日曜日、天空中央商店街。
大勢の人でごった返す、シャッターとは無縁の天空市一の繁華街である。
その中のとある携帯ショップで。
佐和子「まさかこんなところでお前と会うとはな、ひろみ」
ひろみ「ですね。佐和子警部も機種変にいらしてたとは。しかし何も警官の制服姿で来なくても」
佐和子「いいんだよ! 防犯にもなるからな! あ、スマホ変えたドサクサで、あたしとのLINEを削除したら承知しねえぞ、なーんてなw」
ひろみ「……」
佐和子「おい、ちゃんと人の目を見ろ」
豚男『なんやとおどりゃーやで!!』
佐和子、ひろみ「「!?」」
女店員『ですから、交換は出来かねますお客様』
豚男『ポンコツスマホ売りつけやがって、このクソがあーやで!!』
ドカッ!
女店員『きゃあーっ!!』
佐和子「あんの髭豚のオッサン、店員殴りやがった! コラーッ!!」
豚男『あ、お巡りややで! ヤバい、逃げるやで!』
ダッ!
佐和子「あ、待てこの豚! ひろみ、お前はこの人を頼む!」
ひろみ「はいっ!」
佐和子「コラー、待ちやがれ豚ァーーー!!!」
数分後。
ひろみ「おかえりなさい警部。どうでした?」
佐和子「見失っちまった。あんの豚男、ブクブク太ってみっじかい足のくせに、逃げ足だけは超速え! 見つけたらマグナム弾ブッ放すつもりだったのによ、クソッ!」
ひろみ「ってブッ放すつもりだったんですか、こんな人がいっぱいいる場所で」
佐和子「悪い?」
ひろみ「悪いに決まってるでしょ!」
30分後。
『夏のハンバーガーフェア』のポスターが貼られたファミレス店内。
ユキ子(普段着)とめありん(こちらも普段着。但しこちらは魔法少女の服)が、二人掛けのテーブルで食事をしている。
ユキ子「何これおいしいー!」
めありん「でしょ? ここのハンバーガー、とーってもおいしいの」
ユキ子「こんなのを知ってるなんて、さすが天空市の先輩ね!」
めありん「えへっ☆」
熊男『ヘッヘッヘ。ハンバーガーやでーw どや、羨ましいやろやで?w みんなイイネよろしく頼むやでー、っと。ほい送信やで!』
ユキ子「あの熊のおじさん、さっきからスマホでハンバーガーの写真なんか撮って何やってるのかしら?」
めありん「きっとSNSに上げてるのよ」
ユキ子「あー」
レジ。
店員「ありがとうございました」
めありん「TENKU PAYでお願いします」
ユキ子「わたしも」
店員「かしこまりました」
ピッ。
ピッ。
めありん「さ、行きましょ。天空市のおすすめの店、もっとたくさん教えてあげる」
ユキ子「うん!」
ダッ!
ユキ子、めありん、店員「「「あっ!!」」」
ユキ子「あの熊のおじさん!」
めありん「食い逃げよ!」
ユキ子「こらー、待ちなさーい!!」
めありん「あ、ユキ子ちゃん!」
出口から逃げようとする熊男の前にユキ子が立ちふさがる。
ユキ子「待ちなさい! 食い逃げなんてダメよ、熊のおじさん!」
熊男「やかましいややでガキ! そこをどけややで!」
ユキ子「どきません! スターディフェンドシステム、オン!!」
スマホをタップするユキ子。大きな光の玉が彼女を包み込み、服が弾き飛んで白いグローブとブーツ、青いスーツが構成されていく。
リトルスノウユキ子「スターディフェンダー リトルスノウユキ子、参上!!」
熊男「なにっ、やで!?」
リトルスノウユキ子「でやあーっ!!」
熊男「うわあーっやで!?」
ドカーン!
めありん「凄い! パワードスーツ姿のユキ子ちゃん、あの120キロはありそうな熊のおじさんを片手で投げ飛ばしちゃった!」
ユキ子「めありん、お願い!」
めありん「うん! 今度はわたしの番ね! みるきぃ☆めありんプリティチェーンジ! アダルツタッチでカッコいい婦警さんにな~あれ☆」
キュルキュルキュルリ~ン☆
大人めありん婦警「食い逃げ熊のおじさん、逮捕します!」
ガチャッ! ガチャッ!
大人めありん婦警は、倒れている熊男の後ろ手に手錠を掛けた。
熊男「クソーッ! クソーッやで!」
大人めありん婦警「(通信機に)あーこちらめありん、食い逃げ犯を現行犯逮捕しました! 大至急応援お願いします!」
数分後。
佐和子「おう、めありんじゃねえか!」
大人めありん婦警「あ、佐和子警部」
佐和子「食い逃げ犯ってのはそいつだな?」
大人めありん婦警「はい! 署への連行お願いします」
佐和子「任せとけ! ほら、キリキリ歩け、この熊!」
ドカッ!
熊男「ギャッ!やで」
ひろみ「何も蹴り飛ばさなくても」
佐和子「うるせえ!」
ポロッ。
全員「あ…」
ひろみ「熊のヘッドが取れた!」
佐和子「お前は携帯ショップの豚男! ふーん、そういうわけか。熊になんかなりすましやがってこの豚がぁ!」
豚男「ううっ…。ボクはなーんもしてへんええ子やのに、何でみんなボクをいじめるんややで…シクシクシク…」
佐和子「はぁ? 何いってんだコイツ? ほら、立て! 立つんだよこの豚!」
ドカアッ!
豚男「ギャッやで!」
数日後、雪天署。
由布子「『感謝状 冬山ユキ子殿 メアリー・ホワイト殿。あなた方はにっくき犯罪者を捕らえ、街の治安を守ることに協力してくれました。よって、ここに感謝状を贈り、その栄誉と功績を最大限にたたえます。令和5年8月6日 天空市雪天警察署署長 森下由布子』。二人とも本当にありがとう!」
ユキ子、めありん「「はいっ!」」
佐和子「街のゴミ掃除、ホントにご苦労さん! あの後、押収した豚男のスマホを見たんだけどよ、大層ご立派な政治的発言と、写真付きの外食自慢、あの熊の着ぐるみ姿でのイベント参加自慢が混在してて、すげえカオスなタイムラインだったぜw」
ユキ子「着ぐるみでのイベントって、着ぐるみアクターの方だったんですか?」
佐和子「いや」
ユキ子、めありん「「うわ」」
佐和子「ハハハハハw とにかく、お前たち見上げたもんだ! どうだ──」
ひろみ「悪人を蹴り飛ばしたり、悪人に銃をブッ放すのが気持ちいいから警官にならないかって誘うの禁止ですからね警部」
佐和子「チッ」
=END=
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