No.126025

『舞い踊る季節の中で』 第16話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。

明命√の作品となります。
思春が一刀に仕合を申し込む・・・一刀は彼女をどうするのか・・・
そして一日の終わりに、翡翠の家の門を激しく叩く兵・・・

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2010-02-22 16:14:40 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:27416   閲覧ユーザー数:19376

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第16話 ~ 始まりの鐘と共に舞う魂 ~

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

 最近の悩み:三人で添い寝した夜。結局俺は一睡もできなかったばかりか、二人の感触や甘い香り、そして

         寝顔と寝息が、脳裏に刻まれたらしく、時折思い出してしまう・・・度一切苦厄 舎利子

          色不異空 空不異色 色即是空 空即是色・・・・・・・・・・・無だ、心を空にするんだ。

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。 そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

一刀視点:

 

「行ってらっしゃいませ、お嬢様」

 

お客様を見送りし、一息入れる。

お店を開いて、あと少しで半年が経とうとしている。

お店は順調・・・と言うか順調すぎるぐらいだ。

すでに、店の購入代金以外の初期投資分の回収も終え、そちらの方も順調に貯まっている。

孫策達の件以降、午後のティータイムの時間帯を終えた頃に、お店を閉めていたが、今は元通りだ。

あれから、更にもう一人雇い入れ、三人に徹底的に茶の淹れ方を中心に指導してきた事もあって、夕方は俺が居なくなっても、しっかりと店を回しているようだ。

俺が居なくなった後は、何故か客足がやや減ってはいるが、固定客がついてきているし、3人の接客もどんどん良くなってきているため、新規の客もついているようだ。

 

「開いたばかりで申し訳ないんだけど、そう遠くないうちに、俺はこの店を出る事になる予定だ。

 だが、この店は残しておきたいと考えている。

 その時、君達のうち誰かに、この店を任せたいと思っているんだ」

 

三人は俺の言葉に驚いてはいたが、俺の言葉を受け入れてくれたようだ。

三人とも欲に眩む人間ではないが(そんな人間に、客を癒すような接客等出来ない)、それでも、自分の店を持てるかもしれないとなると、嬉しいようで、必死に俺から技術と執事としての心得を学んでいった。

 

 

 

 

 

そんな中、色々な出来事も多かった。

明命や翡翠の事も在ったが、

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

「茶と菓子を二つだ」

 

出迎えた客二人は、俺を確認するなり、店外の席に着く。

俺は、無愛想な面持ちで座る客に、いつものように注文の品をお出しし、笑顔で接客をする。

 

「・・・・・・(ギロリ)」

 

客の片方に、凄い眼差しで睨まれました・・・

あの甘寧、なんでそう睨まれないといけないのでしょうか?

やっぱ、あの晩の事を根に持っているのかなぁ・・・とほほ

まぁ、その代わり孫権の方は、俺の茶を楽しんでくれているようだ。

店に来てくれたのは初めてだが、俺の茶を安心して飲んでくれるだけの信頼はあるようだ。

 

「此処が、貴様の店か」

「はい、お嬢様方のおかげで、繁盛しております」

「ふん、女を誑かし金を巻き上げていると言う噂も聞くぞ」

「はぁ?」

 

あまりの言葉に、俺は間抜けな声をあげる。

と言うか、なにその噂は?

俺の店、そんな風に、みられていたのか?

 

「あ・あの孫権どっからそんな出鱈目が・」

「言葉遣いが、地に戻っておるぞ。 営業中であろう」

「し、失礼いたしました」

「なに、口さがないただの噂だ。

 実際こうして確かめに来たのだが、客は純粋に店の雰囲気を楽しんでいるようだ

 もっとも、店員目的に通っている客が居る事は、否定出来ないようだが」

「あの三人はよく働く上、人柄も良うございますゆえ」

「「・・・・・」」

「貴様の事を言っておるのだが・・・」

「確かに、私めの舞いを目的とした、お嬢様方も居られますゆえ」

「・・・・・・まぁいい、どうや・」

「一刀ーーーーっ、緊急事態だから力貸してーーーーっ!」

「なっ、姉様っ」

「あっ蓮華っ、一刀借りるねーーーっ」

 

突如現われた、孫策は、俺の腕を掴むなり、そのまま走り出す。

腕を避わす事も出来たのだが、一応こんなんでも明命達の主、そう無碍には出来ないと思っているのだが、

 

「だぁぁぁ、今度はなんだよっ!」

「燕お爺ちゃんの所が、馬が出産で人手が足りないんだって、しかも3頭同時なんだって」

「俺は営業中だーーーっ」

「大丈夫よ~っ、お店の子達がいるから問題ないでしょ~」

 

等と時折、人を無理やり拉致して手伝わせる。

それは、茘枝の収穫だったり、迷子の捜索だったり、雨漏りの修理だったり、様々だ。

この時代、状況が許す限り、民同士がなるべく助け合っていかねば、生きていけない所もあるのだが、

これ、仮にも王のする事じゃないと思うぞ・・・・。

明命達に聞いても

 

「雪蓮様は、困った人達を見逃せない方なのです」

「王としての雑務は、ある程度は、私達が補佐すれば済む問題です。

 あの方は、民のために在れば良いのです」

 

と言い、将達や兵達まで駆り出される事が、頻繁に在るというらしい。

もっとも、此処最近は良い玩具を見つけたとばかりに、俺を巻き込んでいるらしいが・・・

まぁ、本当に困っている人達ばかりだったから、文句は無いけど。

街の皆は、そんな気さくな王に感謝し、徳の高い王だと声をあげている。

・・・・まぁ、狙ってやっているとしたら、大した物だけど・・・・これって絶対、孫策の地だよね。

まぁ民を愛し、それを心より楽しんでいるのは、間違い無いだろう。

もっとも、民を愛していない為政者など、俺は認める気などないが・・・・

 

 

 

 

 

そんな中、ある定休日、たまたま明命も休暇が頂けたと言う事もあって、

以前より、天の国の話が聞きたいと言っていたので、庭先で茶を楽しみながら、話していると

 

「失礼する」

「思春様、どうなされたのですか? 何か急務でも」

「いや、今日は私用で来た」

「はぁ、公務でないなら、お茶でも飲んでいってください」

「いや、用件が済めば、帰るつもりだ。 あまり邪魔をしては悪い」

「用件ですか?」

「・・・・・・(ぎろりっ)」

 

・・・・はぁ、やっぱ俺か・・・

明命も、甘寧の様子に用件の内容に気がついたようだ。

 

「一つ確認しときたいのだけど、これは私用なんだね?」

「貴様が、なにを懸念しているか分からんでもないが、今日はただの武人として来た。

 手合わせ願おう」

「俺は、武人のつもりは無いんだけどな・・っと言っても無駄だよね。

 言っておくけど、今の甘寧では、まだ届かないよ」

「・・・・承知の上だ」

「・・・・分かった。

 ただし、仕合ではなく稽古としてなら、受けても構わないよ」

「・・・・値しないと言う気か?」

「言ったろ、武人のつもりは無いって、仕合なんて言うものには興味がないだけさ」

「・・・・承知」

 

 

 

 

 

ピタッ

 

俺の広げた鉄扇が、彼女の喉もとで止められる。

 

「・・・くっ、もう一度だ」

 

何度と無く繰り返される。

斬撃、突き、関節、時に投げ

実戦であれば、甘寧は何度死を体験しただろう。

二桁を数えてしばらく

俺は鉄扇を閉じ、舞いをやめる。

 

「此処までだ」

「はぁはぁー・・・まだだ」

「そんな息を乱してでかい? これ以上続けても、意味は無いよ」

「はぁはぁ・・・・くっ」

 

俺は庭先の机まで来ると、前もって淹れておいた茶を、人数分注ぐ

 

「あいにく冷めてしまっているけど、座って茶を飲むといいよ。

 そんな乱れた息と思考では、続きなんて意味が無い」

「思春様」

「はぁはぁ・・・・分かった」

 

甘寧は、明命に促され、やっと席に着く。

 

「・・・・・」

「・・・・・」

「あのー思春様、やはり一刀さんを許せないのでしょうか?」

「・・・・私用だと言ったはずだ。

 この男が雪蓮様達にした事は、許せるものではないが、その事に関して責める事は禁じられている」

「では、なぜ?」

「・・・・何故だと?

 明命、お前はこの男の強さを、なんとも思わないのかっ!

 あの時、私は何もできずに、この男に敗れた。

 その事は良くはないが、それは私が弱いから招いた事。

 守るべき主君を前に、もう二度とあのような事があってはならない。

 そう思い、修練に励んだが、とても届かぬ、先すら見えん。

 故に何かを掴むため、こうしてきたのだが、

 ・・・・まさか明命、お前が何も感じていないとは、思わなかったぞっ!

 おまえはそ・」

「明命には、俺が断ったんだよ」

「・・・・・・・何故だ(ぎろりっ)」

「俺は、例え稽古であっても、明命達に手を上げる気はない。

 それに、俺のは君達の武とは、根本からして違うんだ。

 教えても、かえって足枷になりかねない。

 俺のは、多少特殊な所があるけど、舞であって武ではないからね」

「あれだけの強さを持って、ただの舞いだと言うのか、なにをふざけた事をっ」

 

甘寧は、俺の言葉に納得はしてくれない。

まぁ、そうだろうね。

かといって、俺の舞を教えても、本当に足枷にしかならない。

となると・・・・

 

「まぁ、そう言う反応するのは分かってたけどね

 では一つだけ、これは舞にも武にも共通する事だから、役にたつと思うけど。

 甘寧・・・どうする?」

 

俺の言葉に、明命は目を輝かせ、

肝心の甘寧は、迷うことなく

 

「頼む」

 

短く、はっきりと答えた。

彼女にとって、主君を傷つけようとした俺に、教えを請うなど、とても受け入れられる事では無いだろう。

だが、それでも彼女は求めた。

誇りより、なにより、主君を守るための力を手にするために、

・・・・・・甘興覇たしかに武人だな。

甘寧の覚悟を、その目に見た俺は、

 

「明命も、聞いておくといいよ、きっと役に立つから」

「はい」

「別にそう構えなくてもいいから、椅子に座ったままでも、できる話だからね」

「・・・・そんな物が役に立つのか?」

「役に立つかどうかは、甘寧しだいだよ」

「・・・くっ」

「まぁ、それほど、たいした話じゃないよ、ようは呼吸」

「呼吸ですか?」

「そうだよ、君達は武人だから、呼吸の大切さは分かっていると思う。

 呼吸が出来なければ、体からは力が抜け、呼吸が乱れれば、正常な思考も出来なくなり、技も鈍る。

 とにかく、舞も武も、普通に生きるうえでも、呼吸が基本になっているんだ」

「・・・そんなものは、当たり前の事だ」

「そう、当たり前の事。

 でも呼吸って言うのは、別に人間だけではない、動物も、植物も、空気や大地だって行っているんだ。

 舞いは、元々神に捧げるもの、神をその身に降ろすものでね、うちの流派はその流れを強く引き継いでいる。

 とにかく人に限らず、自然そのものに呼吸を合わせれるように、自分を書き換える事を、基礎にして到達点の

 一つにしているんだ」

「・・・なっ、そんな事、人間にできるわけが」

 

俺の言葉に、甘寧が驚きの声をあげるが、

 

「別に本当に、自然そのものになるわけじゃない。

 それを感じ取り、合わせているだけだよ。

 まぁ、それがなかなか難しいのは確かだし、其処までやれと言う気もないし、教える気も無い。

 甘寧達は、もっと相手の呼吸に合わせ、相手を自分の呼吸に引き込む事をした方が良い」

「「・・・・・」」

 

二人とも、意味が分からないって感じだ。

まぁ、この世界の将達は、常識はずれの力と速さを持っているから、其処に頼ってしまいがちになるのだろうな。

でも・・

 

「二人とも、気配を消したたまま動けるだろう?

 それに根幹は近い所があるんだけど、少し実践してみた方がいいかな。

 二人とも俺の呼吸を見て、それに合わせて呼吸をしてみて欲しい」

 

そう言うと二人とも、俺の言うとおりにしてくれる。

俺は、二人が呼吸を合わせてくれているのを感じ取りながら、意思、呼吸、視線、表情、間、等総てを利用して、相手の意思を無意識を管理下におく、やがて、吐き終えて吸い始める所でもう一度吐く振りをする。

 

「「けほっ、けほっ」」

 

俺の狙い通り二人は咽せる。

俺は、そんな二人のために、もう一度茶を注ぎ

 

「まぁ、今のは悪戯みたいなもんだけど、それでもそれだけの事はできるんだ。

 相手の呼吸を読む事で、相手の初動、虚実、間合い、思考を読み、それに合わせた上で此方の呼吸に引き

 込み、相手の行動を支配下に置くんだ。

 それが意識しなくても、自然に出来る様になれば、基礎は終わりかな」

「・・・はぁ・・」

「・・・ぬぅ・・」

 

二人の生返事に、

どうやら前よりはましだけど、まだいまいち判っていない事が分かる。

二人とも自分を律し、相手の次の手を予想して動く事が出来るのだから、意図を理解して練習すれば、すぐに一段階上に上がれると思うんだけど・・・説明が理解しづらかったかな?

 

「まぁ、今言った事は、少し難しかったかもしれないけど、二人とも一般兵への修練もやっているんだろ?

 その時に、相手の呼吸をもっと意識して、相手の事を考えて動いてみるといいよ。

 二人なら、すぐにコツを掴むと思うから、その後は自分なりに組み込んでいけばいいと思う」

「・・・判った。 早速今から試しに行ってみる事にする」

「はい、私もご一緒させてください」

 

とりあえず、実践して見ようって事らしい。

まぁ、こういう事に貪欲なところは、武将って感じだよな。

・・・・でも、明命、君は確か休暇中では?

・・・・まぁ、しかたないか・・・疲れて帰ってくるだろうから、いろいろ用意しておくかな。

明命を引き連れて、鍛錬場へ向かおうとする甘寧は、なにかを思い出したかのように足を止め、

 

「・・・思春だ。

 武の教授の礼に、我が真名を貴様に預けておく」

 

真名か・・・・甘寧は、無愛想で、何か事ある事に、俺を睨み付ける。

でも、それは、きっと孫策や孫権を優先するあまりの行動だというのは、今までの事から判る。

今日の事を見ても、彼女は彼女なりの確かな価値観をもって行動し、礼を尽くす人物、無骨なまでに生真面目さが故に他人に誤解されやすいが、その心根は武人の名に相応しい程、真直ぐだという事が判かる。

まぁ彼女なら、かまわないか・・・・

 

「明命、今夜は天の国の料理を作るから、思春をきちんと誘って戻ってくるようにね」

「なっ!(ギロリッ)」

「はい、分かりました」

 

だって、思春、君はこう言わないと来ないでしょ。

まぁ、普段明命が世話になっているのだから、そのお礼をかねてなんだけどね。

 

 

 

 

 

数日振りの風呂も、すでに湧かし終え。

いつもより、少し豪華な食事も、ほぼ出来上がっている。

この世界の人間と言うか、将達は結構大食漢だ。

あの翡翠でさえ、俺より食べる。

以前二人に、遠慮しているのかと心配された程だ。

俺もまだまだ、育ち盛りを自覚しているつもりだ。

これでも、食べれる時は、食べるようにしてはいたんだけどね・・・・

とにかく、今日はいつもより、お腹を空かせているだろう明命と、同じく腹を空かせているだろう客(思春)がいるため、それなりの量を用意した。

まぁ余れば、朝食やお弁当に再加工するだけなんだけどね。

とにかく、いつもと違った雰囲気の夕食は、それなりに楽しいものになるのではと思いながら、明命達が帰ってくるのを心待ちしていた。

 

 

 

 

 

と、つい先程までは思っている自分がいました。

・・・・・・何故こんな事に?

俺は、追加の料理を作りながら、頭を傾げる。

台所横の食堂は、夕食会というか、すでにちょっとした宴会会場と化していた。

俺は、この家にお世話になっている身だから、急な客に対応するのは良い。

二人がお世話になっている人物のために、料理を振舞うのも良い。

材料と酒が足りなくなったから、客(思春)の一言で急遽買いに行かせられたのは、良くはないが、まだ許せ

る範囲だ。

俺の頬を引き攣らせているのは・・・

 

「かーずとー、そんなところで、一人で居ないで、こっちに混ざりなさいよー」

 

ひくっ

 

「だぁぁぁぁぁ、文句ばっか言うなっ!

 料理が無くなりゃ、どうせ文句言うんだろっ。

 それに、お腹空かせている人間が居るのに、そんな真似出来るかっ!

 いいから、こっちが手が空くまでそっちで、大人しく呑み食いしていてくれ。

 あっ、翡翠悪いけど、これそっちに持って行ってくれるかな」

 

とりあえず、出来上がっている傍若無人酔払王の孫策を黙らせ、申し訳なさそうにしている翡翠に、料理を持って行ってもらうように頼む。

 

「あ・あの一刀君、急に済みません」

「あぁ、いいよいいよ、翡翠は気にしないでくれ

 とりあえず、あれに文句言いたかっただけだし、あれ相手なら気兼ねなく言えるから」

「・・あ・"あれ"ですか・・・一応私達の王なんですが・・・」

「良いの良いの、元々そういう関係の約束だし、孫策相手に遠慮無用って言うのは、ここ二ヶ月で学んだから」

「・・・はぁ・・・」

「ほら、翡翠早く行かないと明命達がお腹空かせているから、こっちはもう何とかなるから、翡翠も楽しんで

 きて欲しい」

 

まだ此方を手伝おうとする翡翠を、台所から追い出し、料理の続きをする。

まず、夕刻に明命と思春が帰ってきた。

予想通り、汗と砂埃で汚れ、お腹を空かせて帰ってきた。

予想外だったのが、鍛錬場で一緒になったという、黄蓋を明命が連れてきた事だ。

なんでも、先日大変世話になった事があって、その礼として、天の国の料理をご馳走したいと言う事らしい。

明命が世話になり、その礼として招待したんだ。

歓迎する事に否は無い、むしろ歓迎する。

黄蓋さんは、じっちゃんに似た感じの豪快で裏表のない性格なので、会えば気兼ねなく話せる相手だ。

まぁ、茶店で茶より酒が欲しいと言われたのは困ったけど・・・・

 

そのすぐ後に、翡翠が何故か周瑜と陸遜を連れて帰宅した。

なんでも話の流れで、俺の世界の話を聞きたくなったとかだそうだ。

周瑜には思う所も在るが、何度か話して、例の件は孫策の暴走と言う事が、なんとなく理解できた。

それでも孫策の言った事そのものは間違いではない、と言い切った辺りで、引っかかっているのだが、彼女の立場からしたら、そう言わざる得ないだろう。

それでも、二人とも翡翠の上司と同僚で、翡翠がお世話になっている人間、という事実に違いは無い。

したがって、断る理由は無い。

問題は、その後の

 

「一刀ー、なんか面白そうな事になっている気がしたから、訪ねて来たわよー」

「ちょっ、姉様、いきなり人を引っ張ってきたと思ったら、食事時に、いきなり訪問なんて翡翠達に迷惑です」

「・・・・孫権、ちょっと、こっち来てくれるかな」

 

俺は孫権を手招きし、孫権が扉をくぐった瞬間

 

バタンッ

 

「「えっ?」」

 

扉の音に、扉の前後で同じ声が発せられる。

おぉ、さすが姉妹、こういう所は息が合っているなぁ。

とりあえず鍵を掛けてっと

 

「ほ・北郷? 姉様が・」

「あぁ、気にしないでくれ、食堂に他の皆も来ているから、ゆっくりして行ってくれ」

「一刀君、何事・これは蓮華様、我が家を訪れる等、何かあったのでしょうか?」

「いや、特に用があって来たというわけではないが・・」

「よく分かりませんが、どうぞ此方へ、冥琳様達もちょうど来られております。

 何もありませんが、一刀君が天の国の料理を作ったので、ぜひご相伴下さいませ」

「あっ、いや、その姉様が」

「雪蓮様がなにか?」

 

キンッ

バタンッ

 

何かを斬る音がした後、すぐさま扉が勢いよく蹴り開けられた。

ちっ、

 

「私だけ締め出すなんて、一体どういうつもりよっ」

「人の家の鍵を叩っ斬っといて、なに威張ってやがる」

「扉ごと斬らなかっただけ、ましだと思いなさいよ。 明日には、人を寄こして直させるわ」

「自分の非常識な行動を、棚に上げて開き直るなっ」

「ど~~して、一刀は私だけに、意地悪なのかな~、蓮華はよくて、なんで私は駄目なのよ~」

「孫権は頭が固い所はあるけど、基本的に真面目で常識人、その上明命達の上役だ。

 理由が無い限り、断る理由が無い」

「何よー、そんなの私だって、同じじゃない」

「どこがだっ、孫策の場合は、自由奔放で、不真面目で、非常識で、翡翠達に仕事を押し付けて遊びまわる

 駄目人間、その上事ある毎に俺を巻き込む、挙句に面白そうと言う理由で突然の訪問、これで断らない理由

 を考える方が難しいくらいだっ!」

「「「 おぉぉぉぉぉぉぉ 」」」

 

俺の言葉に、いつの間にか、部屋の出入り口から覗きながら、賛同の声をあげる何人かの呉の重臣達。

あっ、孫権や翡翠もさすがに、此方の言い分に孫策を庇いきれないと思ったのか、溜息を吐いている。

ふっ、勝った。

まぁ、ごく一部此方を睨みつけているが、この際それは見なかった事にして・・・

と思っていたら、明命が食堂の人混みを掻き分けて

 

「あ・あの一刀さん、雪蓮様も一緒の方が、きっと楽しいと思います」

「孫策、あまり明命達に、迷惑が掛からないよう楽しんでいってくれ」

「・・・・一刀、本当に明命達優先なのね・・・私、一応これでも王なんだけど・・・」

 

 

 

 

 

と、まぁ、自由奔放暴虐無人我侭王こと孫策が、招かれもしないのに夕食を集りに来たのが原因だ。

孫権はまだ数度しか会っていない上、殆ど話していない(思春が睨み付けてくるんだもん)ので人物を見定め切れていないが、(今回に限って言えば、彼女は被害者だから、文句を言う気は、これっぽっちも無い。)

この天真爛漫破天荒王こと孫策は、俺の意思など関係なく、色々巻き込んでくれた事もあって、ある程度見定める事はできた。

まぁ、自由奔放さに目を行きがちになるが、基本的に民を愛し、そこに在る笑顔を守るために自ら動き回わり、泥と汗に汚れることも厭わない。

まぁ、かなり型外れだが、王たらんとし、この動乱の時代、何時自分が居なくなっても良いように、跡継ぎの育成にも力をいれている。

あの晩の出来事を考えれば(考えたくも無いが)、とっさの判断や先を見る目(半分勘任せなんだろうけど)もあり、王としての覚悟があるのは、分かった。

王としての仕事の方は分からないが、周瑜の性格からして、黙っているとは思えないので、おそらくそれなりに、こなしているのだろう(脱走癖はあるみたいだが)

おそらく、彼女は家長なんだ。

孫呉と言う名の家の長、そして、重臣はおろか民も彼女にとって、守るべき家族なんだと思う。

そして、それを守るためならば、自分も家族も傷つく事を覚悟している。

まぁ、それは認めても良い。

懐の広さも、その覚悟も、明命達しか見ていない俺とは違う。

それは尊敬に値する。

だけど、なぜか、まだ認める気にはなれない・・・・

たぶん、俺がまだ気が付いていない事があるのか・・・

それとも、あの晩の件を心のどこかで拘っているのか・・・

理由は分からない

だが、本当なら、孫策をここまで邪険に扱う理由はない。

俺は、基本的に他の将達には、表面上それなりに礼節を払って来ているつもりだ。

だが、孫策に対しは、何故か、ああいう態度になってしまう。

何故だろう? と思うと何故か脳裏に、人の都合を考えずに騒ぎに巻き込む、某悪友の顔が浮かぶ。

・・・・うん、気のせいだ。

あれは悪友とは言え、一応友達と言える。

孫策は女だし、違うと思う。

とりあえず答えが出るまでは、今の扱いで構わないだろう。

と、思考を廻らせながらも、料理はどんどん出来上がっていく。

最期に、水で冷やして固めておいたマシュマロを、デザートとして皿に盛り付ける。

酒の摘みにしたい人には、器に容れてある炭火で炙って貰うつもりだ

うん、我ながら良い出来だ。

 

 

 

 

 

 

急な宴も、後半に差し掛かった頃、皆は酒と俺の料理に舌鼓を打ち、それなりの盛り上がりを見せていた。

その中で一番目立っていたのは、招かれざる客の孫策だが、まぁ、あれだけ美味しそうに食べてくれれば、こちらも悪い気はしない。・・・乱入した件は無かった事にしておくか。

俺はと言うと、天の国の話を聞きに来ていた二人の事もあって、俺の世界の料理を説明するついでに、食文化やそれが織り成す社会現象や、経済への影響などを大雑把に話していた。

この世界では、そんな余裕が無い人達が殆どだが、それでも馬鹿にできない程影響はある。

そういった意味で、頭脳陣は俺の話を驚き、質問を交えながら、興味しげに聞いている。

途中、酒の話になった途端、興味津々に割り込んだ二人がいたが、製造方を知らない(嘘だけど)と言ったとたん興味を無くし、酒と料理に戻っていく・・・孫策、一応お前はこっち側にいないといけないんじゃないか? 妹の孫権も話を聞いていると言うのに・・・たくっ

 

ドンッドンッ!

ドンッドンッドンッドンッ!

 

家の門を激しく叩く音に、部屋は先程の賑やかさ等、無かった様に緊迫感に包まれる。

俺が、門を叩いていた兵を、部屋に招き入れると、

 

「報告しますっ!

 国境の集落が、黄巾党の残党と見られる賊に襲撃された模様。

 近くの砦の隊が救援に向かいましたが・・・

 その隙に逆に砦が襲撃され、乗っ取られた模様っ。

 砦を乗っ取った賊の数は、およそ800っ!

 賊は砦の蓄えられた物資を、どこかに持ち運ぼうとしておりますが、現在足止めのため、集落救援のために

 出た隊と交戦中、兵糧も乏しいため、長くは保たないとの事」

「ご苦労様、貴方は城に、この事と、すぐ戻ると伝えて頂戴。

 ・・・・まだ獣達が残っていたのね

 蓮華、今度は貴女が指揮を執りなさいっ

 明命、今すぐ兵200を連れて、本体が到着するまで、獣共を足止めしておきなさい。

 思春、兵達の準備を夜明けまでに行いなさい。

 数は千でいいっ。

 冥琳と翡翠は、兵糧と物資の準備をっ、間に合わない分は後で送る手配をしてっ

 私と穏は、今回は後局に回るわ

 あと、ついでに、この事を袁術にも早馬を出しておいて、変に勘ぐられたくないわ」

 

さっきまでの、自堕落な雰囲気など消え、目に冷たい光を灯して、孫策は次々指示を出していった。

俺は、それをただ見ている事しかできない。

 

「冥琳と祭は、悪いけど、此処を守っていて頂戴。

 帰る家が無くなるなんて事だけは、止めてよね」

「わしを誰だと思っているのじゃ、そんな事させるわけが無かろう」

「ふふっ、そうね

 それと一刀、今回は貴方にも軍師として出てもらうわ。

 でも正直、今回は何も期待していない。

 貴方は知る必要があるの、この世界の現実ってものをね。

 拒否は許さないから、そのつもりでいなさい」

 

ガタッ

 

それは誰が立てた音だろう。

今の俺には、そんな事はどうでも良かった。

俺が、戦場に・・・・・また、人を殺さないといけないのか・・・

ただ、その言葉が、

あの時の感触が、

今の俺を支配していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの。

 

こんにちは、うたまるです。

  第16話 ~始まりの鐘と共に舞う魂~ を此処におおくりしました。

今回、一刀が現在の呉の将達との心の距離を表す話となりました。

明命と翡翠以外の将とは、表面上礼節を踏まえています。(王は除く)

まぁこれは、一刀が舞踊をやっているため、礼節に関しては、それなりに厳しく育てられていたのと、将達もそれなりに礼節を持って接してきていたからです。

まぁ、呉は比較的表面上は常識人が揃っていますからね。(小蓮は、まだ出てきていないため除外)

翡翠達の執り成しもあって、それなりに心を許してきていますが、現在、真名を読んでいるのは思春のみです。

これは、彼女の愚直なまでの真面目さが、功をさしたのだと私は思っています。

原作では、思春は当初、主人公に認めれるものが無かったためと、彼女の性格や立場もあって、ああなったのかなぁと思いつつ、今回妄想を垂れ流してみました。

某王様に関しては、現在一刀がどう思っているかは、読者様の想像にお任せいたします(w

 

さて、今後ですが、以前予告したとおり、動乱の時代に入るわけですが・・・・さすがに初陣が反董卓連合では、あんまりと言うのと、権力争いに、最初に放り込むのは、この作品の一刀にとって、害悪以外の何物でもないと判断した上での事となりました。

 

さぁ、一刀はこの試練に打ち勝つ事ができるのでしょうか

 

頑張って書きますので、どうか最期までお付き合い下さい。


 
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