいのは、お前だけではないぞ、凪)

私は凪を見て、心の中で呟いた。

自分たちが、あれ程苦労していた相手を、こうも容易く手玉に取って仕舞われている。確かに、この義勇軍の方が、私たちの兵よりも多くはあるが、錬度の違いを感じさせられてしまう。

(フッ。帰ったら調錬のし直しだな。・・・ん?)

気づいたとき。私も握り拳を作り、震わしていた。

(・・・悔しい、か。私は、自分が思っているより武人なのかも知れないな)

私は、知らぬ間に笑っていることに気づかなかった。

【視点・終】

 

 

【視点・凪】

城壁に上った私たちが見たモノは、万を超える大軍に、たったの二人で戦いを挑む者の姿だった。

先日、苦戦し、もしものときは単騎で出て足止めをする、と私が言った。

すると、真桜と沙和に止められ、秋蘭様には諭された。

自分でも理解している。そんなことは何の意味も無い。力無き者がやったところで、民を逃がす時間すら稼げない。ただの無駄死になることくらい。

しかし、目の前の二人はどうだ。たった二人で、既に百を超える賊を屠っている。私と違い、力を持っている。

(これが、強者・・・)

そんなことを思っていると、南方から砂塵が上がった。

私は驚いた。

それは、今、“天の御遣い”が率いる義勇軍として勇名を轟かせる『白虎』だった。

『白虎』は、あっと言う間に戦場を支配してしまった。

(同じ義勇軍で、此処まで動きが違うものなのか?・・・此処まで、此処まで武が違うものなのか!?)

迅速な指揮と、無謀とも思える行動が出来る武。私たちとは、力量が違い過ぎた。

今、こうして見ているだけの自分に腹が立ち、秋蘭様に参戦を申し出た。

しかし、却下された。私たちは邪魔になる、と。

私は、知らず知らずのうちに、拳を握っていた。

(悔しい。自分の力の無さが・・・悔しい!)

私は、戦場を見詰め続けた。

【視点・終】

 

 

そして、戦いは終わった。

 

 

あとがき

 

どうも、虎子です。

お気に入りに登録して頂いた皆様方。ありがとうございます。

多くの方が登録して下さったことに、この場を借りて、御礼申し上げます。

・・・てか、多くね?

前回の投稿時のお気に入り数は209人。で、現在は、328人。

確かに、お気に入り数を増やそうと思っての“限定”ですが、100人以上の上乗せには驚いています。

数の確認した時、私、(◎ o ◎)←こんな感じになってしまいましたよ・・・

 

さて、無駄話は置いておいて、作品の話です・・・

遂に、曹操軍と邂逅しました。

てか、朔夜と燈は強過ぎますね。二人で万人の軍に突っ込むなんて・・・

さらに、暗部。イメージは、勿論“忍者”です。彼らは、今後もちょくちょく登場が予定されています。

まぁ、今回はあんまり書くことは無いのでこの辺で

 

次回投稿は、未定です。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 


 
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