反董卓連合から少し経ったある日のこと。
「可愛いお嬢さん方、私達と一緒に午後の飲茶でもいかがですか?」
「もちろん、お時間があればの話ですが。いかがでしょう?」
街で二人の警備兵がある少女達をナンパしているのを一刀が目撃する。
そのナンパされているのは張三姉妹の天和、地和、人和であった。
「どうしよっかな~?」
「一応待ってる人がいるしなぁ。でも遅いからついて行っちゃおうっかな~」
天和と地和はからかうようにナンパしてくる警備兵達に対応する。
「時間がもったいない」
人和はきっぱりと答える。
一刀は警備兵達の後ろからこっそりと天和達のやりとりを見る。
「では、こうするのはどうでしょう? 次の我々の休憩時間に、お茶をご一緒すると言うのは?」
「えー、今じゃないんだ」
「ちぃ達を誘っておいて、そっちに都合を合わせろっていうの? あーあ、せっかく行こうかなーって気分になってたのに」
「なら今からでも……」
「なーにしてるんだ? お前ら……」
一刀がこっそりと近づいており、二人の警備兵の肩に自分の手をやって言う。
「え? あ、た、隊長!?」
「どどど、どうしてここに?」
「さあ~てね。それよりお前達まだ警邏中のはずだが……」
「そ、それは……」
二人の警備兵は動揺を隠せない。
「凪に見つかる前に仕事に戻ることだな。お前達がナンパしてたことは言わないといてやる」
「は、はい!」
「ごめんなさい! 失礼します!」
二人の警備兵はその場を去っていった。
「お~。一刀ってば、結構偉い人なんだねー」
「仮面ライダーだからね」
「ふん、曹操さんのお陰でしょ」
「ははは……一本取られたぜ」
「否定しないんだ?」
「否定要素がゼロだからな。それより月と詠はどうした?」
実は一刀の代わりに最近は月と詠が張三姉妹のお世話係と言うかマネージャーをしているのだが、その二人の姿が見当たらない。
「あの二人は今、用事を済ませに行っているわ。もうすぐ戻って来るはずだけど……。
それより、今日呼び立てたのは何? 何か曹操様から命令でもあるの?」
「その通りだ」
一刀が真面目な顔で三人に説明しようとする前に月と詠が戻って来たので、一刀は五人に説明する。
その内容は最近西方にある邑で他勢力の工作員により、寝返り行動の気配が見受けられ、その工作員を捕縛することを目的とし、三人に住民達を華琳への反抗心を削げさせ、それを疎ましく思う工作員が三人を狙うだろうとして、その狙ってくる工作員を捕らえるというものである。
「危険ってことじゃないのそれ!」
「確かにな……」
「うえー……やだやだやだやだ。そんな危ないことしたくなーい」
「天和さん……」
駄々をこねる天和をどうにかしようとする月。
「これが成功したら予算も上がるぞ」
「うっ……」
「あんたねぇ……」
詠が若干体を震わせる。
「それは魅力的かも……あーもう、どうしよー!」
「危ないのやだー! でもお金欲しいー!」
「安心しろ。この任務はそんな危ないものに俺がさせない」
「どういうこと?」
「仮面ライダーが全力で君達を守ってやると言うことだ」
「あんた……」
詠の頬が何故か少し赤くなる。どうやらその時の一刀が少しかっこよく見えたようだ。
「人和はどう思う?」
「護衛の力量は?」
「護衛は俺に、楽進、李典、于禁、呂布に陳宮。俺の実力は知ってるだろ?」
「それはね……」
天和達は思い出す。黄巾の乱の時に自分達を思いっきり追ってきた時の仮面ライダーブレイドこと一刀のことを……。
「それに他の面々も抜群だぜ」
「でもねねは軍師の人間よ」
「ねねちゃん、そんなに強くは……」
「ところがな……そうでもないんだよ」
「?」
月と詠は何のことか分かっていない。
「少し前の事なんだがな……」
一刀が思い出す。
それは数日前、一刀が街で悪さをしていた悪人をカブトに変身してクロックアップを使って取り押さえた後のことであった。
一刀は念のためと思い、カブトに変身したまま警邏をしていたら肉まんをものすごく欲しそうな恋を見かけ、仕方ないので肉まんを大量に買ってあげたのだ。
その時の肉まんを頬張る恋の可愛い顔は今でも忘れていない。
その恋の顔を見ているとなにやら不吉な音がしたので……。
「1,2,3」
「……一刀?」
恋はカブトゼクターのボタンを押す一刀の行動を不思議に思ったのだ。
一刀はお構いなしにゼクターホーンを最初の位置に戻す。
「ライダー……キック」
その言葉と同時にゼクターホーンを再び倒す。
「Rider Kick」
ゼクターから右足にタキオン粒子がたまる。
それと同時に……。
「ちんきゅーーーーーキーーーーーーーック!!」
「はっ!!」
どこからか飛んできたねねがライダーキックのようなとび蹴りを一刀に向けていた。
一刀はそれに気付いてカブトのライダーキックの準備をしていたのだ。
ちんきゅーキックとカブトのライダーキックがぶつかり、その場で爆発が起こり、ねねは地面に倒れた。
「はぅ!」
「ふん……」
一刀は右手を天を刺すようにあげる。
そして一刀は変身を解いて地面に倒れているねねを恋と一緒に起こす。
ねねはかなり嫌がっていたが……。
「ところであのキックどうやって学んだ?」
「お前が恋殿にやったものを真似ただけなのです」
「……あれか…」
それは恋と虎牢関で戦った時、一刀はブレイドに変身してライトニングソニックを恋に向けて使ったのだ。
それをねねも虎牢関から見ていたのだ。
「しかし俺のライダーキックといい勝負してたな」
「でも負けてしまったのです」
「もう少し特訓すれば俺が負けるかもな……」
「と言うことがあったんだ」
「そんなに強いんだ。その『ちんきゅーキック』って……」
「そう言うことだ」
「分かったわ。だったらこれ以上言わないわよ」
「そうか…」
「話は戻るけど、報酬は?」
人和が一刀に話を戻させる。
「次の活動までの生活と活動を賄えるだけの報酬だ」
「命令は?」
「邑の住人を虜にして工作員を引き出し、可能なら捕らえる。捕まえるのは俺達の仕事だがな」
「最後に一つ。舞台の最中に私達が襲われた時、私達の安全は確保できるの?」
「そのための……」
一刀がそう言うとカブトゼクターが一刀のところにやって来る。
「仮面ライダーだ」
一刀が右手でカブトゼクターを持ち、見せつけるように言う。
「それに工作員の捕縛より、君達の安全が最優先だ。それは徹底させる。協力してもらう以上、身の安全は保証しないとな」
人和は少し間をおいて返事をする。
「……分かった。受けるよ、姉さん」
そして一刀達は先に邑で三人の舞台の準備をしている真桜、沙和、恋、ねねのところに向かうのであった。
「うわー…辛気臭い邑ぁ~」
邑のついたときの地和の最初の言葉である。
「ほんと、何にもないド田舎だねー」
「二人とも声がでかいわよ」
詠が地和と天和を注意するが…。
「だってホントのことだもーん」
「だからこそ工作員もやりやすいんだろうな。だけどこれから賑やかにするのが天和達の仕事だろ?」
「まあそうなんだけどさ。そもそも見に来なきゃ盛り上げようないし……」
「人が居ないと盛り上げられないよねー」
「どんなことでも人は大事ってことだ。…お。恋にねね!」
そこに一刀達を出迎えるように恋とねねが来た。
「準備が出来たのであります!」
「……思ったより遅かった」
「そうなのです! 恋殿と一緒にチラシも配ったのです!」
「すごいね、ねねちゃん」
「済まなかったな」
月と一刀が労う。
「場所は?」
「邑のはずれにある広場」
「じゃあそこへ案内して。現場の状況を確認しておきたいから」
人和と一刀は恋とねねと一緒に舞台の最終段階に入っている真桜達のところに向かった。
そしてその舞台は完成していたようだが……。
「敷地は広いけど舞台は狭いわね」
人和の感想である。
「う…いきなり核心つきよるなぁ。一応、この邑で一番多き小屋やねんけど」
真桜が答える。
「これじゃロクな演目が出来ないわ」
「でも、これ以上大きな舞台は無いの~」
「………」
人和が黙りこむ。そこに一刀が提案を出す。
「無いなら作れば良い」
「そんな簡単に言われてもなぁ…。材料もないのにどうすりゃええのんよ?」
「何のためにお前が居ると思っているんだ。真桜」
「はぁ?」
真桜は一刀の言いたいことが分かっていなかったので一刀が説明する。
それは真桜の螺旋槍で地面を掘り起こして、舞台を作ろうと言うものだった。
「……そんなこと、可能なの?」
「真桜、お前なら出来る」
一刀が真桜の肩に手を置く。
「ちょ!?」
「前に俺と春蘭が模擬戦をした時、速攻で作ったじゃないか」
「あれは材料があったからで……」
「あの時と違って材料は土だけだ。簡単だろ? 自分を信じてやってみろ。
駄目だったら俺も協力してやるから……」
「そこまで言われたら……仕方あらへんな……」
真桜が螺旋槍を持って螺旋撃を放ち、舞台を作った。
「はぁ…氣を使う技は疲れるわ」
「悪かったな。まあ夜まで休んでくれ」
それからリハーサルを行い、滞りなく順調に進み、ライブが始まる夜になり、ライブが開かれた。
「みんなー、盛り上がってる~?」
『おーーーーーーーっ!』
「まだまだ盛り上がって行くからねー!」
『おーーーーーーーーーっ!』
天和と地和の声に合わせて、観客が声をあげる。
「みんな大好きーーー!」
『てんほーちゃーーーーん!』
「みんなの妹ぉーっ?」
『ちーほーちゃーーーーん!』
「とっても可愛い」
『れんほーちゃーーーーん!』
観客達は完全に三人の虜となっていた。
「隊長、動き出しで……っ!」
真桜が一刀にそう告げる。
そして一刀はその姿を確認する。舞台裏の小屋の脇に怪しい人影を……。
「凪と沙和は?」
「二人とも動いとる! 隊長は万が一のために恋達と一緒にここで張っといて!」
「(いざとなったらクロックアップだな)分かった。任せる」
一刀はすぐに対応できるように既にカブトに変身しており、いつでもクロックアップできる状態にしていた。
真桜は舞台の裾から降りて、姿勢を低くして駆け出した。
「とりあえず敵は三人って言ってたが……」
実はその三人の怪しい人物はリハーサル中で確認済みだったのだ。
「観客達の目が舞台に釘付けになっている間に接近する魂胆か。だけど……」
「どうしたのでありますか?」
ねねが一刀に尋ねる。
「どうも腑に落ちない。敵が三人ならそれでいいが、もう一人くらい伏兵がいたらとか考えてな……」
「三人を囮にするということでありますか?」
「可能性は無いとは言えないからな……」
そうこうしているうちに敵である三人は逃げようとしていたが、凪達に追いつかれてしまった。
「抵抗は無駄」
「情報操作はうまいかもしれんけど」
「こっちの腕の方はまだまだなの!」
凪、真桜、沙和の三人に敵の三人は完全に追い詰められた。
「観念しなさい」
「おとなしく捕まれば、命だけは保証するさかい。けど、誰の差し金かは白状してもらうで?」
「……ふっ! ぐっ!」
追い詰められた敵達は気付かれないようにうすら笑いをした後、突然その場に倒れた。
「やられた……自害しよったわ」
「……だめなの。持ち物も身元が分かりそうなのがないの」
「なかなかの手練れだな。……とりあえず、隊長に報告しよう」
「そやな。邑の人に見つかると面倒や。山の中に隠しとこ」
「うん。分かったの」
凪達が急いで一刀のところに戻る。
凪達のやり取りは終始見ていた一刀は疑問に思った。
「あいつら……」
「?」
「凪達に見えないように笑いやがった」
「それが何か……」
「……と言うことは!」
一刀が舞台の正面で遠く離れた少し高い場所を見る。
「クロックアップ」
「Clock up」
一刀がベルトの腰にあるクロックアップのスラップスイッチを押す。
そして一刀は誰にも気づかれずに舞台を降りて、自分が怪しいと思った場所に行ってみるとそこには先ほどの三人とは別の三人が弓を構えて矢を放とうとしていたのだ。
「あいつらを囮にしてスナイパー的にあいつらを殺そうとしたか……」
クロックアップ中なので弓を構える敵三人は一刀の事には気付いていない。
一刀はすぐに弓の先にある矢を破壊した。
「Clock over」
それと同時にクロックアップが終わり、敵の三人は放とうとした矢がないことに気付く。
「なに!?」
「矢がない!」
「どういうことだ?」
「こう言うことだ?」
敵三人が一刀の存在に気付くが時既に遅し。
一刀は先ほど自害した三人のようにはさせまいとすぐに三人を気絶させ、自害させれないように三人の持ち物などを全て没収した。
そして一刀のところにはカブトエクステンダーが来て、三人を急いで運ぶことにし、またクロックアップで速攻移動して、舞台裏に戻って来た。
「隊長、どこに行ってたのですか?」
「隠れた暗殺者を捕らえにな」
「まだ居たのですか?」
「そのようでな」
「で、あいつら何者か分かった?」
「特定できるものは無かったからな。とりあえず華琳のところにさっき送り届けておいた」
「はやっ!」
「さすがクロックアップなの~」
「後は尋問部隊に任せればいい。それともう少し辺りを確認してくれ」
「分かりました」
凪達は再び辺りを見まわるが、怪しい人物は見かけられず、舞台は無事終了したのであった。
一刀は天和達帰る中、一人で思う。
(あいつら、まだ普通の兵達だったようだが、この先怪人が出てくるかもしれないな。気を引き締めないとな……。華琳のためにも)
そう決心する一刀であった。
おまけ
作者「さてと投稿だ」
一刀「昨日の今日でまた投稿か。速かったな」
作者「自分でも早く書けたなと思う。まあそのために大事な時間を少し削ったが…」
一刀「一体何を削ったんだ?」
作者「それはプライベートなことだから言えないが少しばかり大事なもんだな」
一刀「大事ならそれを大切にしろ」
作者「それとなもう一つ拠点物語を書き終えたが、これは明日にしようと思う。
そして最近だがある人に言われて書いて欲しいと依頼があった」
一刀「どんなことだ?」
作者「それは言えんし、とりあえずは話を聞いているが、完全に書くかどうかはまだ決めていない。少しは書く気だけどな…。
それでは…」
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基本的には真・恋姫†無双の魏ルートの話ですが、もしも北郷一刀が仮面ライダーの力を手に入れたらという妄想から生まれました。
そして流れも基本的に原作のままですが、仮面ライダーの力があるためセリフや一刀の態度が違うところや話そのものが大きく違うところも出てきたりします。
そのためそんなの嫌だという方は閲覧をご遠慮願います。