No.121683

真・恋姫無双アナザーストーリー 雪蓮√ 今傍に行きます 第6.3話

葉月さん

個別シナリオ今回は雪蓮です
一刀に対して積極的になれない雪蓮の悩みが明らかに!
そして、今後の展開はどうなっていくのか!
2010/01/31:誤字修正&本文ちょい修正
2010/02/01:誤字修正

2010-01-31 23:11:24 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:9197   閲覧ユーザー数:7153

真・恋姫無双アナザーストーリー 

雪蓮√ 今傍に行きます 第6.3話

 

 

 

【雪蓮の悩み】

 

夢、夢を見ている……

 

そこは一面赤い荒野が広がっていた

 

その中に一人立っている少女が居た

 

「はぁはぁ、あは、あはははははははははは!」

 

(もっと……もっとよ!私を奮い立たせなさい!)

 

「ひっ!ば、化け物だ!」

 

「ふふふ、あなたはどう私を楽しませてくれるのかしら?」

 

「ひーーーー!た、助けてぐぇ!」

 

「はぁ、はぁ」

 

(ダメだ、体の疼きが止まらない……もっと、もっとよ)

 

「策殿!」

 

「……さ、い」

 

「もうあらかた片付きましたぞ」

 

「そう……なら、戻るわよ」

 

「御意……」

 

「はぁ、はぁ、熱い……熱いよ――……あ、れ?」

 

(なんで冥琳じゃなくて――を思い出したんだろ……)

 

「策殿?どうかなさいましたか?」

 

「はぁ、はぁ、なんでもないわ、行くわよ」

 

「はっ!」

 

「はぁ、はぁ……――~、――~」

 

「策殿……」

 

――ジリリリリ……

 

「はぁ~……」

 

雪蓮は部屋のベットの上で溜息を吐く

 

「こんな夢見るなんて、もうそんな時期なのかな……やだな~、また来たのか」

 

雪蓮は起き上がりカレンダーを見た

 

「はぁ~学校行きたくないな~」

 

(きっと皆あんな私を見たらひくよね……)

 

雪蓮にはある種の病気を抱えていた

 

それは半月に一度必ず発作が起こるというものだった

 

しかもただの発作ではなく体中が熱くなり近くに居た人に襲い掛かってしまうというものだった

 

それもあり、小、中、高校と友達は出来たことは無かった

 

そして、高校に入ると同時に雪蓮はこの発作のせいで友達を作ることを止めてしまっていた

 

しかし、転機は訪れた、高校3年になると同時に親の転勤によりこの地に引っ越してきた雪蓮には優未や一刀という友達が出来ていた

 

「ふふふ、あんな私を見たら優未や一刀はどう思うかな……」

 

雪蓮は自傷気味に笑った

 

「また一人ぼっちになっちゃうのかな……」

 

雪蓮は机の引き出しから紙袋を取り出した

 

「確かに鎮静剤は貰ってるけど、効き目が出るまで時間がかかるのが難点よね」

 

「先生にも言われたっけ、『もしかしたら一生付き合わなければならないかもしれない』って……」

 

カーテンを開けると朝日が部屋を照らす

 

「なるようにしかならないか、みんなに避けられたとしても……」

 

(でも、一刀と優未に避けられるようになったら……)

 

(ううん、一刀は外見だけで人を嫌うような人じゃないわ、優未だってそうよ、笑って何事も無かったように接してくれるはずよ)

 

雪蓮は一瞬くらい顔をしたが頭を振り考えを振り払った

 

「やめやめ!朝から暗くなってどうするのよ!さぁ、着替えて学校に行かないとね」

 

雪蓮は制服に着替え朝食を食べるためにダイニングへと向った

 

「おっはよ~、雪蓮」

 

「重たいわよ優未」

 

学園に着くなり後ろから優未が背中に抱きついてきた

 

「ひどい!私デブじゃないもん!」

 

「はぁ、そう言う意味で言ったんじゃないわよ、それより早くどきなさい」

 

「は~い、雪蓮のけち~」

 

優未は口を尖らせて文句を言いながら雪蓮から離れた

 

「ん?またお弁当作ってきたの?」

 

「え?ま、まあね~、一個も二個も対して変わらないし」

 

「の割には随分と眠そうね?」

 

「えへへ~ちょっと頑張って早起きを」

 

「まったく、体壊すんじゃないわよ」

 

(最近、優未は一刀に対して積極的になってきたわね、私も一刀ともっと仲良くしたいけど……)

 

幸せそうな優未を見て雪蓮は一瞬、暗い顔をしていたが優未は気づいていなかった

 

「ん?雪蓮どうかしたの?」

 

「なんでもないわよ、ほら、早く行かないとホームルーム始まるわよ」

 

「待ってよ~、私を置いていかないで~~」

 

雪蓮を追いかける優未

 

「ねぇ雪蓮、なんかあったの?」

 

「え?何にも無いわよ、なんで?」

 

「ん~、なんだがいつもと違うような気がして」

 

「そんな事無いわよ、気のせいよ」

 

(普段通りに接してるつもりなんだけどな、優未って結構鋭いわね)

 

「何か悩みがあるなら言ってね?私たち親友なんだし♪」

 

「え、ええ、そうね」

 

雪蓮は曖昧な返事しか出来なかった

 

(言えるわけ無い、言ったら優未だってきっと……)

 

過去のトラウマからなのか雪蓮はそのことをあまり語りたくは無かった

 

「ん~、ならいいけど……」

 

優未は空気を察したのかそれ以上追求はしなかった

 

「よーし!お昼だーーー!」

 

チャイムが鳴り、勢いよく立ち上がった優未だが

 

「おっと残念、音無、あなたは寝てた罰として資料を片付けなさい」

 

「えええー!横暴だ!」

 

優未の抗議に歴史担当の担任教師の目が光った

 

「ほほう、他の教科ならいざ知らず、担任である私の授業に寝てたんだ、文句は言わせないわよ」

 

「うぅ~」

 

「ふふふ、頬を膨らませてもダメなものはダメよ」

 

「ちぇー、雪蓮」

 

「いやよ」

 

「えーーーーー!」

 

「自業自得でしょ?ほら、早く行かないと一刀、パン買っちゃうかもよ?」

 

「それはダメーーーー!雪蓮!先に北郷君の所に行って阻止しておいて!」

 

「阻止ってあんたね……」

 

「お願いだからね!」

 

優未はお弁当と資料を持ち走り去って行った

 

「……はぁ、まあ良いけど、さて、私も行こうかな」

 

雪蓮はお弁当を持ち一刀が居るであろう購買部に向っていった

 

「さてと、今日は何に……あれ?」

 

「あ、居た居た、一刀」

 

購買部に着き、パンを買おうとしていた一刀は入り口に雪蓮が居ることに気がついた

 

「雪蓮、こんな所でどうしたんだ?」

 

「あなたを待ってたのよ」

 

「えっと……なんで?」

 

「それはね、優未に頼まれたからよ」

 

「あれ、俺、優未さんに何かしたかな?」

 

「違うわよ、とにかくこっちにいらっしゃい」

 

「あ、でも俺、パンを……」

 

「いいから来なさい」

 

「ちょ!引っ張らないでくれよ雪蓮!自分で歩くから!」

 

雪蓮は一刀の手をとり購買部とは逆の道を歩き出す

 

「えっと……」

 

雪蓮がつれて来たのは前に一緒にお昼を食べた場所だった

 

「ここで待ってなさい、直ぐに来るから」

 

「ああ、それは良いけど……ん?」

 

(ドドドドドドドドドド)

 

「来た見たいね」

 

「と、う、ちゃーーーーーーく!はぁ、はぁ、はぁ、お待たせ!」

 

優未が地響きと供に現れた

 

「ゆ、優未さん、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫、だよ、それよ、り、北郷君お、お昼まだだよね、すぅー、はぁ~」

 

優未は息を切らせながら一刀に問いかけた

 

「まだだけど」

 

「それじゃ、これ食べて!」

 

「え?!いいの?」

 

「うん、どうせ、私のお弁当のあまりだから」

 

「そういいながら、自分のがあまりだったりして」

 

「し、雪蓮!そんなことないもん!本当にあまりだもん!」

 

「あら、そうなの?ならそう言うことにしておいてあげるわ」

 

「も~、ほんとなんだから!」

 

「はいはい、ほら、食べちゃいましょ」

 

「なんか納得できないけど、そうだね、食べよう~」

 

「美味しそうだね、これ全部、優未さんが作ったの?」

 

「そうだよ、私一人暮らしだから」

 

「へ~、きっと優未さんは良いお嫁さんになるね!」

 

「っ?!や、やだな~、そんなお世辞言ったってなにも出ないよ」

 

「お世辞じゃないよ!本当だよ」

 

「あ、ありがとう」

 

一刀の真っ直ぐな言葉に顔を赤くする優未

 

「はいはい、ごちそうさま、もー妬けちゃうわね~」

 

「そ、そんなんじゃないよ!」

 

「そうだよ、俺なんかが相手じゃ優未さんが可哀想だよ」

 

「「……」」

 

「え?」

 

「「はぁ~」」

 

雪蓮と優未は同時に溜息をついた

 

(どんだけ鈍感なのよ、一刀って)

 

昼食を食べゆっくりしている時、それは突然訪れた

 

(ドクンッ!)

 

「っ?!」

 

(なっ!……こんな時に)

 

「あれ?雪蓮、どうしたの?」

 

優未は雪蓮の異変に気がついた

 

「な、なんでもないわ、ちょっと離れるわね」

 

「あ!もしかしてお手洗い?着いていこうか?」

 

「大丈夫よ、ひ、一人になりたいだけよ」

 

(早く……早くこの場から離れないと!あれ?私、今なんて言ったかな?)

 

雪蓮は立ち上がりフラフラと一刀たちから離れていった

 

「……」

 

それを見つめる一刀

 

「ねえ北郷君、なんか様子おかしくなかったかな?」

 

「……」

 

「北郷君?」

 

「え?あ、ごめん、なに?」

 

「も~、しっかりしてよ北郷君、雪蓮のことだよ」

 

「そ、そうだね……ごめん、俺ちょっと用事思い出したから先に戻るね」

 

「え?うん……」

 

「ごめんね、あ、お弁当とても美味しかったよ、またあまるようなら作ってくれるとうれしいな」

 

「う、うん、あ、あまったらね」

 

「それじゃ、またね」

 

一刀は走って行ってしまった

 

「……雪蓮も一刀もどうしたのかな?」

 

「あら、優未ちゃんは知らないの?」

 

「こ、この野太い声は……り、貂蝉様」

 

「ハロォ~ン、優未ちゃんはお師匠様から聞いてないのかしら?」

 

「何をですか?」

 

「雪蓮ちゃんのことよ」

 

「はぁ、はぁ、ここなら誰にも見つからないはず」

 

雪蓮が訪れた場所は、転校してきて初めて一刀と出会い教えてもらった場所だった

 

「と、とにかく鎮静剤は飲んだわ、あとは落ち着くのを待つだけ……はぁ、はぁ」

 

雪蓮はフラフラと木に歩いていき寄りかかった

 

「熱い……体中が熱いよ、誰か、助けて……一刀」

 

(ガサガサッ)

 

「だ、だれ!?」

 

(こんな時に……ここは一刀しか知らないって……もしかして)

 

「やっぱりここだったんだね」

 

そこに現れたのは一刀だった

 

「な、なんでき、来たのよ……」

 

雪蓮は睨みつけるように一刀を見つめた

 

「雪蓮が心配になったから、かな」

 

(こんな時に限って鋭すぎるのよ、一刀は)

 

そして、一刀が歩き出そうとした時だった

 

「っ!だめ!来ないで!」

 

「どうして?」

 

「一刀を傷つけたくない、から、お願い、だから来ないで……」

 

(お願い……早く治まって!じゃないと……じゃないとまた私の前から誰も居なくなっちゃうっ!)

 

「……」

 

「っ!来るな!」

 

「っ?!」

 

それでも近づいてこようとする一刀に雪蓮は今持ちえる殺気を一刀にぶつけた

 

「わ、私の言ったことが判らなかったの?来ないで!」

 

(それ以上近づかないで一刀、それ以上近づかれたら私、もう保てない!)

 

一刀の顔から冷や汗が流れた、一刀もこれほどまでの殺気を今まで感じたことが無かった

 

「……大丈夫だよ、雪蓮」

 

それでも尚、雪蓮のことを気遣う、優しく、微笑みかける一刀

 

「っ!か、ず……と!に、げて!」

 

その言葉を最後に雪蓮は一刀に襲い掛かっていた

 

「ぐあああああああああ!」

 

この世の者とは思えない叫び声をあげていた

 

(お願い、止まって!一刀を傷つけないで!)

 

自分の体なのに心とは裏腹に体は、一刀めがけて走っていった

 

(避けて、一刀!)

 

しかし、一刀は避けずその場に立っていた、次の瞬間、雪蓮は一刀に殴りかかっていた

 

(いやーーーーー!)

 

「ええ?!それじゃ、その発作が今起きてるってことですか!」

 

「そうなるわね」

 

優未は貂蝉から雪蓮の症状を聞き愕然としていた

 

「っ!は、早く北郷君に知らせないと!」

 

「その必要は無いわよ」

 

「何でですか!」

 

「ちょっとは落ち着きなさいよ、優未ちゃん」

 

「そんな、落ち着けるわけ!」

 

「落ち着くの、よ!」

 

「っ!?」

 

貂蝉は優未に思いっきり睨みを利かせた

 

「ご主人様はああ見えてとても鋭いのよ、色恋沙汰には鈍いけどね」

 

「鋭いって……まさか!」

 

「そのまさかよ、雪蓮ちゃんのことが心配で追いかけて行ったのよ」

 

「そんな……それじゃ、今二人きりってことですか?!もっと危ないじゃないですか!」

 

「あらん、そんなこと言ったって優未ちゃんが言っても結果は同じことよ」

 

「そうかもしれないけど……でも!」

 

優未の瞳には涙が滲んでいた

 

「安心なさい、ご主人様も雪蓮ちゃんきっと大丈夫よ」

 

「……なんで、そういいきれるんですか?」

 

「そんなのご主人様が居るからに決まってるじゃないの」

 

「確かに、北郷君は人を惹き付ける不思議な力がありますけど」

 

「ふふふ、それだけじゃないのよ、ご主人様の力は」

 

「え?」

 

「優未ちゃんはここに居なさい、きっとここにご主人様と雪蓮ちゃんは来るはずだから、その時、聞くといいわ」

 

「……わかりました」

 

「いい子ね、それじゃ私は戻るわよん」

 

「まさか、そのことだけを伝えに来たんですか?」

 

「どぅふ♪お師匠様に頼まれたことを言いに来ただけよ、それが丁度、今起きていることだっただけ」

 

そう言うと貂蝉は校舎に戻っていった

 

「貂蝉様……」

 

『きゃーーー!変態!』

 

「服は着ましょうよ……」

 

「ヴゥゥゥゥ」

 

「痛つつ……」

 

一刀は雪蓮に押し倒され肩を噛まれていた

 

「……だ、大丈夫だから、雪蓮」

 

「っ!?」

 

一刀は雪蓮を抱き寄せ背中を撫でていた

 

「雪蓮が落ち着くまでこうしてあげるから」

 

「ヴゥゥゥゥ……」

 

(か、ずと……)

 

「辛かったんだよね、こんな姿誰にも見せたくなかったんだよね、だからここで一人になりたかったんだよね」

 

(なんで……一刀)

 

「ごめんね、それなのに俺が来ちゃったから押さえられなかったんだよね」

 

(違う!一刀は悪くないの!悪いのは私なんだから!)

 

雪蓮は噛み付いていた一刀の肩から口を離した

 

「が、ずと……ご、ごめんな、ざい……き……に……で」

 

一刀は雪蓮に笑いかける、雪蓮の目には大粒の涙が溜まっていた

 

「ほら、折角の可愛い顔が台無しだよ」

 

(一刀……お願い、嫌いにならないで、一刀まで私から離れたら……っ?!)

 

そう思うとまたも感情がぶり返してきた

 

「ぅぅぅあああああああ!」

 

「雪蓮?……っ!」

 

雪蓮は一刀に思いっきり抱き着き背中に爪が食い込んでいた

 

「ううううう……」

 

雪蓮は唸りながら一刀の肩からはなれ

 

「?しぇれ、むっ?!」

 

「ん!……くちゅ、じゅる……はぁ、はぁ、もっと……一刀……もっと」

 

雪蓮は一刀に口づけをした

 

「ど、どうしたんだ!雪蓮!んっ!ん~~~~!」

 

「はぁ、はぁ、ん、くちゅ……あは、一刀の唇美味しい、ねえ、もっと……」

 

(もうだめ、何も考えられない……ごめんなさい、か、ず……と)

 

雪蓮はそのまま意識を手放した

 

「し、雪蓮!」

 

「ん……ここは……?」

 

「あ!雪蓮、目が覚めた?」

 

そこは保健室のベットの上だった

 

「もー、びっくりしたよ、北郷君に抱きかかえられて私の所に戻ってきたんだもん」

 

その時、雪蓮は先ほどの光景を思い出した

 

「っ!?一刀、一刀は!」

 

「え、か、北郷君なら授業に戻ったけど、何があったの?北郷君ったら肩とか背中、怪我してたみたいだけど教えてくれないんだよ」

 

時間を見ると5時限目の授業が始まっている時間だった

 

「そ、そう……」

 

「なにがあったの?」

 

「ごめん……今は一人にして……」

 

「わかった、それじゃ保健室の先生に言って戻るね」

 

そう言うと保健室の先生に断り優未は授業へと戻っていった

 

「気分はどう?」

 

「はい……なんともないです」

 

「そう、あなたを運んできた彼だけど治療しておいたわ」

 

「そう、ですか……」

 

(私が一刀を傷つけたんだよね……)

 

「ふぅ~、彼があなたが起きたら伝えてって言われたわ」

 

「え?一刀が私に?」

 

「ええ、『安心して良いよ、誰にも言わないから、今はゆっくり休んでね、また、一緒にお昼食べようね』だってさ」

 

「一刀……」

 

一刀の優しさに雪蓮は涙が止まらなくなってしまった

 

「う、うぅぅ……」

 

「良いお友達を持ったわね」

 

「はい……はい……」

 

保健室の先生は雪蓮の頭を撫でながら微笑んでいた

 

「さ、取りあえず、今は寝ていなさい」

 

「判りました」

 

雪蓮は大人しくベットに横になった、その後、母親が来て雪蓮は早退をした

 

「……」

 

翌朝、目覚めた雪蓮は学園へ行く支度をしていた

 

「はぁ~、憂鬱……」

 

鏡を見ながら大きな溜息をつく

 

(一刀や優未になんて言えばいいんだろう)

 

昨日から雪蓮はどう、一刀たちに告げようかと悩んでいた

 

(バンッ!)

 

「ほーら、雪蓮、もう起きないと学校に遅刻するわよ」

 

「母さん!ノックしてっていつも言ってるでしょ!」

 

「なに言ってるのよ、昨日はあんなに落ち込んでたくせに」

 

「それは……」

 

「はぁ~、ほれほれ、、朝食食べて学校行きなさい」

 

「あ、ちょっと!押さないでよ、母さん!」

 

「そんだけ、叫んでいれば、大丈夫でしょ」

 

「もー、強引なんだから母さんは」

 

「あら、私はいつもこうよ♪」

 

「ふふ」

 

「ふふふ」

 

二人して笑い合う

 

「ん?どうしたんだ、こんな所で笑ってるなんて」

 

「なんでもないわよ、父さん」

 

「そうよ、女の子だけの秘密なんだから」

 

「?そうか、私は先に行っているぞ」

 

先にダイニングへ向った父を二人は後から追いかけダイニングへ入って行った

 

「とは言ったものの、どうやって話せばいいのかしら」

 

雪蓮は学園へと続く道を歩きながらどう打ち明けようかと悩んでいた

 

「お姉さま!」

 

「へ?」

 

急に後ろから声をかけられ間抜けな声を出してしまった

 

「お姉さま、昨日早退したと聞きました!どこかお加減でも悪いのですか!」

 

「あ、えっと、大丈夫よ、ちょっとした貧血だから、もう平気よ」

 

「本当ですか?」

 

「ええ、ごめんなさいね、心配かけて」

 

「い、いいえ!こちらこそ、出すぎた真似を!あ、あの!お体には気をつけてくださいね、それでは、私は先に行きます!で、では!」

 

「行っちゃった……」

 

雪蓮は走って行った女の子を呆然と見送っていた

 

「まったく、雪蓮は相変わらずの人気者だよね」

 

「優未……」

 

「おはよ、雪蓮♪」

 

「え、ええ、おはよう」

 

「もう大丈夫なの?」

 

「大丈夫よ」

 

「そっかー、それは良かった」

 

優未は安心したのか笑いながら歩き出した

 

「……ねえ、優未」

 

「なに?」

 

「なにも、聞かないの?」

 

「……」

 

「昨日のこと……」

 

「……雪蓮が話したくなた時で良いよ、それまで待ってるからさ」

 

「ありがとう、優未」

 

「いいってことよ、さ、学園に……どうしたの?」

 

「ごめん、先に行くね!」

 

「あ!どうしたの雪蓮!」

 

雪蓮は何かに怯えるように走って行ってしまった

 

「あれ?優未さんおはよう」

 

「あ、北郷君おはよう」

 

「あれ?さっきまで雪蓮が居たような気がしたんだけど」

 

「あ、あ~、さっきまで居たんだけどね~」

 

(まさか、北郷君が近づいてるのわかったから急いで離れたのかな?)

 

優未は雪蓮の勘の鋭さに驚いていた

 

その後も、雪蓮は休憩時間になると教室から居なくなっていた

 

「っ!ごめん、優未ちょっと席はずすね」

 

「あ!雪蓮!」

 

教室から出て行くと少しして、一刀が姿を現した

 

「しぇ、天音さんは居ますか?」

 

「あ、北郷君!」

 

「優未さん、雪蓮は」

 

「ごめんね、今席はずしてるんだよ」

 

「そっか、それじゃ、また来るよ」

 

「ここで待ってれば?」

 

「ううん、次の休み時間にまた来るよ」

 

そういうと、北郷は教室へと戻っていった

 

「ただいま、優未」

 

「お帰り」

 

優未は先ほどのことを雪蓮には言わなかった、次の休み時間になり

 

「また居ないみたいね」

 

「うん、ごめんね、北郷君」

 

「いいよ、気にして無いから」

 

一刀は笑いながら言っているが、その顔は少し寂しそうであった

 

「ねえ、北郷君、お昼の時、一緒にご飯食べた庭で待っててくれるかな」

 

「うん、わかったよ」

 

「ごめんね、絶対に連れて行くから」

 

一刀は頷くと自分の教室へと戻っていった、その後、雪蓮が戻ってきた

 

「ただいま、ごめんね、急に居なくなって」

 

「いいけどさ~、そうだ、次の時間が終わったらお昼だよね!今日も外で食べよー」

 

「もー、判ったわよ、仕方ないわね」

 

雪蓮は呆れながら頷いた

 

(絶対に、会わせてあげるからね、北郷君!)

 

優未は雪蓮を見てそう思うのだった

 

「あ、ごめん!忘れ物してきちゃった、雪蓮は先に行って待ってて!」

 

「しっかりしなさいよ、優未」

 

「えへへ、それじゃ取りに行ってくるね!」

 

優未は来た道を戻っていった

 

「まったく、しょうがないわね、優未は」

 

雪蓮は笑いながら約束の場所へと向っていった

 

「さてと、とうちゃ、く……」

 

「やあ、雪蓮」

 

優未と一緒にお昼と食べる場所には一刀が待っていた

 

「っ!」

 

「待って、雪蓮!」

 

「離して!」

 

「離さないよ」

 

「離して、よ……」

 

(一刀の顔をまともに見れないよ、だって、だって)

 

「離さないよ、雪蓮がこっちを向いてくれるまで」

 

「……見れないよ、昨日あんなことしたのに」

 

「ははは、急に抱きつかれたからね」

 

「っ!なんで、笑ってられるのよ!私は、私は一刀のことを「傷つけた?」っ?!」

 

「そんなの気にして無いよ」

 

そういうと一刀は雪蓮の頭を撫でた

 

(暖かい手……撫でられてると、とても安心する)

 

「俺は、逆に雪蓮に嫌われちゃったのかなって」

 

「っ!そんなことない!私は一刀のこと嫌いになんて!」

 

「そっか、安心した」

 

そういうと一刀は微笑んだ

 

「俺は雪蓮に嫌われてなければそれで良いんだよ、それに……」

 

「?」

 

そこで一刀は急に赤くなった

 

「は、初めてキスした相手が雪蓮だし」

 

「~~~~っ!」

 

(そ、そうだった、あの時、ドサクサに紛れて、私、か、一刀とキ、キキキスを!)

 

(ボンッ!)

 

そんな音が聞こえてきそうなほど雪蓮の顔は真っ赤になっていた

 

「ご、ごめんね!きゅ、急にあんなことして!驚いたよね!」

 

「あ、うん、驚いたけど、雪蓮があんなキスしてくるなんて思わなくてそっちの方が驚いたかな」

 

「あ、あああああああ、わ、私だって初めてだったんだから!……」

 

「「あ」」

 

二人同時に声が出ていた

 

「……ぷ」

 

「……ふ」

 

「「あははははは!」」

 

「そ、それじゃ、俺たちってお互いファーストキスだったんだね」

 

「そうみたいね、あ、あはははははは」

 

二人して、庭の真ん中で大笑いをして回りから注目を浴びてしまった

 

「あ、あ~、おかしかった」

 

「ふふ、ねえ、一刀」

 

「なんだい、雪蓮」

 

「どうしてあの時、近づいてきたの?私来ないでって言ったよね」

 

「なんだか、一人にしてちゃいけないってそう思ったからかな」

 

「そう……ねえ、一刀、私の話聞いてくれる?」

 

「ああ、もちろん」

 

雪蓮は自分の体のことを一刀に話した、半月に一度起きてしまうこと、何度も友達を殴りつけ友達を作ることを止めてしまった事

 

「そっか、大変だったんだね」

 

「ええ、ここに引っ越してきて誰も私のことを知っている人は居ないから、今度こそやり直そうと思ってたけど……結果は、ね」

 

「……」

 

「一刀にあんな私の姿を見られた時、『ああ、また友達が居なくなっちゃうんだ』ってそう思ったんだ、だってそうでしょ?今までもそうだったんだから」

 

雪蓮は俯き自分の手を見た

 

「この手で、何人もの友達を殴りつけた、そして、一人、また一人と私の前から離れていった、もう辛くて仕方が無かった!その度に何度も死のうと思った、でも出来なかった」

 

「どうして?」

 

「母さんや父さんを悲しませたくなかったから、でも、それ以外にもっと私を留まらせる何かがあった、それが何かは今でもわからないけど、きっとその答えはもう直ぐ見つかるような気がするの」

 

「そっか、うん、見つかると良いね」

 

「うん、ありがとう、一刀話を聞いてくれて」

 

「なに、相談ならいつでも聞いてあげるよって前にも言っただろ?」

 

「ふふ、そう言えばそうだたわね」

 

(ああ、一刀はちゃんと話も聞いてくれて、私のことを理解してくれた)

 

雪蓮は一刀をじっと見つめ確信した

 

(そっか、私、諦めなくても良いんだ)

 

「おっまたせー、雪蓮!北郷君も」

 

「やあ」

 

「遅いわよ、優未」

 

「ごめん、ごめん、さ、お昼にしよ!」

 

「あ、俺、パン買って来ないと!」

 

「その必要は無いわよ、一刀」

 

「え?」

 

そう言うと、雪蓮は一刀の手をとり、雪蓮の横に座らせた

 

「えっと、雪蓮?なにをするのですか?」

 

「ふふふ、一刀、あーん、して」

 

「「……ええ?!」」

 

一刀と優未の声が見事にハモった

 

「な、なに言ってるのよ!雪蓮!」

 

「あら、いいじゃない、私決めたんだから」

 

「決めたって何を?」

 

優未は恐る恐る尋ねた

 

「ふふふ、一刀、私、あなたのことが好きよ」

 

「「ええええええ!?」」

 

「ちょ、ちょっと雪蓮!ええ!雪蓮が俺を?!」

 

「ふふふ、一刀ったら可愛いもう、食べちゃいたいくらい」

 

「だ、だめーーーー!私だって北郷君の事が好きなんだから!」

 

「ええ!?優未さんも?!」

 

「ん!もう『さん』付けも禁止!『優未』って呼び捨てで呼んで!」

 

「え、ゆ、優未……」

 

「うん♪よろしい!私もこんどっから一刀君って呼ぶからね♪」

 

「ぶー、一刀、私も呼んでよー」

 

「し、雪蓮」

 

「ふふふ♪さ、あーんして」

 

「あー!ずるい!一刀君!私のも食べて!」

 

「あら、私が最初よ、優未、友達だからって容赦しないわよ」

 

「ふふん!私だって雪蓮が相手でも負けないんだから!」

 

「だから」

 

「「私のを食べなさい!」」

 

(もう、遠慮なんてしないんだからね、一刀♪)

 

葉月「はい、終わりました」

 

雪蓮「今回も少し長くなったわね」

 

葉月「はい、雪蓮のあの発作のような狂気をどう再現しようか随分と悩みました」

 

雪蓮「そのようね、その割には早く仕上がったわね」

 

葉月「日数的には短いですがその分、考えてる時間は普段より長かったです」

 

雪蓮「にしても、これで本来の私らしさになってきたわね」

 

葉月「胸以外はですけどね」

 

雪蓮「なにか、言ったかしら?葉月?」

 

葉月「イイエナニモ言ってないですよ」

 

雪蓮「そう、ならいいけど、今後の展開はどうするとかしら?」

 

葉月「そうですね~、取りあえずは雪蓮の夢にも進展がある感じです」

 

雪蓮「そう、ところでいつになったら記憶が戻るのよ、あと、呉に戻れるの?それともそのまま一刀と優未とであの町で暮らすの?」

 

葉月「それは、まだ言えませんよ、言ったら面白みが無いじゃないですか」

 

雪蓮「そうだけど~、知~り~た~い~、教えてくれないと首と胴体を切り離しちゃうんだから!」

 

葉月「そんな可愛らしく怖いこといわないでください!もう、判りましたよ、特別ですよ?ゴニョゴニョ」

 

雪蓮「なるほど、私は「あ~!あ~!あ~!」……わかったわよ、言わないわよ」

 

葉月「ふぅ、やれやれ、口が軽すぎですよ、雪蓮は」

 

雪蓮「ぶ~、あ~でも言いたい!どうしても言いたい!」

 

葉月「そうはさせるか!いでよ、断金の仲の冥琳さん!」

 

冥琳「はぁ~、そんなことで私を呼ばないでくれないか」

 

葉月「すみません、雪蓮の行動を止められるのは冥琳さんだけなんです!」

 

冥琳「仕方ない、おい、雪蓮、それ以上言うと、酒は今後一切飲ませんぞ」

 

雪蓮「えええええ!それは困るわ!わかったわよ、言わない、言わないわよ、皆には楽しみにしてもらうわ」

 

葉月「……流石ですね」

 

冥琳「少々、頭が痛くなってきた」

 

雪蓮「ってことで、私は冥琳とお酒を飲むから後は頼んだわよ葉月」

 

冥琳「すまんが、よろしく頼むぞ」

 

葉月「はぁ、この場は冥琳さんの助けもあったので仕方が無いですね」

 

葉月「それではみなさん!またお会いしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「冥琳~~~もっとお酒飲むわよ~~~~」

 

冥琳「し、雪蓮!呑みすぎだ!少しは抑えろ!」


 
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