キンッ
武器と武器が小さくあたる。
右手に持った刀をひゅるりと回してもう一回ギルに接近。
刀を深く突こうとして――またキンッという金属部分の衝突音。
ギルの槍の突きが刀の先端にちょうどあたる。
「命中力いいね~」
俺はおちゃらけて笑いながらいうと、ギルも「そりゃど~も」とその緊迫した顔を少しだけ和ませていった。
3限の実習訓練である。
もともとこの学校は武力、魔力の長けているものが集まる学校である。
このクラスは武力クラス、と呼ばれている。
もう一回距離をとり、刀で突く体制に入る。
そしてさっきと同じ構えをギルがするのを見て、次は思いっきり短剣を握った左手で近寄る。刀に合わせた槍はその短剣を追い切れない。
「チェックメイト、でok?」
短剣の刀身をギルの首元にあてる。
カンカンカンカン、先生による勝敗決定宣言。
「「お疲れ様でした~」」
お互い向かいあって礼をする。
今日の実習訓練は森である。かといって、木を利用するほどの技術を持っていない俺はいつもどうりの戦い方。土だと若干戦いにくいのだが。
「はい、じゃあ、準決勝。ギル対レイ。レイの勝ちね」
クラス内でのトーナメント戦。次は決勝である。いや、相手は分かっているのだが。
その時、またカンカンカンカンと音が鳴った。
「もう一個の準決勝、ミナト対スズラ。スズラの勝ち。ではでは決勝。いつもどうりで面白みのかけらもない対戦、始まり始まり~」
はい、やっぱりいつもどうりでした!スズラと俺は幼馴染であり、また、親父同士が戦闘に対する中毒的なものであるから幼い時からお互いを高め合っていた。
正直、1年にして4年の先輩にでも誰でも勝てる。年に1回、5月に行われる全校トーナメントで決勝で1年同士で戦ったのは歴史があるこの学校でも始めてだったそうな。優勝は俺だった。
「手加減してよね?」
スズラが魅惑的な笑みを浮かべる。
「嫌だ」
「あぁ、そう」
スズラは3つの武器を使い分ける名人である。こういう戦いの場合、大切なのは間合い、である。
その間合いによって勝敗がきまる、といっても過言ではない。その間合いを自分に有利な位置に自ら変えられる。
遠距離・弓
中距離・槍
近距離・短剣
ちなみに短剣は俺が親切丁寧に教えたもの。
まぁ、俺も刀と短剣で二つを使い分けているからそこまで苦手、という物はないのだが。
「はいはい、始めるよー。どーん」
先生の気の無い合図があって俺らは構え合う。スズラは背に手を回している。腰元に携えている短剣を使う気はないようだ。
「行くぞ!」
ひゅっ、土に俺の足跡が残らないくらいに一瞬しかつかせない。
しかし、5秒後には俺は倒れていた。
スズラがこちらに突き出しているものを見て理解完了。
初めて使った武器――銃。
「麻痺毒弾入ってるよ、もう動けないでしょ」
けらけらと笑うスズラ。
「あぁ、今回は負け!」
俺の宣言を聞き先生がカンカンカンカンと音を鳴らした。
「はい、スズラの勝ち~。単位を多めにプレゼントと」
5999戦2999勝3000敗
負け越しである。くそっ、舌打ちしようとしたのだが麻痺毒のせいで舌さえもよく動かない。
スズラ、早く解毒のうてよ!
目で言うと、あぁ、と思い出したように懐からきみどり色の液体が入った注射器を取り出し、俺の腕にうった。
「ふふふ、銃も極めるの!」
そんな声になぜだか恐怖感を感じながら、けれど、なぜだか頼もしいような。そんな気持ちを持ちながら
「そしたら負け増えるなぁ。銃はやめとけ」
「いーやー」
笑いながら言った彼女の顔は綺麗だった。
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第3段。隔離されたその世界に来る少し前のお話。