「はい、性は典、名は韋、真名は流琉です、よろしくお願いします」
そういって曹操様に礼をするのは季衣の親友、典韋こと流琉だ、前々から友を呼んだという話をしていて、町で迷った挙句、料理屋で働いていたところを一馬たちが見つけたらしい、どうやら料理の腕は相当のもので、曹操様に披露したときはその腕を絶賛された、こんなことは珍しいことなので皆たいそう驚いていた。
「ええ、これからは私のことを華琳と呼びなさい、料理の腕もそうだけど、その武力も期待しているわ」
「はい、精一杯がんばりますのでよろしくおねがいします。」
言い終えると礼儀正しく頭を下げる、なかなか出来た子らしい、見たところ季衣とは春蘭と秋蘭の関係のように見えるな
「曹操様、流琉ほどの腕があるならば少し試したいことがあるのですが」
こちらに目を向け「何かしら?」と話を促してくる
「ええ、これなんですが先ほど屋敷から取ってきたものです」
手渡すのは干し柿だ、この時代の中国には渋柿は棄てるだけだ干して食すという考えは無い
「?・・・・・柿?のようだけれど、周りが白くて、腐ってはいないようね」
そういって眉根を寄せる、俺は同じものを季衣と流琉にもわたす
「ええ、渋柿を干したものです。どうぞ食してみてください」
曹操様は、恐る恐る口に運び、入った瞬間
「ん!あまいっ!凄く甘いわっ!どういうこと?これは渋柿よね?」
驚いた顔を向け私は「良かった、お口にあって」と胸をなでおろす、横を向けば季衣と流琉がパクパクと無言で口に運んでいる
「はい、柿は干すことによってその甘さは砂糖より甘くなります、周りの白いものは糖分の結晶、ですからこれを流琉に・・・・」
「これを煮出して砂糖を取るのね?いいわ、これで砂糖の価値もずっと下がって流通しやすくなる」
曹操様は、そういうとまた食し始める、随分と気に入られたようだ、俺は曹操様の反応に満足して流琉のほうを向く
「ええ、兄さま!是非これで新しい料理を作らせてくださいっ!砂糖を取り出す方法も研究します!」
「ああ頼むよ、期待してる、ところで何で俺は兄さまなんだい?」
そういうと顔を赤くして「季衣のお兄さんのようなので、いやですか?」といってくるので俺は頭を撫でながら「かまわないよ、妹が増えて俺もうれしいよ」と答えると赤い顔のままうつむいてしまう、恥ずかしがりやだな、この子はなどどつい笑顔になる
「失礼します、曹操様、王允と言う方がお見えになっており、面会を求めております。」
急に一人の兵士が入ってきてそう告げる
「王允殿が?解りました、応接室へ案内して頂戴、春蘭、秋蘭、昭ついてきなさい」
「御意」そう答えると季衣と流琉の頭を一なでして後を追う、王允殿が来るということは董卓暗殺の相談か?
「おお曹操殿、申し訳ない、急に面会になど来てしまって、だがことは急を要するのだ、何進大将軍が宦官に殺されてしまった」
「王允殿、落ち着いてください、それで天子様はどうしてらっしゃるのですか?」
「天子様は今、宦官達の傀儡となってしまっておられる、そこに董卓様が現れて洛陽の民たちを宦官から守り安定に導こうとされている」
???どういうことだ?董卓といえば残虐の限りを尽くした暴王だったはずだが?俺の知識とは変わってきてる、俺が介入しすぎたか?王允殿の暗殺も演義だろう?とにかく赤壁まで無事に進んでくれなければ大陸に平穏がおとずれない
「そこまでは解りました、では王允殿は私になにを望まれるのでしょうか?」
「はい、是非とも董卓様をお救いくだされ、あの方はお優しい方です。ですが今の流れでは諸侯は董卓様の圧制により洛陽が乱れ、民が苦しんでいると檄文が飛ぶはず、全てを董卓様の責にして、特に袁紹殿の性格からしてお分かりになるかと」
それを聞くと曹操様はなにやら考え込んでいる、そうだろう、そんなことをすれば下手をすると全ての諸侯を相手にすることになる今の私達では無理だ、曹操様が「王允殿、悪いのだけれども・・・・・・・・」そういうと「ああああ・・・」と崩れ落ちる
「悪いのだけれども、洛陽には攻め入らせてもらうわ。だけど我らが必ず一番先に洛陽に入り董卓殿を保護します。」
曹操様はそう言葉をかけると崩れ落ちた王允殿の手をとる、ああ、私は何と優しく気高い王の元にいるのだろうか
「ああぁぁ、ありがとうございます、それで十分にございます。このご恩は忘れません、そうだ!これをお納めください」
王允どのは大事に背に背負った剣を曹操様に手渡す。
「これは七星宝刀といいます。私の家に代々伝わる宝剣です、どうかお納めください」
「ええ、これは綺麗ね、七星の形に宝玉が剣にあしらってある、わかりました、この剣に誓いましょう、必ずや董卓殿を救うと」
王允殿はその言葉を聴き安心したのか大きくため息をつき、「私はこれより身を隠します。なにとぞよろしくおねがいします」と言い董卓の素性を話すとその場を去った、そして春蘭と秋蘭を部屋から出すと曹操様は
「ここに座りなさい、そっちを向いて」
そういって座った私の背に背中合わせに座り寄りかかってくる、ちらりと見えた横顔は小さいときに良く見せていただいた顔だ、疲れている、そういった弱い顔
「・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ゆったりとした時間が流れる、昔から近くにいて、私だけに見せてくれる疲れた、いやだ、といった弱い顔・・・・・・・・だからこそ、支えなければと思う、この身を懸けて、そんなことを思っていると
「・・・・・・・・あのね?これあげるわ、この剣、私には合わないし」
私には、この剣にある信が重いの、いやなの、だからあなたがもっていて、そう聞こえた
「・・・・・・はい」そういって剣を受け取ると「・・・・・・・ありがと」そういって立ち上がる
立ち上がったその横顔はいつもの通りの気高い王の顔があった
数日後、袁紹からの檄文が届き、そのまま軍議となる
「来たか、諸侯はほとんどが参加をするようね。桂花」
「は、参加されることはもう決まっておりますので準備のほうは整っております。
これほどの英傑が集うことはそうそう無いでしょう。王允殿の話が無くとも参加を進言しておりました。」
「そうね、ではこれより出撃、迅速に諸侯と合流し洛陽をめざします。」
「「「御意」」」
さて今回も一馬を連れて行こう、劉備に会えるはずだきっと、このままではもしかしたら劉備は消えてしまうかもしれないからな、曹操様のためにも死なれては困る、俺は屋敷へと脚を向けた
ー反董卓連合ー
「兄者、この剣本当に私がもらってもよろしいのですか?」
一馬は先ほど渡した七星宝刀を握り見せてくる
「ああ、無くすなよ、俺はどうせ剣は持たせてもらえないからな秋蘭に」
「その通りだ、今回の出撃も本当は反対したのだが、華琳様にお前が言ったのだろう?行きたいと」
背後にそっと近寄ってきた秋蘭に少し不満な顔をされる
「ごめんな、諸侯の顔を見ておきたかったんだ、俺の力はこういうときに役に立つからな」
そうだろう?というと秋蘭は肩に顎を乗せてきて「解るが嫌だ」とすねられる
ううぅ、帰ってから甘えてくれ、ここでは我慢してるんだから俺だって
「ようこそいらっしゃいました曹操様、陣の方はそちらにお願いします。それと袁紹様がすぐに
軍議を開くとのことですので、本陣までお願いいたします。」
袁紹からの使いの兵士が曹操様に告げる
「ええ、それでは凪、沙和、真桜は陣の構築、桂花はそこの諸侯が来ているかを
早急に調べておいて」
「御意」
「私は麗羽のところに行ってくるわ。春蘭、秋蘭、昭ついてきなさい」
「「「はっ!」」」そういって本陣に向かう、さてやっと中心的な英雄達に会える、ククククッ
やっぱりだめだ、こんな時だってのに楽しみでしょうがない、さてどんな人物たちなのだろう?
「おーほっほっほっ!おーほっほっほっ!」
「久しぶりね・・・・・・麗羽、相変わらず耳障りな笑い声ね」
そういうと曹操様は眉根を寄せて苦笑いを浮かべる
「よう麗羽、久しぶりだな?前にあったのはいつだったか?」
「ああーっ!あなた、まだ華琳さんのところになんて居ますのっ?いいかげん私のところに来て働いてはどう?」
本当に相変わらずだな、小さいときとぜんぜん変わらんぞ
「何言ってんだ、俺は曹操様に臣下の礼をとってるからいけるわけないだろ」
「きぃー!相変わらず生意気ですこと!それに曹操様ですって?ならばわたくしの事も袁紹様と呼びなさいっ!」
「まったく、麗羽が曹操様と同じく真名で呼びなさいっていったんだろ?お?斗詩、久しぶりだな」
隣でキーキー言ってる麗羽を無視して斗詩に話を振る、麗羽はあんまり相手にするとてがつけられなくなるからなぁ
「お久しぶりですお兄さん、この間、黄巾党のことを中央に話しに来て以来ですね」
「ああ、今回はよろしく頼む、猪々子、金返せ」
「げっ!兄貴ぃ~!かんべんしてくれよぉ~!この間また使い切っちゃったんだよー!」
「文ちゃん!またお兄さんにお金借りたの?」「ごめんよ斗詩~」なんて言ってる周りでは集まった人達の視線がいたい、この辺にしておいて話を進ませないと、そう思い麗羽に話を促す
「麗羽、皆が麗羽の話を心待ちにしてるぞ、俺も久しぶりに麗羽のかっこいいところが見たい」
「?!おーほっほっほっ!よくわかってらっしゃること!それでは主要な諸侯は集まったようなので
まずは知らない顔も多いでしょうから、まずはそちらから名乗っていただきますわ!華琳さんはさいごですわよ!びりっけつに着たんですからっ!
曹操様も毎度のことだとあきれながら「はいはい」と返す
「・・・・幽州から来た公孫賛 だ、よろしく頼む」
「平原群からきた劉備です。こちらは私の軍師の諸葛亮 」
あれが劉備と諸葛亮 かもう合流してるんだな
「涼州の馬超だ、馬騰は五胡の動きが活発でここにはこられないんだ、名代としてここに参加することになった」
「袁術じゃ、河南をおさめておる。まあ、皆しっておろうがの!ほっほっほ」
あの子も相変わらずだな、さすが麗羽の従妹だ、麗羽がもう一匹居るようなもんだ、それよりあの隣、あれが孫策か、孫堅はすでに死んでいると聞いたが、さすがは小覇王だな目が獣の目をしている
「次、びりっけつの華琳さん、お願いしますわ」
「・・・・・典軍校尉の曹操よ、こちらは我が軍の夏侯惇、夏侯淵、夏侯昭よ」
そこで周りからざわめきが起こる
「あれが三夏・・・・・・・夏侯淵の夫は確か天の御使いだぞ・・・・・・・道理で袁紹殿の真名を・・・・・・・・」
なんだか随分と有名なようだ、中央に顔を出しすぎたか?後は適当に人物評で来た人間が流したか?まあ仕方が無いか、人物を集めるのに随分と動き回ったしな、しかし皆女の子だな、やれやれ
結局、会議は最初の関、汜水関まではの経路は街道、関付近の土地で陣営を広げ
劉備が調査、偵察を公孫賛、ついでに公孫賛が汜水関を攻撃、最後のほうに麗羽が
仕切るとか何とか言っていたがまあそんなのやりたがるのはあの二人くらいだろうな
どうでもいいが
「で、昭、どうだったの?あなたの眼から見て諸侯は」
「はい、気になるのは孫策と劉備、公孫賛ですね」
「はぁ?あなたなにいってるの?目腐ってるんじゃない?」と桂花が罵るが気にしない、これはわからないだろうからなぁ
「孫策と劉備はなんとなくわかる気がするけれど、公孫賛は?器が大きいようには見えないのだけれど」
そういって曹操様は俺に疑問を投げかける
「ええ、そうでしょうね、ですがあれは万能人、万能ゆえに隙など無いでしょう。ですから恐ろしい、ただ惜しいことに彼女は良き将に恵まれていないので」
「そう、確かに公孫賛は不得手の無い人間だし、万能人か・・・なるほどね、それで後の二人は?」
「はい、孫策は獣の目をしております。あれは勘に頼る戦い方をするでしょうが、あの手の人間は勘が外れることが無いので手ごわいでしょう」
曹操様はうなずき確かに「獣が檻に閉じ込められているように感じるわ」と同意した
「それと劉備ですが三つあります、徳の大器、偶像、遅効性の毒」
「毒?・・・・・・・どういうことかしら?」
「情報によると、よほど徳があるのでしょう。彼女達の兵は全て義勇兵、見たところ今回の連合は理想を掲げ参加しています。参加している兵は普通の民でしょう、民は理想という名の偶像を崇拝し、気がついたときには理想という毒が全身に回り民を殺していく」
曹操様の少し顔がこわばる、怒っていらっしゃるようだ、あたりまえだ理想で奇麗事だけで人を巻き添えにして殺すなど、全て理想通りにいくのならばならば、こんなにも優しい方が、苦しみながら王の道を歩むことは無いのだから
「曹操様とは対極に位置するかと、ですが孫策はどちらかといえば曹操様と同じように見えます」
「面白いわね、その劉備とやら、理想だけでどこまでいけるか 見せてもらいましょう」
そういうと凛とした顔をして、まっすぐに前を見ている、もしかしたら少し期待しているのかもしれないな曹操様は、全ての民が傷つかないならば劉備に屈することも頭の隅にあるのかもしれない、だが俺はそれを良しとしない、必ずや曹操様を天下人に、そう約束したのだから
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いよいよ董卓連合に突入しました。
一気に書き上げてるので目が痛いです><