第1話 青色の適性試験
魔術……それは現代社会において最も重要な技術の一つ。
学歴社会と呼ばれるように今の日本では魔術の才能によってその人の人生が決まってしまう。
その中でも、色魔術と呼ばれる魔術は簡単且つ早く行うことができるため最も多く使われた。
色魔術という魔術形態ができてから今まで主流だった科学は古代科学と呼ばれ衰退し。
人々の生活は魔術よりになった。
そう、数ある魔術形態のうち、色魔術はその人の人生を決める最も重要な魔術だった。
私立矢上高校の入試試験は他の高校の平均より簡単なものだといわれた。
普通、入試試験には一般教養、面接、色魔術の3つが主体であるのに対し矢上高校では面接しかなかった。
つまり、馬鹿でも入れる高校ということだ。俺、宇都宮純也はそんな馬鹿高校に見事に滑った。
原因は他でもない俺の成績だ。
中学では本格的にやらない色魔術の成績以外はほぼ赤点。
義務教育なので卒業はできたが2次選抜に落ちて俺は落胆した。
やはり、馬鹿にはこの世界を生きていくことはできないのか…と。
そんな時、中学の担任が色魔術選抜を教えてくれた。
矢上高校には入試で滑った俺みたいな成績不振者にチャンスを与えるべく色魔術だけの入試があるそうだ。
この入試は通常に入学した生徒が一番最初にやる色魔術適性試験を行い開いた色のクラスに特別に割り込むことができる入試だ。
その色魔術適性試験とは高校から本格的に勉強する色魔術に必要な魔力色を試験で分けクラスを割り当てる全国の高校に一致する制度である。
俺は希望を抱いてその色魔術適性試験に向かった。
すう……はぁ、と息を整える。
俺は試験会場に来ていた。
目の前にある扉を開けば試験会場である。
会場には俺と同じ成績不振者たちがこの試験を受けるために鋭気を養っているだろう。
俺は勢いよく扉を開けた。
会場には誰もいなかった。
「あれ……?」
いや、誰もいなかったわけではない先生ならちゃんといる。
しかし、生徒……成績不振者が一人もいない。
まさか、俺時間とかまちがえちゃった?
とか思いながら俺は先生の下に向かっていき言う。
「あの…う。時間を間違えてしまいましたか?」
先生は眼鏡を上げて言う。
「いや、あっている。ちなみに生徒は君一人だ。」
「え、一人?」
驚いた、俺みたいな成績不振者であふれかえってるかと思っていたのに…。
「そうだ、準備をしろ。始めるぞ」
「え、あ。はい」
と肯くと荷物を置き先生の前に戻る。
「では、色魔術の基本知識は知ってるな」
「はい、少しは…」
「色魔術を発動した経験は?」
「ないです…」
「適性試験を受けた経験もないな?」
「はい」
なんなんだ、適性試験ってただの知識確認なのか?
「では、適性試験を受けてもらう」
と先生はなにかの実験器具を持ってきた。
「じゃあ、今から君の魔力色を調べるぞ」
魔力色とは色魔術を使用するのに必要な原色のことである。
魔力色には基本色として赤、青、緑の3つ、特殊色として白、黒、金属光沢色、透明色の4つが存在する。
基本色は一人最低一つは持っている魔力の色のことで2、3つもっていることも少なくない。
特殊色は持っている人がいれば持っていない人もいる。
「この機械に手を入れて集中しろ」
そういわれて俺は手を入れて集中する。
俺の色魔術。
想像して力を注ぎ込む。
「ふむ、もういいぞ」
という言葉で手を出す。
「え、もういいんすか?」
「ああ、お前の魔力色は青37.9パーセントだ。」
「はい?37.9パーセント?他の色は?」
「青しかわからん。お前は半端な青色魔術師だ」
勉強が半端な上に魔術まで半端とは。
色魔術の色魔力は全ての色を足して100パーセントにならないとおかしい。それなのに俺の色魔力は青が37.9パーセントしかないそうだ。
37.9パーセントってなんだよ。
「とりあえず、この試験は受けるだけで合格だ。今日は書類もって、帰れ」
先生は若干、せかしているようだ、冷たい。
俺はさっさと帰ることにした。
宇都宮純也が帰宅した後、その場に残っていた教諭はあせっていた。
「なぜだ、この装置は完璧なはずだ」
機械はおかしな音を立てている。
「この装置に読み込めない色など存在しないはずだ」
その教諭の元に白い服を着た医者のような人がやってきた。
「色が読めないだと?」
医者は教諭に対して訝る。
「ああ、青色が37.9パーセントって言う数値が出たんだが・・・」
医者はその言葉に驚いたように言いいかえす
「な・・・に、37.9パーセントだと?」
「ああ、それがドウカしたのか?」
「そのほかに色は出なかったのか?」
「ああ、そうだが?」
「おかしい、あの色なら写らないのはわかるが、あの色は写ってもおかしくは・・・ない」
と医者はブツブツと何か呟く。
そこにスーツを着た若い青年がやってきた。
「おやおや、彼の試験は終わりましたか?」
医者はその青年を見ると舌打ちをしてにらんだ。
「あなた、虚偽の報告は罰則ものですよ」
医者は青年に向かってそう言い放った。
青年は肩をすくませるという。
「別に僕はそのまんまのことを報告をしたんですよ。」
「まぁ、いい。彼は青のクラスでいいですね」
医者は鋭い視線を青年に投げかける。
「いいや、彼は別のクラスさ」
青年は笑顔を浮かべ医者に向かって言葉を続けた。
「彼は特別クラスだよ」
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前に書いた短編連続小説の1話です。