No.113989

真・恋姫†無双 金属の歯車 拠点フェイズケイン

真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は知っていれば、にやりとできる程度のものです。
・この作品は随分と厨作品です。
・過度な期待どころか、普通の期待もしないでください。

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2009-12-24 02:43:20 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2163   閲覧ユーザー数:2004

 俺が生まれたのは、丁度世間が忘れ去られた島を舞台にした事件の年であった。

俺は実に裕福な家庭に生まれた。優しい母に、厳しくとも俺に愛情を注いでくれた父の元に生まれた。

俺が物心付いたとき、家族は既に日本に暮らしていた。両親共に日本人ではないが、日本での暮らしを大層気に入りそのまま居座ってしまった物好きだ。

父は立派な仕事をこなす一方、孤児院も開設していた。そう、俺にはきょうだいが沢山いたのだ。

俺は父を尊敬していた。いや・・・今も尊敬している。

仕事をこなし、さらに沢山の子供達の相手をしていた。厳格な父が小さいきょうだい達を背中に乗せ、馬の真似をしている様は非常に滑稽だったのを今でも覚えている。

もちろん母も尊敬している。

母はとても優しく、きょうだいたちの世話だけではなく家事もこなしていた。沢山の食事から洗濯、掃除に至るまで全てこなしていた。

俺はそんな両親の負担になりたくない一心で手伝いに励んだ。

加えて俺はきょうだい達の中でも最年長だった。俺はきょうだい達を守るために父から剣を学んだ。父曰くいいセンスだったそうだ。

辛いことも多々あったが、毎日が楽しく・・・毎日が幸せだった。

・・・両親が今の俺を見ると、拳骨の一個や二個飛んでくるかもしれないな。

そんなある日、父が一人の子供を連れてきた。父の知り合いの軍人からの紹介だった。

その子は酷く虚ろで・・・その目はどす黒い深淵のようだった。

 

 

 

 第零話・裏 狐ノ称号 ~Cane・Werner~

 

 

 

 その子は笑わず、怒らず、泣かず、楽しまず・・・なにより生きることに執着がなかった。

俺はその子に笑うことを教えた。

俺はその子に怒ることを教えた。

俺はその子に哀しむことを教えた。

俺はその子に楽しむことを教えた。

俺はその子の剣を教えた。

俺はその子に世界の事を教えた。

俺はその子に世界の英雄について教えた。

 

―――俺はその子を助けることができた。

 

 

 

その子が感情を自由に表すようになってから数年・・・あの忌まわしい事故が起こった。

両親が死んだ。

自爆テロに巻き込まれた。父は母を、母はきょうだい達を庇って死んだ。

しかし俺にはそれを悲しむ余裕はなかった。

俺はきょうだい達を食わせていかなければならない。そのために・・・俺は両親がくれた身体に機械を埋め込んだ。

俺はモルモットとして自分の身体を自己満足の塊共に提供した。

しかし世界を延命し続けた英雄は、俺に対しても救いの手を差し伸べた。

二年後、英雄は私を助け出してくれた。英雄は既にこの世にはなかったが無二の親友を通してだった。

彼は俺に戦場に出るなと言った。しかし俺は・・・戦うことしか自分を表現できなくなっていた。

そして大国を統率していた管理者が消えてからちょうど16年。

「君に・・・フォックスの称号を与える」

 俺は狐になった。失った物は両親に与えられた唯一の身体。得た物は・・・最強の称号と数々の命を奪った者の称号だった。

皆はこれを哀れんだ。

その称号と共に・・・俺はこの世界に降り立った。

伝説は無惨な死体を晒せない。伝説は無様な死に様を見せられない。伝説は伝説でなければならない。

そんなちっぽけな自己満足を達成するために。

 

―――ただ心残りは・・・笑顔を取り戻したあの子だけだった。

 

 

 流星が堕ちた先には黒衣の男が剣を片手に佇んでいた。明らかにこの地方では見られない服装。銀髪を全て上げ後ろでくくっている。

その足下には盗賊と思われる人間が多数転がっている。

「貴様!何者だ!!」

 夏侯惇が切っ先を黒衣の男に向ける。しかし黒衣の男はそれに全く動じず言い放った。

「なんと言えば満足する?人間と言えば満足か?それとも化け物といえば納得するのか?」

 あくまで飄々とした言い方だった。ただそれだけで夏侯惇の額から汗が流れる。

黒衣の男から発せられる気、威圧感がこれまで感じたことのないものだったのだ。

「き、貴様!」

「待ちなさい、春蘭」

 夏侯惇の後ろから愛する君主の声が響く。その声が聞こえるや、黒衣の男の威圧が少し軽くなる。

夏侯惇の後ろから曹操と矢先を男に向けた夏侯淵が夜の闇から現れる。

「ほう、これは・・・」

 黒衣の男は、こちらに切っ先を向けている夏侯惇を無視し曹操をまじまじと見る。

「多分この子が聞いたと思うけど聞くけど・・・貴方は何者?」

 口調は穏やかだったが、発する威圧感はかなりのものだった。

黒衣の男もあくまで穏やかに、毒を含めて回答を返した。

「化け物になった人間・・・と他人は形容するだろうね」

「・・・物の怪の類ではないのね」

「少なくともここに転がっている連中の命を簡単に奪わない・・・という心は持ち合わせている」

 足下に転がっている盗賊達は気絶しているだけらしい。

宮廷などでは決して感じることが出来ない威圧感と殺気に当てられたのかもしれない。

「私は曹操、字は孟徳・・・貴方は?」

「曹操?君のような愛くるしい少女が・・・かね?」

「貴方・・・死にたいの?」

 明らかに怒気を纏った曹操の言葉。その言葉と共に夏侯惇と夏侯淵が武器を構え、曹操自身も武器を構えた。

実力者三人がこちらに敵対する。しかし黒衣の男はその事実を愉しむように笑いながらこう言った。

「死にたい?・・・ほう、この俺を殺せる奴がいると!?」

 その言葉と共に地面に叩きつけられるような威圧感が三人を襲った。

「俺の名はケイン・ウェルナー!」

 剣に刻まれている節々が外れ、鞭のように剣が伸びる。

曹操らはその攻撃を散開して避ける。まず狙われたのは夏侯淵だった。

「早・・・」

「違う。遅い」

 主が攻撃に巻き込まれていないかを確認したのが失敗だった。

彼の得物は既に元の剣に戻っていた。鋼で出来た夏侯淵の得物『餓狼爪』で切り上げの攻撃を受け止めようとするが、防御の上からはじき飛ばされる。

「秋蘭!」

 攻撃はこれで終わらなかった。空中に浮き上がった夏侯淵に、切り下ろしからの伸びる追撃が唸る。

「くっ」

 その一撃を弓で受け止めるが、あまりの衝撃に得物を落としてしまう。

得物を落とすということは死を意味するがそれ以上の追撃はなく、夏侯淵は地面に叩きつけられた。

「今の判断は悪くない。戦場では一瞬の躊躇が死を招く。良く覚えておけ」

 ケインは夏侯淵に興味を無くしたように曹操と夏侯惇に向き直る。

既に夏侯惇が斬りかかっているが距離が遠い。再び剣が伸びる。伸びた先は夏侯惇の目だ。本能的に夏侯惇に一瞬の躊躇いが生まれる。

ケインは、夏侯惇がその攻撃をどう対応するかを見ずに一気に接近し、夏侯惇の足を払う。

「ぐっ」

 得物である『七星餓狼』を持つ手の上には黒衣の男の足があった。

「猪突猛進すぎる。時には曲がることを考えろ」

 そして夏侯惇の眼前には伸びる剣が突き立てられる。ここまで一方的にやられたのは初めてだ。死を覚悟するが、ケインはまたも興味を失ったように最後の敵に向き直る。

部下が倒されても曹操はあくまで冷徹な表情を浮かべていた。焦りや恐怖の色は感じさせない。それどころか更に発する圧が増えている。

その様子に満足したようにケインが笑い始める。

「ははは!失礼した、曹操!貴公はまさに乱世に君臨する覇王よ!」

 一瞬にしてケインから発せられている気の類がなくなり、緊張が解けた曹操の体がよろめく。

ケインはその体をそっと支え、彼女の体勢を整えさせる。

「前言を撤回しよう。将来の覇王よ」

 そういうとケインはやや大げさに彼女に一礼した。

「しかし幼い。否、熟成が足りないと言うべきだな」

 後ろでは夏侯惇と夏侯淵が立ち上がってこちらの様子をうかがっている。

「ここまで私を侮辱した男は初めてよ・・・ええと」

「ケイン。ケイン・ウェルナー。発音が難しいかね?幼き覇王よ」

 

 

「・・・あら、起きたの?」

 目覚めたのは覇王の膝の上だった。どうやら庭で寝てしまっていたらしい。

「懐かしい夢を見ていた」

「あっちの・・・正史の夢?」

「ああ」

 二人の会話がとぎれる。しかし二人にその沈黙は心地良い物だった。

「ねえ、ケイン」

「愛の告白か?」

「違うわよ・・・貴方、正史に帰るの?」

「何故そんなことを聞く?」

「・・・約束して、私の前から勝手に居なくならないで」

「・・・わかった」

 

 

―――寂しがり屋の女の子。

 

 

おまけ

華琳「ああ、そうそう聞き忘れていたわ、貴方の真名は?」

三狐「マナ?土地をタップさせたら出てくるアレか?」

華琳「?」

三狐「いや・・・聞き流してくれ」

 


 
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