袁術を追いだしてから少し経ったある日のこと。
一刀は祭に訓練だと言われて無理矢理連れてこられた。
ちなみに一刀の前には祭と穏。後ろには二十人前後の兵士がまとまってついてきている。
(一体何の訓練なんだ?)
ちなみにこの訓練にキバットは持ってきていないし、ファイズギアも持ってきていない。
クウガのアークルはすでにつけているがよほどのことがない限り変身する気はない。
それから森の中に入り、奥まで行ったところで祭と穏が足をとめた。
「この辺りですね」
「そうだな。皆のもの! これより訓練を開始する! 心してかかれ!」
祭がそう言うと、兵士達は辺りを窺い始めた。
「一体これは何の訓練なんです?」
「今日は対工作員の訓練だ」
「対工作員訓練?」
「そうです。工作員は明命ちゃんで、既に前もってこの辺りに隠れているんですー」
「その明命を、わし、穏、お主とそれぞれの三小隊で見つけて捕らえる、と言う訓練だ」
「なるほど、それでこの森と後ろの兵士達なんだな。
これだけの人数でも明命を見つけるのは難しいのかな?」
「あながち間違っていないがそれは少し違うな、北郷。
他国に侵入し、破壊活動、諜報活動などをたった一人で行う手練れの工作員が、一筋縄で捕まると思っているのか?」
「そうですよー。工作員の人達は、一騎当千の選ばれた精兵だと言うことを忘れないで下さいよー」
「そう言うことか」
二人に言われて、言いたいことがようやく分かった一刀。
そんな時後ろの方から物音がしたので全員がそちらの方を見る。
それは一人の兵士が倒れた音だった。
「「……っ!?」」
「今のは!?」
「始まったぞ……明命の狩りが」
「狩るか狩られるかか……」
「よしっ、全員密集陣形を取れ!」
「皆さ~ん、円陣を組んで、離れないようにしてくださいね~」
兵士達は二人に言われて、円陣を組む。
「俺はどうすればいい?」
「幸運を祈る」
「それだけ?」
「自分の身を守ることで精一杯ですから。明命ちゃんに捕まれば、恐ろしいことになっちゃうので」
「恐ろしいこと?」
一刀はこの時、本当に自分が怪人になってしまうのではないのかと思ってしまった。
「あぁ。顔中にいたるところに墨で落書きされてしまうのだ」
「落書き? (よかった……かな?)」
「甘いぞ北郷。その墨は特製で、しばらくは洗っても取れないと言う代物だ。
落書きされた顔で街を通り、城まで戻らねばならんのだぞ? しかも仲間に負けてだ」
「……」
「その屈辱はお主の想像する以上だと思え」
祭は昏倒している兵士の顔をあげる。
『一番にやられました。えへ』と書かれてあった。
(この世界の人なら屈辱だろうな……)
とは思いつつも怪人にされて人間じゃなくなるよりはましだと思った一刀。
「訓練とは、訓練と思ってやっては意味が無い。やはりこれくらいの罰は無いと、兵士達も真剣になれんからな」
「う~ん」
「本番に近い緊張感を持って臨まないとな」
(とは言ってもクウガをフルに使ったら明命勝てないぞ)
クウガのペガサスフォームは持続時間は短いが相手がどこに居るのかを捉えるはかなりのものである。
例えペガサスフォームじゃないにしてもクウガに変身した時点で人間じゃ太刀打ちできないのであるが……。
「とりあえず聞き直すけど、目的は明命の捕縛だよね」
「そうですー。ですので、ここで皆で集まっていてもダメですねー」
「うむ。飽くまでも明命、工作員を捕らえる訓練だからな。我が身を守ることばかり考えても意味がない」
「それでは小隊単位で動きますか?」
「そうだな。当初の予定通り、三小隊分かれて動くぞ」
こうして祭、穏、一刀は三小隊に分かれた。
しかし明命は恐ろしいことに次々に兵士達を倒していき、合流した時には既に穏、一刀だけになってしまっていた。
「強いな……明命」
一刀の顔には冷や汗が流れていた。
「本気でまずいな」
そんな時、祭が茂みから現れた。
「わし一人になってしまって、腹をくくって仕掛けたんだが、遮蔽物が多いうえに明命がすばしっこくてな。
最後には矢が尽きてしまって、ここまで逃れてきたわけだ」
「そうですか……」
「予想以上に手強いな」
「本当に……」
一刀はあらゆる意味でまずいと考える。
それは内に秘められたクウガの力のことも含めて……。
「まずは冷静になれ。消極的ではあるが、こうなったら待ち構える戦法を取らざるをえんだろう。
そうなると、多少なりとも見通しの良い場所に移る方が有利だろう」
「そうですね。それじゃあ……」
そう思っていた矢先、穏がいつの間にかやられてしまっていた。
その穏の胸元には『存在価値は巨乳のみ』と書かれていた。
(明命……)
一刀がそう思っているといつの間に祭までやられていた。
「祭さん!?」
そして祭の胸元には『乳に栄養行きすぎ』と書かれていた。
「これはひがみなのか……」
そんな時草から音が聞こえる。
「俺……だけか……」
一刀が見通しの良いであろう場所に走り出す。
しかし走っている最中にいつの間にか明命により倒されてしまう。
「ぐわっ!」
倒れて手足を縛られる一刀。
そこに明命が姿を現す。
「……それでは」
明命が墨と筆を持って一刀の顔に何かを書こうとする。
「私に捕まった以上は、罰を受けて頂くほかはありません」
一刀は恐怖で怯えきっていた。
「うわぁああああああああああああ!!!!」
その時一刀の体が突然クウガのものと被った。
それもかなりヤバいものに……。
「きゃあ!」
突然のクウガの強すぎる力で明命は後ろに吹き飛ばされてしまった。
「うっ……一体……何が……」
明命が一刀の方を見る。
一刀を縛っていたはずの縄が引きちぎられており、一刀はクウガに変身していたが、そのクウガの姿はおぞましく、明命達が見せてもらったこと無い黒いものであった。
「あれは……」
「うぁああああああああ!! はっ!」
一刀はすぐにクウガから元の一刀に戻る。
「はぁ、はぁ。俺はいったい……」
縛られていたはずの手足が動かせる上に、自分がいつの間にか立っていたのだ。
「あ、明命!」
一刀が飛ばされている明命を見てかけよる。
「明命、大丈夫か?」
「何とかですが……」
「俺、一体何をしたんだ?」
「覚えていないのですか?」
「あまりの恐怖でな……」
「一刀様はクウガに変身をしたのですが……、それが見たこと無いものに変身したのです。黒いものに……」
「!」
一刀はすぐにそれがアルティメットフォームであることに気付いた。
(まさか…憎しみだけじゃなくて怒りや恐怖にも反応するのか?)
一刀はアルティメットフォームの怖さを思い知らされた。
「ごめん明命。仮面ライダーの力を使っちゃって……」
「いいのです。これが本当の工作だったら一刀様は普通に使っていたと思いますし……」
「それでも……本当なら俺の負けだよ。俺の顔に墨を付けてくれ」
「一刀様……」
一刀は明命の前で正座して目をつぶる。
「お願いだ。やってくれ」
「一刀様…分かりました!」
明命は一刀の言われた通り一刀の顔に墨を付けた。
そして街では墨を付けられた皆が街で笑い者にされたが、一刀はこれで良いと思っていた。
(これでいいんだ。あの力で誰かを傷つけるより……ずっと良い)
この時の一刀は知らない。その後、あの力で大量の人間の命を奪うことを……。
おまけ
作者「呉編の拠点だ」
一刀「まさか本編よりも前にクウガアルティメットフォームを出すと言う設定とは…」
作者「書いたのは昨日だけど、ネタ自体は仮面ライダー×真・恋姫†無双シリーズを書くずっと前から考えていたネタだ」
一刀「そんなに古いのかよ!」
作者「最初に見た時に頭で思いついてな……。後は出すタイミングとかを考えてたりした」
一刀「それで今なのか……」
作者「余談だが、恐らくだけどきっと俺がこんなことされたら確実に明命を殴ってたと思う」
一刀「怖いこと言うな」
作者「俺は本来ギャク切れとかするタイプなんだ。まあ今は怒りたいことがあっても無理矢理抑え込んでるけどな」
一刀「怒りを抑えるのが普通だからな」
作者「そうなんだけどな。たまに怒りたくなると言うか、自分が怒られてるわけでもないが怒鳴り声を聞くと自然に俺の怒りゲージが上がる」
一刀「よほど怒りに反応するんだな」
作者「それくらい怒りが嫌いだと言うことだ。例え矛先が俺に向けられていなくてもな…。
それでは…」
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基本的には真・恋姫†無双の呉ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。
それと今回はいつもよりも話は短く、仮面ライダーに関することはあまりありません。しかし先にも書いたように台詞が原作と違う部分もございます。それを了承の上で閲覧することをお願いします。ではお楽しみ。