「汜水関の将は華雄一人のようです。洛陽への一番乗りをするためには戦力の温存が大事、
今回の汜水関攻め、劉備と公孫賛になったことは願ってもないことです。」
進軍中の曹操さまと桂花のやり取り、どうやら斥候が戻ってきたようだな。
「ならばその情報、劉備と公孫賛のところにも送ってやりなさい。」
「・・・・よろしいので? 」
「公孫賛は借りを借りと理解できる人物よ、劉備もこんなところで死なれては困るしね、それと衛生兵を何名か劉備に送りなさい」
衛生兵を送ると聞いて桂花は驚いていたが、俺は特に驚きもしなかった。なぜならば無駄に兵を死なせたくないという曹操様の考えがわかっているから、ならば俺が話をしに行ってみよう、下手に断られたら兵が死ぬからな
「では、劉備のところへは私が行きましょう。」
俺がそういうと秋蘭がキュっと袖をつかみ「・・・昭・・・」と本気で心配してくる
「大丈夫だ、こんなところで殺されたりしないよ、そんな馬鹿は相手だってしてこないだろう?」
秋蘭の手をとり頬を撫でる、撫でた手に手を重ね目を瞑り困った顔をする。大丈夫だよ、心配しすぎだ
「劉備と話したいのね?いいわ、行ってきなさい、その代わり護衛をつけること」
「はい、ありがとうございます曹操様、一馬、着いて来い」
「はい兄者、姉者お任せください、必ず守ります。」
一馬の言葉に一応の安心を見せてくれた、さて劉備との話し合いだ、一馬に持たせた七星宝刀を使って・・・・
「一馬、耳を貸せ」そういと耳を寄せてくる、話した内容に驚き「ええ?できませんよっ!」などと返してくるが「兄の頼みだ」と笑いながら頭をガシガと撫でると、しぶしぶと言った感じで了解してくれた、これで面白くなる
「すまないがここが劉備殿の陣営か?」
そういってサイドテールの美しい黒髪の女の子に話しかける、この子は多分関羽だな青龍偃月刀か、演戯だかなんだかすでにごっちゃだな・・・・・・。
「あなたは・・・・・・もしや三夏の御使い?」
御使いってのはよく言われるからわかるが、さっきから三夏ってのはなんなんだ?
「えっと、悪いんだがその三夏ってのは何なんだ?皆そう呼ぶのだが」
「ご存じないのか?曹操殿の下には三人の有能な側近がいると、夏候の三人、曹武の大剣、智勇の剛弓、慧眼の御使い、すなわち三夏と」
まったく、随分と噂だけでかくなってるな俺だけ、俺には慧眼なんて無いのになぁ
「俺はそんなんじゃないよ、他の二人は当たってるが、ところで劉備殿にあわせてもらえないかな?」
そういうと顔をにこやかにして「何の誤用でしょうか?」と聞いてくる、ああ~めんどくさい顔してるなこれは、疑いと建前の笑顔だ、まあいいか、そう大して気にせず不用意に前に進む。
「まて、何用だと聞いている、それ以上進むならばっ」
と武器を構えるが、それをみて武器に手をかける一馬を制し、お構いなしに前に進む、あまりに不用意に近寄ってくるためかそれとも斬ることを迷っているのか後ずさる
「待てと言ってる、それ以上進むなら不審者として斬るっ!」
殺気も出さずにそんなこと言われてもな、そんなことを考えながら目の前まで来ると「・・・あ」と声を漏らすが気にせず肩に手を置き微笑む
「そんな殺気も出さずに睨まれても怖くないよ、それより劉備殿はどこだい?」
「あ、あなたは怖くないのか?殺気が無いからと言って斬らぬとはかぎらんのだぞ?」
なにが?と言った顔をすると後ろから「ごめんなさい、うちの愛紗ちゃんが」と劉備殿が駆け寄ってくる
「ああ、良かった劉備殿に面会をお願いしていたところです、劉備殿は良い将を従えておりますね」
「え?あ、ありがとうございます!そうなんですよ~!愛紗ちゃんはとってもたよりになるんですよ~!」
といって顔をほころばせる、面白い子だなと俺は少し笑ってしまうと「え?私何か変なこといいましたか?」と表情をころころ変える、犬みたいだなこの子は
「申し訳ない、それよりもお話がありますので良かったら天幕でお話をさせていただけませんか?」
「それは重要なお話なのですね?」と横に居た諸葛亮が聞いてくる
俺はうなずき、「ではこちらに」と劉備に案内される、その後ろから複雑な顔をして関羽がついてくる、あの子は生真面目なんだろうな、柔軟性が無い所は春蘭に近いかも・・・・
「さて、ようこそいらっしゃいました、でも曹操さんのところからわざわざ来ていただけるなんてどんな話なんですか?」
「その前に名乗らせていただきます。私は夏候昭、こちらは義弟の劉封です。」
そう名乗ると「わ!私と同じ劉性だね!よろしくおねがいします!」と劉備は一馬に話しかける
「ではこちらも、私は劉備、こっちは義妹の関羽、そしてこっちが軍師の諸葛亮です。よろしくお願いします!」
紹介を受けた関羽と諸葛亮は頭を下げる、それを俺は目礼で返し持参してきた干し柿を渡す
「これは?柿みたいだけど、干からびちゃってますよ~」
「それは干し柿と言うものです、どうぞ召し上がってみてください」
そういうと関羽は「桃香様、このようなもの食してはなりません!」と言うが「ええ~せっかくだし~」とごねる。なんというか、ずいぶんとゆったりとしてると言うか、気が抜けるなここは
「うう~ん、あぐっ!もぐもぐもぐ・・・・あ、あまーーーーい!!きゃーー凄いよこれ!!!」
反対を押し切って口に入れた劉備殿はあまりの甘さに叫びだし、無言でパクつく
その様子を見た関羽と諸葛亮は恐る恐る口に運び驚きの声を上げる、どうやら気に入ってもらえたようだ
「気に入っていただけて何より、では話しの方なのですが劉備殿は何故今回参加された?」
その言葉に諸葛亮はピクッとわずかであるが反応する
「はい、私達は洛陽の人達が困ってると聞いて、私達の出来ることがあればと参加をしました、皆が苦しんでいるのをほおっては置けないですから」
「なるほど、それは良いことです。しかしそれだけでこれほどの義勇兵をそろえるとは、よほど徳があるのでしょうな劉備殿は」
俺の言葉に誇らしげに関羽が答える
「その通りだ、だが桃香様は徳だけではない、かの中山靖王、劉勝の末裔だ!今回の参加も国を思ってのことだ」
「なるほど、それは天子様の一大事となれば参加するが当然、義勇兵も集まると言うことですね?」
当然だ!と言うように胸をはり、こちらを見据えてくる。やはりそこは同じなのだな、ではそれが崩れたらどうだ?
「ふむ、奇遇ですね、私達のほうにも劉勝の末裔が居るのですよ」
そう返すと劉備は、え?といった顔をして「でたらめを言うな!」と言う関羽の声が返ってくる
「私の義弟は劉封、同じ劉性で劉勝の末裔、そして劉封の話ですと今残っている末裔は自分ひとりだと」
そんなばかな、と言う顔を関羽がして劉備はえ?え?と言った感じで混乱している、そんな中で諸葛亮が一人こちらに眼を向け
「劉勝は元々、孫も含め120以上の子供が居ました、ですので一人だけとはいえませんし桃香様は証として宝剣「靖王伝家」を所持しています。ですから其方の方の言葉は信憑性にかけます」
そういうと劉備殿はうなずき自らの剣を抜いて見せてくれる
「ふむ、それも奇遇ですね、一馬も同じものを持っている、みせてさしあげろ一馬」
一馬は腰に携えた七星宝刀を抜き出す、劉備殿の剣に比べればこちらは装飾が美しく、しかも北斗七星をあしらった宝玉が埋め込まれている
「道教の北斗星君、死を司る剣、これこそが劉勝の末裔としてふさわしい「靖王伝家」であると思いませんか?それと今は持参してはおりませんが代々伝わる家計図もあります。その中に劉備と言う名はありませんし、失礼ですがお父様やお母様の名は?」
そこまでいうと劉備はますます混乱しあわて出す、そして側にいるの諸葛亮までもが「はわわわわわ」とあわて出す
「そ、そんなのはでっち上げで嘘かもしれんではないかっ!!桃香様は本物だ!大体その剣の証明など誰ができようっ!」
言ってしまったか、俺はそう思うと口の端が上がり、それに気がついた諸葛亮は「あ!」という顔をする
「確かに、でっち上げの嘘かもしれない、だがそれを言ったら劉備殿もそうなってしまう、劉備殿を誰が証明できるのだ?」
そういうと、うぐっという声を漏らし固まってしまう
「劉備殿、あなたはこの戦いで名を上げ何を求めるのですか?お答えください、でなければ偽者であると兵達に話をしましょう」
「貴様っ!!」そういうと関羽は武器を構えこちらを睨んでくる、さっきとは別人、必殺の殺気を込めて言葉を放つ
「いいのか?ここで私を切れば劉備殿は諸侯に殺されるだろう、客人に無礼を働いた反逆人として」
関羽の武器をもつ手は怒りに振るえるが頭が回らないわけではない、歯軋りをしながら武器を下ろす。俺のここまでの話で何をしようか悟ったのか諸葛亮は口をパクパクさせている、それを見て人差し指を自分の口にあてる
「わ、私は、皆が幸せに暮らせるように、皆が涙を流さぬように、この大陸を平和にしたいっ!それが私の願い、そしてそれを実現してみせるっ!」
やはり毒か、そのために兵の家族の流す涙が見えないようならな、そこまで聞き俺はもう耐えられないとばかりに噴出す。後ろで見ていた一馬は「兄者~」と呆れ顔でうなだれる
「ハッハッハッハッ!すまんすまん!劉備殿、実に良い理想だ、だがそのためには力をつけなければな、だまして悪かった、一馬は元は劉性ではないよ、それにこれを曹操様から預かってね」
劉備たちはあっけにとられているが構わず木管を渡す、これには斥候からの情報が全て入っている、それを受け取ると諸葛亮が中を開き「良いのですか?」と聞いてくるので
「借りを作っていおいたほうがよさそうでな、俺は人を見る目だけはある、何といっても慧眼の御使いらしいのでね」
そう返し、また笑い出す。それをみて劉備殿と関羽はほっと胸をなでおろしあきれた顔になる
「ああ、あと我らの衛生兵を置いていくよ、義に集まった兵たちを死なせるのは心もとない」
「衛生兵?それはどういったものですか?」
諸葛亮が疑問半分、興味半分といった顔で見てくる
「ああ、五斗米道を受け容れた時に作った部隊で、俺の親友の弟子達だ、戦場で負傷者の治療を行う、だから兵士の死傷者は減ると思う、兵を無事に帰してやってくれ」
俺の言葉を聴くと三人は驚く顔を見せ「いいんですか?お兄さんっ!!」と劉備殿が言ってくる
「構いませんよ、曹操様に許可は取りました」と答えると頭をぶんぶんと下げて何度も御礼をしてくる
「いいんですよ、それよりも力を付けてください、曹操様も期待しております。」
そういうと一馬を連れて天幕をあとにしようとすると、槍を携えた美しい女の子が出口に立っていた
「あ、あなたはっ!あの時は危ない所をありがとうございました。」
一馬はその女の子に頭を下げると、「かまわんさ、無事でよかったな」と言われてこちらを振り向き
「私の義兄です。兄者、こちら前に曹操様が駆けつけていただいたときに賊から救ってくれた方です」
と紹介してくる、その名は趙子龍、あの趙雲か!!俺は彼女を見た、なるほどこの子も智勇を兼ね備えているさすが劉備の陣営だ、優秀な将がそろっている、しかも一馬の命の恩人か
「そうでしたか、義弟に代わって礼を言います。いつかこの恩はお返しいたします。」
「いや、礼などにはおよばんさ、私はただほおっておけなかっただけだからな」
その言葉に頭を下げ、天幕を後にした。クックック!まさか英雄、趙雲に会えるとはな、見たところ俺の歴史の趙雲と近いようだ、駄目だな劉備、関羽、諸葛亮と出会ったんだ、心が高ぶってる切り替えなければ
これで劉備は簡単には潰れないだろう、それと兵も無駄に死ぬことは無くなった、とりあえずは良しと言ったところか?曹操様に報告せねばな、きっと聞かれたら笑うだろうな・・・・・・・・・
「朱里ちゃん、あのお兄さんに試されちゃったね」
「ええ、桃香様。あの人は本当の御使い様ですね、桃香様と同じで底の無い優しさ、噂にたがわぬ慧眼」
「朱里よ、桃香様と同じく優しいとはどういうことだ?衛生兵などこちらに貸しを作りたいだけではないのか?」
「いいえ、愛紗さん。遠まわしではありますが警告してくれました。今のままでは民を殺す、力を付けろ、劉勝の末裔など
薄っぺらなものに頼るなと。」
Tweet |
|
|
113
|
26
|
追加するフォルダを選択
董卓連合その2ですちょっと短めです
今回は天幕の話だけです、進みはゆっくりです
読んで下さる方、さらにお気に入りやコレクション登録、
コメントくださる皆さん、応援メッセージを入れてくれる方
続きを表示