No.122302

異世界の天の御遣い物語5

暴風雨さん

乱世を生き抜いた英雄たちと一人の少年の物語

2010-02-04 01:38:13 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5850   閲覧ユーザー数:4358

守るための戦い

 

 

俺がこの街に着いてから一週間が経過した。

最初は天の御遣いと聞いてオドオドしていた、二人とも(諸葛亮、鳳統)今では大分仲良く話せるようになっていた。

寝床は水鏡さんの私塾の一室を借りて寝泊りし、お金が無いので街の店で少しだけ働かしてもらっている、街の人達も俺を天の御遣いだと知るとオドオドしていたが、「この兄ちゃんが天の御遣い?」ってな感じにあまり信じてなかった。俺としてはその方が少し助かっていた、あんまりガラじゃないし。

 

そんな日々を過ごしている時に、桃香達の噂を聞いた。

どうやら桃香達は、公孫賛の下で盗賊討伐の日々を過ごしているらしい、愛紗や鈴々達の武名も知らぬ者は殆どいないってまでになっている。

桃香たちは頑張っているんだなぁと思い、俺もそろそろこの街を出て旅の続きに行こうと思っていた、そんな日のこと、俺はあることで相談したく水鏡さんと話していた。

 

「北郷さん、なんですか相談と言うのは?」

「・・・・・・」

「・・・どうやら深刻な悩みのようですね」

俺は無言で頷いた、この一週間を一緒に過ごした程度しか知らないけど、この人なら悩みを聞いてもらえる気がして、俺は話をする。頼るようであれだけど誰かに聞いてもらいたかった・・・

 

「・・・実は」

この世界にやってきたときのこと、桃香たちを守るためとはいえ人を殺したこと。

ゆっくりと自分の言葉で心で。

人を殺した時の事を思い出したときには、罪悪感で苦しくなった。

覚悟だといってもやっぱりまだ俺は足りなかったらしい・・・

こんな話をするのは多分、許してもらいたかったんだろう、誰でもいいからあなたのやったことは正しいと、言ってもらいたかったんだと思う。桃香達と居るときにはこんな感情は出てこなかったけど、

街で過ごしているうちに、だんだんと思い返していた。あのときの自分は正しかったんだろうか?

もっと違う方法もあったんじゃないかって、だから聞いてもらった。

水鏡さんは、俺の言葉を黙って聞いててくれた。

俺が話を終えて、水鏡さんの口が開く。

 

「・・・あなたは人を殺したことを後悔していますか?」

「・・・・」

「では、その人達を守ったことを後悔していますか?」

「っ!・・それは・・・その」

「確かに人を殺すということは罪です。どんなことがあろうとも。でもだからって、それで守れたはずの人達を見殺しにするなんてことあなたにできますか?」

「それは・・・できません!」

強く言う。心に刻み付けるほどに強く。

「だったら答えは、もう出てるじゃないですか。人は万能じゃない、全ての人を助けることはできません。敵か味方か、それは一方的な見方でしかありません。けど、人はその一方的な見方でしか生きていけません。だから、あなたの力で守れる人達を守ってください。そして、殺してしまった人達の分まで生きてください。」

 

「・・・・・」

俺は無言で水鏡さんの話を聞いていた。

そうか、そう・・・だったな。なにやってるんだろうな俺は。

桃香たちに旅に出るって言ったときに、決めていたじゃないか。

背負う覚悟を。守る覚悟を。殺す覚悟を。

そういったもの、全てを受け止めなければ、人を助けるなんてことはできないって。

それをこの人に教えてもらった、ははっすごい人だこの人・・・

 

俺は瞼を閉じ、もう迷わないと心に決め水鏡さんに、

「ありがとうございました」

と深々と土下座をした。

「・・ふふっ、旅立つ前にお役にたててうれしいです。」

と微笑んでいた。

「!?・・・知ってたんですか、俺が出て行くの・・・誰にも言ってないんですけど」

「なんとなくそう思ったんです」

いやまじすごいなこの人・・・

「それで何時旅立つんですか?」

「今すぐに、行こうと思います。迷いはもうなくなりましたしね、それに約束がありますから、あんまりのんびりとはしてられません。」

「そうなんですか・・・寂しくなりますね。でも、がんばってくださいね」

「はい!」

「それで・・・その・・お願いがあります。」

水鏡さんが申し訳なさそうに言ってきた。

「お願いですか?」

「はい、その・・・朱里と雛里を一緒につれっ「水鏡せんせーーーーーー!」」

朱里と雛里が外から走りこんできた。

「どうしたんです、いったい?」

「あの、その、えと、んと」

「少し落ち着きなさい、朱里、雛里」

「は、はい!あ、あのですね!この街に賊が攻めようとしていましゅ!」

あ、噛んだ・・・って、え!?

「なんだって!?諸葛亮、鳳統それは本当なのか!?」

「は、はい!門番の人がこちらにすごい人数がくるって言ってました、おそらく盗賊かと」

「多分・・・一万人ぐらいだと・・・」

「街の人達は迎撃するようですぅ!」

と二人が言ってきた。

「それは大変だわ!朱里と雛里はここに居なさい!私は街の人達と一緒に出て迎撃します!」

「先生!?それは危険ですぅ!?やめてください!」

「・・・大丈夫、この街も朱里も雛里も守りますから・・・北郷さん二人をお願いします!」

と言い残すと水鏡さんは門の方に走って行った。

「せんせーーーーい!!」

 

「ど、どうしよう、朱里ちゃん!?このままじゃ、みんなやられちゃうよぅ・・・ぐす」

「そんなこといってもわたしにもわからないよぅ・・・えぐ」

と泣いている二人に、

「大丈夫、おれがみんなを守るから」

と笑顔で二人の頭を撫でた

「だからさ、泣かないでくれ、二人の泣き顔なんて見たくないからさ」

「・・・本当に助けて・・・くれるんですか?・・・ぐす」

「相手は・・一万人なんですよ・・・えぐ」

二人は信じられないのか、涙目になりながら聞いてきた

「約束だ、絶対助ける。だから・・・」

と言った瞬間、ガシッ!と胸の服をつかまれた。

「「お願いします、みんなを、えぐ、ぐす、助けてください!!」

「ああ、まかせとけ」

背中をさするように抱き、二人を落ち着かした。

「二人は水鏡さん達に、決して街の外に出るなって伝えてくれ!頼んだぞ」

「あ、一刀さん!?」

俺は、バックから三本の刀を取り出し腰に差し、門の外に向かった

 

 

「すごい数ね・・・」

水鏡の前には、一万の人がずらりと並んでいた。

それにたいしてこちらは、戦えそうな大人の男達で150人程度、負けるのは、めにみえている

でもだからって、みすみす食料やお金など盗られてはかなはない、だから最後まで抵抗しよう。

そう思っていた。そこに、

「せんせーーーい!!」

叫びながら二人がやってきた。

「朱里、雛里!?どうしてやってきたのです!?・・・?北郷さんは?」

「あの、そのことで話があるんです!」

二人は一刀に言われたことを伝えた。

「北郷さんが一人で戦うですって!?そんな無茶な!?」

「でも、一刀さん言ってました!ぜったい助けるって!だから私達、その言葉を信じたいんです!」

「・・・そうですね・・・北郷さんを信じてみましょう。・・・聞きましたねみなさん!ここは彼の言葉を信じて、街の外にはでないように!」

街の人達は動揺していた、それもそうだろう、普通に考えて一人で一万もの大群に勝てるはずも無い。

そんな動揺を押さえ込むように

「だ、大丈夫です!一刀さんならかならず、私達を救ってくださいましゅ!」

眼を潤ませながら、二人が叫んでいた。

 

 

 

「おお、それにしてもすごい数だな・・・」

俺は、腰に三本の刀を差しながら眼前を見る。

心はひどく落ち着いていた、ふしぎな感じだった。

本当なら人を斬りたくはない、でも、今目の前にいる奴らは、この町を襲い俺の大切な人たちを殺そうとしている。だから、俺はもう迷わない!〝大切な人を守るために〟

 

「よし!行くか!」

敵はもうこちらに向かってきていた、こちらが一人だと驚きはしていたが関係ないように突っ込んできた。俺は刀三本を抜き三刀流の構えをとる。

 

「〝艶美魔〟〝夜不眠〟!!・・・!〝鬼斬り〟!!」

技を使い、敵の中心まで突っ込んだ。

「うあぁぁ!!」「ぎぁぁぁ!?!?」「なんだこれ!?!?」

盗賊たちはかなり驚いていた、一撃でかなりの人数が斬られ吹き飛んだのだから当然だろう。

俺は中心で、

「三刀流〝龍巻き〟!!」

旋風を発生させ、敵を斬りつつ吹き飛ばす。

「おおおおおお!!」

「くそぉぉ!!」「うぎゃぁぁぁ!!」「ぐあぁぁぁっぁ!!!!!」

盗賊たちの叫び声が響いていた。

「三刀流〝豹琴玉〟!!」

極端な前傾姿勢で重心を前に置き、回転しながら豹の如く狙った獲物を襲うように一気に飛び掛る。

高速回転することにより破壊力は高まり、殺傷力を伴った旋風を巻き起こす。

そうして、おれは盗賊たちの中を技を使い、縦横無尽に戦っていた。

「なんなだよ!?こいつは!?化物だぁ!!もう半分くらいやられちまった!」

盗賊たちは恐怖していた、本来なら自分達が街の人間を恐怖におとしめようとしていたのに、まさか自分達がやられるなんて、思っても見なかったのだろう。逃げ出すものがどんどんとでてきた。

「わぁぁああ!?俺はもうごめんだ!?もう逃げる!盗賊もやめる!?」

半分からさらに半分逃げ出し、残るは2500人ぐらいになっていた。

「どうする?お前たちも逃げ出すか?もう悪さをしないと誓えるなら逃がしてやる」

「ふざけるなぁ!!俺達は盗賊だぞ!!物も盗らずに逃げてたまるかってんだよぉぉぉ!!」

「・・・忠告はしたからな」

俺は、和道十文字と雷切を鞘にしまい、天月に氣を流し力を込めた。

「これが最後の一撃だ!―――――――!!〝月牙天衝〟!!」

刃先から超高密度の氣を放出し斬撃を巨大化させて飛ばす。

黒い斬撃が盗賊たちを襲い、飲み込んでいった。

その後には、盗賊たちは居らずただ地面に斬り裂かれたような傷だけが残っていた。

「ハァ・・・ハァ・・ハァ・・ふぅ」

少しだけ疲れた、やっぱまだ〝月牙〟は使いこなせていないな。

「でも・・・守れたな」

俺は天月を納刀し、街に向かって歩き出した。

 

「一刀さーーーーん!!」「北郷さーーん!!」

と呼びながら、三人と街の人達がこちらに向かってきていた

俺はそれを笑顔で向かえ、一旦街へと戻っていった。

 

 

 

伏龍・鳳雛

 

街に戻った俺を待っていたのは、拍手喝采だった。

街の人達に「ありがとう」「助かりました」「あんたは英雄だ!」などなど、いろいろな声をかけられた、その時に、本当の意味で実感した。この人達を守った、と。

俺は涙を知らぬまに流していた、悲しいからじゃない、うれしいからじゃない、ただ単純にこの人達を守れて本当によかったと、心の底から思ったからだ。

 

「みんな・・・無事でよかった!」

そう言ったときに、後ろから誰かに抱きつかれた。

「っ!おっと・・」

「「一刀さ~~ん!!」」

「諸葛亮、鳳統!?」

「ふぇええぇぇえ~~~~・・・・」

と鳳統が泣きながら抱きつき、

「ぐす・・・一刀さん、無事で・・・よかったです!」

と諸葛亮が目をうるうるさせながら、抱きついてきた。

「心配させてごめんな、ほら、俺はこのとうり無事だからさ。泣かないでくれ、泣き顔は見たくないって言っただろう?だからさ、笑ってくれよ、みんな無事だったんだからさ」

頭をなでながら、落ち着かせるように言葉を言う。

「は・・・はい!・・・一刀さん、約束を守ってくれてありがとうございました」

「あぅ・・・えと・・・その・・・ありがとうございました」

「ああ、どういたしまして」

話しながらも俺は二人の頭をやさしくなで続けた。そうしていたらだんだんと二人が、

「ポーーーー」「ホーーーー」と少し顔を赤めながら俺を見ていた。

(うっ!なんだか・・・すごくかわいい!・・落ち着け俺!落ち着くんだ俺よ!)

なんだか撫でている俺が少し恥ずかしくなったので、撫でるのをやめた。

「あっ!」っと二人が声を上げた。

「ん?どうした?」

「いえっ!?その・・・なんでも・・・ないですぅ」

「・・・《じ~~~~》」

二人はなんだかいじけたように俺を見ていた

(ん?なんか、前にもこんなことあったような・・・)

そうして三人でじゃれあっていると、

「ふふっ、北郷さんも隅に置けないですね、みんなが見てる前で女の子に手をだすなんて」

と水鏡さんが話しかけてきた。

「手をだすだなんてそんな!?そんなことしてないですよ!?っていうか、今まで見ていたんだから冗談いうのやめてくださいよ!・・・ふぅ・・・ん?なんで諸葛亮と鳳統はがっかりしてるんだ?」

「いえ・・・別に」「なんでもないですぅ・・・」

二人は明らかにがっかりしていた。

「北郷さん、今回は街を救っていただきありがとうございます。助けてもらったお礼に宴にしますのでどうか楽しんでってください。」

「いえ!?そんな!?おかまいなく!」

「そういうわけにはいきません、これはお礼なのですから、受け取ってもらわなければこちらが困ってしまいます。」

ニコニコの笑顔で水鏡さんが圧力をかけてきた。

「うっ、・・・でも《ぐぅ~~~》あ・・・・《かぁ~~~》」

俺の腹よ!なぜこんなときになるのだ!?

その腹の音を聞いて、街の人達が大爆笑していた。

「ふふっ、遠慮しないで楽しんでくださいね」

「は・・・・はい《ガクッ》」

この日、俺は街で宴を楽しみ、その日の夜、みんなが寝静まった後、旅の支度をし門に向かった。

門番がいない代わりに、三人が見送りに来ていた。

なぜか朱里と雛里も旅の荷を持っていた。・・・え?なぜ真名を読んでるかって?

宴会の時に許してもらったからだ!呼んでくださいって言ってきたときの二人はマジかわいかった!

とそんなことじゃなくて、

「どうしたの?二人まで仕度して」

「はい!?あの・・・その・・・雛里ちゃんと一緒に考えていたんです。これからの大陸のことを。」

「・・・・・」

俺は真剣に二人の話を聞く。

「今回のことで、思ったんです。力の無い人達が悲しむのが許せないって、街の中でびくびくしているのが悔しいって。でも、自分達の力だけじゃ何もできないから今まで、勉学だけに励み何も行動をしてませんでした。でも、一刀さんに出会ってやっぱりこのままじゃいけないって思ったんでしゅ!」

「私達が学んだことを、誰かを守るために活かすべきなんじゃないかって」

「だから・・・その・・・私達を一緒に連れて行ってください!おねがいしましゅ!」

「おねがいしましゅ!」

真剣なまなざしで俺を見つめ、懇願してくる二人。

「そっか、すごいな二人は。・・・わかった!一緒に行こう!」

「「ありがとうございます!」」

ふたりは満面の笑みで応えた。そんな二人に、

「でも、残念だけど俺とは一緒に連れてはいけない。そこは先に謝っとく。ごめんな」

「え?《ショボ~~ン》」

二人はとても落ち込んでいた。

「一緒にはとは、どういうことです?北郷さん」

水鏡さんが聞いてきたので、説明する。

「えっと、二人には俺の仲間である劉備って子の力になってもらいたいんだ。きっといい軍師になると思うから。」

「劉備ですか、確か今は公孫賛さまの所に居ると聞いてますが?」

「はい、だから二人には公孫賛の所に行って俺の仲間を助けてもらいたんです、・・・ちなみに朱里と雛里も俺の仲間で大切な人だからな」

ふたりは顔を真っ赤にし俯いてしまった。そして、

「わかりました、一刀さんの頼みです!がんばりましゅ!」

「ましゅ!」

噛んでる噛んでる・・・あっ、そうだ。

「二人にこれを渡しとく」

「これは・・・・剣ですか?」

「ああ、和道十文字って言ってな、俺の愛刀だ、これをもって劉備に会えば俺の知り合いってわかると思うよ、後、水鏡さん、手紙書いてもらっていいですか?」

「?かまいませんが」

俺は水鏡さんに紙を渡し、桃香あてに手紙を書いてもらった。いわゆる推薦状だ。

「これを劉備に渡してくれ、俺からの推薦状だ。きっと仲間にしてくれるから。」

「は、はい!わかりました!」

話している間に水鏡さんは、馬を一頭引き連れてきた。そして二人を馬に乗せた。

「朱里、雛里、気をつけてくださいね。体を大切にね。」

「はい、水鏡先生もお元気で!」「ぐす・・・水鏡先生・・・」

雛里はすこし泣いていた。

「あの・・・ご主人様はこれからどうするんですか?」

「・・・ああ、もう少しいろんな街を見てから合流するよ!・・・・って今ご主人様って・・・」

「はわっ!?」「あわわっ!?」

そこのところを突っ込むと、二人は慌てていた。

「その・・・お嫌でしょうか?」「《じ~~~~~》」

二人は眼を潤ませ、訴えかけるように俺を見つめてくる。

(ううっ!?なんだこのビーム!?反則だろ!?)

「ううん、イヤじゃないよ。好きに呼んでくれ。」

《パァァァァ~~~》とても眩しい笑顔になっていた。

 

「それじゃあ・・・こほん・・・ご主人様、また後でです♪」「・・です♪」

「ああ!」

そういうと、二人は走り去っていった。

水鏡さんは、無言で涙を流し二人の背中を見ていた。

 

 

 

「さて、それじゃあそろそろ俺も行きますね。いろいろお世話になりました。」

俺はバックを持ち、腰に二本の刀を差し水鏡さんに向きなおる。

「いえ、こちらこそ助けていただいてありがとうございます。」

「それはもういいですって、お礼は受け取りましたしね、これでチャラです」

二人で笑いあっていた。

 

「それでは、またいつか会いましょう」

「はい、またいつか」

俺は背を向け歩き出した。

 

 

「行ってしまいましたね・・・」

独り言を呟く、ふしぎな魅力をもつ少年でした。

「あなたに、星々のご加護ありますように・・・」

 

 

 

街を守る三人組

 

 

水鏡さん、朱里、雛里たちと別れてから、三日が過ぎていた。

俺はというと、また道に迷っていた。こんなことなら、水鏡さんに頼んで地図をもらっておけばよかったと只今後悔している。だが、今回違うことは荒野ではなく森の中ということ。

だから食料もあまり困らない、川などで魚を採って食べたり、時々出てくる猪などを調理して食べていた。そして朝、俺は朝ごはんを食いながら、桃香たちのことを思い出していた。

 

「桃香たち元気にしてるかなぁ・・・」

と言葉がこぼれる。

「朱里と雛里はもう桃香たちにあったかなぁ・・・」

二人のことが心配でまたも言葉がこぼれる。

(・・・心配してても仕方ないか、さっさと旅を終わらせて合流しよう!)

俺はこの旅で一つのことを決めていた。

曹操の顔を一度見ておくこと、それがこの旅のついでの目的。

水鏡さんのところで、覚悟は決まった。後はこの世界で曹操はどんな奴なのかを少し知りたかった。

 

「さてと、腹もいっぱいになったしそろそろ行くか。もうちょい行けば森も抜けそうだ」

俺は川辺付近を歩いていた。

 

 

 

 

「ご主人様、今頃なにしてるかな~?」

「お兄ちゃんのことだから、のんびりしてると思うのだ」

「もし、のんびりしていたら、早く戻ってきてくださいと私が喝をいれてさしあげよう」

「あ、愛紗ちゃん~、こわいよ~」

「でも、愛紗の言うとおりなのだ!早く帰ってきてほしいのだ!」

「そ、それは私もそうだけどぉ・・・」

私達は今、義勇兵募集の真っ最中、最近出没している黄巾党を討伐してほしいと朝廷から白連ちゃんのところに使者がやってきた。その時に白連ちゃんが、これは桃香たちにとって好機なんじゃないかって言ってきた。だから私達はいまこの好機をものにして独立するために兵を募集している。

もっともっと多くの人達を守るために。白連ちゃんは私達が兵を募集するのを少し困っていたけど、

星ちゃんって言う女の子が助け舟を出してくれて、募集させてもらってます。

そんなある日のこと、二人の女の子が私達を訪ねてきた。

 

「あ、あの!?りゅ、劉備さんでいらっしゃいますか!?」

「は、はい・・・私が劉備ですけど」

「なんだ?お主たちは」

「あわっ!?その・・・あの、私達、一刀さんに言われてここにきたんです・・・」

「なに!?ご主人様が!?」

「はわわっ!?は、はい、そうです」

といいながら、女の子が剣と紙を渡してきた。

「ん、なにこれ?剣と手紙?・・・・・・・・あー!これご主人様が腰に差していたやつだ!」

「それでそれで、手紙にはなんて書いてあるのだ!?」

「う、うん・・・読むよ、えーと・・・」

手紙には、街で起こったこと、盗賊のこと、この子達のこと、そしてご主人様のことが書いてあった。

「・・・ご主人様もがんばっておられるのですね」

「でも、道に迷っちゃうなんてお兄ちゃんもバカなのだ!」

ニシシと鈴々ちゃんが笑う。

「鈴々ちゃん、笑っちゃかわいそうだよ。・・・それにしても、一万の人達をやっつけちゃうなんてご主人様はやっぱりすごいね~」

「はい!」「鈴々だって負けないのだ!」

「それじゃあ、諸葛亮ちゃんに鳳統ちゃんでいいのかな?」

「はい、えと、その、名前が諸葛亮で真名が朱里って言います、朱里って呼んでください。」

「あの、んと、名前が鳳統で・・・真名は雛里って言います」

二人が真名を許してくる。

「ありがとね、二人とも。私の真名は桃香っていうの、これからよろしくね!」

「私は愛紗という、よろしく頼む」

「鈴々は鈴々なのだ!」

私達も二人に真名を許す。

「はい!桃香さま、愛紗さん、鈴々ちゃんよろしくです!」

「よ、よろしくです・・・!」

「さて、自己紹介が終わったところで仕事だね、もっともっと多くの人達を守れるようにがんばろうねみんな!」

「はっ!」「おーー!」「御意です!」「は、はい!」

こうして私達に新しい仲間ができた。

 

(・・・ご主人様、私達がんばっているよ。・・・だから早く帰ってきてね。)

 

 

 

「ハ、ハ、ハックション!・・ず~~、水浴びすぎたかな」

今、おれは川で服を洗濯した後に、体を洗っていた。

「そろそろ上がるか・・・」

川を上がり、燃やしてあった焚き火の方にいき、暖まる。バックからタオルを取り出し、私服に着替え洗った洗濯ものが乾くまで待っていた。しばらくし、服が乾いたな~と思いバックに片付けていると

川から人が流されてきた。なにしてるんだろう?と思いよく見てみると、その人は血だらけだった。

 

「!?《バシャバシャバシャ》おい!しっかりしろ!?」

その人を引き上げ川辺に上げ横にする。見た感じこの人はもう助かりそうになかった。

「おい!?誰にやられたんだ!?俺の声、聞こえるか!?」

それでも俺は声をかけた、この人を助けることはできないけど、最後を看取るくらいはできるから。

「う・・・・あ・・・・・街が・・・」

「街がどうしたんだ!?」

「街が・・・・黄巾党の・・・・やつら・・・に」

その言葉を最後の息を引き取った。

「街は助けるから・・・ゆっくり眠ってくれ」

俺はこの人の墓を作ってから、川辺を走り、森を抜け、目の前に見える街に向かった。

 

 

「真桜ちゃんー!たいへんなのー!西側の防柵がやぶられそうなのー!」

「なんやて!?あーアカン東の防柵も二つ目まで破られてもうてるし!」

「おちつけ二人とも、まだすべて破られたわけじゃない」

「せやけど、破られるのも時間の問題やで!」

「そうなのー!」

「この近くに曹操さまが来ていらっしゃるという情報がある、そして曹操さまを探してくるようにとさっき街の者を向かわせた、だから後しばらく持ちこたえれば、来てくれるかもしれない。

 もし見つからなくて来なかったとしても、三人力を合わせて頑張って守ろう。」

「凪・・・」「凪ちゃん・・・」

「わかったの!沙和がんばるの!」

「よっしゃ!いっちょがんばってみるか!」

「ああ!」

三人で決意していた、その時、黄巾党が群がっているところが吹き飛んだ。

「なんだ!?」「なんや!?」「なんなの!?」

と驚いていると、街の人がやってきた。

「楽進様、李典様、于禁様!」

「どうした!?なにがあったのだ!?」

「はい!それが、黄巾党の後ろから一人の男が現れて、黄巾党をやっつけています。」

「ひ、一人やて!?」「無謀なの!?」

「くっ!誰だか知らないが助けに行くぞ、沙和、真桜!」

「はいなの!」「たくっ、無茶しすぎやで!?」

三人は黄巾党が一番多い、北の門に向かった。

 

 

 

「ん!見えたな!・・・人数は約7500人って所か」

走りながら、人数を数える。

「なんか人が西と東にも見えるな、三方から攻められてるのか、・・・だったらまず一番多いところから倒していくか!」

よし!行くぞ!俺は氣を練り、足に流し加速した。

 

「・・・ん?後ろからなにか来るぞ・・・!?みんな、誰か攻め込んで《ブシャ~~》」

男は血を噴出し死んでいた。

「!?なんだ貴様!?」「軍人か!?」「一人だぜ!やっちまおうぜ!?」

などいろいろと言っていた。

「・・・おい、なんでオッちゃんたちは人の痛みがわからないんだ?」

戦う前に、聞いてみた。

「俺たちだって痛みぐらいしってたさ!でも、街が襲われ、何もかも奪われたとき、朝廷や馬鹿の太守どもはなにもしてくれなかった、こうするしか生きていけなかったんだ!!」

「だからって、オッちゃんたちのやったことを許すわけにはいかないよ・・・」

「うるせーー!てめぇになにがわかるんだよ!?」

と叫びながら向かってきた、だから俺は、

「・・・ごめん・・・」刀に力を込め、その人を斬った。

それを合図に一気に向かってきた。俺は手に持っていた雷切と鞘から抜いた天月を構え、

 

「二刀流〝鷹波〟!!」

斬撃の波を発生させ、向かってきた人達を斬り飛ばした。

「こいつ、つよいぞ!?」「囲んでやっちまえ!!」

みんなで俺を囲んできた。俺はその場で高く飛び上がり、

 

「〝飛天無限斬〟!!」

上空から地面に刀を叩きつけ、その衝撃と土石で吹き飛んでいく

「うぎゃ!?」「ぐへ・・ぐ」「うあああ!?!?!」

次々にバタバタと人が倒れていった。

俺の技を見て怖くなったのか、男達が

「おい!なにしてんだ!まだ街にに入れねえのかよ!?」

「それが門の前に街の奴等と三人組がいてなかなか入れねぇ!!」

「何《ザシュ》だ・・・《どさっ》」

「ひぃぃぃ!?」

「あんたら、さっさとあきらめて逃げたほうがよくないか?・・・できれば逃げてほしい、襲われた街の人達には悪いが人は本当なら斬りたくない・・・」

「う、うるせーー!いまさらひけるかぁぁぁぁぁ!?!?」

 

天月を鞘にしまい、俺は氣を性質変化させ、前方に水の膜を作る

「時雨蒼燕流 特式 十の型 〝燕特攻〟!!」

水をえぐりながら、相手を斬っていった。

「なっ!?水をだしやがったぞ!?」「こいつ妖術使いなのか!?」「こんな奴にかてるわけねぇ!?

みんな逃げるぞーー!!」

 

 

「ふぅ・・・逃げたか。・・・しかし妖術使いか・・・似てるっちゃ似てるのかな?」

と言っていると、前方から三人組が近づいてきた。

「助かりました、ありがとうございます」「兄さん、ホンマたすかったわ!」「ありがとなのー!」

「ああ、どういたしまして・・・それより、三人とも怪我はない?」

「はい、私達は大丈夫です。・・・街の者が負傷者と死者が出てしまいましたが・・・・」

「そうか。もっと早く来れなくてごめんな・・・」

「そんなことないのー、お兄さんが来てくれなかったら、全員やられてたの!」

「そやで、こっちは感謝しとるんやから、兄さんが悲しそうな顔するなや!」

「ん、ありがとう」

「なんであなたがお礼を言っているのですか?」

「いや、励ましてくれたし、元気でたから」

「そうですか、ふふっ」

俺たちはその場で笑いあっていた。

 

 

 

「これはどういうこと?」

街の者が街が黄巾党に襲われてるから、助けてくれと言ってきたので、軍をここまで走らせてきたというのに、そこには誰も居らず、四人組が笑っていた。

「桂花、確かにこの場所であっているわよね?」

「はい、華琳様。街の者が言っていた事が本当ならこの場所で間違いないはずです。」

「だが、黄巾党などおらんではないか!」

「落ち着け姉者・・・よく見てみろ、戦いの跡がある。・・・おそらくだがあの者達が追い払ったのだろう」

「そういうことになるわね。・・・それにしてもあれだけの人数でよく追い払えたわね」

「どうしますか?華琳様」

「そうね、あの者たちと話をする。みな、ついてきなさい」

「はっ!」「御意!」

誇り高い少女が一刀に近づいてきていた・・・

 

 

 

 


 
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