豪臣は、日課の早朝散歩、三日月(煙管)で煙草を喫煙した後、村長と今後のことについて話をして、家に戻った。
「「お、おはよう(ございます)。兄ちゃん(兄様)///」」
二人の恥ずかしそうな挨拶を聞き、頬の緩む豪臣。
「ああ、おはよう。ご飯にしよう。俺が作るから」
そして、みなで楽しく食事をしてから、二人は自分の班の様子を見に行った。
そして、豪臣は入口まで行き、数時間後には賊が来るであろう道の先をずっと睨んでいた。
昼前に物見の村人から、砂塵が見えたことが報告された。
豪臣は、みなを鼓舞し、道端の茂みに潜んでもらった。
そして、今、豪臣は、村唯一の入口に居る。
彼の視線の先には120を超える賊が、突撃を掛けようと、武器を手に村に向かって来る。
(俺は壁だ。
村の外敵を、誰一人通さない壁だ。)
賊は、もうそこまで来ていた。
豪臣は新月(しんげつ)を握り直す。
(さあ、来い。俺の覚悟、見せてやる!)
戦いが始まる。
しかし、そんな風に考えた村のみんなの考えを豪臣は打ち砕いた。
そう、戦いが始まったのではない。
そう、ただそこに在ったのは、修羅の姿だった。
豪臣は
「―――剛(ゴウ)!」
そう呟くと、突撃して来る賊を、ただただ、斬って斬って斬り捨てる。
たまに、賊の剣が、体に当たるが気にしない
ギン!
と、音がするだけで、体に傷が一つも付かない。
そして、40人程の賊が倒れたところで、ようやく突撃が止まる。
賊から“化物”と言う呟きがいくつも出てくる。
そこで豪臣は、後ろで控えていた村人に合図を送る。
すると、その村人は急いで手に持っていた小振りの鐘を
カン、カン、カーン!
と鳴らす。すると
「「みんな!突撃!!」」
と季衣と流琉の叫びが放たれ、茂みに潜んでいた村人たちが飛び出してくる。
賊は何も出来なかった。
完全に正面の豪臣を見ていたため、季衣班、流琉班の横撃に、まったく反応出来なかった。
賊が半数程になった時、豪臣も前に出て、さらに10人程斬って捨てる。
すると、もう賊は耐え切れなくなった。
みな、我先にと武器を捨て逃げて行く。
豪臣は、季衣と流琉に目配せをし
「みんな、追撃だ!村から略奪しよう等と考えた愚か者たちに、我らの怒りを見せてやれ!」
豪臣が激を入れる。そして
「みんな!僕と一緒に行くよ!!」
「私たちも行きます!」
二人は村人たちと共に追って行った。
「・・・・・・」
豪臣は、その姿を見ながら眼を閉じ頭を下げた。
そんな豪臣に声が掛る。
「何しとる。お前もさっさと行かんか」
村長だった。
村長は、振り向いた豪臣に、昨日の晩に森に隠したはずのリュックを投げて寄こした。
それと同時に、朔夜が肩に乗る。
「ここで出て行くって、良く分かりましたね。荷物まで」
「まあ、勘は昔から良くての。で、行くんじゃろ?」
口を釣り上げて笑う村長。
「はい。ここでの追撃は相手に完全に戦意を失わせるためのものですから。
二人にも、無理に殺さなくて良い、って言っています」
そうか、と呟いた後、村長は問う。
「やはり、二人には言わんかったんか?」
豪臣は頷き
「ええ。彼女たちを、俺の目的も分からない旅に連れて行きたくありませんし、目的が見つかった時に護れる自信が、今の俺にはありませんから」
(特に、もし“試練”が、仙人を相手にするものなら尚更に)
「・・・何か伝えることはあるかの?」
「・・・では、この手紙を渡して下さい」
そう言って、豪臣は村を去って行った。
季衣と流琉が帰還すると
「兄ちゃーん!」
「兄様―!」
そう言って豪臣を探し始めた。
そんな二人の前に村長が進み出る。
「あ!村長!兄ちゃん知らない?」
「はい!何処にも見当たらないないんです!」
聞いてくる二人を見据え、村長は答える。
「・・・出て行った」
「「・・・へ?」」
二人の動きが止まる。そして
「う、嘘だ!兄ちゃんは僕たちを置いて行ったりしない!」
「そ、そうです!兄様は何も言ってませんでした!」
「・・・・・・」
二人の叫びにも黙って眼を逸らさない村長。
二人は助けを求め、周りを見る。しかし
「「「「「・・・・・・」」」」」
みな黙って視線を逸らす。みな気づいていたのだ。
二人は眼に涙を溜める。
「嘘だ。嘘だよぉ」
「そんなはず・・・」
力の無い言葉。聞き取れたのは、眼の前に居る村長だけだった。
そして、そんな二人に村長は、もう一度言った。
「出て行ったんじゃ」
その一言に、二人は堪え切れず、涙を流し嗚咽を漏らした。
誰も動かぬまま2時間がたった。
二人は2時間程泣き続け、そして、ようやく止まった。涙が枯れてしまったのだ。
座ったままの二人は、手を繋ぎ、顔を上げない。
村長は、そんな二人に声を掛ける。
「二人に、豪臣から預かった手紙がある」
豪臣の名に、ピクっと反応し、ゆっくりと顔を上げる。
そして、その手紙を受け取る。
手紙には、こんなことが書かれていた。
『可愛い妹たちへ
季衣、流琉。黙って出て行く莫迦な兄を許して欲しい。
これからの俺の旅は、どうなるかが分からない。そんな旅に大切な二人を連れて行けなかった。
でも、信じていて欲しい。
俺は、必ず二人に会いに行く。
二人がこの村から居なくても。たとえこの国に居なくても。
だから、悲しまないで欲しい。泣かないで欲しい。笑っていて欲しい。
俺は、必ず会いに行くから。
再会の日を思っている。
妹たちを心から愛する兄より』
そしてまた、二人は枯れたはずの涙を流すのだった。
しかし、それは悲しみのものではない。
必ずまた会えるという、最愛の人の言葉から流れるものだった。
あとがき
どもども、虎子です。
なんとか6日連続に間に合いました。
現時刻23時28分!・・・危なかった!
さて、作品の話ですが・・・
何かすみません。二人を泣かせてしまって。
私も好きなキャラを泣かせるのは忍びなかったんですが・・・orz
二人のファンがいたら許して下さい。どうしても許せなかったら、やんわりとコメントして下さい。
強く言われると、私の心が折れます <m(__)m>
次に、今回の最初に初めて使用中の煙管(三日月)を登場させました。
実は、3話を書き終えるまで、完全に忘れてました。自分で設定したくせに・・・orz
反省ですね。
で、次の投稿は4日終了までに、と考えております(ちなみに、短めになるのでは?と考えています)。
文章中に誤字脱字等ありましたら、コメントにガンガン書いてやって下さい。
最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。本当にありがとうございました。
ではでは、虎子でした。
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今回は、かなり短いです。
拙い文章ですが、読んでやって下さい。