No.121961

isolation game~5~

瑞音さん

隔離された空間に閉じ込められたレイ。脱出するにはそこで行われている隔離された試合で勝たなくてはならない――

5話。スズラとの決戦

2010-02-02 03:24:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:719   閲覧ユーザー数:714

 こん。

 音と同時に走りながらスズラの方を深く見つめる。スズラは一瞬のうちに銃を抜き出す。先程と同じ戦法。しかし、それを目で追っていた俺は刀の先をその銃弾が飛んでくるであろう場所に合わせる。

 親指よりも太い刀の切っ先を銃弾に合わせるのは簡単な事だった。もう、これらは自分の手足以上なのだから。

 とにもかくにも合わせた俺にスズラの声が飛ぶ。

「そう、そこに撃つつもり。けれど、これは麻痺毒弾よ?切り裂いたところで、毒が飛ぶだけよ」

 けれど、俺は切っ先を逸らさない。だって初めからそんなの分かってたから。

「はい、じゃあ、一寸違わず貴方の刀の刀身に打ち込んであげる。はい、どーん」

まっすぐに刀に飛び込んでくる。そして一瞬後。ころん。それは、丸い弾丸の形をしたまま床の上にそっと落ちた。切り裂かれてもいなければ、割れている訳でもない。微かに何かがかすったあとがあるだけ。

 静寂。

 そして。

「どういうこと……?」

 困惑した声。スズラのものではない。オズ姉のものだ。しかし、スズラはキッと俺を睨んで言った。

「タネは分かったわ。物理的に不可能に思える方法だけどね」

「多分、それ正解。俺も失敗すると思ってた」

「そういう態度がイライラするのよね!もういい!再開よ!」

「ぇと、私にも説明」

オズ姉がおずおずと……シャレじゃなく本当にそう尋ねると、スズラがぴしゃりと返した。

「このバトルが終わったらね!」

 どうやら防がれたのが嫌らしい。早くバトルを再開したいようだ。

 オズ姉はまた先程と同じ開始動作を――ボールを上にあげる。

 こん。

 走り出す。

 先程と違うのはスズラもまた走り出しているという事。

 そして、ガキィイン。辺りを渦巻く空気の層を一括するような激しい音が鳴り響いた。

 スズラの槍の先端と俺の刀の先端が見事に合わさっている。しかし、右頬に小さな痛み。小さく切れているのが分かる。わずかに麻痺するかもしれないが、すぐに決めれば問題ない程度の麻痺。

 そしてスズラも左頬に小さな血のあと。俺がやった。このくらいの怪我ならあとなんて残さないでオズ姉は癒し魔術を使える。

 戦闘に戻ろうとするが刀と槍ががちり、と密着していて動きが取れない。だから、その刀を床に落としながら鋭く後退。同時にスズラも同じことをやっていたようで今は離れた距離で互いをけん制し合う。少なくとも、刀を取りに行く暇は与えてくれないらしい。

 だから

 互いに短剣だけを持って飛び込んだ。神速で。青水晶と緑水晶が閃きながら、執拗とも思えるように相手を追う。

 美しく繊細に。時に大胆に。閃光は相手を追い求める。

 

 オズは、その光景を見ながら、少しだけため息をつく。

 透明感のあるエメラルドカラーとサファイアカラー。そこに、両者の黒い髪が美しく光る。スズラの長い髪は長く緩く踊り出す。レイの短い髪は、汗が光ってキラキラと踊り出す。

どこまでも美しい輝き。

自分より下の子たちがこんな光景を生みだすのだ。

「私も頑張らなきゃなぁ」

その言葉はその美しい輝きをつくりだす二人には聞こえない。オズは小さく笑った。

 そして、それから少したち、輝きは消えた。

 

 はぁはぁと荒い息をつきながら俺はスズラを見た。自分の短剣が彼女の細い首元に添えられている。

「俺の勝ちッ」

ニッと笑って言う。

「あぁ、完敗ッ!」

スズラも笑って言った。

 

オズ姉が、笑いながら頬に出来た小さな傷を治癒してくれる。その光は暖かくて、気持ちよくて。だから、気づかなかった。入口から斬撃が飛んできたことに。


 
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