No.112324

真恋姫無双 美陽攻略戦 第十五ターン

Thyleさん

第15回目の投稿です。
読みにくい点や日本語がおかしい部分があるかもしれませんが、宜しくお願い致します。

2009-12-15 00:43:10 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:2218   閲覧ユーザー数:2020

  美陽攻略戦

 

 

 

 

 

 

 

      (はじめに)

 

 

               さあ、お家騒動勃発になるか!?

 

                         ・・・・できれば読んでください。

 

 

           

 

 

 

                                 

 

 

 

 

 

 第十五ターン

 

 

 

 

              猪々子は医房にくると患者を寝かせる寝台に審配を寝かした。

 

          「猪々子、

             老いたワシになどかまうな。すぐに宗主様のもとに行け!ゴホゴホ」

 

                     「でも、じっちゃん……」

 

               審配の様子が気がかりな猪々子はその場を離れたくはなかった

 

                         行け! 

 

                強い口調で言われ猪々子は渋々その場をはなれた。

 

               猪々子が部屋を出ると、戸口に典医が脇で控えていた。

             

                 猪々子は典医を見るや、

                      すぐさまその首を締め上げた。

            

                   「じっちゃんの容態はどうなんだ!」

           

           猪々子の鬼気迫る表情で首を締め上げられている典医は怯えながら言った。

        

            「文醜さま…

                審太師の病は腫で、腫は肺の蔵から全身転移し、

                           もはや鍼や薬湯では… ぐほ!」

 

 

             猪々子は典医の話など最後まで聞きたくなく、典医を突き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   審配は強く咳き込み、手を口に当てた。

                      口に当てた手を見た。

                   手の平は真っ赤に染まっていた。

            

                今まで気力で刺すような胸の痛みに耐えてきたが、

                   もう無理がきかなくなったようだ。

 

                       ……無念だ。

 

                    郭図にはワシの後任として

               

                   袁家家臣団祭酒の地位の推挙と

                ヤツが咽喉から手が出る程欲しがっていた

              朝廷の御史台での機密調書の閲覧資格である御史中丞

              

                    の肩書きをくれてやったが……

                  これで暫くは、時間稼ぎになるだろう。

 

 

                      だが、ワシが死んだあと、

             異母姉妹の美羽様を擁立しようとする七乃を中心とした輩が動き出し、

               麗羽様は袁家宗主として、周囲に虚勢をはらなければ

                  群がる親族や佞臣にいいように食い物にされてしまう。

 

                     これでは麗羽様はお心を閉ざし、

             永遠に虚勢を張り続けなければ宗主の孤独に耐えらなけれないだろう。

 

                        それを考えると……

 

                     老いた目から涙が滲み出てきた。

 

 

               天よ! 

 

                 この正南に三年、いや一年でいい! 

 

                      今、しばらくの猶予をくだされ!

 

                  さすれば、この正南、

 

                      麗羽様が笑えるように智謀の限りを尽くそう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                咳き込みは更に酷くなり、吐血の量も多くなってきた。

                   審配は自分の命が残り少ないのを悟った。

 

                        もはや…これまでか……

 

 

                   (……コノ魏ガ、キキトドケテヤロウ)

 

 

                  審配の脳に直接響くような声が聞こえた。    

 

            すると、先ほどまで外で罵声を挙げていた猪々子の声が聞こえず、

                   光に映し出された影が止まっていた。

 

                  審配は異常を感じ部屋の周囲を見渡した。

 

                誰もいないはず部屋には、

                          見知らぬ青年が佇んでいた。

                    

                        (審配よ・・・)

 

            青年の声を聞いた瞬間、審配の脳に焼き付けるような痛みを感じた。

 

 

                それが次第に弱くなるのと比例して

                      全身を刺すような痛みが薄れていった。

 

 

                  審配は青年を見て、全身が総毛立つ感覚を感じ、

                        

                          唾を飲み込んだ。

 

                         

                      ……この久しく、忘れていた感覚、

                

               戦場で何度も生死を別ける選択をする際に働いた直感であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          (地獄の獄卒が来たか……

             この正南、袁家の為ならと幾たびの戦で多くの無辜の民を殺めてきた。

                      今更地獄の獄卒が来たところ驚くこともあるまい)

                  

                     審配は自嘲的な笑いをしていた。

 

 

               (審配よ、余は魏白陽、

                     神代から来世まであらゆる時、

                        あらゆる領域に行き来するものだ)

 

 

                          魏白陽……?

 

               たしか、先帝陛下の御世に、楊州の名家出身で道家に傾倒し外丹

              術と称して一万もの民を何かの人体実験をし、朝廷からたった一人

              を捕縛するのに三千という異例な数の兵が送られた。

              

               そして、魏白陽の館にはもはや人とは言えない奇怪な生き物や工

              房を覗いた兵達は皆狂死にし、捕縛後直ちに処刑されたがその遺体

              は消えたという話を聞いたことがある。

 

                    

                  審配は全身に鳥肌が立つのを感じながらよく観察した。

 

               この話は余りにも奇怪で史書に記るべきではないと削除され歴史

              の闇に送られた。ワシが読んだ御史台で保管されていた閲覧禁止調

              書の記述ではこの事件は100年も前の話で、その当時、魏白陽は

              とうに100歳を越えていたと記されていた。

 

 

                   だがこの若者はどうみても20代にしか見えない。

 

                 (審配よ、汝を助けることができるものは、

                        余しかおらぬ。余に従え。

                              さすれば汝を助けてやろう)

 

 

 

                          生きられる。

 

 

                     審配の目にかすかな希望の光が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           しかし、審配は己の渇望を相手に悟られないように、

                         冷静に相手の出方を窺いながら言った。

 

                    (魏公よ、目的は何だ?)

            

              魏は面白いオモチャを見つけた子供のような

                              笑みを浮かべながら言った。

 

               (審配よ、汝は巷で広められている

                        管公明の占い歌を聞いたことがあろう)

 

                  (管公明?巷を騒がせた占師管輅か?)

                          

                   審配はおぼろげな記憶を思い起こした。          

     

           確か、江南のある地方の郡、瑯椰(ろうや)太守に招かれて百人の学者と

          論をたたかわせ、一座を圧倒したという話が一時期流れた。

     

           しかし、管輅は焼け爛れたような醜くい風貌で、異様な容姿の無頼漢達と

          の交友で次第に人々から忌諱されるようになり、ある日、白昼の市場で目に

          は見えない化け物に貪り食われたという奇妙な噂が囁かれたが……

                    

              審配はこの話は迷信を信じやすい江南で噂に尾ひれがついて

              流言飛語が飛び交った結果だと考え、相手にするほどの価値

              のない話と思っていた。

 

             (管公明は天の神機を洩らし、そのかどで天に拘束されている)

 

                魏は審配の心を読んだかのように審配の脳裏に囁いた。

           

             (ヤツは、

                  『天の御遣いが現れ、戦乱の世を平定する』

                   と占い歌を巷に流し、餓えや戦乱で苦しむ民草に

                           希望の光を与えるため、歌を流した)

 

                     魏は不快を顕わに、はき捨てた。  

          

             (天数(命運)は──今の漢王朝が瓦解し、

                      新たに均等された力をもつ三国による

                           終わり無き冷戦の世にすることだ。

                      審配よ、余に従え、

                          さすれば汝の渇望するものを与えよう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            魏は何も無かった空中から、赤子の頭程の水晶の頭蓋骨を左手に掲げた。

 

 

                     骸骨がら強烈な光が発光した。

 

 

             部屋は強烈な光源により照らし出され、審配は反射的に目を閉じた。

          次第に光が弱くなり、審配はゆっくり目を空けると己が見ている光景に驚愕した。

 

 

             

 

          幾分年をとり相応の美女となった麗羽、

          その脇には鎧や剣等の代わりに朝廷の女官の服を着た斗詩と猪々子が控え、

          一人の優しそうな光を反射させる衣服を着た青年が三人の子供達をあやしていた。

 

             二人の男の子は優しそうな青年と剣術の真似事をして、

                             倒れた青年に飛び掛っていた。              

             それを見て、

                 声は聞こえないが麗羽は虚勢をはることなく

                  

                   心の底から楽しい、笑い顔が伺えた。

                     

                       斗詩と猪々子も笑い、

          

          以前のように命の危険にさらすことはなく官僚としての人生を謳歌していた。

 

       

   

                 まるで、そこは春の日差しのような暖かさであった。

 

 

 

 

         審配はあの若者はと、皇族から門閥貴族、有力名家の等の嫡子の顔を思い浮かべた。

                しかし、あのような風貌の若者は審配の記憶にはなかった。

                           

                       そうか…

                          ならば、これは…

 

                        審配はある結論に達した。

 

 

            思索していた審配に、

              一人の女児が手造りの古い人形を大事そうに抱え審配を見て笑っていた。

 

            それを見た審配は、

                 絶対に見間違えることはない麗羽の幼少の頃の面影が窺えた。

            その女児が後生大事に抱えている人形は

                 かって審配が麗羽に作って差し上げたものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      ……じぃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        麗羽様……

                   

 

                  聞こえるはずがない声を聞いた瞬間、

            審配は今まで先代、先々代と仕え何度も死線を潜り抜けてきたが、

                これほどまで生を渇望したことはなかった。

 

                 すると、周囲は一変しもとの部屋に戻った。

 

           世界は再び沈黙に支配され、魏と審配以外は全て止まっていた。

 

 

            (審配よ。余に従うなら、この未来をお前に見せてやろう)

 

              しかし、審配は魏に返事をせず、下を俯いて無言でいた。

                暫くすると審配は肩をゆすっり哄笑しだした。

                  魏は審配が突然、哄笑したことから、

                

                     審配よ。何が可笑しい

                

                   と怒気を含んだように言った。

 

              審配は笑うのを止め、睨みつけるように魏をみた。

 

            (魏公よ。   

                面白いものを見せてもらったことに感謝する。

                 しかしこの正南、貴様ごときの輩と取引するともりはない。

                                   早々に立ち去れ、下郎!)

 

           魏は美を追求した黄金律の美貌から、一変して鬼のような形相になった。

              そして、部屋の温度が急激に下がったかのように感じた。

                   魏は凍るような目を審配にむけ言った。

 

            (審配よ、

                キサマは生きてこの未来を見たくはないのか、

                                余しか汝を助ける方法はない)

 

 

 

                     数瞬、審配は目を伏せ、

                何かを決意したかのように力強く言った。

      

            (袁家を背負う宗主の恩ためにと、ワシは終始考えていた。

                          しかし、ワシは大きな過ちを犯していた。

              

               宗主の為、お家の為に、と思っていたのはワシの方で、

                  宗主はワシに応えようと苦しみの道を歩ませていた……

                もはや、ワシがこの世にいることは……

                        宗主により苦しみの道を導くことにすぎない)

 

                          

            憤怒の形相で魏は姿を消し、

                   声だけが呪うかのように審配の頭蓋骨に鳴り響いた。

 

 

          (では審配よ。

               袁家が滅亡し、貴様の姫君が流浪の民となる未来を受けよ……)

 

                  

              審配は魏の最後の言葉を受け、魏を嘲けるように言った。

 

          (未来は貴様の思うとおりにはならん。

 

              宗主は袁家という呪縛から解放されて自由になるが、

                     その未来は、その志は、

              受け継ぐものがいる限りその可能性は消えることはない。

 

              

            たとえ袁家が滅んでも、その血脈で志すものがいれば

                   袁家は不死鳥の如く何度でも甦る、 そう何度でも!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          そして、外の方で怒号が聞こえ、周囲から様々な音が聞こえるようになった。

    

                   審配は寝台に横たわっていた。

 

              横目で部屋を見渡したが何もいる気配はなかった。

                審配は元の世界に戻ったことに安堵した。

                  

                       

   

                胸が刺すような痛みと胃から何か込み上げる感覚がした。

           次の瞬間、口から大量の血を吐き出し、寝台の敷物や枕を赤く染めていった。

 

                 敷物は血で染まり濡れた感覚を感じるはずが、

                  四肢には、もはや感覚はなくなっていた。

  

            審配は呼吸するたびに、

                ケホッ と血を吐き、身体は冷たくなり、

                        他の感覚が段々となくなってきた。

 

 

               目や耳の感覚がなくなり、

                   審配は薄れていく意識のなかで

                   先程の笑っていた麗羽達を思った。

 

              あとは、あの若者が麗羽様達を自由へと導いてくれる。

 

 

                     もはや、悔いはない……

                       だが、あの若者は、

                        一体誰なのか……

 

 

 

                  

                    唯一残った暖かい思い出を最後に

                    審配の心臓は脈打つことをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                       「じぃ!」

 

 

                   麗羽は周囲の目など気にせず、

                    部屋に飛び込んできた。

                   少し遅れ斗詩と猪々子が続いた。

 

                  三人は寝台に目をやり、息を飲んだ。 

    

           審配は既に大量の血を吐き、流れた血により絹製の枕や布団は朱に染まり

 

                       絶命していた。

 

           しかし、その死に顔は何か満足したかのように安らかであった。

 

                       「ひ、姫…」

 

                   猪々子は麗羽を気遣って言った。

 

                       「斗詩さん」

 

                   麗羽は後ろを振り向かず言った。

 

          「袁家の家臣、縁者達に連絡を、

                   じぃ…審太師は天命により逝ったのです。

                これより袁家は故人を偲び、一年、イや一週間、ダメ! 

                             ふ、二日間の喪に服します!!」

 

              儒教では故人を長く偲べば偲ぶほど孝道とされている。

              しかし、麗羽は宗主として例え太師であっても一家臣が

              死んだにすぎないものとして薄葬を指示した。

 

 

              斗詩は麗羽の肩が震えているのを見て何も言えなかった。

 

                      「猪々子さん!」

 

               と言われ猪々子は慌てて斗詩と麗羽の双方を見た。

 

          

          「至急冀州の家臣達に命令を、

               …審太師のいっ、遺志を・・・くみ二日以内に

                       袁家による天下泰平の策を挙げなさい。

                                      すぐに……」

 

               「ひっ、姫…そんな献策をすぐになんて…」

 

                       すぐによ!!

        

               と麗羽に怒鳴られ二人は直ちに部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            その夜、斗詩と猪々子は暗い表情で

                 麗羽の私室につづく回廊の入り口に立ち、

                             抜き身で剣を持っていた。

 

 

                    回廊周辺には誰一人いない。

 

 

                  それでも二人は無言のまま立っていた。

 

 

            両者は家臣のものが興味本位で

                      麗羽の私室に立ち寄らないように警戒していた。

             それが、たとえ袁家の親族や重臣であったとしても

                   袁家宗主の矜持を守るためなら躊躇うことなく

                                 切り捨てる覚悟でいた。

 

 

           しかし、家臣のものでそのような不届きな考えをするものは誰もいなかった。

 

 

 

 

                     邸内は、麗羽の部屋から号泣する声だけが聞こえていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     袁術別邸

                     「~♪」

 

              美羽は庭園内に設けられた池の中央にある亭にいた。

           綺麗な声で昔教えてもらった歌を歌いながらご機嫌な様子であった。

           

           蜂蜜を絡めた菓子や季節の果物、甘い芳香を放つ蜂蜜水等が机の上

          に並べられ、幾層にも重ねられた羽毛を入れた敷物に埋もれるように

          身を委ねまどろんでいた。

 

           時々、

             蜂蜜水を飲みながら手に持った古い人形で遊び、

                          まさに至福の一時を過ごしていた。

 

 

                     「お嬢さま~」

           

           と言われて美羽は振り向く

                   七乃が館と亭を結ぶ回廊を小走りで駆け寄ってきた。

                   

                 「どうしたのじゃ? 七乃、慌てて」

              

           美羽は手に持っていた人形を机の上に置き、

                           息を切らし慌てた様子の七乃を見た。

 

             「ハッ、ハイ! 

                 袁紹さんのところの……

                     審太師さんがやはり死去しました。ハァハァ」

                    

             「なんと!?、七乃それはまことか?」

           

             「ハイ、

                 袁紹さんの私邸に潜らせているものからも同じ話がきてます」

             「おお!それは僥倖なのだ。

                    あのジジィは会うたびに何時も妾を叱り、

                                      妾を………」

 

           

               

                美羽は話を中断して、蜂蜜水を一息に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          「エエ、お嬢さま。あの審太師さんがいたおかげて

                    本来袁家宗主の座はお嬢さまのものでしたのに」

 

 

             本来、先代袁家宗主が死亡したとき、袁家本妻の子である美羽

            が宗主になるはずであった。しかし先代宗主の信が厚かった審配

            が、袁家親族に対して『長幼の序』を盛んに主張し説き伏せていた。

 

             正室の遠戚にあたる七乃は正室からの命により、美羽擁立派の

            中心として表や裏で盛んに宗主就任争いをしていたが、ことごと

            く失敗した。

                

      

                 その結果、庶子である麗羽が宗主となった。

 

         その当時、七乃は物凄く悔しがったが擁立する美羽はあまりにも幼すぎ、

          もし美羽が袁家宗主に就任するには後見人を立てる必要があった。

             

      

             その後見人は正統性から言えば正室の一族がその任にあたる。

 

 

         しかし、この一族はあまりにも野心が高く、自分の一族の者を官職について

          いる袁家の者と入れ替えようと影で色々と画策していた。

           

            もし、美羽が袁家宗主になっていたら間違えなくお家騒動となり、

            これを理由に十常待は帝を動かし、朝廷の内外で力を持つ目障り

            な袁家の潰しを企てられたであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        「これで口うるさい審太師さんがいなくなり、

                今袁紹さんのとこはゴタゴタになっています♪

                   この隙に混乱を乗じて袁紹さんを失脚させ、

                         お嬢さまが宗主になるのは如何ですか?」

 

        「妾が宗主!?

            そうなれば七乃、もう口うるさい親族や家臣共から

                             もう何も言われなくなるのか?」

                       と美羽は驚きを隠せず思わず立ち上がった。

 

        「もう昔とは違うので、

            やかましい連中から何も言われなくなります。

              それに袁家の頂点ですから誰からも何一つ文句は言う人は一人もいません。

                    もうお嬢さまの好き放題、ヤリタイ放題♪ コノコノ」

 

       

             「そうか、妾が袁家宗主に……七乃、すぐに行動に移すのだ」

 

 

 

 

        美羽は袁家宗主になれば、誰一人やかましく言う人が

                    いなくなることに大喜びし机のお菓子を取ろうとした。

 

                     

               美羽はさきほど机の上に置いた古い人形を見た。

 

 

                      「七乃!!」

 

 

        前回の雪辱戦ができると大喜びし

           七乃は急いで席を立とうとしたところ美羽に呼び止められた。

             

            「七乃、さきほどの話じゃが……撤回じゃ……」

                  ハィ、と言って七乃は美羽の気分が急に変わったことに驚いた。

 

 

         「わ、妾はそんな宗主などという面倒なことはイヤなのじゃ。

                   袁家宗主などあ奴に相応しいのじゃ。

                    そう、妾には袁家宗主より三公の地位のほうが

                               相応しいのじゃ。それより……」

 

 

          と言って机から三つの爵(杯の名称)をとり、美羽自ら蜂蜜水を注いだ。

 

                     「七乃も呑むのじゃ」

 

                    と美羽は一つを七乃に渡し、

                            

         もう一つを誰もいない机の上、死者の霊が行くという秦山のある方向に置き、

                      

                      一つは美羽が持った。

 

 

                お嬢さま、と七乃は考え深けに美羽を見ていた。

          そして美羽は杯の蜂蜜水を一気に飲み干し、七乃も同じように飲み干した。

       

               美羽も七乃も無言で机の上に置かれた爵を眺めていた。

 

           

 

                   暫くすると、美羽は歌を歌い出した。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         美羽が殆ど覚えていない幼少の頃、

            豹変した母様や周りの大人達に恐怖で泣いてた美羽に

             誰かがくれた対となる1体の人形とともに教えてもらった歌であった。

 

 

 

                歌い終わった美羽は机の上の爵を眺めたまま、

 

 

                     ポツリとつぶやいた。

 

                

        「七乃、……七乃は一緒にいてくれるかえ?妾を一人にしたらダメなのじゃぞ」

 

 

               七乃は美羽の両目に涙を一杯に溜めた顔を見た。

              

 

 

 

                     家臣の前で涙を流す。

 

 

         

               袁家宗主は家臣に対し冷徹に死をも命令できる。

         しかし、一家臣に対して宗主が涙を流したら、見たことがない家臣や兵は

         それを不平に感じ、その者は何時しか離反や造反を企てる可能性が出てくる。

 

 

          その為、袁家宗主は家臣の前で涙を流すことを固く禁じられていた。

 

 

            

         しかし袁家宗主でない美羽にとって、これは限られた自由の一つであった。

 

 

      

                

                 「ふふっ。もちろんですよ。お嬢さま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (あとがき)

 

 

    はじめまして、この度は  美陽攻略戦 第十五ターン をご覧になって頂きまして

 

    ありがとうございました。

 

       と、このようにして麗羽は審配の遺志に固執して、決断すべきところで決断できず

      誰か味方で、誰が敵かを判断出来ずにこれ以降から袁家の没落が始まるのでした。

 

       おバカ過ぎる麗羽では、今回の話のメインテーマである『権力に付随する責務』を

       出す為に、麗羽を故意にキャラ崩壊したのですが……

      

      キャラ崩壊と言うと、例えば鋼の錬金術師の大総統に

                

       「好色ではない!弩スケベだ!(天体戦士サンレッドのヘンゲル将軍のお言葉)」

      

      という感じを考えていたのですが、書いている本人自身書き終えて、何か違うなとい

      う感じになりました。おかしいな~?

 

       それにしても、麗羽は謎の青年の第○○号夫人で、猪々子や斗詩はゴチになりました

      と知ったら、太師化けて出てくるだろうな……(笑)

      

    最後まで、本編を読んで頂きまして大変ありがとうございました。

 

      

 

 

 

 

 


 
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