斬る覚悟はしたはずだった、けど足りなかった─────────
手にはまだ人を斬った感触が残っていた、とてもいやな感触だ
劉備や村の人は守れた、だけど俺は人を斬った事実で発狂しそうだった
心が押しつぶされそうな苦しみが胸の中を襲う
無意識のうちに、じいちゃんからもらったお守りを握り締めていた。
「・・・・・・・」
なにも言葉にできない、俺はしばらくうずくまったままだった。
──────────────────ぎゅう
とても暖かい感じがした、包み込むような暖かさだった
(・・・なんだ?)
俺は、なにがおこったと思い顔を上げてみた
「だいじょうぶ、だいじょうぶですから」
と言いながら劉備は俺のことを抱きしめていた。
─────────────────────────救われた気持ちだった。
抱きしめられ、大丈夫と言われ心が押しつぶされそうになっていたのが薄れていくようだった。
「・・・・・・」
しばらく無言のまま抱きしめられていた。
「さっきは、ありがとう助かったよ」
さっきのことでお礼を言うと
「変なお兄さん~、助けてもらったのは私達なんですから、こちらこそありがとうです♪」
俺と劉備は今さっき助けた人達を近くの村まで送っている所だ、抱きしめられた後劉備は少し赤面しながら「ご、ごめんなさいぃ~」とか言って村の人達の所に行ってしまってお礼が言えなかった
今は、俺のとなりを歩いている、本当にさっきは救われたあの胸に抱きしめられ・・・胸に・・胸に
胸・・・大きかったなぁ~・・・・・はっ!いかんいかん!こんなことじゃ!純粋な気持ちで感謝してたのに俺のばかばかばか!煩悩たいさーーーーん!
「あ、あのぅ~・・・」
「へっ?あ、えっと、なに?」
「いえ、なにか難しい顔して唸ってましたからぁ、何事かと思って」
劉備は心配そうな顔で見てきた
「あ、ああ、大丈夫、心配してくれてありがとう」
「えへぇ~、お兄さんさっきからありがとうばっかりだよ~、でもなにもないならよかったよぅ~」
満面の笑みでそういってきた。
うっ!かわいい!やばい、こっちまで顔がほころんできた。
二人で笑いながら村の人達と歩いていると、前方から誰かがやってきた
「桃香様ーーーーーーーー!!」
「お姉ちゃんーーーーーー!!」
一人は黒髪の女の子もう一人が赤い髪の小さい女の子
(・・・誰だ?あの子達?)
そんなことを考えていると
「愛紗ちゃんーーー!鈴々ちゃんーーー!」
と言いながら劉備が手を振っている
(劉備の知り合いか・・・ん?でも、確かあの黒髪の子が桃香って言ってた様な・・・あだ名かな?)
考えていると二人が俺達の目の前にまでやってきた
「桃香様!心配しましたよ!一人でふらふらといなくなってしまわれて!まったく、こちらの事も考えてください!」
「そうなのだぁ!お姉ちゃんは自由すぎるのだぁ!」
「がーん!鈴々ちゃんに自由すぎるっていわれたぁ~・・・ちょっとショックかもぉ~」
(ははっ、仲よさそうだな、あの二人はよっぽど心配だったんだな顔みただけでわかるな)
三人の仲のよさそうな光景見ていて気がつかなかった、小さい女の子がこっちを見ていた
「桃香お姉ちゃん、このお兄ちゃんだれなのだぁ?なんか服がキラキラしてるのだぁ!」
小さい女の子がこっちに指を指しながら言ってきた
「こら!り、鈴々!失礼じゃないか、指をさすんじゃない」
黒髪の女の子が慌てながら小さい女の子の手を降ろした
「こちらは北郷一刀様、私達が黄色鉢巻をした男達に襲われているところを助けてくれた天の御遣い様だよぅ~」
(いや、劉備は自分から立ち向かってたじゃないか・・・)
その言葉にふたりは驚いた顔をしていた
「あなたが管賂の言っていていた天の御遣いなのか?」
「お兄ちゃんが天の遣い様なのかぁ~」
(・・ん~~)
4つの目にまじまじと見られて少しムズムズする
「あれ?なんで、愛紗ちゃんと鈴々ちゃんがそのこと知ってるのぅ?」
「さきほど、桃香様を探しているときに管賂に出合ったのです、その時に聞いたのです、天より降りし流星はこの乱世を治めてくれる天の御遣いだと、いろいろな町や村で言いまわってるそうです」
「へぇ~、そうなんだぁ~てっきり私だけが知ってるのかと思っちゃった」
腕を組みうんうんと首を縦に振っていた
そこに黒髪の女の子が俺の前に来て
(うわ、かわいい)と変のことを考えてる俺に
「桃香様を助けていただきありがとうございます、北郷一刀様、我が名は関羽、字は雲長以後お見知りおきを」
「ありがとうなのだぁ、お兄ちゃん!鈴々は張飛なのだ!」
(・・・・・・・・・・・・・・・へ?)
えええええええええぇぇぇぇぇぇ!!
一刀は驚きにより天高く叫んでいた・・・
出会い2~旅立ち~
「!?関羽と張飛って、あの関羽と張飛なの!?」
驚き顔で二人に聞いてみる。
「どの、かは知りませんが、私の名は関羽です」
「あの張飛なのだ!」
・・・うそをついている雰囲気じゃないな、どうなってんだ?劉備も女の子だったし、関羽・張飛まで女の子って・・・・ははは、お兄さんビックリだ。
「はいはいー、自己紹介も終わったところで、私から提案があるんだけど、お兄さんに私達のご主人様になってもらおうと思うの」
・・・・へっ?ご主人様?ナニヲイッテイルンダコノコハ?ご主人様って〝あの〟ご主人様か!?
〝あの〟あのなのかーーーー!?
「桃香様!?それはいったいどうゆう―――――――」
「待って、愛紗ちゃん。まず、村の人達を送ってからはなそう」
「っ!え、あ、はい。そうですねわかりました」
(・・・すっかり忘れてたな・・・劉備がご主人様何て言うから・・・)
村の人達は俺達の会話が終わるまで待っていてくれた。
(返事が無い。ただの村人のよう――――――って待て!何考えてるんだ俺は!)
「出発なのだー!」
その声を合図に俺達は村に向かった。その途中、張飛が俺の隣に来て服の事や腰に差してある刀のことや、肩に背負っているバックのことなどいろいろ聞いてきた。(ちなみに、腰にあるのは和道だけ)
劉備も俺のとなりに来て、話を聞きながら「ほへー」的に会話に加わっていた。
関羽は俺達の少し前を歩き、時々こちらをちらちらと振り返っていた、話が聞こえるのか時折「ほー」などと呟いていた。
俺達は村に着き、村人達と別れた後店に入りさっきの話の続きを話していた。
「では桃香様、さきほどの話のことを・・・」
「あ、うん、それじゃあ」
劉備が姿勢を正して話す。
「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、私達は弱い人達が傷つき、無念を抱いて倒れることに我慢ができなくて、少しでも力になれるのならって、そう思って今まで旅を続けてきたでしょう?」
「はい」「なのだ」
二人が返事をする。
「でも・・・三人だけじゃもう、何の力にもなれない。そんな時代になってきている・・・・」
「・・・・」「・・・・」
二人は無言のまま何も言えなかった。
「確かに桃香様の言うとおり、官匪の横行、太守の暴政・・・・そして弱い人間が群れをなし、さらに弱い人間を叩く。そういった負の連鎖が強大なうねりを帯びて、この大陸を覆っている」
「・・・・」
その言葉に劉備は何も言えなかった。
「そうなのだ・・・三人じゃ、もう何も出来なくなっているのだ・・・」
俺は三人の話を静に聞いていた。
「でも、そんなことで挫けたくない。無力な私達にだって、何か出来ることがあるはず。
・・・だから、」
「・・・なるほど、桃香様のお考えがわかりました。」
「鈴々もわかったのだ」
(・・・なにが分かったんだろ?)
「北郷様!」
「は、はい!?」
「私達に力を貸してください!」
「ほわ!?」
ビックリして変な声を上げてしまった。
「天の御遣いであるあなたが力を貸してくだされば、きっともっともっと弱い人達を守れるって、そう思うんです!」
「戦えない人を・・・力無き人達を守るために。力があるからって好き放題暴れて、人のことを考えないケダモノみたいな人を懲らしめるために!」
(・・・なんて真っ直ぐな眼なんだ・・そういえばじいちゃんも言ってたっけ、力に依存するなって)
真っ直ぐな真っ直ぐな瞳。
その瞳を興奮から少し潤ませながら、劉備は俺の手を強く握り締める。
そこから伝わってくるのは・・・真心というものだろうか。
劉備の言葉やその表情と同じ、燃えさかる心の炎が、その掌を通じて俺の心に染み入ってくる。
本気で。真心から誰かの力になりたいと考えている、劉備の言葉は、逆らえないぐらいの迫力があった
「だけど・・・俺は君達が考えている、天の御遣い何て云うすごい人間じゃないよ?
さっきの人達を助けた時だって・・・いや・・・そんな人間が人を助けるなんてことできると思う?」
人を助ける守る。
言葉だけで言えば、それはとても簡単に聞こえるけど・・・
でも、それはとてもとても難しいこと・・・さっきだって・・・・くっ!
「確かにあなたの言葉も正しい。しかし正直に言うと・・・あなたが天の御遣いで無くても、それはそれど良いのです。」
「そうそう。天の御遣いかもしれないってのが大切なことなのだ」
「どういうこと?」
「我ら三人、憚りながらそれなりの力がある。しかし、我らに足りないものがある。・・・それは」
「名声、風評、知名度・・・そういった、人を惹きつけるに足る実績が無いの」
「山賊を倒したり賞金首を捕まえたりしても、それは一部の地域での評判しか得ることが出来ないのだ」
「そう。本来ならば、その評判を積み重ねなければならない。・・・しかし大陸の状況は、すでにその時間を私達にくれそうにもないのです」
「一つの村を救えても、その間に他の村の人達が泣いている。・・・もう、私達の力だけじゃ限界がきているんです」
劉備たちが話し終わり、
「だからこそ、天の御遣いという評判を利用し、大きく乱世に羽ばたく必要があるってワケか・・・」
確かに。この世界が三国志の舞台であった後漢時代ならば、そういった神懸かり的な評判は、劉備たちにとって大きな力になるだろう。
迷信や神様への畏怖ってものが、人の心に強く関係していた時代だ。
天の御遣いが劉備のそばにいる。・・・というだけで、人は劉備に畏敬の念を抱き、その行動を注視するようになるだろう。
注視するようになればこそ、劉備の行動に共感する人間や心服する人間が、飛躍的に増えていく。
それが知名度であり、名声ってものだ。
ただ――――――――。
(・・・いったい俺はどうしたらいいんだ?)
偶然とはいえ、この世界にやってきて帰る方法もわからない。・・・なら、今、目の前にいる、劉備、関羽、張飛って名乗っている女の子達に力を貸すのもいいかもしれない。
世に生を得る事は為すにありって、言葉じいちゃんが言ってたな
この世界に生を得たんだから、この子たちと事を為すのもいいかもしれない
「―――――――――」
大きく深呼吸した後、固唾を呑んで返事を待っている三人に向き直る。
「・・・わかった。俺でよければ、その御輿の役目、引き受けるよ」
「ホントですか!?」
劉備がうれしそうに言ってきた。
「だけど、少しの間だけ時間をくれないか?・・・しばらくこの世界を見て覚悟を決めたいんだ」
「覚悟ですか?」
そう。覚悟だ。この先絶対に避けては通れない戦いがかならずやってくるはずだから。
そのたびに、さっきの戦いみたいに、心が押しつぶされそうになっていては話にならない。
だから、この世界を見て・・・・人を守る覚悟。救う覚悟。そして人を殺す覚悟だ。
人を殺すということは、その人の人生を奪うということ。だから奪ってしまった人生を背負って立って歩けるほどの覚悟がないとこの先、生きてはいけないだろう。
「どうだろう?」
俺は三人の眼を真っ直ぐに見つめた
「わかりました、こちらのお願いを聞いてくださったんです。だから、私達も」
「それに、一刀殿の眼にはなにやら強い意志を感じる」
「うんうん、お兄ちゃんすっごい眼なのだ!」
三人がそれぞれの答えを返してくる。
「・・・ありがとう」
おれは、三人に感謝を込めてお礼を言う
「でも、なるべく早めに合流してくださいね。それまでに私達もやることやりますから」
「ああ、わかった」
俺達は決意もあらたに店をでた。
「さっきのおかみさんの話だとこの辺だよな?」
「はい、おかみの話によるとこの辺に桃園があるはずなのですが」
「それにしても、あのおかみさんいいひとだったね~」
「お酒っ、お酒っ、お酒なのだーーー!」
俺達は今、おかみさんに教えてもらった桃園に向かっている。
どうやらさっきの店での話を聞いていたらしく、応援しているよと言ってくれた。
大望を抱くあんたらの門出の祝いにご進呈だといって、酒までくれた。
(おかみさん、かっこよすぎだ)
ついでに言うと、おかみさんに「あんたらこの先、行くあてはあるのかい?」と聞かれ劉備が「まだ特に決まってないです・・・」というと「だったらこの村付近を治めている、公孫賛さまの所に行ってみたらどうだい?」と言ってきた。
「あっ!そういえば白連ちゃんがこのあたりに赴任するって言ってた!」と言ったときはガクッときた
関羽が「もっと早くに仰ってください」と言ったら「あぅ~」と落込んでいた。
もう一つ言うと、おれの呼び方が少し変わった。なんとご主人様だ。
そう呼ばれると少しムズムズするけれど、なれるしかなさそうだ・・・
そんなことを考えているうちに、目的地に到着した。
「おお――――――。」
一面に広がる桃色の世界。
「これが桃園かー・・・すごいねー」
「美しい・・・まさに桃園という名にふさわしい美しさです」
「ホントだな。・・・御苑の桜みたいだ」
「ほお・・・ご主人様の居た天にも、やはりこれほど美しい場所があったのですか。」
「咲いていたのは、桜だったけどね。すごく綺麗だったよ」
「雅だねぇ~」
などと、三人で風雅を楽しんでいると、
「さぁー!酒なのだぁ!」
わくわくした表情を浮かべた張飛が、俺の周りをクルクル走り回る。
「・・・約一名、ものの雅も分からぬ者も居るようですが・・・」
「あははっ、鈴々ちゃんらしいね~」
「らしいのかねぇ。・・・まぁいいや。みんな準備はいい?」
「うん!」「はっ!」「いいのだ!」
三人がそれぞれへんじをしてくる。
手に持った盃にお酒をそそぎながら、
「それにしても、自分があの有名なシーンに同席するとは思わなかったなぁ」
「どうかしたの?ご主人様」
「いや、いろいろとね。・・・感傷深いというか・・・」
「それより、お兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんは鈴々達のご主人様になったんだから、ちゃんと真名で呼んでほしいのだ!」
「ま、真名ぁ?・・・真名ってなに?」
「我らの持つ、本当の名前です。家族や親しき者にしか呼ぶことを許されない、神聖なる名・・・」
「その名を持つ人の本質を包み込んだ言葉なの。だから親しい人以外は、たとえ知っていても口に出してはいけない本当の名前」
「だけど、お兄ちゃんになら呼んで欲しいのだ」
「真名、か・・・・」
誰でも呼べるわけじゃない、特別な名前。
・・・それを俺に許してくれるってことは、それだけ俺が期待されているってことなのかもしれない
正直、天の御遣いなんて役をどこまでできるか・・・まったくもって自信は無い。
それでも。俺を信じてくれる人が居るのなら、精一杯その期待に応えたいと思う。
「・・・わかった。じゃあ、えっと・・・」
「我が真名は愛紗!」「鈴々は鈴々なのだ!」「私は桃香!」
「愛紗、鈴々、桃香・・・」
それぞれの真名を呼びながら、まっすぐに見つめる。
「何をすればいいのか、なにができるのか。・・・今の俺にはわからないけど、俺は君達の力になれればと、強く思う。」
「だから、これからよろしく!」
「じゃあ、結盟だね!」
「ああ!」
そんな俺をみていた愛紗が、掌で包んでいた盃を、空にむかって高々と掲げた。
「我ら四人っ!」
「姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは!」
「心を同じくして助け合い、みんなで力なき人々を救うのだ!」
「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」
「願わくば同年、同月、同日に死せんことを!」
「・・・乾杯っ!」
〝桃園の誓い〟
俺は戦乱に満ちたこの世界に一歩、足を踏み出した――――――――
旅立ち~旅人~
桃園で結盟した俺達は、ここで一旦別れることにした。
「それじゃあな、三人とも元気でな。俺もしばらくしたら追いかけるから」
「はい!」「わかったのだ!」「御意!」
三人がそれぞれ返事をする
「・・・・」
「・・・?どうしたの?愛紗ちゃん」
「・・・いえ別に・・」
「あー!わかったのだ!愛紗、お兄ちゃんと別れるのが寂しくなったのだな!」
「っ!り、鈴々!?なにを言う!私は別に・・・寂しくなどっ!・・・だなっ!・・・ただご主人様が心配なだけだ!」
愛紗が赤面しながら言ってきた。
「・・・愛紗はかわいいなぁ」
俺は微笑みながら愛紗の頭を撫でる。
「っ!!かわいいなどと・・・何を軟弱なことを・・それになぜ頭を撫でているのですかっ?」
「んーー、かわいいから、・・・いやならやめるけど」
「いえっ!いやじゃありません!・・・ただ・・・その・・・気持ちいいといいますか・・・暖かいといいますか・・・なにやら表現できない感情が・・・」(ポーーー)
「そっか、いやじゃないならよかったよ」(ナデナデ)
なんかこのまま撫で続けたら、別れたくなくなっていくような・・・・いかんいかん!(ぶるぶるっ)
首を横に振るい、撫でていた手をどかした。
「あっ!」
「え?」
「あっ!?いえ!?その!・・・なんでもありません・・・」
??、疑問に思っていた俺の腰に鈴々がしがみついてきた。
「鈴々の頭も撫でるのだ!」
「え?あ、ああ、・・・わかったよ」(なでなで)
「えへへ~、お兄ちゃんの手、大きくて暖かくてとても気持ちいいのだ♪」
「えー、鈴々ちゃんも愛紗ちゃんもずるいー、ご主人様、私の頭も撫でてー」
「あ、ああ」(なでなで)
「ホントだー、なんか暖かくてホッとするねー」
俺は二人の頭を撫でた後、
「愛紗、鈴々、桃香のこと頼んだよ。守ってやってね」
「はっ!」「まかせろなのだ!」
「ひどーい!ご主人様!、私だって二人のこと守るんだからね!」
「・・・ああ、分かってるよ。三人でしばらく頑張っててくれな、帰ってきたら俺も頑張るからさ!」
今度は三人の眼をしっかりと見ながら頭を撫でていった。
「はい♪、しっかりがんばって待ってますから!」
「鈴々も頑張るのだー!」(ガオーーー)
「ご主人様の言葉しっかりと胸に刻みました!」
「それじゃあ、またな!」
俺は手を振りながら三人に背を向け歩いていった。
「行っちゃったねー・・・」「行きましたね・・・」「行っちゃったのだ・・・」
一刀の姿はもう見えなくなるほど、遠くに行ってしまった。
「さ!私達は私達でがんばろっか!ご主人様がいつでも帰ってきてもいいように」
「御意!」「おーーーー!」
「とりあえず白連ちゃんのところに行ってみよっか」
「おかみが言っていた公孫賛殿の所ですね、わかりました」
「出発進行ーーーなのだ!」
三人は歩き出す、一刀との誓いを胸に秘めて・・・
桃香達と別れてから二日後、一刀にピンチが訪れる。
「・・・いかん、マジでピンチだ・・・」
なにがピンチってそれはもちろん・・・・腹だ。
「おなかへったぞーーーーー!」
あ、あぅ、あ、いかん、大声をだして少しフラッときた。ここまで腹が減るのもじいちゃんと修行していた頃以来だな。
俺よ、もう少し計画的に行動するべきだったな。そう、俺は今空腹と迷子になっている。
この世界にきたばかりの俺に、道など分かるはずも無く、おまけにお金もない。
川や森などがあれば、まだ食料を確保できるが俺が歩いてきた道は、一面荒野一色。
桃香たちと別れていきなりこんな試練がくるとはな・・・くっ!
いや、くっ!じゃねーよ!何カッコつけてんだ!俺のばかーーー!?
ああ、なんか腹減りすぎてテンションがおかしくなってきたな・・・・ん・・ん?
あれは・・・街か?・・・だめだ眼が霞む・・・でも間違いじゃないな・・・・あれは街だ。
よし、あと少しだ。がんばれ一刀・・・負けるな一刀!ファイトーー!!いっぱーーつ!!
・・・・・・・・あ、もうだめだ・・・・・・・・(ばたーん!)
俺は街の門の前で倒れてしまった。
「待ってよぉぉ~~、朱里ちゃぁん~・・・」
「雛里ちゃん、早く頼まれたお買い物終わらせて、私塾に行かないと遅れちゃうよー」
「でもぉ~・・・」
「わかった、だったら二人で手をつないで行こうー」
「・・・うん♪」
二人は水鏡という人の頼みでちがう街へ行くところだったが、そこの門の外に人が倒れているのを発見した。
「はわっ!?」「あわっ!?」
二人は驚愕した、街の門番の人に門を開けてもらって外にでたら人が倒れているんだから当然といえば当然である。
「はわわわっえっとえっと、大丈夫ですか!?」
「どう朱里ちゃん・・・息してる?」
「うん、息はしてるみたい、でも気を失ってる。・・・雛里ちゃん!門番の人を呼んできてもらっていいかな、この人と荷物を水鏡先生のところに運んでもらおう!」
「うんっ!わかった朱里ちゃん」
雛里は門番の人を呼びにいった。
「それにしても、この人見たこと無い服を着てるしなんだかキラキラしてる。それに・・・なんだか・・・」
(はわっ!?何考えてんだろっ私ったら!寝顔がかわいいなんて!?倒れてる人に失礼だよぉー!)
「朱里ちゃーん!門番の人連れてきたよー、・・・どうかしたの朱里ちゃん?」
「はうわっ!?なんでも、なんでもないよ雛里ちゃん!」
朱里と雛里は門番の人に水鏡先生の所に運んでもらうように言って、その後についていった。
「・・・・ん・・・ん・・・・ん?・・・・ここは誰だ?・・俺はどこだ?・・」
いやいやいや、ここは何処で俺は一刀だ、ははは、まったく何言ってるんだ?俺は。
「えーと・・・確か・・腹が減っていて街が見えてきて、それであと少しってところで倒れちゃったんだ・・・そして・・・?・・・本当にここ何処だ?」
俺はどこかの一室の寝台の上に寝ていた。・・・誰かが俺のことを見つけて運んでくれたのかな。
バックも近くにあり、腰に差していた(和道のみ)は壁に縦かけられていた。
キョロキョロと辺りを見ていると、
「おや、起きていましたか。よかった、ちょうど食事をもってきたところなんですよ。」
そういってきて入って来た人は、とても大人びたやわらかな女性だった。
「・・・あの・・俺はどうしてこんなところに」(ぐぅ~~)
会話を閉ざすように俺の腹がなっていた。
(・・・《カァ~~~~~》)と赤面している俺。
「ふふ、まずは食事を食べてからにしましょう。朱里、雛里、食事をもってきてもらえるかしら。」
「はわっ!?は、は、は、はい!?」
「あわわっ!?」
扉の影からこっそりとこちらを見ていた二人が走っていった。
(・・・なんだ?あの小動物みたいな子達は)
それから俺は、持ってきてもらった飯を食べながら、二人に「ありがとう」と言いながら頭を撫でた。
二人は「はわっ!?あわっ!?」となっていたが、しばらく撫でていたらポーーーっとなっていた。
(・・・なんだこの癒される感じは・・)
そんな俺達を大人びた女性は微笑みながら見ていた。
「ふぅー、食べた食べた。ありがとうございます、助けてもらったうえにご飯までいただいちゃって、本当に助かりました。・・・あの・・それで・・ここは何処なんですか?」
「ここは街の中心部から少し離れたところにある、私の私塾です」
「私塾?勉学を教えてるんですか?」
「ええ、それでこの子達に買い物を頼んだんですけど、その時にあなたを見つけたらしいんです。」
「そうだったんですか・・・」
俺は二人に向き直り、「ありがとうな」といいながら、また頭をやさしく撫でた。
「はわわわわっ!」「あわわわわっ!」とまたなっていた。
「あ、そうだ。まだ自己紹介がまだだったね、おれは北郷一刀。一応、天の御遣いってことになってるんだけど、よろしく」
そう言うと、三人は驚いていた。
「あなたが最近うわさになっている、天の御遣い様ですか・・・うそをつくような人物にも見えませんし、本当なのでしょうね」
「ててて、天の御遣い様でしたかっ!?そのような人に私達の料理を出してしまいましたー!?
はわわっ!?」
「しゅしゅ朱里ちゃん、あわわっ!?」
二人ともすごく慌てていた、大人びた女性は少し困った顔していた。
そんなふたりに、おれは
「大丈夫、とってもおいしかったよ」
と言い頭にポンと手を置いた。
「・・・ポーーーー」「・・・ポーーーー」
と二人がなってしまっていた。
そんなふたりを見て、大人びた女性が笑っていた。
「・・・あなたには不思議な魅力があるのですね、北郷様。・・・申し送れました、私、名を水鏡と申します。以後よろしくおねがいします。」
(ん?なんか聞いたことある名前だな・・・)
「ほら、二人とも自己紹介をしなさい」
「はわっ!?えとえと、しょ諸葛亮でしゅ」(がりっ)「・・~~~~・・~~」
「あわわっ!?あの・・その・・鳳統でし」(がりっ)「~~~ん・・・~~~~」
あ、二人とも噛んだな・・・なんか和むなぁ~
ん?諸葛亮?鳳統?・・・・まさかそれって・・・いやまさかな・・・ははは・・一応確認してみるか
「もしかして君達の字って、孔明に士元?」
「!?」「!?」「!?」
三人が驚く。
「すごいですぅー!なんでわかったんですか!?」
「あわわ!?・・・すごいですぅ、あたってます」
「すごいですね、北郷様。どうしておわかりになったんですか?」
あ、やっぱりそうなんだー、劉備、関羽、張飛に続いて、諸葛亮、鳳統まで女の子・・・
いったいどうなってんだこの世界は?有名な奴全員女の子なのか?
・・・まぁもうどうでもいいや、気にしないことにしよう・・・
一刀は疑問を一つ解決した(経験値があがった)
やったぜーーーー!!ってバカーーーーー!?
一刀は心の中で叫んでいた・・・
Tweet |
|
|
56
|
2
|
追加するフォルダを選択
乱世を生き抜いた英雄たちと一人の少年の物語