厳しい寒さが過ぎ、少しずつ春の装いが見え始めたころ北郷一刀は窮地に立っていた。
「逃げるでない!」
「いやだぁぁぁぁ!」
叫びも空しく、大量の粒が一刀の体に襲いかかる。
「ぎゃぁあああ!」
なぜこうなったかというと・・・・・・・
「だいぶ暖かくなってきたな」
「そうですね、そういえば一刀春を前に何か行事がないの?」
「そうだな・・・・・・節分なんてどう?」
「節分?ですか?」
「そう、豆を投げて鬼を追い払うっていう行事なんだけど」
身振り手振りで豆を投げて追い払うジェスチャーをする。
「面白そうですね、色々と考えてみましょう」
「冥琳?なに考えてる?」
「いえ、何もありませんよ、何も・・・・・」
「なんか、いやな予感がするんだけど?」
そのことに関して、何も言わず何処かへ行ってしまった。
「ねぇ~一刀、市に行きましょう?」
「いや、降りたら冥琳にまた怒られるぞ」
「大丈夫よ、今回は冥琳からのお使いだもの」
「め、冥琳が雪蓮にお使い・・・・・」
「あ、失礼しちゃうわ!私だってお使いぐらい・・・・」
「いつか俺が頼んだのじゃなくて、酒を買ってきたのは誰だったけ?」
目が激しく泳いでいる。
「まあ、どうせ俺と一緒にという条件付きってとこだろ?何を買いに行くんだ?」
「今回は・・・・・おかしいわね、豆だけよ冥琳ったら忘れてるのかしら」
「そうか、いや、多分それでいいんだろ」
事情を知っている一刀と事情を知らない雪蓮、若干雪蓮がムスッとしたが一刀と久しぶりに市に降りるということで、そのようなことはすぐに何処かへ行ってしまったらしい。
「早く行きましょ!」
すぐに手を引き行き始める、その後ろを上から見ている冥琳、なにか面白い事があったのか口元には笑みが浮かんでいる。
「冥琳、買って来たわよ~」
「あぁ、助かった、それではここにいておいてくれ」
「そう、で、何をするの?」
「それは夜までの秘密だ」
「もう!私にだけ教えてよ!」
「だめだ、雪蓮に教えたらどこまでも広がっていく恐れがある」
正論なため、言い返すことができない雪蓮はそのまま何処かへ行ってしまった。
「さて、一刀には手伝ってもらわねばな」
ようやく夜も更け。
「全く、人が楽しく酒を飲んでいるというのになんじゃ」
「もーせっかく一刀のとこへ遊びに行こうとしてたのに~」
「あ、ああの、まだ政務が残っているのですが・・・」
口々に不満を言うものの中、冥琳と一刀が出てきた。
「ちょっと!冥琳これから何をするの?」
「節分と言って、天の国の行事があるそうだ、そこでだ、こんなものを考えてみた」
第一回、北郷一刀争奪豆まき対決
ルールは簡単、一刀により多くの豆を当てたものの勝ち
豆の量は一定量とし、拾う行為は禁止する
勝敗は一刀がつけるため、不平はなし、制限時間は半刻
勝者には一日中一刀を自由にできる権利を進呈する
何も聞いていない一刀は顔を青くして、逃げて行った。
「それでは、豆まき対決開始!」
全員が豆が入った桶を掴むと一刀を追いかけて行った。
「さて、私も行くか」
最後に残った桶を掴むと動き始めた。
「一刀!覚悟するのじゃ!」
放たれた豆は弾丸よろしく、壁にめり込んだ。
「ちょ・・・・祭さん!手加減・・・・・」
豆を掴んでいる間に追いついた雪蓮の豆が襲いかかる。
「うわっ!」
なんとか回避する一刀
「待ちなさい!」
後から次々と豆が襲いかかる。
なんとか命からがら、逃げた先に居たのは冥琳だった。
「め、冥琳・・・・・」
「おや、一刀ではないか」
「そ、それじゃ!」
「逃がすわけがない!」
振り返った瞬間に足をかけ転ばせると同時に桶に入っていた豆をすべて一刀にかける。
「あ~!冥琳が!」
「この勝負、私の勝ちのようだな」
不敵な笑みを残し、何も言えずにいるのを尻目に一刀を引っ張って行った。
「それでは、今日は・・・・・って、その格好」
「ど、どうだ?鬼をイメー・・・・・・きゃっ!」
「め、冥琳・・・・・」
某うる星の○ムちゃんの恰好をしている。
「優しくぅ・・・・・やさしくして・・・・・」
すべてを委ねる冥琳、それに覆いかぶさる一刀、そうして夜は更けていく。
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忘れられてるかと思いながら、期待を裏切る投稿をしてしまいました、非常に申し訳ないです。