No.110215

ショタ一刀のお祭巡り(冥琳編)

MiTiさん

皆さんお待たせ?しました!
真になってファンが急激に増えたと思われる彼女、冥琳編です!
どうぞお読みになってください!

2009-12-03 02:39:26 投稿 / 全24ページ    総閲覧数:14459   閲覧ユーザー数:10937

「第?回『戦術闘議会』、優勝者は…周喩様でございます!」

 

「っふ…私らしくもなく、最強連携を7試合で使ったのだ。これで優勝しないほうがおかしい」

 

余裕を見せて不敵に微笑みながらも、内心ではこれ以上に無いほど冥琳は喜んでいた。

 

「孫堅様…優勝できたのも貴方様のお陰です」

 

冥琳が使った最強コンボとは…孫家三姉妹の母親である孫堅の召喚コンボ。

『孫策、孫権、孫尚香の三姉妹が揃い宿願が果たされしとき、

 夢が叶えられた孫呉の大地を一目見るために、天より孫堅が舞い降りる。

 それは一日一夜の夢物語。

 孫呉の民はかつての勇姿を目の当たりにし奮い立ち、

 孫家に導かれし呉の民は勝利を掴む行軍を開始する。』

とある条件を満たし孫堅に召喚することができれば、

次の自分のターンまでもはや無敵とも言える布陣になる。

孫堅をどのように利用して勝利を掴み取るかが重要になる。

 

で…それを冥琳は使いまくって優勝することが出来た。

 

その後、表彰、閉会式と滞りなく終了し、冥琳は一刀を迎えに歩き始め、

一歩踏み出したところで、会場の出入り口に現れた人物を見て顔を綻ばせる。

 

「お姉ちゃーん、おーめーでーとぉう!」

 

教科書に載せられるような綺麗な三段跳びで、一刀は冥琳の胸に向かって飛び込んでいく。

そんな一刀を冥琳は満面の笑みで抱きとめる。頭を胸に挟みこんで…

優勝は一刀の同伴権を得るというルールであったが、当然一刀はそのことを知らない。

今一刀が自分に懐いてくれるのは、自分が優勝という成績を残し、それを評価してくれているからだ。

 

それでも、一刀は今自分のことを姉として、母として、家族としてみてくれている。

それを感じ取った冥琳は、軍師としての硬い頭や心がほぐれて柔らかくなっていくのを感じる。

それを感じるのと同時に彼女は決心する。

 

この祭の期間、自分は一刀の保護者として、姉として、母として見事務めると。

 

「さぁ、今日はもう遅いから、早く部屋にいって寝ようか?」

 

「は~い」

 

輝かしい笑顔を向ける一刀に、自分も笑みを返しながら、

彼の手を取り部屋へと歩を進める。

 

部屋に着くまで、寝台に入るまで、一刀が寝入るまで、

冥琳は姉、母としての心地よさを感じていたのであった。

 

 

『ジョオウ様侵食率○○%』

 

祭の2日目、冥琳と一刀2人の祭の1日目の朝。

 

昨晩、自分の腕を枕にして眠る一刀の暖かさを感じながら眠った冥琳は、

朝日と共に起きたのだが、自分の傍にいないことに…

一刀が布団の中にいないことに驚く。

 

僅かに上半身をゆっくりと起こしながら部屋を見渡すが一刀の姿は見当たらない。

 

まさか既に起きてどこかに行ってしまったのか!?

と思い慌てて布団を払いのけ寝台から降りようと、したところで…

 

フミュ

 

床に足を着けようとしたはずが、何か別の柔らかさを持つ何かを踏む感じがした。

視線を下げてみると、そこには乱れた状態の寝着を着た一刀が仰向け大文字の状態で寝ていた。

 

「…なんだ、単に寝相が悪かっただけか。脅かせおって」

 

苦笑をこぼしながら、冥琳は一刀の頬を軽く踏む。

普通なら腰を折って指先で突くところだが、

顔を足で踏むという普段味わえない感触が存外に気持ちよかったので暫くフミフミしていた。

 

が、突然一刀が寝返りを打つと共に足首を掴んでくる。

また抱き枕にでもされるのかと思ったが、一刀がとった行動は予想外のものだった。

何と、一刀は冥琳のつま先に接吻をした!?

 

驚き、反射的に足を引こうとするが、掴む力が更に強くなり、追い打ちに一刀に足の指を舐められてしまった。

 

冥琳は顔を赤らめ驚愕し慌てふためく。

一刀の行動にも驚いているのだが、それ以上に、

一刀に足を舐められることにある種の快感や背徳感を感じていることに驚いた。

 

「(一刀がわ、私の足を舐めッ!?い、いや…

  一刀は今寝ているのであってこれは寝相の悪さが原因なのであって…

  足を舐める行為は跪かなければ出来ないことから相手への服従を意味し、

  それはつまり一刀は私の奴r…って、何を考えているのだ!?)」

 

得意の理で自分を落ち着かせようとするが、落ち着かせるはずがどんどん妙な方向に…

深呼吸して落ち着かせてから、先程よりも少々力を込めて一刀を押し揺らそうとする。が…

 

「ん…ゥア…ゥンァア…」

 

「…………………」

 

力が込められるたびに一刀は身悶える。

その光景を見て、先ほど以上の快感、背徳感、優越感が冥琳を襲った。

 

言うまでも無いが一刀は踏まれてM的な喜びを感じているのではない。

単に寝ている中、外からの感触にくすぐったがっているだけだ。

 

踏んでいる側の冥琳は先ほど以上に顔を赤らめながらテンパっている。

 

「(一刀が私に踏まれて喜んで…って違う!

  一刀も私も曹操と荀彧のように喜んでいるのでは断じてなくて。

  こうして幼少のころから少しずつ育てれば、将来的には私に何をされても許すように…

  って、何を考えている!?落ち着け、私~)」

 

もはや自身を思い留めようと思考はピークに達しつつある。

だんだん、だんだんと軍師としての頭脳が、ジョオウ様の私利私欲思想に侵食されていく。

 

その中で、

 

「んみゅ~…」

 

一刀は足に触れている状態のまま寝返りを打った。

触れていたのは冥琳の足と一刀の唇。

唇の奥にある舌が、足の親指から始まり一本一本小指まで行き、

そこから踵まで舐め通っていく。

 

不意打ちで背中をなぞられるのとは比べ物にならない感触が冥琳の全てを震わせ、

ついに冥琳は思考の限界を超え…意識を手放した。

 

 

昼頃になり冥琳は再び目を覚ます。腕に重みを感じたので、

布団を捲ってみると、一刀が穏かであどけない表情で安らかに眠っていた。

 

そうすることで安心感を得ているのか、しっかりと冥琳の腕を抱き込み枕にしている。

それを見てやっと安心し落ち着くことが出来た。

 

「うむ。やはり子供はこうでなくてはな。これこそが正しい姿だ」

 

一刀の頭を撫でて和んでいると、やがて一刀が起きた。

 

「んっくぁあ~…おはようございます~zzZ」

 

「こらこら、せっかく起きたのに寝ようとしない。っさ、もう昼だ、食事を取って外に出かけよう」

 

「ふぁぁ~い」

 

一刀は眠そうにしながらも起きた。そんな仕草にも愛おしさを感じる。

冥琳は一刀を着替えさせ、自分も着替え、部屋を出た。

 

 

 

こうして、冥琳のジョオウ様化は防がれたのであった…

 

 

『将来の予行演習、のはずが…』

 

祭2日目の夜。冥琳はとある戦場を前にして緊張の面持ちをしていた。

戦場とは…銭湯という施設である。

 

たかが銭湯、されど銭湯。その中には冥琳にとっての敵が大勢いるのだ。

一刀の保護者として彼の体を洗うのは自分の役目であると冥琳は考えているのだが、

生まれてこのかた子守の経験は無い。

何処をどの様にどれくらいの力加減で洗えばよいのか?

軍師の冥琳は緊張の余り、その性格からついつい余計なことを考えてしまう。

その余計な考えが、風呂にいるほかの客、特に身内の将達のことを敵と認識してしまった。

 

最要注意人物として認識されたのが紫苑、祭の二人。

片や現役母親、片や孫家三姉妹の母の代より呉に仕え自分を含めて孫家に関わる者の成長を見てきた宿将。

後者は子供を苦手としているが一刀は別らしく、紫苑も祭も子供の扱いに関してはお手の物だろう。

その他の将達も一刀を虎視眈々と狙っており、自分が一寸でも隙を見せたなら即座に奪いに来ると予想できる。

 

大きな風呂に入れると喜びはしゃぐ一刀を見て自分を落ち着かせながら、

冥琳は入浴用具一式(タライ、タオル、石鹸、シャンプー)を持って浴室への扉を開く。

因みに眼鏡は外しています。

 

扉を開けた瞬間視界が中にこもっていた湯気によって白く染まり、風で流されて中の様子が見えるようになる。

湯気が晴れたそこには、予想通り冥琳にとっての敵がいた。

予想外なのはその人数。なんと身内(呉)のメンバーの全てが集まっていたのだ。

ここはひっそりと見つからないようにしようとしていたが、それは一刀によって出来なくなった。

 

「あ~、お姉ちゃんたちだ」

 

「ん?あら、一刀くんじゃない♪」

 

一刀の呟きにまず雪蓮が反応し、雪蓮の言葉に他の全て気付いた。

敵に気付かれたことに、冥琳は平静を装いながらも皆に気づかれないように舌打ちする。

 

「これからメイリンお姉ちゃんとおふろで洗いっこ♪」

 

「と、言うわけだ。それじゃぁ一刀、行こうか?」

 

「うん!」

 

とらわれる前に即時退避。その隙の無い動きに全員は舌打ちする。

 

 

 

「それじゃぁ、まずは髪を洗おうか?」

 

「おねがいしま~す」

 

この日初めて使う新発売のシャンプー。恐る恐ると言った感じて手の平にその白い液体を出し一刀の頭に乗せる。

手で、指で揉み解すと見る見る泡が立ってくる。予想以上の泡の立ちように驚きながらも、

冥琳は丁寧に、丹念に一刀の頭を洗っていき、

 

「流すぞ」「は~い」

 

桶に溜めていたお湯を頭上から賭けて泡を洗い流す。

完全に泡が洗い流されたのを確認した冥琳は一刀を自分に向かせて問いかける。

 

「どうだった?痛かったりかゆくはなかったか?目に泡が入ったりはしなかったか?」

 

普通に問いかけている風に見えてはいるが、実は結構不安だったりしています。

これでもし一刀から不満な回答が帰ってきてしまったら…

 

「うん。気持ちよかったよ♪」

 

「そ、そうか?よし、次は体を洗ってやろう」

 

一刀の回答に安心した後、タオルに石鹸を染み込ませて身体を洗っていく。

不満が無いか問おうとしたが、それは杞憂だったらしい。

体を洗う間、彼は始終気持ちよさそうな表情を…

 

「うぅ…ん…ぁあ…はぁぅあ…」

 

気持ちよさそうではなく気持ちよすぎるようだ…

その顔を真っ赤にして身悶えているさまはもはや絶頂寸前。

力加減を変えて洗ってみるが、どのように加減にしようと一刀は感じてしまっている。

このままでは絶頂で頭を真っ白にしながら意識を手放されてしまう。

それはまずいと感じて、一刀がイってしまう前に終わらせることにした。

 

「ほ、ほら…終わったぞ」

 

「ハァハァ…き、気持ちよかったよ///」

 

「そ、それは何よりだ」

 

「じゃぁ今度はボクが洗ってあげるね!」

 

姉弟、もしくは親子で洗いっこ。冥琳にとっての理想の入浴光景を実演でき喜びながら了承した。

一刀も冥琳と同様彼女の髪を丁寧に丹念に洗っていく。

 

「お姉ちゃんのかみ、すごくきれ~」

 

「ありがとうな。長くて洗いづらくは無いか?」

 

「ううん。すごくうれしいよ!お姉ちゃんのかみをきれいにできて♪」

 

質問の回答は得られなかったが、一刀が喜んでいるならばと思いそのままにした。

 

因みに…

 

雪「髪の長さ、艶やかさなら私も負けていないわね♪」

 

明「ハイ!それに、私なら一刀君に背も近いから洗い易いはずです!」

 

小「む~、背の高さならシャオが一番近いもんね!」

 

蓮「…思春、亜沙…貴方達はダメよ…」

 

思「な、なぜですか…蓮華様?」

 

亜「私達は皆さんのように特別長いわけでは…」

 

蓮「ええ…でも貴方達は普段髪をまとめているからその全容は見えていないわ。

  今は入浴中だから伸ばしているけど、その状態を一刀がみたら、

  普段とは違う貴方達に魅了されてしまうかもしれないのだから…」

 

思・亜「………」

 

穏「…まぁ~、なんにしても冥琳様が許してくれないでしょうけど~…」

 

全「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

髪を洗い合い、次に体も洗い合い終わってから湯船に浸かろうとしたその時、

 

「そうだ!お姉ちゃん、かたモミモミしていい?」

 

「…なぜだ?」

 

「お父さんが言ってたんだけどね。おっぱいの大きな女の人って肩がかたくなりやすいんだって。

 お姉ちゃんのすごくおおきいからかたもかたいと思って…」

 

一刀の言葉に、女湯にいた客の、小蓮・明命・亜沙・思春含む7割の女性が心に大打撃を負った…

そして提案された本人である冥琳は、確かに自分が一般より大きめであると自覚はしてるがw

特にそれほど肩こりに悩んでいるわけではなかった。

が、折角の一刀の好意を無駄には出来ないと思いマッサージを了承した。

 

「ではよろしくして良いか?」

 

「うん!」

 

冥琳に言われ、一刀はマッサージに挑む。

 

揉む場所などは的確にツボを突いているので気持ちよくはあるのだが、

非力な子供の力ではいささか力不足で、マッサージというよりもくすぐられていると感じてしまう。

くすぐったさから逃れようと冥琳は止めようとする。

 

「ぅっ、っく…か、一刀。ありがたいし気持ち良いのだが一刀の力では」

 

「う~…お姉ちゃんかたじゃないところもすごくかたくなっちゃってるね」

 

「……え?」

 

「それじゃあボクがぜんぶなおしてあげる!」

 

非力ゆえに、女性特有のやわらかさの中の筋肉の硬直を、

僅かなものであっても一刀にとっては十分に凝っていると感じてしまい、

一刀は嬉々として全身マッサージを敢行した。

…それが冥琳にとっての生き地獄の始まりだったwww

 

一刀のマッサージは確かに身体の凝りは解れて気持ち良い。のだが…

何故かは知らないが、一刀は身体のあらゆるツボを的確に刺激してくる。

敏感になるツボ、感覚が強められるツボ、気持ちよくなるツボ…

驚くべきことに一刀はこれを無自覚無意識に、しかし細密に正確に捉えるのだ。

 

止めようとするも、全身がまるで性感帯のようになってしまっていて、

口から発せられる言葉は全て喘ぎ声になってしまう。

だが、このままではいけないと意を決し一瞬でよいから我が身に襲う快感を耐えようとする。が…

 

「それじゃぁ、さいご!げんきになー~-~れ!!」(プス

 

「ッ――――――――――――――――!?!?」

 

指の一突き、ただそれだけで全身に電気が走りぬけ、頭の中は真っ白になってしまい、

顔どころか全身を真っ赤にしながら冥琳は果てた…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

女子脱衣所の涼を取るスペースにて、冥琳は自分に吹く涼しげな風で目を覚ました。

まず目に入ったのは、団扇を仰ぎながら心配そうに自分を見つめる一刀だった。

 

「あ、お姉ちゃん起きた?」

 

「あ、あぁ」

 

「もぅ…気持ちよかったのはいいけど、のぼせるまで入ってちゃダメだよ?」

 

どうやら一刀の脳内では冥琳はのぼせ上がって気絶してしまったことになっているらしい。

まぁ一刀の手でイかされたというよりはましだと思った。性教育にもよろしくないし…

 

「ほんとに大変だったんだからね、みんなものぼせちゃうし」

 

「…待て?皆とは?」

 

「アレ」

 

一刀が指差した方向、今まで気付かなかったが、自分の真横には雪蓮が寝かされていた。

上半身を起してみると、雪蓮より先に蓮華、祭、穏、桃香、愛紗、紫苑、桔梗、麗羽、真桜、天和がいた。

その光景を一言で表すならば…死屍累々…

皆揃って全身を真っ赤にしながらも光悦とした表情で果てていた。

 

「こ、これは…」

 

「お姉ちゃんがのぼせちゃった後でね、オッパイの大きいお姉ちゃんたちがみんなモミモミして欲しいって。

 してあげたらみんなのぼせちゃったんだもん。もうプーだよプー!」

 

言いながらその擬音通り頬を膨らませる一刀を微笑ましく思い、

彼の頭を撫でながら冥琳は戦慄する。ショタ一刀…恐るべし!

 

 

冥琳は緊張の余り汗を流していた…

 

前を見れば戦場となる台地が…

 

後ろを見れば標的を囲みいれ火あぶりにする器が…

 

右を見れば標的を切り裂く刃が…

 

左を見れば標的を刺し穿つ槍が…

 

冥琳にとっての敵に囲まれている状況の中、彼女はその場から逃げることを許されていなかった。

 

何故なら…下を見れば鎧を身につけ武器を携えた一刀が自分のことを笑顔で見ているのだから…

 

そして、笑みを増した一刀は開戦の宣言を行う。

 

「おりょうりスタートーーー!」

 

そう、”料理”という名の戦を…

 

『お姉ちゃんと一緒にお料理』

 

時は祭り三日目の朝まで遡る。

 

朝起きて顔を洗い着替えを終えた一刀と冥琳は朝食をとろうと二人手をつないで食堂へと向かう。

 

食堂へ向かう途中、二人は厨房の前を通る。

厨房は料理や食材の出入りがやり易い様に扉は無く、

上から子供の背より少し高い位置までののれんが下がっているだけだ。

屈まなくとも見える一刀は厨房を覗きながらその前を通り過ぎようとする。その時、

 

「あ!」

 

という声と共に中に入ってしまった。

突然の行動に冥琳は慌ててその後を追って厨房に入る。

そこには料理をしている祭の姿があった。

 

「サイお姉さーん!」

 

「ん?おお、一刀ではないか。それに冥琳もか、何をしておる?」

 

「それはこちらの言葉です。ここは宿の食堂で出される料理を作る厨房。

 そこで何故祭殿が料理をなさっておられるのですか?」

 

「気分じゃ」

 

「気分?」

 

「おぅ、ここの料理になんら不満があるわけではないのじゃがな…

 どうも他の者が作る料理を食べるだけというのは落ち着かなんだ。

 じゃからこうして自分で作ってるのだ」

 

料理の手を止めることなく祭は答える。

中華鍋の中で肉や野菜がタレと混ざり合いながら宙を舞い、1つもこぼれることなく鍋の中に戻る。

それを繰り返し、時折調味料を加えたり、油を加えて熱を伝え鍋の内から火を噴かせるフランベも実演してみせる。

 

その鮮やかな手並みを、一刀は瞳を輝かせながら尊敬の眼差しで見詰めていた。

 

「お~…サイお姉さんすごーい!」

 

「そうか?まぁ儂程になればこれくらい朝飯前じゃ。

 さて…そろそろ良いかな!」

 

言いながら、鍋の中身を一際高く放り上げ、鍋の代わりに器を構える。

放り上げられた中身は具1つ、タレ1滴こぼれることなく器に盛られた。

完成する様を見て、一刀は思わず拍手を送った。

 

「スゴイスゴーーイ!!」

 

「はっはっは、ありがとうの。どれ、少し多めに作ってしもうたからな。

 二人も一緒に食べるか?」

 

「いいの!?」

 

「っふ、子供が遠慮するでないわ、ほれ行くぞ」

 

「うん!お姉ちゃんも行こう!」

 

「あ、あぁ…」

 

自分には出来ない技を見せられ、それを一刀が絶賛している所を見せ付けられ、

少しモヤモヤしながら冥琳は二人の後を追って厨房へ向かう。

 

 

「お~いしぃいーーーーー!!」

 

「えぇ…本当に美味です…」

 

「そうか、それは何よりじゃ♪」

 

二人の、どちらかというと一刀の反応を見て祭は満足そうな笑みを浮かべる。

 

食べる時、祭は一刀の箸の持ち方を指摘するが中々直らなかったために、

自分の膝に乗せて手を取り教えながら食べさせていた。

箸の持ち方ならば現時点保護者たる自分がその役を担いたかったが、

目の前の料理の全てが祭によって作られ、彼女が現状を望んでいるために、

料理が苦手、というよりほとんどしない冥琳は彼女を止めることができず、

互いに笑みを浮かべながら食べさせあう二人を不満げに見ながらおとなしく食べるしか出来なかった。

 

冥琳は普段よりもゆったりとしたペースで、一刀は掻っ込むように料理を食べていく。

 

そして、一刀の為に盛り付けられた祭の料理は一刀の腹の中に消えて行ったのだが、

そのおいしさから祭のばかりを食していたために白米の方がかなり余ってしまった。

そのまま食べても良かったが、一刀はあることを思いつく。

 

「そうだ!お姉ちゃんにも作ってあげるね!!」

 

「え?」

 

何を思いつき何を作ってくるのか?それを聞く間もなく一刀は、

かなりゆっくり食べていたためにあまっていた冥琳の白米の入った茶碗を持って厨房へ行ってしまった。

 

程なくして一刀は茶碗の乗ったお盆を頭と両手で抱えて戻ってきた。

「んしょんしょ」という声と共に、頭の上からずらされるようにお盆が机の上に置かれる。

お盆の上に乗った茶碗からはお茶の香りと飾りのように乗った魚や海苔の香りが混ざりながら漂っていた。

一刀が作ってきたものとは、

 

「じゃ~ん!おちゃづけかんせー!!」

 

そう、お茶漬けだ。

厨房にて余っていた食材を乗せて僅かに塩をかけて熱めのお茶をかけただけの簡素なものだ。

簡素ではあるが、10にも達しない歳の子供が作ったとなれば大したものだ。

二人は感心しながら一刀を褒める。

 

「それじゃぁいただきます!」

 

「いただきます」

 

二人は同時に茶碗を持ちお茶漬けを啜る。

一刀は自分の予想通りの味に満足そうに頷き、冥琳はその味に、その食感に驚愕する。

茶の僅かな苦味と具に乗せられた魚の塩味のコラボレーション、

抵抗無くさらさらと喉を通っていく柔らかな喉越し。

 

一刀にしてみれば”ゴハンにふりかけを掛けて食べる”程度の工夫ではあったのだが、

冥琳にしてみれば立派な料理に見え、外見は平静を装うが内心ではかなり落ち込む。

現在の自分の立場は一刀の保護者。つまりは姉、もしくは母親に当たるのだ。

なのにそれらしいことが全く出来ていない。

 

世間一般の家族像を想像した所、働きに行けるだけの体と知識を持てるまでは、

子供の世話は保護者が行うものだと冥琳は思っている。

家事、炊事、勉強、鍛錬その他諸々…

勉強に関しては得意分野であるし、鍛錬に関しては直接教えることは出来なくても軍師の立場から指摘することは出来る。

家事に関しては、傍らにいる雪蓮があの性格だから掃除や整理整頓はそれなりに得意だったりする。

だが…料理に関してはダメだ…

食事、酒の肴、その他諸々の料理は大体侍女達が行い、

自分は軍師の仕事に集中するためにあまり触れる機会がなかった。

釣りに出かけ釣った魚を料理するときも精々切れ目を入れて内臓を出して串に刺して調味料を振って丸焼きにするくらい…

 

このままでは保護者として失格だ。そして今目の前には自分達を育ててくれた祭がいる。

 

「ほほぅ、なかなかに料理の才があるようじゃな。どれ、ワシ手ずから教えてやろうか?」

 

「おりょうりを?」

 

「うむ、冥琳は正直料理を苦手としているでな」

 

さりげなく、されど確実に一刀を冥琳から横取りしようとしている。

祭の提案に対して一刀は、

 

「…メイリンお姉ちゃんって、おりょうりできないの?」

 

「っそ、そんなことは」

 

「ああ。この前出されたものはひどいものじゃったな」

 

誤魔化す隙も与えず祭は肯定する。

これを聞けば自分の所に来るだろうと思っていた。が、

 

「じゃぁボクメイリンお姉ちゃんといっしょにおりょうりのおべんきょうする!」

 

「「!?」」

 

その答えは予想外だった。

二人とも一刀は祭の下へと行ってしまうのかと、祭は期待しながら、冥琳は不安に思いながら予想していた。

 

「べ、勉強というなら教師になるものが必要であろう?ワシのような」

 

「それじゃぁダメなの!ボクたちでおべんきょうしておぼえなきゃいけないの!」

 

「じゃが、子供である一刀と料理の出来ない冥琳では危険じゃ」(グサ!

 

「メイリンお姉ちゃんは大人なのにおりょうりできないけど大人だからだいじょうぶ!」(グサグサ!

 

「いーや、大丈夫では無いぞ。この前料理本を手にしながらやっていたが、

 『猫の手を添えて食材を押さえつけ』と書いてあるところを美衣の手を添えてやったほどじゃぞ!」(グサグサグサ!

 

「おー!そうなんだ!おっもしろーい!

 でも今度はボクもいっしょだからだーいじょーぶ!」(グサグサグサグサ!

 

「…っっっくっく、はーはっはっはっは!

 そうか、冥琳だけでは不安であったが一刀あ一緒ならば安心じゃな!」

 

「そうなの!それじゃ、行こうお姉ちゃん?」

 

「………あ、あぁ…」

 

自分の欠点、現実、過去の醜態、それらを言葉の槍として心に刺され冥琳はかなり傷ついたが、

ならばそれを挽回しよう、そして見返してやろうと心に決め、冥琳は戦場へ向かう。

厨房という名の戦場へ…

 

 

 

 

それでは次のページにて一刀と冥琳の料理風景を音声のみでお送りいたします。

ちゃんとした描写を書けといわれるかもですが、これに関しては音声のみのほうが良いかと思いまして…

では”次>>”をクリック!

 

 

『鬼教官一刀』

 

 

「はい、そこ!急いじゃダメってさっき言ったよ!ゆっくりでいいからちゃんと同じ大きさにするの!」

 

「だが…祭殿ならばこれの数倍の速さで問題なかったが」

 

「あれはサイお姉さんだからなの。それともな~に?

 メイリンお姉ちゃんはさっきおりょうりはじめたばっかなのに、

 サイお姉さんよりもうまくなっちゃったって言いたいの?」

 

「か、一刀…なにやら子供らしからぬ迫力を感じるぞ…」

 

「サイお姉さんだってね、始めたばっかりのときはおキズのおクスリがお友達になっちゃったんだよ、多分。

 人っていうのはねおけがしていろいろおぼえていくものなの!

 そういうこともなしでうまくなっちゃうなんておりょうりへの孟徳だよ!」

 

「…それをいうなら冒涜では?」

 

「あっ、メー!お塩とかお砂糖とかはちゃんとはからなきゃダメだよ!

 お塩とお砂糖をまちがえるなんてまちがいなんかサイお姉さんに大笑いされちゃうよ。

 はじめからサイお姉さんみたいになんかできるわけないんだからね」

 

「わ、わかった…」

 

「い~い、メイリンお姉ちゃん。今のお姉ちゃんはね、

 おりょうりのことだったらただのと~しろーなの!だるまさんのいちばん下なの!

 言っちゃっていいなら虫けらなの!

 な~んのお役にも立てない戦力外なのゴミなのカスなのチリなの!」

 

「そ、それほどなのか…?」

 

「それほどなの。はい、ふくしょう。くりかえして!」

 

「ぐっ…わ、私は料理の素人です。達磨の最下です。虫けらです。

 戦力外でゴミでカスで塵です…」

 

「はいもう一回!」

 

「わ、私は料理の素人です。達磨の最下です。虫けらです。

 戦力外でゴミでカスで塵です…す、ぐ…ぬぅうう

 (耐えろ、絶えてはいけない…ここで涙を流すわけにいかない!)」

 

「はい、いいよ。おりょうりって言うのはね、ちゃ~んとご本をよんで味見をしながらその通りに作ったらね、

 スンゴイことがなかったら失敗しちゃうことなんてないんだよ?

 失敗しちゃう人はね「わたしだったらできる」とか「できるはずだ」って思ってかってに作っちゃうから。

 まずはお姉ちゃんはおりょうりできないってわからなきゃだめだよ」

 

「ぎ、御意…わ、私はゴミとしてカスとして虫けらとして料理させていただけることを

 天に感謝しながら誠心誠意教本通りに作らせていただきますっ…ぐぬぬぬ」

 

「よろしぃ、それじゃぁはい!」

 

「あ、ありが…『赤子にもできるお料理本』!? さ、流石にこれは…」

 

「メイリンお姉ちゃんはおりょうりのことだったら!?」

 

「ぐっ!…わ、わたしはゴミカス塵虫けら改め周喩公僅真名を冥琳として、

 赤子級の料理をさせていただきます…」

 

「うん!それじゃぁやろー!」

 

……………………………

 

 

『強敵、現る…』

 

一刀の鬼指導の後、冥琳は若干たどたどしかったが何とか料理できていた。

皮を剥いているはずがいつの間にか元の大きさの4分の1まで削れていたり、

輪切りにしているはずが切りきれていなくて繋がっていたり、

と少々失敗も見られたが何とかこなしていた。

 

で、肝心の一刀の方は今どんな感じかと彼の方を向く。

 

そこで冥琳は驚くべき光景を目の当たりにする。

 

一刀が…泣いていた!?

欠伸で若干涙目になるようなレベルではなく、大粒の涙を止めどなく流していた。

 

「ど、どうしたのだ。一刀!?」

 

「お姉ちゃ~ん…めが…めがいたいの~」

 

目をこすりながら、本当に我慢ができないといった感じで一刀は訴える。

 

「何があった?目にゴミでも入ったのか?」

 

問いながら冥琳は一刀の目を注視しながら自分の顔を近づける。

どんなに細かなゴミでも見逃すまいと、もうあと少しで唇が触れてしまうくらいまで近づける。

そして…その光景をたまたま通りかかった愛紗に見つかった…

 

「っめ、冥琳殿!ああああああなたは一刀君に何をなさろうとしているのですか!?」

 

冥琳は邪なことなど考えておらず純粋に一刀のことを心配していたのだが、

事情を知らないものが見れば冥琳が一刀に接吻を迫っているようにしか見えなかった。

 

「い、いや落ち着け。私は別に何も」

 

「アイシャお姉ちゃ~ん…おねがい、たすけて!」

 

冥琳の言葉を遮って、一刀は好機を逃すまいと愛紗に縋り付く。

対将兵器:涙目+上目遣い+自分の半分くらいの小さな背の体の太腿への抱きつきのコンボを喰らい、

愛紗は何をお手伝いするのか?その内容を気にすることなく了承した。

 

「ああ!もちろんだ!何者であろうと一刀君に仇名す物はなんびとたりとも私が葬ってやる!」

 

「うん…うん!じゃぁアイシャお姉ちゃん、お願い!」

 

………3分後………

 

「っく…ふ、不覚だ…関羽雲長ともあろうものが、

 こんな、この程度のものに涙を流すことになろうとは…」

 

悔しそうに呟きながら愛紗は片手で頬を拭う。拭った手は一目で分るほどに湿っていた。

 

「いや…これは予想以上に強敵だ…むしろこれに涙しないものは相当の手錬であろう…」

 

そう言う冥琳の目下にも僅かに涙の跡があった。

二人は同じ敵に相対し、結果二人とも涙を流してしまった。

そんな二人を一刀は心配そうに見つめる。

 

「…お姉ちゃんたちでもダメ?」

 

「ああ、悔しいがこいつは相当手ごわい。すまない一刀君」

 

「致し方ない…ここだけは誰かに助力を請うしかないか…」

 

「…ボク、ボク助けてくれる人さがして来る!お姉ちゃんたちはここをおねがい!」

 

「ああ、任せておけ!」

 

「他のものの相手ならば問題ない!行くのだ一刀!」

 

二人の言葉を聞き、一刀は厨房から飛び出して走り出す。助けを求めて…

 

……10分後……

 

厨房付近を走り回った一刀は、付近にいた春蘭、麗羽を見つけ二人に助力を乞うた。

二人はそれに応じてくれて冥琳や愛紗が相対した敵を相手にした。結果…

 

「ぐ、うぅぅうう…か、華琳様~~、な、涙が止まりませ~ん!」

 

「こんな、こんなことが…この名家である袁本初がこ、この程度のものに!?」

 

二人とも涙を止められずにいた。

 

「…やはり誰がやっても一緒か…ここはこいつに慣れた者を連れてくるしかないか…」

 

「そうだな、一刀。だれか他にこいつの…玉葱を目を痛めずに切る知識を持つものを呼んできてくれないか?」

 

「は~い♪」

 

はい!強敵の正体は玉葱でしたwww

 

その後、祭が一刀に連れてこられ、目を傷めないでいられる方法を教えてくれましたとさ。

 

 

『お姉ちゃんとお料理 完成編』

 

「…で、できた…」

 

もはや全力を出し切った、と言った感じの表情で冥琳は目の前にある完成品を見ていた。

 

「ボクとお姉ちゃんで作ったカレーかんせー!」

 

一刀と冥琳が作ったのは、良い子の人気者カレーライス。

一刀(大人)・朱里・雛里・月・紫苑・秋蘭・流琉・凪・祭が、

共同で試行錯誤研究を重ねたことで開発したカレールーのお陰で、

カレーは見た目難しいが実は簡単な料理No.1に選ばれていた。

 

カレーのほかにもいくつか簡単に作れるサラダやデザート(切って盛り付けるだけ…)を添えて、

言うなればカレー定食が、一刀と冥琳の眼前にある。

 

「それじゃぁ食べよう!」

 

「ああ、そろそろ昼飯だしな。それに、祭殿に出来を見てもらうにしてもまずは自分から食べねば」

 

一刀は嬉々として、冥琳は恐る恐るレンゲにカレーと白米を掬って口の中に入れる。

 

「ウン、おいしい!」

 

「…ああ、おいしいな。私が作ったとは思えないほどだ」

 

その味に驚きながらも冥琳は喜び微笑んでいた。

そして食べていくうちに、その笑みは安堵のものから自信に満ちたものへと変わっていく。

 

「(これならば…これほどの味ならば祭殿も何もいえないだろう!)」

 

幾度となく失敗してかなりの量を使ってしまった食材に関しては、

なんとか全て再利用することが出来た。そのお陰で一刀と冥琳、

二人分を引いてもかなりの量が未だに鍋の中に残っている。

恐らく大盛り10人分はあるだろう。

 

料理に一時協力してもらった愛紗、春蘭、麗羽、匂いをかぎつけてきた恋にも振る舞い、

彼女達の太鼓判も得た。これならば行けると確信し冥琳は祭を呼んだ。

 

 

「ふむ…見た目は少々歪な所がありますが匂いは良いですな。

 では…」

 

外見を評価した後、祭はレンゲに掬ったカレーライスを口に入れる。そして…驚愕する。

 

料理というのは、作者の心が込められ、相手に伝わるものである。

誰にどんな思いで食べて欲しいのか、それは調理中に無意識に考えるもので、

その考えが手を通して食材に伝わり、そして料理が完成する。

故に食べる相手を思って作った料理は自然と美味しく感じるのだ(一部例外はあるが…)。

 

口に入れ舌に触れた瞬間、祭は感じた。

一刀と冥琳の食す者に対する思いを。

口の中で広がる味と香り、そこから感じ取れる二人の思いは、

やがて喉を通り身体の芯に染み渡る。

 

「(っふ、まさかこれほどとはな…始めて料理をした時洗剤で米を洗おうとしたときと比べたら…

  成長しましたな、冥琳)」

 

祭はしみじみと昔を思い出しながら笑みを浮かべる。

 

「うむ!見事ですぞ。見た目以外は申し分なし!本に美味じゃった!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「わーい、やったねお姉ちゃん!」

 

「ああ」

 

一刀は冥琳の手を取りピョンピョンと飛び跳ね、冥琳は静かに佇み喜ぶ。

その日冥琳は、料理の何たるかを学んだのであった。

 

 

『一刀の涙…』

 

祭4日目の朝。冥琳と一刀は今日はどこに行き何をしようか悩んでいた。

が、やりたいことは考え出したらキリがなく、一刀は中々考え付かなかった。

そこで冥琳はふとあることを思いつき一刀に提案する。

 

「そうだ、一刀釣りに行かないか?」

 

「おさかなさんつり?」

 

「ああ、ここから馬で少し行ったところにいい釣り場があると聞いたことがあるのだ。

 どうだ?」

 

冥琳としては一刀が希望する場所ならばどこでも良いとは思っていたが、

出来るならば二人だけで過ごしたいとも思っていた。

 

街から少々離れた場所ならば、民や将は祭に出ようと街に行くので、

静かに過ごせると思ったのだ。

 

釣り場は隠れた穴場として知られているらしいのであまり人は来ないらしい。

誰も来ることが無い二人だけの空間…

優しく降り注ぐ陽光を反射して輝く水面…

撫でるように吹き抜ける穏かな微風…

心地よい空気の中で二人は寄り添い獲物が掛かるのを待つ…

やがて二人はその空気に入り浸り、冥琳は一刀を抱き寄せ、

彼の服に手をかけながらその唇に自らのを近づけ……

最後のは無しで。

 

とにかく、これならば二人きりで誰にも邪魔をされず静かに、

それでいて退屈することなく穏かに過ごせると思った。

そして、一刀はこの提案に賛成した。

 

遠足気分で行こうと思い弁当を作ってから出かけることにした。

厨房へ向かい、水筒とおにぎりを用意した後、

釣具用に針と竿作りのための道具を持って、

冥琳は一刀を抱き抱えるようにしながら馬を操り釣り場に向かう。

 

一刀はこれから魚を釣ることを、冥琳は二人きりで過ごせることを楽しみにしながら馬は進む。

 

 

 

 

 

「あら?あれって一刀君と冥琳、何処に行くのかしら? …私も行っちゃおう♪」

 

 

街から離れた森の少々奥、茂みを掻き分けてたどり着いたのは、川が流れ着きできた小広い泉。

適度に開け岩があるその場所は正に冥琳の想像通りの場所であった。

景色もよく釣り場としても申し分ない。

 

釣り場に着いたのは丁度昼頃。二人は早速弁当を食べることにした。

冥琳が作ったおにぎりは、料理初心者が良く作る俵型のおにぎり。

対して一刀のは、コンビニで売っているきれいな正三角形のおにぎりの縮小版。

幼児でありながら自分以上の料理の腕を持つ一刀のことを若干悔しく思いながらも弁当を平らげる。

 

食べ終わった後、冥琳は釣竿を作り始める。

慣れた手つきで竿が作られ、その手際よさを一刀は感心しながら見守る。

 

「さ、出来たぞ」

 

「わ~い!」

 

自分のために作られた竿を受け取って一刀は喜びはしゃぐ。

それから針に餌をつけ浮きをつけて、二人は泉に向かって投げ入れる。

投げた後は寄り添って掛かるのを待つ。

 

「まっだかな~ まっだかな~ ♪」

 

落ち着きなく竿を揺らす一刀を、冥琳は時折竿を揺らしながら微笑ましく見守る。

 

5分ほど経った頃だろうか。冥琳の方の浮きがピクピクと動き、直後浮きが水の中へ引かれる。

すぐさま竿を手に取り巧みに操り引き寄せ、綺麗な動作で一匹目を捕まえた。

 

「お~!!お姉ちゃんスゴーイ!」(パチパチ

 

「フフ、釣りは得意だからな。これなら負けない自身がある」

 

一際強く竿を引き掛かった魚を手に取りながら、保護者としての威厳を保てたと思い誇らしげに言う。

魚を針から外してバケツの中に入れた後、再び餌を針につけて投げ入れる。

一刀も先ほど以上に気合を入れ竿を強く握りしめる。

 

 

更に5分ほど経った頃。再び冥琳の浮きが動き魚が掛かったことを知らせる。

バケツの中に魚がもう一匹追加されるのを見て、更に一刀の込める気合が強くなる。

 

「つれてつれてつれてつれてつれてつれて・・・・・・……」

 

と、まるで念仏のように唱える。そんな一刀に冥琳は苦笑をこぼしながら告げる。

 

「あ~一刀。そんな風にしては何時までたっても魚は掛からんぞ」

 

「・・・・・・え?」

 

「魚というのはな、意外と臆病で警戒心の強い生き物なのだ。

 その様に獲ろう獲ろうと考えていては、糸を伝って針からそれを感じ取られてしまうのだ」

 

「う~~~…じゃぁどうすればいいの?」

 

「別に特別なことは無いさ。ただ大人しく何も考えずに待てば良い」

 

「うん。わかった」

 

言うや否や、一刀は竿を抱き抱えるようにしながら冥琳の膝に頭を置いてきた。

 

「お、おい…どうした?」

 

「ねる!お魚がきたら起して…ね…zzZ」

 

「確かに寝れば何も考えずに済むが…って早い!」

 

少々呆れながらも、安心しきった表情で自分の膝を枕にして眠る一刀を愛おしそうに見つめながらその頭を撫でる。

 

 

それから三匹ほど冥琳の方の針に魚が掛かり、一刀を起さないよう注意しながら、それらをバケツの中に入れる。

その三匹目をバケツに入れ餌をつけようとしたところ、一刀の方の浮きが動いた。

見ると、水の上からでもかなりの大きさと分る魚が浮きの周りを泳いでいる。

名残惜しかったが、冥琳は一刀の肩を揺すって起しにかかる。

 

「一刀、一刀」

 

「ぅにゅぅう~ん…?」

 

「ほら、お前のほうの餌に獲物が寄って来たぞ」

 

「ホント!?」

 

今さっきまで熟睡していたとは思えないほどに一瞬で覚醒した一刀は自分の方の餌を見る。

直後糸が引っ張られた。

 

「わわぅ!? う~~~~~~~!!」

 

思わぬ力で引かれ始めた竿を、力を込めて何とか持ちこたえる。

 

「良し、いいぞ!後は時々力を弱めたり強く引いたりを繰り返して魚が弱まるのを待つのだ」

 

「は、は~いぃ~~!」

 

最初は自分が一刀を支えながらやろうとしたが、一人で吊り上げたほうが喜びも増すと思い任せた。

 

冥琳の指示通りに動き、一刀は力を緩め強めを繰り返す。

10秒、20秒…一分、一分半と過ぎていくが、魚は中々弱まってこない。

どちらかと言うと一刀の方が弱まってきてしまい、その場に留まっていることが出来ず、

魚に引かれて行き元いた位置から大分移動していた。

 

3分ほど経ち、やっと魚が弱まってきた。

少しでも有利になろうと一刀はだんだんと泉から離れ、足場を増やそうと茂みのほうへ後退する。

あまり考えていないだろうが、無意識に有利になろうとする一刀を冥琳は感心しながら見守る。

 

そこに…

 

「一刀くーーーーん!どんな感じかな♪」

 

一刀が力を弱めた瞬間、茂みの中から雪蓮が飛び出し一刀に抱きついた。

 

「うわわ!?」

 

不意打ちの雪蓮の飛び付きを子供の一刀が支えられるはずもなく、

一刀は地面に支点を置いていた竿に圧し掛かる。

 

二人分の体重を現地調達した材料で即席で作った釣竿が耐えられるはずもなく、

竿は半ばから折れ、糸をつけていた止め具も外れ、糸は魚に引っ張られていく。

 

「あーーーーーーーーーーーーー!?!?」

 

雪蓮の下から這い出て慌てて糸を掴もうとするも、

糸は一刀の手を擦り抜けるように逃れ、やがて水の中に消えていった…

 

 

非常に気まずい沈黙が流れた…

 

糸を掴もうと飛び出し泉に乗り出した一刀…

泉に体を乗り出したところで一刀の体を掴み支えた冥琳…

元凶の雪蓮…

 

冥琳と雪蓮が何を言えばいいか悩む中一刀が呟く。

 

「…やっとかかったのに…」

 

糸ごと魚が消えていった泉を見下ろしながら一刀は呟く。

 

「…すごく大きかったのに…」

 

大魚と一刀の死闘、それが一刀にとってどれほどのものだったのかを、

乗り出した頭の下に位置する泉に、

一刀の顔から落ちた水の滴によって生み出される波紋が告げている。

 

「…うっ、ヒグ…すごく…グス…ガンバッタノニ…」

 

生み出される波紋は次第に多く大きくなっていく。

 

暫くして一刀は乗り出していた体を引っ込めた後、

雪蓮の足元に置かれたままの折れた竿の所にいき、その竿を弱弱しく抱える。

 

「グス、エグ…せっウグっかく…っく…お姉ちゃっが…ヒグッグ…ボクにつくってっくれたのに」

 

俯く一刀の頬から伝い落ちる涙は彼の服を、彼の足元の地面を湿らせていく。

 

我慢できず冥琳は自分の腕の中に一刀を抱く。

 

「ウっ…グス…お姉、ちゃん…ゴメンな゛さい…こわしちゃって…エグ…ゴメン」

 

「一刀、おまえは何も悪くない。

 あれほどの大きさのものに戦い続けた一刀を私は誇りに思っている。

 これほどまでに私が作り贈ったものを大切にしてくれて嬉しいぞ」

 

「っ~~~~~~~~」

 

その小さい体で精一杯抱きついてくる一刀の体を包み込むように冥琳は抱きしめる。

服が涙でにじもうと、握られしわになろうと構わない。

冥琳は一刀のことを励まし続け、安心させようと撫で続け抱き続ける。

 

 

それからどれほど時間が過ぎたのだろうか…

泣き疲れた一刀は冥琳の腰を抱きしめながら眠ってしまった。

眠りはかなり深そうで滅多なことでは起きないだろう。

 

そう判断した冥琳は、その傍でどうすればいいのか分からないでいる雪蓮のほうを向く。

一刀は大声を上げて泣くのではなく、泣かないようにしながらも耐え切れずに静かに泣いていた。

前者は駄々をこねわがままを言うときに良く見られ、あやすなりなんなりすれば治まる。

だが、一刀は後者。もう取り返しがつかないことを実感しながら悲しんでいた。

その元凶である自分では何をすればよいのか?

元凶でありながらも責められるどころか何も声を掛けてもらえなかった自分はどうすればよいのか?

下手をすれば更に一刀の悲しみは深まってしまうため何もできなかった。

 

そんな雪蓮に冥琳は冷ややかに告げる。

 

「さて雪蓮…あなた一刀を泣かせたわね…」

 

「ご、ごめんね冥r「謝る相手が違うだろう」…うぅ」

 

「一刀は優しいからな。誠意を込めて謝罪すれば許してくれるだろう」

 

「え、えぇ。そうね…」

 

「だが…」

 

冥琳は眼鏡を手で覆うように添えて上げながら告げる。

 

「私は許すことは無いぞ」

 

「め、冥琳?」

 

口元も手で隠れているために冥琳の表情を窺うことができないが、

告げながら鞭を握った彼女からは間違いなく怒りを感じる。

 

「あなたは一刀の楽しみを奪った…喜びを奪った…成し遂げようとしていた全てを無に帰した…

 一刀に代わって私がオシオキしてあげるわ」

 

顔を隠していた手が離れると満面の笑みで、しかし目が決して笑っていない冥琳がいた。

恐ろしい表情で鞭を鳴らしながら近づく冥琳に恐怖して雪蓮は後ずさる。

 

「おおぉぉお落ち着いて、冥琳!?」

 

「不負腐…

 

 花摘みは済ませたかしら?

 

 神への祈りは?

 

 茂みの中でガタガタ震えて命乞いをする準備は

 

 い・い・か・し・ら?」

 

「あ…ぁあぁああ…」

 

かつて経験したことの無いほどの恐怖を、

母孫堅や呂布以上の恐怖を感じ、雪蓮は後ずさり、

茂みの中へと入っていく。

 

その後を冥琳はゆったりと…ゆったりと歩いて迫っていく。

 

そして二人が茂みに入っていきその姿が見えなくなって…

 

「ぃいいやぁぁぁあああああああああああ!?!?」

 

雪蓮らしからぬ雪蓮の絶叫が森中に響き渡った…

因みに、雪蓮の絶叫にも一刀は起きることはありませんでした。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

空が赤らんで来た頃、ようやく一刀が目を覚ました。

彼が最初に目にしたのは、優しげに自分のことを見つめる冥琳の顔だった。

 

「起きたか一刀?」

 

「…うん、おはよう」

 

「もうそろそろ”こんばんは”という時間になるな。

 暗くなる前に帰ろうか?」

 

「うん」

 

子供なら寝たら悲しみは晴れると思われるが、このときの一刀が例外らしく、

未だに悲しみが晴れていないのか始終冥琳に抱きついていた。

それを払うことなく、不満に思うことなく冥琳は一刀を抱き抱え馬にまたがる。

宿に向かう馬の上で一刀は冥琳に抱きつき続け、

冥琳はこれで少しでも彼が元気になることを願い続けていた。

 

 

二人が去った森の茂みにて…

 

「ハァハァ…な、なんで…冥琳…こ、怖かった…

 鞭、すごく…痛かった…のに…なんで…

 なんで気持ちいいって思っちゃうの///?」

 

体の各所に鞭で叩かれ赤い跡をつけ、未だにさめない恐怖に顔を青ざめながらも、

何故か鞭で叩かれていくうちに快感を感じるという未知の感覚に襲われた雪蓮が残されていた…

 

 

『誘拐事件発生!?』

 

祭の5日目。この日は特にこれと言った予定もなく、適当に祭を回るはずだった。

 

人混みの中を一刀はいろんなものに興味を持ち、売り込みに店主が声を張り上げては、

その方向に小さな身体を活かして擦り抜けるようにして人だかりの中に消えて行く。

無邪気に走り回る一刀を冥琳は苦笑しながらも、

これも保護者として子を見守る1つの楽しみだと感じながら彼の後を追う。

その時もそうだった…

 

二人が一件の豪邸の前を通り過ぎようとしたとき、

豪邸の前の小広い広場では雑技団が通行人の視線を集めていた。

人を高く放り上げる芸で建物の3階程の高さまで上げられた人の姿を見て、

一刀はそれに大いに興味を持ち一際密度の高い人混みの中に身を投じる。

冥琳も一刀を追おうとするが人が多すぎて中々進めないでいた。その時…

 

派手な音を立てて豪邸の窓が割れ、複数の男が降ってきた。

誰もが膨れた頭陀袋を抱えその手には豪邸から盗まれたであろう金品財宝が握られていた。

一目で賊の集団と判断する。

 

雑技の真ん中の真上から落ちてきているので、

この人混みの中から出てきたらすぐに捕らえようとする。

が…予想外のことが起こった。

 

目の前で雑技を催している彼らは、雑技に使っていた道具で賊達を受け止め、屋根に向けて放り上げた。

偶々雑技をしながら落ちてくる賊に対処したのか、と言う考えは直ぐに否定することになった。

賊の後を追うように、雑技団も各々道具を使い屋根の上に上り、賊と並んで屋根の上を走り始めた。

 

雑技団も賊の仲間で、芸も逃亡手段の一環であったと知るや否や、

冥琳は逃がすまいと鞭を振るう。鞭が殿を走っていた者の足を捕らえ…

ようとしたその時、別方向から冥琳のものとは違う鞭が伸び止められた。

 

「ちょいと、アタイのオス豚に何してくれようとしてんのさ?」

 

声の方向を見ると、そこには一刀が描いた絵のジョオウ様の格好をした厚化粧の女がいた。

 

「…何者だ、貴様は…」

 

「っふ、言うと思うのかい?さて…あんたにはその場所から動かないでいてもらおうか」

 

「聞くと思うか」

 

「いーや、聞いてもらうさ。オイ!」

 

女が人混みに向かって声を上げると、中から一人の男が出て来た。その腕の中には、

 

「お姉ちゃーーーーーーん!!」

 

一刀が捕まっていた。

 

「姉さん、言われたとおり捕まえておきやしたぜ!」

 

「ああ。丁度いいときに人質が転がり込んできてくれたからねぇ。

 さぁ…後はアタイが何を言いたいか、わかるわよねぇ」

 

一刀に近づきながら女は不敵に笑う。冥琳が歯噛みする中一刀は、

 

「はっなせ、はーなーせー!このこのこのーーー!!」

 

逃げ出そうと暴れるが男はびくともしない、が、苛立ちは募ってしまい、

 

「あ゛~~うっせーんだよ!#」

 

男は一刀の後頭部に手刀を打ち込み一刀の意識を奪った。

 

「一刀!?キッサマーーーー!!##」

 

怒りに任せて振るった鞭は女に止められてしまい、追撃をかけようとしたが止めた。

止めざるを得なかった。女が一刀の首に短刀を突きつけていたから…

 

「へぇ…どうやら身内のようだね。そんじゃ、このガキに傷が付くのがいやなら、

 そこで大人しくアタイらが逃げるのを見てるんだね」

 

告げた後、女と一刀を抱えた男は屋根に上がり逃げていった。

 

その背が見えなくなるまで、冥琳は動くことが出来なかった…

 

 

「くっ…一刀…」

 

悔しさに膝を突く冥琳の横に一人の少女が降り立った。

 

「ここにいましたか!冥琳様、非常軍議を開きますので至急城へお越しください!!」

 

少女、明命はかなり慌てた様子で告げた。

 

「…こんな時に…何があった!?#」

 

あまりのタイミングの悪さに声を荒げてしまったが、何とか落ち着かせる。

 

「八ッ!城下の各所で賊が窃盗を行い逃亡。

 街外にも、その仲間と思しき賊の集団を目撃したとのことです!!」

 

「…わかった!」

 

それを聞いた冥琳は早足で歩き始め、明命もその後を追う。が…

 

城に向かうと思っていたが、冥琳は別の方向に向かっている。

 

「あの~…冥琳様、どちらへ?」

 

疑問を口にするが冥琳から返って来たのは、その回答ではなかった。

 

「明命、現時点でお前が知る情報の全てを教えよ」

 

「は、ハイ!確認した限りでは賊は街の10ヶ所で窃盗をした後逃亡。

 集団はここから西にある森の付近にて目撃情報を多数。

 私が今知るのは以上です!」

 

「そうか…それだけ分れば十分だ」

 

冥琳が向かったのは、自分に宛がわれた宿の自室。

そこであるものを回収した後再び歩き始める。

部屋を出たところで蓮華と、彼女を呼びに来た思春と鉢合わせる。

 

「冥琳、なぜここに!?明命に呼ばれたならもう会議室にいてもおかしくないのに?」

 

冥琳が手に持つものに気付くことなく問いかける。

隠密二人は気付きまさかと思う。

 

「私はこのまま賊がいるといわれる場所まで向かいます」

 

「何を言っているの、この非常時に!?」

 

「…一刀が連れ去られました…」

 

「「「!?!?」」」

 

言われ、改めて一刀が冥琳の傍にいないことに気付く。

 

「一刻の猶予もありません。私は直ちに出ます」

 

「待ちなさい冥琳!一刀君が人質に取られているのなら、

 なおさら軍議で作戦を立てないと…」

 

至極尤もなことを言うが、冥琳は聞かなかった。

 

「いいですか蓮華様…

 

 事件は会議室で起きているのではありません…

 

 現場で起きているのです!!」

 

普段以上の迫力と説得力のある言葉に3人は何も言うことができなかった。

 

「こうしている間にも一刀に何をされているのか分りません。

 なので私は出ます。蓮華様たちは軍議を終えたら直ぐに後を追ってきてください」

 

言い終えた後、冥琳は走り去ってしまった。

 

「あ~…明命!貴女も行きなさい!

 作戦もなしに賊の団に単身で挑むなんて危なすぎるわ!」

 

「わかりました!!」

 

蓮華の命令を受け、明命はその場から消えた…

 

 

「ここで間違いないな」

 

「ハイ!目撃情報とも一致しますし、現時点でも盗品を見て騒ぐ声が聞こえてきます!」

 

街から少々離れた森の入り口にて二人は並んで奥を見据える。

 

「では明命、私は単独で真正面から進み敵を誘き寄せ引きつける。

 お前は敵に発見されぬように隠れ家に侵入し一刀の安全を確保せよ」

 

「そ、そんな危険です!敵は少なくとも100はいる上にこのように見通しの利かない森の中では!?」

 

「危険は承知だ。だが一刀は今私達以上に危険な状況なのだ。

 これは命令だ!私のことより一刀の安全を考えよ!」

 

「っ!?わ、わかりました。早急に一刀君の安全を確保し助力に駆けつけます!」

 

告げると同時に明命は姿を消した。

それを確認してから冥琳は森に足を踏み入れる。

 

 

森を歩いて5分ほど経った頃敵が仕掛けてきた。

森に入った直後から感じていた視線の発生源が頭上より襲い掛かる。

 

「っ!そこか!!」

 

自分の真上に向け鞭を振り上げる。その鞭を上から降ってきた賊は避けるが、

冥琳は巧みに鞭を操り、伸びる鞭の腹の部分を賊の首に絡め、先端を更に上の木の枝に巻きつける。

 

「ぐぇっ…ぐ…がぁ…!」

 

自らの行動で文字通り自分の首を絞めることになった賊は、何も出来ずただ吊られるしかなかった。

 

「…貴様らは私の一刀を連れ去った…容赦はしない」

 

冷たく告げながら、冥琳は力を込めて鞭を引き、首を締付け賊の意識を奪った。

枝に巻かれた鞭を解くと、首を絞められた賊が落ちてくるが、冥琳はそれに気を向けることなく進む。

 

「テンメェ、よくも!#」「やっちまえぇ!!#」

 

仲間がやられたことで賊達の怒りが爆発し冥琳に飛び掛る。

それらの全てを正確無比に叩いていく。が、鞭で叩くだけでは、

一撃で相手を戦闘不能に陥れるのは困難で、賊の一人が叩かれながらも間合いを詰めてくる。

 

「へへっ、ここまで来りゃこっちのもんだ!」

 

短刀の間合いまで詰めてきた賊が襲い掛かる。が、

その攻撃を軽く避け、代わりとばかりに賊の主要間接部に鞭を絡める。

 

「私の鞭をここまで耐え忍んだことは褒めてやろう。だが…

 この間合いこそ貴様の終わりだ!」

 

叫びながら鞭を引くと、何かが外れる音を連続で発しながら、

賊は冥琳の鞭で全ての関節を外された。

 

「ぎ、ぎぃゃぁあああああ!?」

 

苦痛を伴った全身間接外しに賊は絶叫を上げる。それを成した冥琳は「次は貴様らだ」と視線で告げながら睨む。

そんな冥琳に賊達は後ずさる。がそこに…

 

「全く…たった一人に梃子摺ってるんじゃないよ!#」

 

後ずさる賊達の更に後ろから、ジョオウ様ルックの賊の頭である女が現れた。

 

「ったく、これからお楽しみって時に耳障りな声が聞こえたから来て見れば何て有様だい!」

 

鞭の打撃で気絶ないしは動けずにいる者と関節を外された一人を見ながら女は告げる。

 

「いいかい?鞭ってのは振れなきゃただの紐さ、なら一人だろうと何人だろうと抑えちまえば後はどうにでもなるさ!」

 

女のアドバイスを受けて、それならばと賊達がにじり寄って来るが、

冥琳がそれを気にしなかったが、それよりも…

 

「おい…貴様”お楽しみ”と言ったな?一刀に何をするつもりだ…」

 

「っへ、まぁもうすぐあの世に逝くアンタになら言っても良いかねぇ。

 アタイはねぇ鞭で叩かれて痛みと快感から叫ぶその声を好きなのさ。

 それがガキの甲高い声ならなお良いって分けさ!」

 

なんと女はショタの入ったSでした…

女の言葉を聞いた冥琳は抑えることが出来なかった。

 

「キーサーマーーーーーー!!#」

 

鞭を縦横無尽に振り回し、自分を囲む賊達に大打撃を与えた後、鞭が女に向かって進む。

同じ鞭使いである女も鞭を振るい冥琳の鞭に絡める。

 

「今だよオマエ達!」

 

女の指示を受け鞭を抑えられた無防備な冥琳に飛び掛る。

 

飛び掛ってくる賊達を確認した冥琳は即座に鞭を手放す。

急に力が抜けたことでバランスを崩し、女が尻餅をつく中、

冥琳は宿から持ってきた武器、腰に下げていた剣を鞘から抜き放つ。

今更剣を抜いたところでもう遅いと賊の全員が思った。

だが、その考えは直ぐに改めることになった…

 

身体を回転させながら抜かれる剣。その剣先が鞘から抜き出された直後、剣先が伸びた。

ジャラジャラと鎖の音を発し剣は伸び続け、冥琳を中心に半径10mにも及ぶ円が刃によって描かれる。

円の範囲内にいた全員を切り裂いた後、音を立てながら縮み剣に戻った。

 

女を含め賊達は目の前で起きたことを信じられず呆然としてしまった。

呆ける賊に冥琳は告げる。

 

「私の新しい武器、連結刃”連万帝音(レバンテイン)”

 有象無象の差別なく、我が間合いにあるもの全てを切り裂く。

 覚悟はいいか、豚ども…」

 

その言葉を発した直後、冥琳は連万帝音を振り回す。

伸びる刃は蛇の如く生きているかのようにうねり回り、

言葉通り間合いの内の全てを切り裂いていく。

 

賊は手に持つ武器の間合いに入ることも出来ず切り伏せられ、

遠距離から放たれる矢や投げられる短刀は届くことなく弾かれ、

鎌居達の竜巻が通り過ぎた跡を残しながら冥琳は歩み進む。

 

「畜生が!!」

 

苦し紛れに女は鞭を振るうが、冥琳が振るう刃はそれを真っ二つに切り分けながら進み、

やがて女の手に至り切り裂いた。

 

「グゥアアッ!?…こ、こうなったら!」

 

切られた手を押さえながら女は逃げ、生き残った賊達も女が逃げるのを見て自分達もと思いあちこちに散っていった。

 

「…そちらにいるのか…一刀」

 

周囲にてきがいなくなったのを確認した後、冥琳は女の後を追った。

 

 

一方、一足先に森を駆け回りアジトの洞穴を見つけ侵入を果たしていた明命はというと。

 

女に痛めつけられる前の一刀を見つけることは出来ていた。のだが…

一刀の姿に…悶えていた…

 

「お、お、お、お、お、御猫様な一刀くーーーーーん!///?///」

 

手刀を打たれ気絶してからそのまま立ち直っていなかった一刀は、

逃げられぬように首輪をつけられ重りのついた鎖でつながれていた。

そして、女の趣味なのか?何故か猫耳と尻尾をつけられていた!

 

重りを抱きながら眠り、何かの気配を感じては耳と尻尾がピクピクと動く。

その光景から明命は、毛糸の塊で遊び疲れ、玉を抱きながら寝てしまった猫の可愛らしい幻想が見えてしまった。

 

ここに来た目的も忘れ、一刀が身じろきする度、耳や尻尾が動く度に「はうあ~///」と奇声を発しながら悶える。

が、その明命にとっての至福の時間は外から近づく気配によって終わった。

 

「っ!?誰か来ます…」

 

一刀を背に魂切をいつでも抜き放てるように構える。

耳を済ませると、木を掻き分けながらアジトに近づく音が聞こえ、

次いで叫び声と斬音が聞こえた。

 

一寸の静寂の後、洞穴に足音が響く。そして…冥琳が現れた。

 

「冥琳様!ご無事でしたか!?」

 

「ああ、私は無傷だ。それで、一刀は!?」

 

「ハイ!御無事です!」

 

言いながら身を引き一刀の姿を見せる。

傷も見当たらなければ血の匂いも無い。そのことに冥琳は安堵の吐息を漏らす。が…

一刀の猫を模した姿を見て、余韻からまだ僅かに顔が赤い明命を見る。

 

「明命…貴様一刀に何をした?」

 

「はぅあ!わ、私は何もしておりません!」

 

「…一刀を開放させることもせず何もしていなかったと?

 お前ほどの者ならば例え森の中であろうと洞穴の中であろうと直ぐに見つけ出し一刀を解放することが出来たであろう」

 

「は、はうぅ~(い、言えません…御猫様な一刀君につい先ほどまで魅了され見惚れていたなんて!)

 わ、私は外を見張っております!」

 

明命は逃げるようにその場から消えた。

 

それを見送った冥琳は一刀の許に駆け寄り首輪を外して起しにかかる。

 

「一刀、一刀…」

 

優しく声を掛けながら肩を揺すると、程なくして一刀は起きた。

 

「ぅう~ん…あ、お姉ちゃんおはよう」

 

「ああ、おはよう」

 

人質を助けたにしてはのんびりとしたやり取りだが、

冥琳は心の底から安堵していた。

一刀が無事でいたことに、悲しい思いをしなくて済んだことに。

 

「さぁ、いつまでもこんな所にいてはダメだ。帰ろうか」

 

「ムニャ…は~い」

 

眠気が完全には覚めていない一刀は冥琳の言葉に素直に従う。

そんな一刀を、もう決して離すまいとしっかりと抱きながら、冥琳はアジトを出て森を出る。

 

森を出たそこには賊を討伐し終えた軍が笑顔で二人を迎えてくれた…

 

 

『親友と共に、親友の為に、一刀の為に…』

 

祭六日目、一刀と冥琳が二人きりでいられる最後の日。

 

その朝、少し早めに起き一刀の寝顔を堪能した後、彼を優しく起して、着替えを手伝ってやりながら考える。

今日はどうやって過ごそうか?祭で賑わう街中を一刀と二人楽しく回ろうか?

それとも、二人だけでのんびりまったりと一緒にいるのだという時間を堪能しながら過ごすか?

どちらにしてもこの日は二人はなれることなく過ごそうと決めていた。が…

 

これから楽しく過ごせると思っていた時間は、扉を開け放ち入ってきた雪蓮によって止められた。

 

「冥琳、一刀君、いますぐ宿から離れて!」

 

かなり慌てた様子で、しかも南海覇王に手をかけながら、後ろを気にしながら急かす。

 

「一体何があったの?雪蓮」

 

「シェレンお姉ちゃんどうしたの?」

 

真面目に問うてくる冥琳と、可愛らしく首を傾けながら聞いてくる一刀を見て何とか落ち着けた雪蓮は、

冥琳に傍に来るように手招きし、彼女の耳元で小声で告げる。一刀に聞かれ不安にさせないために。

 

「…蜀、魏、呉の皆が一刀を狙って近づいてきてるわ」

 

「…全員がか?」

 

「ええ、昨日の誘拐騒ぎで人質にされた一刀君を元気付けるためとは言ってるんだけどね。

 それ自体には賛成なんだけど…間違いなく冥琳が一刀君と一緒にいられる時間は…」

 

「だろうな…いつかは爆発すると思っていたが、大義名分を得て皆動き出したか…

 それで…雪蓮は何故ここに?」

 

そう、皆が一刀を狙っている。その皆の中には当然雪蓮も入っているものだと思った。

 

「…けじめ…かしらね」

 

「けじめ?」

 

「ええ…一昨日、私は一刀君を泣かしちゃったわ…

 一刀君本人はもう気にしていないでくれているようだけど、私の気が治まらないのよ。

 でも、正直どうやって返せばいいか分らないの。

 だからせめて冥琳と一刀君が望むように、二人でいられる時間を壊させないようにしようと思ったの」

 

「そうか…ありがとう雪蓮」

 

「いいの、私がやりたい様にやってるだけなんだから♪」

 

告げる雪蓮の顔は晴れやかなものだった。

 

「ねぇねぇ、お姉ちゃんたち。どうしたの?」

 

一頻り小声での会話が終えたとき、自分達の間に一刀が割り込んできた。

そんな一刀に自分達の視線を合わせながら二人は答える。

 

「いい一刀君、今から他のお姉ちゃんたちが来るんだけど…

 実は私達鬼ごっこしてるの♪」

 

「な…雪蓮?」

 

「鬼ごっこ?」

 

「そ♪皆が鬼で私達が逃げるのよ。

 しかもただの鬼ごっこじゃなくて戦いごっこも入っちゃてるから。

 み~んな剣とか槍とか弓とかいろいろ持ってくるの」

 

「お~!!」

 

雪蓮のごまかしに一刀は次第に瞳の輝きを増していく。

そんな二人を見、雪蓮の考えを察した冥琳もその案に乗る。

 

「というわけだ。一刀、私達はこれから他のお姉ちゃんたちと戦いながら逃げるぞ」

 

「はーい!」

 

一刀は心底楽しみだといった感じで元気よく返事する。

返事を聞いた冥琳はベルトを着け、連万帝音を下げ、十数本の短刀を装着する。

断金の仲の二人が戦う姿になり並ぶのを見て、一刀の興奮は最頂に達した。

 

「それじゃぁ」

 

「ああ」

 

「「行こうか!」」

 

冥琳は一刀を抱えながら、雪蓮と共に窓から飛び出し、

屋根に結ばれた提燈を下げる縄を伝って宿から滑り降りる。

 

縄を伝って下りてくる3人を、三国の将達が見つけ、

全員がその降着地点に向けて駆けつける。

 

 

二人が降り立ったのは祭などで大勢集まって共に踊るようなかなり集会場の広場。

街の大通りが交差するその中心に二人、いや三人は降り立った。

突然舞い降りてきた将達に通行人が驚く中、更に驚くことが起こった。

 

その広場に向け大量の土煙が立ち上りながら向かってくる。

その煙の許には大勢の将達がいた。

 

蜀の将達が、魏の将達が、呉の将達が一丸となって三方向から向かってくる。

そして全員が戦場さながらの空気を醸し出している。

それを見た一般人は我先にと近くの建物の中に避難していく。

 

障害物がいなくなると、将達の突進速度は増し、その中でも突出して速い者が二人に襲い掛かる。

 

「「「「「「雪蓮殿!冥琳殿!覚悟ォォォオオオオ!!」」」」」」

 

「「「「「「「一刀君をわーたーせーーーーー!!」」」」」」」」

 

雪蓮の言葉通り、剣・槍・戟・鎌・斧・槌を構えた武将達が弓将達の援護射撃と共に襲い掛かる。

迫り来る矢と将達を冥琳の連万帝音がうねり払う大蛇の如く弾き飛ばし、

それを潜り抜けた者達に雪蓮が当たり押し飛ばす。

 

「渡せと言われて素直に渡すわけが無いでしょうが!」

 

「一刀が欲しくば…我らを倒してからにせよ!」

 

一刀を中心に、南海覇王を構えた雪蓮と、右手に連万帝音左手に白虎九尾を携えた冥琳が、

まるで双頭龍の如き攻防を見せる。

遠中距離に対する冥琳、近距離に対する雪蓮。隙の無い二人に、それでも将達は諦めず挑む。

 

そんな時間が長く過ぎ、流石に二人対他全員という状況では疲労が募っていく。

 

「っく!このままでは埒が明かない…雪蓮!アレを使うぞ!」

 

「ええ、分ったわ!でもここじゃ流石に無理だわ。移動するわよ!」

 

雪蓮は一刀を抱え、二人はその時点で一番手薄な大通りに向かって走る。

後を追ってくるものたちに対処しながら、二人は外壁部までたどり着く。

これで迫られる方向は1つになった。

 

「雪蓮!気を込めるのに30秒かかる!その間を頼む!」

 

「任せて!30秒といわず100秒だって耐えて見せるわ!」

 

頼もしい答えを聞いた後、冥琳はベルトに差した短刀を取り出す。

取り出した短刀の仕掛けを動かしながら、それに気を込めながら冥琳は言葉を放つ。

 

「孫呉が軍師 周喩公勤が魂 漆黒に輝く剣”連万帝音”」

 

右手に持つ連万帝音を高らかに掲げながら彼女は告げる。

 

「刃の連結刃に続く、もうひとつの姿…」

 

柄の先端と鞘を合わせると、施された仕掛けが動き出す。

刃と鞘が縦に二つに別れ、鞘は弦を引きながら刃にかぶさり、それはやがて1つの巨大な弓となる。

弦を引くと同時に仕掛けにより矢へと変形する短刀を番え弦を引き絞る。

背後に準備が整った気配を感じ取った雪蓮は力を込めて敵を弾き飛ばした後地に伏せる。

 

「翔けよ、隼!!」

 

デュワオン!と弓矢らしからぬ音を発し短刀の矢が放たれる。

矢に込められた気は、やがて言葉通り隼の姿になり、将達に向かって飛び進む。

あまりの速さの為に起こる風圧であらゆる物は抉り削られ、

阻もうとする者達を吹き飛ばし、その者達さえも巻き込みながら飛び進む。

 

「はわわ!み、皆さん!あの矢を止めるには真正面からど真ん中に全力を当てて相殺するしかありません!」

 

軍師のアドバイスを受けそれを実行しようとするが、これが中々難しい。

少しでも中心からずれていればたちまち矢が起す風に巻き込まれてしまうのだ。

だが、失敗してもそれは威力を緩めることにつながり、

威力が落ちた所をすかさず次の者が止めに入る。

 

「フム、見破られたか…だが、それが複数同時に来たらどうかな?

 雪蓮、出来てる?」

 

「ええ、準備できたわ。いつでも撃てるから、やっちゃいなさい♪」

 

言いながら渡されるのは複数の仕掛け短刀の矢。

その全てに冥琳以上に気の扱いになれている雪蓮が全ての矢に気を込め終えていた。

微笑む雪蓮と、鬼ごっこが始まってからずっと目がキラキラ、

変形武器というある意味男の浪漫を間近で見られてからギラッギラしている一刀に笑みを見せた後、

冥琳は矢を番える。そして声高らかに、

 

「飛びたまえ!進みたまえ!立ちはだかる全てを穿ち崩し薙ぎ払い天へと翔けよ!

 汝等一つに集いて朱雀となれ!!」

 

連続で矢を放つ。互いを加速させながらそれはだんだんと混ざり合い、

気の隼は一羽の朱雀の姿となって将達に向かった。

 

「お、大きい…これは流石に…」

 

「いや…皆で一つになれば、行ける!」

 

「そうだ!たかが鳥一匹、それがたとえ朱雀だろうと皆で力を合わせればとめられる!」

 

言いながら一人また一人と集まってきて必殺の構えを取る。

そして…三国の将達と朱雀が激突した。

 

突き進んでいた強力な風圧が止められたことにより、それは爆風となって周囲のものを吹き飛ばす。

将達は武器を持つ者全員が互いを支えあいながら己の武器を掲げ朱雀に挑んでいる。

防風の風圧で吹き飛びそうになるものを全員が一つになって支えあう。

 

そしてついに…風が止んだ…

 

 

まるで台風いや竜巻一過と言った感じの街、そしてその大通りで倒れるあるいは武器を支えに辛うじて立つ将達。

 

こちらも矢を撃ち尽くしてしまい、それに気を込めまくったお陰で疲労してはいるが、

どちらが勝ちかは一目瞭然だ。

 

「ハァハァ…勝った、わね」

 

「えぇ…これで、今日はずっと一刀といられるわ」

 

「アハハ!ここまでやっちゃって何が目的かを考えると笑えちゃうわね♪」

 

「ッフ、それだけ愛されているということさ」

 

言いながら二人で一刀の頭を撫でる

 

「お~…これでお姉ちゃんたちの勝ち?」

 

「ああ、そうだ。さて、鬼ごっこは終わってしまったがこの後はどうしたい一刀?」

 

「う~んっとねぇ…」

 

一刀は頬に指を当て首を傾けながら悩む中、一頻り一刀の頭を撫でることを堪能し終えた雪蓮が去ろうとする。

 

「あれ?シェレンお姉ちゃんは?」

 

「うん?私はいいのよ。この後用事があるからね、二人で楽しんできてね♪」

 

満面の笑みでそう言うが、冥琳は本当は一緒にいたいと望んでいることを見抜いている。

だが、あえて言わなかった。

 

これは雪蓮のけじめ。一刀を泣かしてしまったことに対するけじめ。

一人の大人として、一人の女として、涙を流すことになった一人の子供への謝罪。

例え誰が許そうと自身が許せない。

 

断金の仲である冥琳はそれを感じ取った。

 

「…それでは一刀、そろそろ良い時間だし昼飯でも食べに行くか?」

 

「うん!ボクおなかすいた!」

 

「はは、私もだ。朝から何も食べずに今まで暴れまわっていたからな」

 

言いながら一刀の手を取りその場から去る。

後には、悔しそうにうなだれる将達がいましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

余談…後片付けは将達がやりました…

 

 

『ジョオウ様侵食率○○%』

う~ん…惜しかった。このままジョオウ様侵食率100%まで行っちゃったほうがよかったかな?

でもそれだと続きが書けなくなっちゃうんだよな。自分が…

それにしても…冥琳のフミフミ…羨ましいぞ一刀、コンチクショウ!!

 

『将来の予行演習、のはずが…』

無自覚無意識の偶然による一刀の快感のツボ刺激…どんだけだよ!?書いてる自分がそう思った。

いやでも実際にそんな光景を見てしまったら鼻血物だねw

ずらりと並ぶ双子山の数々、そしてそのふもとは真っ赤な光悦な表情…ブフゥ!?

 

『お姉ちゃんと一緒にお料理』

う~ん…実際どうなんですかね?原作ではあまりこういった場面は見れませんでしたが…

よく料理がダメな冥琳を他のSSで見かけるんですが…

まぁ、こういうところが冥琳の魅力を引き立てることになるかなと思い、自分もこの設定にしました。

 

『鬼教官一刀』

うん、分かる人には何のネタかわかるでしょうw

料理ネタで真っ先に浮かんだのがこのネタ。

一刀に怒鳴られて涙を必死に耐えながら教本片手に料理する冥琳…いいね!

 

『強敵、現る…』

玉葱に涙する一刀、冥琳、愛紗、春蘭、麗羽…想像してみるとかなり笑えてきますねwww

原作でも彼女の涙といったら閨のn…おっと、この表現はまずいな。

 

『お姉ちゃんとお料理 完成編』

実際自分の作った料理を誰かに評価してもらうと気ってかなり緊張しますよね?

で、それを認められたときの喜びは相等のものかと…

それが冥琳にとって一刀と初めて作ったものとなれば尚更ね。

 

『一刀の涙…』

こんな状況、貴方なら耐えられますか?ボカァ無理です。

雪蓮にとっても耐え難いものだったでしょうね。

で…それに対して冥琳が暴走してしまいましたとさwww

ここのネタ、分かる人どれくらいいるのかな?

 

『誘拐事件発生!?』

戦う軍師って点を主に書きたかったんですが…もはや軍師でなく武将w

そして今回も出できてしまったオリジナルの武器。

鞭を使う冥琳がさらにバージョンアップするには何がいいかな~?

って考えて出てきたのがこれです。

それにしても…救出を忘れてまで見悶えるとかw明命の猫好きも相等ですねw

 

『親友と共に、親友の為に、一刀の為に…』

武器の名前を見てもしかして…って思った人意外といると思います。

ハイ、正解ですw

連結刃と言ったらやっぱり『なの○』の△グナムでしょう!

どうせならってことで技も彼女のものを使わせていただきましたwww

若干やり過ぎた感はあるが後悔は無い!

 

余談ですが、本当はもう一つネタを入れて、

 

「私が抑えているうちに…早く、私ごと撃って!」

「出来るわけが無いだろう!?」

「撃ちなさいよ臆病者!撃ってーーーー!!」

 

ってシーン書きたかったんですが、それやると終わりが…

本当に残念でした…

~あとがき~

 

いかがでしたでしょうか?冥琳編。

 

今回は冥琳が凄い暴走しちゃいましたねw

 

まぁこのシリーズのコンセプトはショタに走った将達の暴走ってことですから、よしとしよう!

 

無印では黒すぎてあまり好感を抱けませんでしたが、

 

真になってもぅドストライクでした!

 

元々褐色肌スキーだったので、もう書いている間ネタという妄想が湧き出る湧き出るwww

 

でもそれを文に出来るだけの文才が無いために書くのに時間が掛かりすぎちゃいました…

 

ってかこの後どうしよう…今回ネタ使いすぎて他の奴が…

 

まぁなんとかなるかな?なると祈ろう!

 

 

現時点ではショタ一刀シリーズでは超距離障害物競走が進んでますかね。

その中でも特に明命と思春が。ロリって苦手なんですよね~…

そのせいで始まって大分経つのに未だに小蓮の話が書けない…OTZ

まぁ、気長に頑張ります。

チェンジシリーズでは…今のところ月⇔詠が一番進んでます。

 

ネタが浮かんでは、それを必死こいて文にして…って感じでやってますので、

毎度の如く投稿がいつどんな順番でなるか分かりませんが、

どうかよろしく…

 

ではこのへんで!


 
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