No.108938

真・恋姫†無双~三国統一☆ハーレム√演義~ #15 戦勝の宴/魏・呉編

四方多撲さん

第15話を投稿です。
前回から続きまして、魏と呉の戦勝祝いの宴の様子をお送り致します。
今回はようやく本当の意味で、魏も呉もオールキャストですよー!……疲れたww
呑み過ぎにはくれぐれもご注意! 蜀END分岐アフター、ゆっくりしていってね!!!

2009-11-26 00:05:20 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:44112   閲覧ユーザー数:30858

 

 

第三次五胡戦争に勝利し。陣地での一先ずの小宴会。

 

蜀の宴会で、心配してくれた仲間達に手荒く歓迎されつつも。

一刀は、桃香と愛紗から、魏や呉の『仲間達』にも心配を掛けたのだから、と送り出されたのだった。

 

 

/魏陣営 宴会場

 

「やあ。お邪魔するよ」

 

魏の宴会場へ、足を踏み入れた一刀をまず出迎えたのは……

 

「兄ちゃーーーーん!!」

「ぶげふっ!?」

 

季衣の正面突撃――という名の抱擁?――だった。

 

「う゛あ゛あぁぁぁん……生きてて、良かったよぉ……兄ちゃん……」

「ごほごほ……」

「も、もう季衣ったら!ごめんなさい、兄様……でも、帰って来て、下さって……嬉しい……ですっ」

 

そう言い終わる前に、ぽろぽろと涙を零しだす流琉。

 

「……心配してくれてありがとう、二人とも。こうして帰って来られたよ」

「うん!」「……はい」

 

季衣の頭を撫で、流琉を抱き寄せる。

暫くの間、泣き続ける二人を慰めるように撫でていた一刀。

 

が、いつからかプレッシャーを感じ始めた。

背後から、まるで猛獣に睨まれた様な重圧……

 

「…………(ゴゴゴ…」

 

気配の元は、両腕を組み仁王立ちした春蘭であった。

 

「……春蘭さん? なんか、怖いんですけど……」

「……そうか?(ゴゴゴ…」

(ふふふ……)

 

一刀を延々と睨み続ける春蘭。

よくよく見れば、すぐ近くでその様子を微笑ましげに見守る秋蘭。

 

「あっ、秋蘭! そんなとこでほくそ笑んでないで! 助けてよ!?」

「はっはっは! 姉者は心配していたことを恥ずかしがっているだけだ。そういう意味では、季衣や流琉と同じさ」

「う!? 余計なことを言うな、秋蘭! い、いや! そもそも心配などしとらん!」

 

明らかに狼狽する春蘭と、それを見てご満悦の秋蘭であったが。

一刀は、二人へ向き直り謝罪した。

 

「ん、でも迷惑も掛けちゃったから。ごめんね、二人とも」

 

「ふん……今回は華琳様のおかげで勝ったようなものだ。しっかりと御礼を申し上げておけよ!」

「ああ、ちゃんと言っておくよ」

「何はともあれ、無事で何よりだ、北郷よ。……華琳様、姉者を初め、魏の将も皆心配していたぞ?」

「……秋蘭も?」

「ふふっ。野暮なことを訊くな、北郷。……勿論だよ」

「秋蘭!?」「秋蘭様!?」

「?? 春蘭様も流琉も、何を驚いてるの? 兄ちゃんがいなくなって、みんな心配したじゃん」

 

爽やかに答えた秋蘭に、驚く春蘭と流琉。そして深い意味が分かってない季衣。

 

「……そっか。春蘭、秋蘭にも随分心配かけたみたいだ。――ありがとう」

 

一刀は敢えて謝罪ではなく、感謝の意を述べた。

 

「……もう少し身体を鍛えておけ!」

 

対して放った春蘭の苦し紛れの言葉に、秋蘭が口を押さえて笑いを堪えていた。

 

 

……

 

…………

 

 

四人と別れ、次に一刀が向かった先にいたのは、霞と三羽烏の面々。

 

「おー、一刀やん!なんや、魏の宴会にも参加か?」

 

最初に気付いたのは霞だった。

 

「うん。今回はみんなに心配かけちゃったから。魏と呉のみんなにも謝罪と感謝をね」

「ああ、そりゃええ。魏の将はみーんな華琳と一刀の為に戦ったようなもんや」

「そ、そうなの?」

 

三羽烏に尋ねる一刀だったが、三人はいつも通り?姦しくなるばかり。

 

「霞様、そんなことは……////」

「なーぎちゃん、覚悟決めるの♪」

「そうやなぁ。凪も、沙和も、ウチも……あれ程、感情を露わにして戦ったんは、きっと初めてやわ……」

「ええ!? 沙和もなの!?」

「……確かに。あんな大声を張り上げて戦う沙和なんて初めて見た」

「凪ちゃんまで~~!////」

 

姦しい三羽烏を微笑ましく見ていた一刀だったが、ふと霞が漏らした。

 

「……そやな。ウチも、あんな激情に駆られて戦ったんは……初めてやったかもしれへん」

 

霞は自分の掌をじっと見つめていた。

 

「霞様も、ですか?」

「戦いに“興奮”して血が沸騰する感覚は、偶にあったけど……。あの腹の底から湧き上がるような怒りは……」

 

「霞」

「!?」

 

自身の内面を覗き込むように沈んでいっていた霞へ、一刀が声を掛けた。

 

「たとえ怒りに呑まれても。それでも平和の為に戦ってくれて。ありがとう、霞」

「う……////(ホンマ直球やなぁ、一刀は……)」

「霞?」

「え!?ああ、うん。まぁ、ウチに出来んのは戦うことだけや。――正直、弔い合戦の積もりやってん……」

「そう……か。心配掛けてごめん。――改めて、ありがとう」

 

そう言って笑い、手を差し出す一刀に、霞はすっかり見入ってしまった。

 

「……おう!(こら、星の言う通りやな~……すっかり惚れ込んでもうたもんやなぁ)」

 

一刀と握手を交わし。その掌の温もりに、霞は先日の三国大宴会での一件を思い出していた。

 

 

「凪、沙和、真桜。君達にも心配を掛けたね。――生き残ってくれて、国を守ってくれて、ありがとう」

 

そうして三羽烏の三人と、一人ずつ握手を交わしていく一刀。

 

「は、はい!ありがとうございます……////」

「えへへ~♪////」

「うひ~!これ、えらいこっ恥ずかしいやん~////」

 

三羽烏も嬉しげに顔を緩ませつつも赤らめていた。

のだが。

 

「おやおや、お兄さん。とうとう魏将も餌食に?」

「ちょっ! どうしてそう人聞き悪い言い方するかな、風!?」

『へっへっへ。そんな言い訳しても無駄だぜ、あんちゃん? 見ろよ、この三人の緩んだ顔をよぉ』

 

「「「!?」」」

 

宝譿(を使った風)のツッコミに三羽烏が大慌て。

因みに、霞は三羽烏が握手をしている間に、退避して離れていた。流石は『神速』の張遼(?)。

 

「風様!何を仰るのですか!?////」

「いやぁ~~ん♪////」

「ちょお、勘弁して……ひ~、ウチこういうの駄目みたいやぁ////」

 

「全く。大した種馬ぶりですねー#」

「種馬は酷くない!?」

 

不機嫌そうに一刀を扱き下ろす風。半泣きで反論する一刀だったが、それを封じたのは風ではなく。

 

「……蜀将の全てに“御手付き”している方が、今更何を反論しようというのです?」

 

嘆息しつつ眼鏡を押えて現れた軍師、郭嘉こと稟であった。

 

「……ごほん。それはともかく」

「それで誤魔化した積もりですかねー」

「そうみたいね」

「それはともかく!」

 

半ば以上やけっぱちに声を上げた一刀は、一旦深呼吸してから軍師二人に向き直る。

 

「……風。稟。今回は迷惑を掛けてゴメン。戦うことを諦めずにいてくれて、ありがとう」

「日輪を支えることこそ、我が使命ですから。でも――ご無事で何よりですよ、お兄さん。ふふふ」

「わ、我々は華琳様の参謀として当然のことをし、したまで」

「「??」」

 

握手する一刀と風は、稟の何か怪しい挙動を見て、脳裏に疑問符が浮かぶ。

 

「どうしたのですか、稟ちゃん?」

「え、ええ!? ど、どどどうもしませんよ?」

「「…………(じとーー)」」

「…………(ぷいっ)」

 

一刀と風がじぃっと見つめると、視線を逸らしてしまう稟。

 

「(稟の奴、どうしたんだ?)」

「(ふーむ。先日の同盟一周年記念の三国会談くらいから、偶におかしいのですよ)」

「(少なくとも病気の筈はないし。まあいいか……)」

 

小声で風に尋ねてみるが、具体的な原因は見えてこない。

一刀は、一先ず自身の用件を済ませることを優先することにした。

 

「とりあえず……こっち向いてよ。ちゃんと謝罪とお礼が言いたいから」

「そ、それはもう承りましたので……け、結構です」

「もーう。ほら、握手しようよ?」

「あ、握手!?(……北郷殿の、手……この手で……れ、“練習”……)……ぶふぅっ!!」

 

突然鼻血を噴き出す稟。

 

「どわぁっ!ど、どうしたんだ!?」

「いつものことですよー。はーい、とんとーん」

「ふがふが……す、すまない風……(うう……穏殿の言葉が脳裏から離れない……)」

 

実は、三国会談で穏から提案された『鼻血癖矯正』の“練習”相手として指定された北郷一刀を前にすると、どうにも稟は冷静でいられないのだった。

 

「ふーむ……まぁ、お兄さん。どうかお気になさらず。……原因は、その内分かることでしょうからー」

「そ、そうなの?……風がそう言うなら、そうなんだろうけど……」

「そ、そうなのです。北郷殿は気にせずに、他の者への挨拶に回って下さい。……何はともあれ、無事でよかったですね」

「……ありがとう。じゃあ……(あれ、頬に血が……)」

 

去り際、一刀が稟の頬に付いた血を布巾で拭いてやる。と……

 

「な、何を……(さ、触られた!?撫でられた!?)……ぶはぁーーーー!!」

 

「やっほー!一刀♪ こっち来て一緒に、呑もう、よ……?」

「きゃああ!何で血塗れなのよ!?」

「…………色々、あってね…………」

 

着替える為に早足で移動中の一刀を見かけた天和が声を掛けたのだが、一刀の余りの惨状に地和が悲鳴を上げた。

今の一刀の姿は、まるでお化け屋敷の幽霊か、はたまた落ち武者か。

偶々いつもの制服が洗濯中で、絹の衣服を着ていたのだが。これは不幸中の幸いというべきかも知れない。

 

「これ、一刀の血じゃないよね?」

「ああ。稟の鼻血だよ」

「「「ああー……」」」

 

一時は曹魏で働いていた張三姉妹。一刀の一言で全てを理解したようだった。

 

「とにかく、着替えてくるから。ちょっと待っててくれ」

 

 

 

一刀は、宴会場から少々離れた木陰で、新しい衣服に着替えようと、鼻血塗れの衣服に手を掛けた。

 

「かーずと♪」

「ひょえっ!? ……天和? というか、張宝と張梁もか。あー、吃驚した。どうしたの?」

「ふふん♪ 大陸一の偶像(アイドル)、地和ちゃんが着替えを手伝ってあ・げ・る♪」

「い、いや。そんなこと自分で出来るから。……って、おい! 服に手を掛けるなって!」

「遠慮しないでいいよ~♪ ……へぇ~、一刀って武官じゃないのに結構締まった身体してるね」

「偶にウチの武官たちに扱かれてるからね……。じゃなくて! 自分で着替えるから!」

「何よ!ちぃが着替えを手伝ってやるって言ってんのよ!? ここは狂喜乱舞するところでしょ!!」

 

あれよあれよという間に、一刀はすっかり脱がされてしまった。

鼻血が上半身に巻いていた包帯にまで染み付いてしまっていた為、その包帯も解く。

 

「はぁ……私はしませんからね。――はい、姉さんたち。濡れ布巾よ。まず、これで身体に付いた血を拭かなきゃ。あと、北郷さんは今、背中に怪我をしてるそうだから、拭くときには気をつけて。こっちは換えの包帯よ」

「ありがと、人和ちゃん♪」

「これで拭けばいいのね(姉さんも言ってたけど……確かに結構……////)」

 

下着一丁で、ほぼ裸を晒す一刀に、思わずごくりと唾を嚥下する地和である。

ここまで剥かれては、最早抵抗は無意味。一刀も大人しくなった。

 

「……もういいや。お願いします……」

「はーい♪ 綺麗にしてあげる!」

「(見てる場合じゃなかったわ……)ま、まっかせなさい♪」

「はぁ……(王侯貴族の殿方って脂ぎってる印象があったけど、北郷さんはそんなこと全然ないのね……。全く、殿方の肌をこんな形で触るなんて……歌迷(ファン)に知られたら大醜態だわ……)」

 

 

「~~♪~~♪~~♪」

「……楽しそうだね、天和」

「うん! なんだろ? 一刀の喜ぶ顔が見たいの!」

「うえ!? ス、ストレートだなぁ……////」

 

思わず赤面した一刀だが、零れた外来語に地和が反応した。

 

「すとれえと? 何ソレ?」

「あー……俺のいた世界の言葉で、真っ直ぐとかいう意味の言葉だよ」

「へぇ~……ホントに天界から来たのね……」

「別の世界ってだけで、『天』じゃないんだけどね。聞こえがいい『天』を使わせて貰ってるだけ」

「ふぅ~ん……それにしても男の身体って、かったいわね……」

「そりゃ、女の子と比べればね。俺は男にしては細い方だと思うけど」

「……アンタ、ちぃ達の下僕、やってくれるのよね?」

「世話役な!」

「似たようなモンじゃない。……華琳様も言ってたけど。アンタ、一応蜀の王様でしょ。ホントにいいの?」

「あははっ!今更どうしたんだ? どこまで時間が取れるか分からないけど、ちゃんとやるよ。……遠慮なんて張宝らしくないんじゃない?」

 

一刀は天和と人和に向けて訊いていた。

 

「そうだね~。遠慮するちぃちゃんは珍しいかな~?」

「……そうね。ちぃ姉さんは、基本的に強引だから」

「ちょっ! 姉さんも人和も、何よ、その言い方!」

「はいはい、姉妹喧嘩しない。張宝も、華琳のことは気にしないでいいよ。これは俺が約束したことだ。破ったりはしないから」

「う……それなら、いいのよ!」

 

言葉に詰まりつつ、一刀の脚を拭く地和。

天和は一刀の背を(なるべく擦らないよう)拭いていたのだが。

 

「と、ところで天和さん?」

「なぁに~?」

「背中というか腰の辺りに柔らかいモノが当たってるんですが……」

「なんのことかなぁ~?」

「天和姉さん!何してるのよ!?#」

「なんでちぃちゃんが怒るの~?」

「こいつのだらしない顔がムカツクからよ!#」

「……スミマセン」

 

何か、愛紗に叱られている場面を思い出してしまい、素直に謝る一刀。

その余りにも立場を弁えない姉達に、思わずといった感で人和が口を開いた。

 

「……北郷さん。確かに私達は傭兵団を率いる条件として契約しましたが……余りに姉達の言動が目に余るようでしたら、はっきり言ってもいいんですよ」

「ん? 別に俺は気にしてないよ?」

「そ、そうなんですか!? でも、北郷さんは……蜀の国主の主である訳で……。周りの目とか、あるのでは?」

「そんなの気にしない、気にしない。“俺”という個人は、そんなことでぶれたりしないんだから。余程畏まった場ででもなければ、タメ口で問題ないよ」

「は、はぁ……」

 

なんだかんだで着替え終わった一刀。というか着替えさせ終わった天和と地和。

 

「よし、これで大丈夫かな。ありがとう、天和。張宝。張梁」

「うん♪」

「…………」

「私は何もしてませんから」

「濡れ布巾や包帯とかを持ってきてくれたじゃないか」

「あ……そ、そう、ですね……」

 

「……ねえ」

 

珍しくだんまりだった地和が口を開いた。

 

「どうした、張宝?」

「それよ! それ、なんかムカツクの!……ちぃのことは『地和』と呼びなさい!」

「真名を……預けてくれるのかい?」

「細かいことはいいのよ! 分かったわね!?」

「……ああ、分かったよ。地和(くすっ)」

「ちょっと、今笑ったでしょ!?」

「……ナンノコトヤラ?」

「むきぃーーー!」

「いだっ!痛い!痛いよ、地和!」

「下僕の癖に生意気なのよ!これからは、ちぃ達の世話役なんだから、色々気を使いなさいよ!……一刀」

「……はいはい」

 

なんだか逆ギレした地和だったが、最後に名を呼んでくれたことに、一刀も苦笑しつつ返事を返した。

寧ろ地和の一言に反応したのは、長姉の天和だった。

 

「ぶー……ちぃちゃん。今、一刀のこと“一刀”って呼んだぁ~」

「い、いいでしょ! 姉さんなんて、最初からそう呼んでるじゃない! ……そうよ、人和も下僕相手に“北郷さん”なんて呼んでないで、名で呼びなさいよ」

「ええっ!? い、いくらタメ口でいいと言われていても、それは……」

「俺は構わないよ、張梁」

「……わ、分かりました。代わりになるとも思えませんが……私の真名は、人和です。これから、よろしくお願いします。かっ、一刀、さん……」

「――うん。よろしく、人和」

 

「あっ!ちょっと、こっち来るんじゃないわよ!!」

 

華琳に酌をしていた桂花は、一刀が近づいて来ているのに気付き、大声を上げた。

 

「そ、そんな……いきなりそれはないだろう?」

「折角、華琳様と二人きりだったのに!」

「あー、そりゃ悪い」

「消え失せなさい! あんたが近付くと、女を孕ます花粉が飛ぶのよ!! その汚い髪からぶわーっと!!」

「訳分かんねえッ!?」

「もう、桂花ったら。そんな大声で。それこそ折角の戦勝祝いの宴なのだから。……で、一刀はどうしたの? 魏の宴会に紛れ込んで、人探しかしら? それとも……私に用事?」

 

ぎゃいぎゃいと一刀を責める桂花を遮り、不意に現れた一刀に何かの期待を込めて華琳が言葉を挟んだ。

 

「ああ。二人を探しててね」

「……ふぅん」

「なッ! 私はアンタなんかに用はないわよ! さっさと失せなさい!!」

 

一刀の返答に、華琳は用件を察したか興味を失い、桂花は逆上?する。

 

「――今回は迷惑を掛けてゴメン。平和を守ってくれて、ありがとう」

 

そう言いながら、一刀は頭を下げた。

 

「ふぅ、やっぱりそんなこと。戦ったのはあなたの為ではないし……」

 

華琳は桂花を一瞥して、“悪い”笑みを浮かべる。

 

「それに……一時、あなたを失ったという状況は……ある意味、この大陸の平和に大きな貢献をしたのかも知れないわ」

「ええ!?」

「あははは! そうよ、アンタなんかいなくなった方がこの大陸の平和の為なのよ!!」

 

華琳の放った一言に、一刀が仰天し、桂花は彼を指差し快哉を叫んで大笑い。

 

「そ、そりゃないよ桂花……。どういう意味なんだ、華琳?」

「ふふ♪ そうねぇ。――桂花にとっては、悪い報せかも知れないわね?(ニヤリ)」

「ええっ!? ど、どういうことですか、華琳様!?」

「何れにせよ、今はまだ伝える時でないでしょう。あなたはただ……この大陸の平和を維持する方法を考え続けなさい」

「!!……流石だな。俺の悩みなんて、お見通しか……」

 

敢えて一刀の質問を逸(はぐ)らかした華琳は、逆に一刀へ忠告じみた言葉を掛けた。

 

「その悩みは、今や三国の重鎮ら共通の悩みよ。とは言え……あなたは今後、大きな決断を迫られることになるでしょうね。……ぷっ。くくっ、あはははは!」

「「!?」」

 

途中まで真剣な表情であった華琳が、最後になって相好を崩し破顔一笑したことに、一刀と桂花はまた驚いていた。

 

「(今の会話の何処に笑い所があったんだ?)」

「(華琳様のお考えが分からないなんて側近失格だわ……っていうか、近寄らないで!妊娠しちゃうでしょ!?)」

「(するかっつの!)」

 

「あらあら。私の目の前で内緒話なんて、仲良くなったわね。これなら大丈夫かしら?」

「華琳様! ご冗談でも、そのようなこと!」

 

(何が大丈夫なんだろう? でも……多分、訊いても逸らかされそうだな……)

 

結局、暫く笑い続けた華琳へ、一刀はそれ以上訊けなかったのだが。

 

「さて。一刀には皆を心配させた罰を与えなくちゃね」

「ええっ!?」

 

突然、華琳がそんなことを言い出した。

 

「そうね。今回はちょっと甘めにしておいてあげる。……桂花、全員を此処に呼びなさい。一刀、あなたには一人一人から酌を受けて貰うわ」

「ああ、ありがとう……喜んで戴きます」

 

華琳が罰というので一瞬戦々恐々としてしまった一刀だったが、意外にも言葉通り、甘めの罰とも言えない罰。

素直に礼を述べた一刀だった。

 

 

のだが。

 

 

一刀を中心に半円に集合した魏の将軍と軍師達。

 

「さあ、皆の者。此度の戦では一刀に随分心配させられたことでしょう。ここに三種の杯を用意したわ。一刀には、一人一人から、その“心配”に釣り合う大きさの杯に酌をしてあげなさい♪」

「…………」

 

一刀の前には大量の酒樽と、三種類の杯。普通の掌サイズ、人の顔サイズ、そして流琉の愛器『伝磁葉々』サイズ……

 

(どこが甘めなんだよ、華琳の奴ぅ~~!!)

 

どう考えても、大方の者が最大サイズの杯を選択するのは目に見えていた……

 

/呉陣営 宴会場

 

「ううっ……」

 

蜀軍、つまり自軍の宴で相応に呑んでいた一刀は、魏軍の罰で散々追加で呑まされてしまい、グロッキー寸前であった。

結局魏の者、全員が特大サイズを選択したのだ。

 

(……秋蘭や流琉、凪は手加減してくれると思ったのに……)

 

逆に言えば、普段なら此方の身体を気遣う余裕のある三人にすら、それだけの心配を掛けたという証明でもあり。

反省とともに、本当に身体を鍛える必要性を感じた一刀である。

 

 

「あらぁ~~?北郷さんじゃないですかぁ~~?」

 

 

呉軍の宴会場の入り口で、休憩中だった一刀へ声を掛けたのは、普段より間延びした声の穏だった。

 

「やあ、穏。心配を掛けた謝罪と感謝を述べたくてね。呉軍の宴会にもお邪魔する積もりなんだ」

「あら~~? でも、もう宴会は始まってますよ~~?」

「あ~……魏軍の宴会で、えらい呑まされちゃってね。ちょっと休憩中」

「まあ、そうなんですかぁ~~。それじゃあ、呉も負けられませんね~~!」

「え゛?」

 

言うが早いか、穏はささっと自軍陣地へと足早に――千鳥足で――去って行った。

 

「え?あ、あれ?……し、しまった!思わずスルーしちまった!?」

 

後悔先に立たず……。最早一刀の運命は決定したのだった。

 

 

 

さて。呉の呑兵衛と言えば、宿将・祭と先主・雪蓮である。

この二人に囲まれる事態だけは避けよう、というのが一刀の最後の抵抗だった。

 

「お、来おったな。ホレ、こっちへ来い。北郷!」

「さ、祭!(いきなりキターーー!?)」

 

うろたえ気味に見回すが、祭の周りにいるのは亞莎と明命のみ。

ほうと大きく息を吐き、一刀は胸を撫で下ろした。

 

「やあ、お邪魔してるよ」

「うむ」

「か、一刀様////」

「はぅあ~~、北郷様ですぅ~~」

 

一刀の挨拶に返事する三人だったが、明命は少々酔いが回っているようだ。

 

「先程、穏が言うておったが。魏の連中に随分呑まされたそうじゃな?」

 

(もう伝達済みか……のんびり屋に見えるのに、こういう時の俊敏さは流石軍師だな……)

 

「いや、それは一先ず置いておいてくれ。先にこっちの用件を済ませたい」

 

一刀は咳払いして一旦間を置いて、口を開いた。

 

「今回はみんなに随分迷惑を掛けちゃってゴメン。そして……戦い続けてくれて、ありがとう」

「そ、そんな!勿体無いお言葉です……////」

「私達は戦うことこそがお仕事ですから~~。でも……心配、しました……」

 

「――いや、北郷一刀殿。寧ろ礼を申すべきは我等、呉の将じゃ。我等が主、孫仲謀様を御身を挺してお守り下さったこと。そして“熱”に浮かされた孫伯符様をお助け下さったこと。心より御礼申し上げる」

 

謙遜や心配を口にし涙を浮かべる若い将と、畏まって逆に礼を述べた老将。

 

「……逆に言われるとはね」

 

苦笑いの一刀に、祭も普段の雰囲気へと戻った。

 

「おぬしのことじゃ。権殿については勝手に身体が動いた、とでも言うのじゃろう?」

「そこまでお見通しか。参った」

「かっかっか!年の功を舐めるでないぞ?」

 

諸手を挙げて降参する一刀に、笑う祭。

 

「でも、俺の謝罪も受け取ってくれよ。……本当に心配かけたね」

「北郷さまぁ~~!(ぐずぐず)」

「私も……本当に、心配したんですから……」

 

とうとう感極まって泣き出した明命と、俯いて顔を隠す亞莎の頭や頬を優しく撫でて。

 

「――ありがとう。諦めないでくれて」

 

その笑顔を見て、祭は笑い返し。泣く二人も、ようやく笑顔を見せた。

 

「じゃあ、俺は他のみんなにもお礼を言いに……」

「待てい」

 

さっくり逃げにかかった一刀を、祭の腕が止めた。

 

「往きたくば、我等の酌を受けてからにせい。……逃がすと思うたか。くっくっく」

「……やっぱ駄目だったか……」

 

 

 

「……ぷはぁ~……マジ限界……」

「はっはっは!まぁこのくらいで勘弁してやろう!……まだ策殿とも酌み交わしておらんようだしの?」

「う……」

「だ、大丈夫ですか?一刀様……。余りご無理をなさらないで下さいね?」

「ああ、大丈夫だよ。ありがと、亞莎」

「…………」

 

ようやく三人からの酌を呑み干した一刀(祭だけは専用で大きい杯だった上に三杯も呑まされた)。

その隣では、心配して声を掛けた亞莎を、明命がじっと見つめていた。

 

「……? どうしたの、明命? 私の顔に何か付いてる?」

「亞莎……北郷様を“一刀様”とお呼びしているのですか?」

「っ!////」

「ふむ。前回の三国会談以来、そのようじゃな。……なんじゃ、幼平も北郷を“名”で呼びたいのか。くっくっくっ」

「うぅ~……はい! 北郷様が許して下さるなら、私も名前でお呼びしたいです!……ひっく」

 

普段の明命からは考えられない積極性。……明らかに酒の力だったが。

 

「そうなんだ。俺は構わないよ」

「ありがとうございます!……か、かず……。……一刀、様。……はぅあ~!何だか照れてしまいますぅ~~////」

 

明命は逃げ出した!

 

「むぅ~……(なんだか、おもしろくないです……)」

 

亞莎はむくれている!

 

「はっはっは!全く以って北郷は“英雄”じゃのう!」

 

祭は笑っている!

 

「あれ? 祭は名前で呼んでくれないの?」

 

が、そこに一刀がさらりと口説き文句のような疑問を挟んだ。

 

「な、なに、儂もか!? む、むう……(確かに何やら気恥ずかしいのう……)。ふーむ……そうじゃな。一騎打ちで北郷が儂から一本取れたなら呼んでやろう」

 

一刀の一言に少々怯んだ祭であったが、流石に年の功。すぐに持ち直し、逆に難題を言い出した。

 

「ええ!? 無茶言うなよ!」

「なんじゃい、やる前から諦めるなぞ、男のすることではないぞ!」

「それはそうだけど!……せめてハンデをくれよ……」

「半手?」

「あ、これ英語か……。えっと、祭に不利な条件を付けたり、俺に有利な条件をくれってことだよ」

「ふぅむ……まぁ北郷は本来武官ではないしのう。戦(や)ることになったら考えてやろう。それまではお預けじゃ」

「はーい……(本気で鍛えておかないと、殺されるかもしれないな……)」

 

「え!? 今でないにしろ、やる気なのですか!?」

 

祭の提案に最終的に“是”、つまり“YES”と答えた一刀に、亞莎が驚いて問い質した。

 

「そのうちにね。やっぱ男としては、ああ言われちゃうと引けないし」

「……ちょっと意外でした。でも……頑張って下さい////」

 

長袖で顔を隠しつつ、一刀を応援した亞莎だったが。

 

「なんじゃい、子明は北郷の味方か? くっくっくっ」

「そ、そういう訳では……////」

「まぁまぁ、あんまりからかってやるなって……。さて、それじゃ他のみんなにもお礼に行くよ」

 

そう言って一刀は腰を上げた。

 

「そうか。確と皆からの“心”を呑み干すのじゃぞ」

「ああ、分かってる。じゃ、行ってきます」

「はい。行ってらっしゃいませ、一刀様」

 

「あ、北郷さ~~ん。此方どうぞ~~♪」

 

一般兵にも声を掛けつつ、その間をすり抜け、呉の将を探していた一刀に穏が声を掛けて来た。

穏の隣には、蓮華と思春の姿。

 

(ふむ、雪蓮はいないな。よし、ちょっと休憩がてら……)

 

「穏、蓮華、思春。お邪魔するよ」

「どうぞどうぞ~~♪」

「あ、一刀……」

「…………(ぷいっ)」

 

赤ら顔で歓迎する穏。一瞬嬉しそうな顔から一転、表情を翳らせる蓮華。そっぽを向く思春。

一刀は三人の前に座り、謝罪の言葉を述べた。

 

「今回は随分迷惑やら心配やら掛けちゃって……ゴメンね」

「そ、そんな! 本を正せば、一刀が私を庇ってくれたからでしょう!?」

「それはそうだけどね。それはそれ、だよ。それに……」

 

一刀は蓮華の髪を見つめる。

 

「髪、切ったんだね……」

「――ええ。私は弱いから。こうでもしないと、姉様の跡を継ぐ覚悟が出来なかったの」

「蓮華様!そのようなこと……」

 

蓮華の弱気とも取れる発言に、フォローをしようとした思春だったが。

 

「――思春。そこは否定しちゃ駄目だ」

 

一刀がそれを諌めた。

 

「なんだと!?」

 

一刀の言葉に一瞬で立ち上がり、愛刀『鈴音』を抜刀してその刃を頸に押し付ける思春。

 

「思春!国主に対して何たる無礼を!」

「いいんだよ、蓮華。これは思春の“忠義”の形だ。だから、“これ”はいい。だけど……」

 

多少顔を青ざめさせながらも、一刀は微動だにせず。思春の眼を覗くように見上げる。

 

「貴様に……貴様に蓮華様の何が分かるというのだ!?」

「蓮華について、思春以上に識る者は……限られてるさ。少なくとも、俺よりは理解しているだろう」

「ならば……先の言葉を取り消せ!」

「――思春。俺はこう思う。……自身の“弱さ”を認められない王は、民に善政を敷くことは出来ない」

「!?」

 

一刀の言葉に動揺を見せる思春。

 

「“強い”だけの王は、必ず民を軽んじる。“弱さ”を知らない王が、民を大切にすることは出来ない」

「どういう……ことだ!?」

 

「“弱い”ってことを理解出来ない人間が、他人に“優しく”することは……出来ないと思うんだ。

 優しさの根本は、自分の身を挺して誰かを守ることだから。

 武人だってそうだろう? どれ程強くなろうと、“強い”だけの奴は他人を打ち倒すことしか出来ない。

 “弱さ”を知るからこそ、誰かを守ろうとすることが出来る」

 

「そ、それは……」

 

一刀は更に続ける。

 

「民ってのは、立場的に“弱者”である者達だ。立場として“強者”である王が、“弱い”ということを――自身の“弱さ”すら――理解出来ないようじゃ、いつか暴君として民の前に立ち塞がるだろう。だから……」

 

一刀は、頸に押し付けられた刃を退け、立ち上がった。

その眼は、思春の瞳を見つめたまま。

 

「――――」

 

思春は、一刀の動きを押えることを忘れていた。

それ程に一刀の言葉に衝撃を受けていた。

 

(こんな……これでは、私が……蓮華様を、理解しているなどと……言えたものでは、ないではないか!?)

 

「だから、蓮華が自身を“弱い”と言い、認めることを……否定しちゃ駄目だ」

「あ……」

 

思春の口から出た言葉は其れきりだった。

 

 

かつては河賊だった自分やその部下を、そのまま側近として重用した蓮華。

 

『私は、一度“信頼”した者は無条件で信頼することにしているの。――信頼とはそういうものでしょう?』

 

その蓮華が、自身を重用する理由を尋ねた思春に返した言葉。

立場としては庶民より下であったろう自分達を重用する理由は、“信頼”だけだったのだ。

その蓮華の器の大きさ。その優しさ。

それを感じたからこそ。蓮華に自身の武を捧げ、全身全霊を以って仕えることを決めたのだ。

 

(だというのに、私は……!)

 

 

歯を食い縛る思春の頭に、不意に……ぽんと置かれた大きな手。

 

「……ほ、んごう?」

「……そんな顔するなよ、思春。ちょっと偉ぶった言い方になっちゃってゴメンな。でも、分かって欲しい。自分の弱さを認めて、あんなに綺麗だった長い髪を切った蓮華の――」

「ああ~~~ん!一刀さぁ~ん!素敵ですぅ~~~!!」

 

ぶにょ~ん。ばたん!ぎゅうぅぅ。

 

「おぶぅ!?」

 

真面目に話していた一刀の頭を、その豊満な胸の中に抱き竦め、抱きついた勢いをそのままに地面へ一緒に倒れたのは……当然ながら穏だった。

 

「「…………#」」

 

蓮華と思春の怒りの雰囲気と視線を物ともせず。

地面に寝転がり、一刀の頭を抱えたまま、身体をくねらせ、一刀の身体に自身の肢体を絡みつかせる穏。

 

「ああ~~ん♪ 書を読んだ訳でもないのに、何だか身体が熱くなっちゃいましたぁ~~!」

「それは酔ってるだけだろうが!?」

「もう!真面目な話だったのに!……というか、いい加減一刀を放しなさい!」

「むぐぅ……」

 

豊満な乳房を顔面に押し付けられ、呼吸が出来ないまま、左右に頭を揺すられる一刀。

抵抗する力も入らず、いつしか意識も……

 

「う……?」

「あ、気が付いた? 気分は悪くない、一刀?」

「うう……ちょっと意識がはっきりしないけど……うん、大丈夫そうだ」

「ふん!全く……純粋な武官でない穏の締め付けから抜け出すことも出来んとは……だらしない」

「あー……それでオチたのか、俺。……確かに情けね~……」

「うふふ♪ 寝顔、可愛かったですよぉ~」

「「「…………#」」」

 

穏は欠片も反省していないらしい。

 

「一刀さん、蓮華様の太腿の感触は如何ですかぁ?」

「の、穏!?」

「ほえ?――ああ、ホントだ」

 

後頭部に感じる柔らかな感触。そして眼前の膨らみの向こうに見える蓮華の顔。

 

「あー、いいねぇコレ。極楽極楽♪」

「ちょっ、一刀! そういうことを言わないで!////」

「……気が付いたなら、さっさと起きろ#」

「ちぇっ」

 

隣から殺気を当てられ、渋々身体を起こす一刀。

 

「いい感触だったのに……」

「か、一刀ったら……////」

「この好色男め……#」

「ふふ♪ 流石は『英雄』と名高い一刀さんですねぇ」

「……イマイチ喜べないなぁ、それ……」

「…………」

 

穏の褒め言葉?に今一つ不満げな一刀だったが。

その隣で、蓮華が穏をじっと見ていた。

 

「?? どうされました、蓮華様?」

「……ねえ、穏。あなた、いつから一刀のことを“名”で呼ぶようになったの?」

「はぁ、そういえばそうですねぇ。多分、先刻からかと」

「な、なんで急に……」

「だってぇ~。蓮華様だってお分かりなんじゃないですかぁ~?」

 

ニマニマ、くねくねと逆に聞き返す穏。

 

「そ、それは……」

「……」

「先程は“男”として英雄と称しましたが、王としてもご立派なご意見でしたぁ~。流石は『大徳』の主って感じですねぇ♪」

「……」

「そりゃ褒めすぎだよ、穏。俺は元々、一般市民だったからさ。そういう立場が理解出来るってだけだよ」

「……」

 

謙遜というよりは本音を口にした一刀に、沈黙を保っていた思春が口を開いた。

 

「……北郷。先の言葉、確かに受け取ろう。……蓮華様の側近として、忠言痛み入る」

「そっか。ありがとう」

「……そ、それと……戦時、身を挺して我が主君、蓮華様を守ってくれたこと……感謝する」

「え? ははっ、それこそ気にしないで」

「……ふん!」

 

思春の感謝の言葉に、逆に笑顔で礼を述べた一刀。

思春は、そんな一刀の笑顔から目を逸らすように。そして頬を赤らめてしまったことを誤魔化すように、顔を背けた。

 

「思春が一刀にお礼を言うなんて、初めて見たわね。……相変わらず国主に対する言葉遣いではないけれど」

「あはは♪ 確かにそうですねぇ~」

「蓮華様、おからかいになられませんよう。……穏、貴様もだ」

「はぁーい♪」

 

楽しげな女性三人。

思春から感謝の言葉を貰えたことに満足しつつも、やはり一刀の目には髪を切った蓮華が印象深く映っていた。

 

「穏から聞いたわ。一刀、私達の酌も受けてくれるわよね?」

「え? あ、ああ。勿論戴くよ」

「?? どうしたの、一刀?」

「――男としては、やっぱり髪を切った女の子は気になるもんなんだよ」

 

一刀は思わず手を蓮華の後頭部――ばっさりと断ち切られた後ろ髪に伸ばしていた。

 

「きゃっ」

「あ、ゴメン!思わず……」

「う、ううん。いいのよ、あなたになら……」

「ありがとう。少し……触らせてくれ」

「ええ……」

 

暫くの間、一刀は蓮華の頭を撫でるように、後ろ髪を梳いていた。

 

「覚悟の為とはいえ……やっぱりちょっと勿体無い気がしちゃうね」

「一刀は……その。髪の長い娘と、短い娘の……どちらが好みなの?」

「……どっちも」

「もう!またそれなの!?」

 

以前、小蓮から「胸の大小はどちらが好きか」と聞かれて「どっちも」と答えているところを見たことがあったのだ。

一刀は、蓮華の反応には応えず。

後ろ髪から少し手前、蓮華の耳の辺りの髪を梳いて、彼女の耳を露出させた。

 

「……やっぱりこの耳飾りと同じさ。髪の長い蓮華も、短い蓮華も。どっちもみんなに敬愛される蓮華であることに変わりはないよ。……俺個人の好みは、本当にどっちも好きだしね?」

 

最後に冗談めかして(本音だろうが)答えた一刀。

蓮華の耳には、光源で色彩を変える特殊な蒼玉の耳飾りが松明の炎に照らされ、薄紅色に輝いていた。

 

「あ……。も、もう!そういう逃げ口上だけは上手いんだからっ……」

 

そう文句を言いつつも、恥ずかしげに頬を染める蓮華。

 

「軟派な台詞だな、北郷。とは言え……本当にお似合いです、蓮華様」

「陽の光には青く、火の明かりには赤く輝く……不思議ですねぇ。光によって石の色が変わるなんて」

「細かい原理は忘れちゃったなぁ。こういう種類の石が他にもあるのは知ってるんだけど、見るのは俺も初めてなんだ」

 

実際のところ、この宝石はカラーチェンジサファイアというコランダムだが、光源でその色彩を大きく変える宝石としてはアレキサンドライトが有名だろう。実際、色彩の変化はアレキサンドライトの方がはっきりしていると言われている。

 

「さあ、一刀。杯を受け取って」

「うん。戴きます」

 

暫し四人で歓談(思春が“歓”談したかはともかく)しつつ、一刀は三人から酌を受けたのだった。

 

「さて、残るは雪蓮と冥琳か……」

 

蓮華たちの場から退去し、残る二人を探す一刀の耳に、弦楽器らしき楽器の音と歌声が聞こえてきた。

 

「……」

 

音色に惹き付けられるように進むと、冥琳と七乃が二胡のような弦楽器を弾き、美羽が歌を披露していた。

 

(へえ……)

 

冥琳、つまり周瑜が楽器の名手であることは、現代の知識としてあった為、大きな驚きはなかったが。

七乃の演奏も中々に堂に入ったものであり。

何より、美羽の歌は派手さこそないものの、一刀はその歌声に聞く者を惹きつけるモノを確かに感じていた。

 

暫しして、歌曲は終わった。

周囲からは拍手が巻き起こる。

 

一刀は、演者らのすぐ近くにいた雪蓮へ話し掛ける。

 

「お邪魔するよ、雪蓮」

「あら、一刀。今の演奏と歌、聴いてたの?」

「ああ。大したもんだ。冥琳が上手いのは知ってたんだけど」

「そうなの?」

「所謂『天の知識』でね」

「へぇー! 冥琳の腕は天でも有名なのね!」

 

まるで自分のことのように喜ぶ雪蓮。

 

「天ですら知られているとは光栄だな。北郷、お前も聴いていたのか」

 

そこへ演者三人がやって来た。

 

「やあ、見事な演奏だったね。というか……七乃も上手かったけど。途中、冥琳が横目で七乃を見たのって、音程外れてたの?」

「ほう?よく気付いたな」

「いや、これも『天の知識』だよ。俺の知ってる周瑜は、『曲に誤りあれば周郎が振り向く』なんて言われてたんだ」

「あははは!確かに噂されてたわね♪」

 

雪蓮が笑っていると、七乃と美羽も話に加わってきた。

 

「冥琳さん、すっごい怖かったですよー……」

「宴会の余興だ。圧力を掛けた積もりはなかったのだがな。寧ろ……」

 

冥琳が美羽へ見向く。

 

「そうだな。袁術がこんなに歌が上手いとは思わなかった。二人の演奏にも負けてなかったし、大したもんだ」

「そ、そうか? ふふん♪ もっと褒めるのじゃ~!」

「さっすがお嬢様~、調子付くのも早いですね~♪」

「「それは褒めてるの(か)……?」」

 

七乃の褒め言葉(?)に突っ込む一刀と雪蓮であったが、美羽は気にしていないようだ。

 

「個人的な感想としては……張三姉妹みたいな強い“力”は感じなかったけど、柔らかいっていうか。心に沁み入る感じだったなぁ」

「そうね。なんだか、懐かしい感じがしたわ」

「うむ。曲目が童謡に近い、地方の歌を中心に演奏したこともあるが。そういった曲と相性が良い声質だったのだろう」

「?? それは褒められておるのか?」

「そうですよー、お嬢様。『天の御遣い』に呉の先主と柱石に褒めて戴いてますよ~。よっ、流石はお嬢様!」

「そうか、そうか!わはははは♪」

 

(((こうやって教育されてしまった訳か……)))

 

美羽がおバカな理由の一端を垣間見た三人であった。

 

「そうそう、さっき穏から聞いたんだけど」

「……やっぱ、こっちにも伝達済みですか」

「とーぜん! 私達の酌も受けてくれるのよね?」

「はいはい、勿論。ありがたく戴きますよ」

「なーんか感謝が足りないわね……」

 

一刀と雪蓮が漫才しているうちに、配下の兵が酒瓶と杯を用意していた。

それを見て、一刀は態度を一旦改める。

 

「みんな。今回は雪蓮共々、迷惑や心配を掛けてごめん。そして、諦めず戦い続けてくれて、ありがとう」

「そうね。よく頑張ってくれたわ」

 

今回、一時行方不明になった二人が周囲へ謝罪と感謝(と賞辞)を述べた。

 

「ふふ……。軍師たるもの、勝率がある限り諦めはせんよ」

「私はちょっとお手伝いしただけですからね。約束も守って戴けますし、言うことなしですよ~♪」

「赤子を連れて放浪するのは大変じゃしの。なにより蜂蜜を得るにも一苦労じゃし。感謝してやってもよいのじゃ♪」

 

半端に偉そうな美羽の言い様に、一刀は雪蓮や冥琳を見るが。

 

「……ま、美羽ちゃんの偉ぶった物言いは、もう諦めたわ」

「教育係がアレではな……これから矯正出来るならしたいものだが。今の呉には適役が居らん」

 

もう諦めムードのようだ。

 

「うーん、蓮華や思春あたりが反応しそうで怖いなぁ……」

「まあ大丈夫でしょ。七乃は一人ならそれなりに礼を守るし。美羽ちゃんは……子供だしね、色んな意味で」

「七乃の言を信じるなら、もう処女ではないらしいけど?」

「……#」

 

ゴスッ!

 

「……下品ですんません……」

「分かればよろしい」

「そういや、真名を預かったんだな」

「まぁね。これからは孫家の配下になる訳だし」

「あ、そうでした」

 

ぽん、と手を叩く七乃。美羽へと振り向き。

 

「お嬢様。忘れてませんか?」

「おお、そうじゃったの。……北郷よ」

「うん?なんだい、袁術」

「うむ。此度、我等が孫家と友誼を結び直せたのは、おぬしの助力あってこそと七乃から聞いたのじゃ。故にその功績を認め、我が真名を呼ぶ名誉を授けよう」

「(どこまでも上から目線だなぁ……)うん、ありがとう」

「姓は袁、名は術、字は公路。真名は美羽じゃ。ありがたく呼ぶがよい」

「分かった。これからよろしく、美羽。大陸の平和の為に力を貸してくれ」

「ふふん。妾にかかれば容易いことなのじゃ!」

「ははっ、よろしくな」

 

と言って一刀は美羽の頭をくしゃりと撫でる。

 

「のわーー! な、何をするのじゃ!?」

「あ、ゴメン。なんかいい高さにあるもんだから……思わず撫でちゃった」

 

謝りながらも、撫でるのを止めない一刀。

リボンや冠が崩れないよう、優しく髪を梳くように撫で続ける。

 

「む、むぅ。(……なんだかお父様の手のようなのじゃ……)こ、今回は、撫でることを許してやるのじゃ////」

「あら~?お嬢様ったら、恥ずかしがっちゃって~~♪(でも、ちょっとイラッとするような……)」

「あ! そうだ、美羽」

「な、何じゃ?」

「ウチで袁紹……麗羽を保護してるんだけどさ」

「れ、麗羽姉様!?」

 

一刀の口から出た“麗羽”の一言に、美羽は思わず後退(あとずさ)る。

 

「?? 麗羽の奴、随分前から美羽の消息をものすっごい気にしててさ。元気だって知ったら喜ぶだろうな~♪」

「ほ、ほほ、北郷? 出来れば、麗羽姉様には、妾のことは内緒にして欲しいのじゃ!」

「なんで? 従姉妹なんだろ? 姉様なんて呼んでるし」

「ガタガタブルブルガタガタブルブル」

「美羽!? な、七乃! 美羽はどうしちゃったの!?」

「あー、お嬢様って袁紹さんがすっごい苦手なんですよ」

「そうなの? 嫌いって訳じゃなくて、苦手なのか(同属嫌悪とかならありえるかとも思ったけど……)」

「なんかお嬢様にとって都合の悪いときにばっかり出くわすらしくて。すっかり苦手意識を持っちゃったみたいです。あと、会うたびに胸の大きさを揉まれて確認されるのが嫌なんだそうですよ?」

「あー……」

 

思わず納得の一刀。“悪運”といえば麗羽という程(?)、彼女のヘンな方向への強運は物凄い。

おまけに一時は華琳に匹敵するほどの漁色家であったとも聞く。自身は相当な巨乳の持ち主である麗羽から、一々(その小さな胸を)揉まれて確認されるのはさぞ屈辱であろう。

 

「麗羽はすっごい美羽を心配してたんだけどなぁ……珍しくマジ顔で」

「偏った愛はあるんじゃないですかねぇ」

「そうかもなぁ。うーん、どうしよう。教えれば喜んでくれると思ったんだけど……」

「ガタガタブルブルガタガタブルブル」

「……この調子じゃなあ……何か悪い気がしてきた」

「んもう!お嬢様ったら、いい加減にして下さいよー」

 

ゴスッ!

 

「へぷっ!」

「しっかりして下さいよ、お嬢様ー」

「お、おお? なんか、後頭部に手刀を打ち込まれたような痛みがするのじゃ……」

「気のせいですよ、きっと」

「そうか、気のせいか」

「……(七乃の愛も、大分偏ってるなぁ……)」

「む? 何の話をしていたのだったかの?」

「え? いやー、忘れちゃうようなら大した話じゃないだろ?」

「ふむ、北郷の言う通りかもしれんの」

「うん。頑張れ、美羽」

「う、うむ……何を?」

 

一刀は(憐れみという名の)感情を込めて、改めて美羽の頭を撫でたのだった。

 

「もう!一刀ったら美羽ちゃんばっかり構ってないで、呑みましょうよ~!」

「おっと、そうだった。とりあえず、冥琳からのお酌は戴かないとね」

「はははは。魏軍では相当呑まされたのだろう。そろそろ限界ではないか?」

「まあ実は。でも、少なくとも冥琳の分は呑まないとね」

「……そうか。では、たっぷり呑んで貰うとしよう(にやり)」

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

茶目っ気を見せた冥琳とのやり取りに、雪蓮が割り込んでくる。

 

「一刀、私の分もちゃんと呑んでよー」

「ええ!? 雪蓮は、俺と一緒に心配掛けた側じゃないか!」

「そんなの関係ないもん! 私の酒が呑めないっていうの!?」

「絡み酒の基本台詞だろう、それ……」

「いいから呑めーーー!」

 

雪蓮のこの一声(叫び?)で酒宴が始まった。

その声を聞きつけてという訳でもなかろうが、他の武将達も集まり、結局一刀は更に酌を受けることになったのだった。

 

 

「一刀様……ど、どうぞ」

「う、うん。ありがとう、亞莎」

「(ぽぉ~……)////」

「……? 亞莎、どうしたの?」

「はっ!? い、いえ! ななな何でもありません!」

 

 

「先程は逃げてしまって申し訳ありませんでした……。なんだか、すっごい気恥ずかしくて……////」

「気にしないで。俺も名前で呼んで貰えて嬉しいしね」

「はぅあ~……//// で、では。どうぞ、か、一刀様……」

「うん。ありがとう」

 

 

「ホレ、呑んどるか?……んぐっんぐっ……ぷはぁ~。それ、注いでやろう。北郷も一気にいけい!」

「あ、ああ……(ぐびっ)ぶふぅ!なんだ、コレ!? 滅茶苦茶強いぞ!?」

「なんじゃい、情けないのう。この程度、どうということもあるまい?」

「……はーい」

 

 

「さあ、一刀さん。穏のお酌も受けて下さいな~」

「は、はい~(そ、そろそろマジやばいんだけど……)」

「うふふ♪ なんなら口移しでも……いいですよぉ?」

「ぶっ!」

「穏! 破廉恥な真似をしないの!!」

「穏さん!破廉恥です!!」

「穏様……破廉恥です……」

「……ちぇ~」

「わははは!残念じゃったのう!」

 

 

「さ、北郷さん。私からも一献」

「う、うん。……七乃。なんか邪悪な笑い方してない?」

「そんなことはありませんよ?(くすくす) さ、どうぞ」

「い、戴きます……」

「ほら、お嬢様。後ろに隠れてないで、お酌して下さいなー」

「う、うむ。ほ、北郷。この妾に注いで貰えるなど、又とない名誉なことじゃぞ? 確と味わうのじゃ!」

「ああ、ありがとう。 ……なんか挙動不審じゃない、美羽?」

「そ、そんなことはないのじゃ! ちょっとお父様を思い出したりなんてしておらんのじゃ!」

「(いや~~~ん!真っ向からの大暴露ですよ、お嬢様ったらぁ~~ん♪)」

「(ずーん)俺、そんなに老けて見える?」

「い、いや見た目ではなくてな……。その……さっきの掌の大きさがな……」

「ああ、頭撫でたときかぁ。……ふふっ。お酌、ありがとう、美羽(なでなで)」

「うぅ……(もじもじ)」

「ああーーん、もうっ♪ 可愛すぎますぅ、お嬢様ぁ~~♪(くねくね)」

 

 

「…………#」

「……ご気分が優れぬご様子ですね、蓮華様」

「言わないで頂戴、思春……#」

「はっ!(全く、次から次へと……好色男めが!#)」

 

 

「ほーら、一刀。杯が空いてるわよ~」

「うう……」

「雪蓮。あまり無理をさせるな。只でさえ病み上がりなのだ」

「もう、仕方ないわねぇ」

「うーん、もう限界……」

 

ばったり。

 

「あーあ、倒れちゃった。つまんなーい」

「だから無理をさせるなと言うのに……」

「だ、大丈夫なの、一刀!?」

「ふぅむ……この程度なら水を含ませて、寝かせておけば問題あるまい」

「ほっ……よかったです~」

「明日、というかもう今日ですけど。会議とか、だ、大丈夫でしょうか?」

「あははー、それは無理じゃないかな~♪」

 

 

そこまでは一刀の耳に届いていたが、そこで意識は途切れたのだった……

 

 

 

続。

 

諸葛瞻「しょかっちょ!」

曹丕「そうっぺ!」

周循「しゅうっちの!」

 

三人「「「真・恋姫†無双『乙女繚乱☆あとがき演義』~~~☆彡」」」

 

諸葛瞻「お読み戴き多謝でしゅ。諸葛亮こと朱里の娘にして北郷一刀の第23子、しょかっちょでしゅ!」

曹丕「乱文乱筆なれど楽しんで戴けたかしら。曹操こと華琳の娘にして北郷一刀の第9子、そうっぺよ♪」

周循「少しでも面白いと思って下されば重畳。周瑜こと冥琳の娘にして北郷一刀の第25子、しゅうっちで~す☆」

 

 

周循「何やら早速、天和様・地和様・人和様に、美羽様も父さんに惹かれているご様子ですね。……出会って数日ですよ?」

 

諸葛瞻「おまけに、とうとう思春様も……でしゅか」

 

曹丕「ちょっと話が性急なような気もするけれど……お父様なら仕方ないと思ってしまうあたり、流石だわぁ♪」

 

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○議題:古代中国の酒について

 

諸葛瞻「お父しゃまったら、今回はまた随分呑まされてましたねぇ」

 

周循「そうだな。三国志の時代……漢代以降では、酒造に必要な麹(こうじ)の製法が確立しており、麦・粟・米などの穀物を原料とした紹興酒の原型が出来始めていたようです。また、発酵させて作った酒に再度穀物を加えて再発酵することによって、段々とアルコール度の高い酒が作れるようになっていました」

 

曹丕「本作で偶に出ている『酎』というのは、この再発酵を三回繰り返したものを言うのよ」

 

諸葛瞻「史実では当時(後漢~三国鼎立時代)、物凄い不作・穀物の生産量激減が続いており、穀物が原料である酒はさぞかし高価な嗜好品だったと思われましゅ。しかし、本作(というか恋姫)では董卓の悪政がなく、魏・呉・蜀の三国が良く治めていた為、しょこまで高騰はしていない設定らしいでしゅね」

 

曹丕「史実の曹操は、官僚時代にこの発酵方法について上奏しているわ。それによると、なんと9回も再発酵させるらしいわね。流石にこれは宮廷儀式用で、飲用ではないと思うけれど。これを元ネタとして、恋姫でもお母様――華琳は酒造についてのシーンがあるのでしょうね」

 

周循「さて、作中で呑まれている酒ですが。相応に給金を貰っていて、個人で持ち込んでいるような高価な酒はアルコール度数が高いですが。一般兵に配給されるような安酒は、再発酵の手順を踏んでいなかったり、麹を使わない原始的な酒だったりで、糖分が完全に発酵しきれておらず、甘味が残りアルコール度も低いものです」

 

諸葛瞻「筆者の資料によると、安酒のアルコール度数は高めに見積もっても5~8%くらいでないかとのことでしゅ」

 

曹丕「それにしたってお父様は今回は呑まされ過ぎねぇ……原作の描写によると、お父様はそこまで酒に強い訳ではないみたいだし」

 

周循「今は華佗先生の気功治療のお陰で内臓機能が一時的に強化されているから、ということで……。本作投稿時ではそろそろ年末。皆様もお酒の呑み過ぎにはご注意下さいね」

 

 

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諸葛瞻「ではゲストコーナーに参りましょう!アンケートの結果、今回のゲストはこの方たちとなりました!自己紹介をどうじょ!」

 

 

張刻「みんな大好きー!」

 

謎の声『張刻(こー)ちゃーーーん!!』

 

張槓「みんなの妹ー!」

 

謎の声『張槓(かん)ちゃーーーん!!』

 

張順「とってもかわいいー!」

 

謎の声『張順(しゅん)ちゃーーーん!!』

 

張刻・張槓・張順「「「『完成面子☆姉妹(しすたぁず)』でぇーーす!……きゃははははははは!!」」」

 

曹丕・諸葛瞻・周循「「「…………」」」

 

 

張刻「あ、あれ。外しちゃったかな? じゃ、じゃあ自己紹介しよっか^^; 張角こと天和の娘で北郷一刀の第38子、張刻で~っす☆ 諱は麻雀の完成面子のひとつ、刻子(こーつ)から取ってるのよ~ん」

 

張槓「やぁん、放置プレイ!? 張宝こと地和の娘で北郷一刀の第39子、張槓だよ♪ 諱は麻雀の完成面子のひとつ、槓子(かんつ)から……槓子って“かんつー”って伸ばすとちょっと意味深じゃない!? きゃあぁ~~ん♪♪」

 

曹丕・諸葛瞻・周循「「「…………」」」

 

張順「ちょっとだけママ達みたいなアイドル気分を味わえて良かった♪ 張梁こと人和の娘で北郷一刀の第40子、張順です。諱は麻雀の完成面子のひとつ、順子(しゅんつ)からよ。……順子だけ役満作れないのが、地味にムカつくんだけど……」

 

 

周循「……いきなりネタからとは……。『完成面子☆姉妹』なんてアイドルグループは、少なくとも黄平12年の時点では存在しませんので。――さて、三人は生まれも数日違いで、学年は年少下級(小3クラス)ですね」

 

 

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○質問:特技・特徴は何ですか?

 

張刻「んー、個人的特技って言えるようなのはないかな~? その代わり、コーたち三人でならちょっとした能力があるのよん♪」

 

張槓「そうだねっ!コレは他の姉妹たちにはない、カンたちだけの能力よねっ♪」

 

張順「そうね。シュンたち三人は所謂『テレバシー』が使えるの。但し、伝えられるのはこの三人の内でだけ。他人や、他の姉妹には伝えたり、心を読んだりは出来ないわ」

 

曹丕「三つ子という訳でもないし、不思議な力ね。皇女には特殊な霊妙な力を持つ者も数人いるけれど、その内の一例ね」

 

張刻「コー個人だと、『綺麗なお姉さん』を目指して修行中ってことかな? お義姉さま(璃々)や呂紅昌(こうしょう)お姉ちゃん【恋】、賈訪(ほう)お姉ちゃん【詠】を目標に頑張ってるよ~☆」

 

諸葛瞻「……その割りに、思考が『オヤジ』なのはちっとも矯正されましぇんね……。シモネタやセクハラは止めて欲しいでしゅ……」

 

周循「うむ。はっきり言って、そのまま成長したら『綺麗なお姉さん』ではなく『残念なお姉さん』になるのがオチだぞ、張刻……」

 

張刻「えー、そんなことないよぉ」

 

曹丕「張刻の仕業で有名なのは、お父様と共謀して洛陽学園の制服をミニスカにしたことかしらね……」

 

張刻「そりゃあみんなの生足拝みたいじゃなぁ~い?」

 

曹丕・諸葛瞻・周循「「「(正真正銘のオヤジだ……)」」」

 

張槓「カンは、自分で言うのもなんだけど、ムードメーカーって奴かな?」

 

諸葛瞻「……まあ確かにいつも明るくてテンション高い張槓ちゃんはムードメーカーでしゅね。ただ……このあとがきですら既に何度か出てましゅけど。耳年増というか、何を言っても空耳や妄想でシモネタに持っていくのを止めて欲しいでしゅ……」

 

周循「この二人はなぁ……。シモネタに耐性のない姉妹は、赤面しっぱなしだな。しょかっちょも少し苦手らしいな」

 

諸葛瞻「ええ、まぁ……////」

 

張順「最後はシュンね。特技って程のものはないわ。でも、これでもママのようにアイドルを目指してるから、ファッションセンスや歌唱力を磨く為の練習は毎日欠かさないわ。あと、趣味が人形(ドール)集めってことくらいかしら。ドールというのは、お父様が『天の知識』を元に発案したものと聞いてるわ。大和帝国においては、一般に木彫りや陶器製の子供人形のことよ。一部では“フィギュア”というより小さいものも作られているけど、私はそっちには興味はないの」

 

曹丕「ご母堂方と同じく、三人では末子の張順が一番まともなのよね……」

 

張刻・張槓「「なにそれーー!!」」

 

張順「……自覚がないのが一番問題だと思うわ、コー、カン。因みにドールって物凄い高価なの。多分、シュンは姉妹でも突出した浪費家なんじゃないかな」

 

周循「そうだろうな。そもそも父さんが節約家である影響か、皇女で金遣いが荒いものは殆どいない分、使用金額という意味では、断トツだろうな」

 

曹丕「そういう意味では張順も問題児なのかしら……」

 

張順「無理にねだるような真似はしませんよ。パパを困らせるのは、シュンの本意ではありませんから」

 

諸葛瞻「出来た子でしゅねぇ……」

 

 

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○質問:特に仲の良い姉妹は?

 

張刻「うーん、コーが仲が良いのは孫登(とう)様【蓮華】と公孫続お姉ちゃん【白蓮】かな~?」

 

曹丕「孫登【蓮華】は仲の良い姉妹が多いからいいのだけど。“あの”公孫続【白蓮】と気が合うというのは……将来が不安だわ……」

 

周循「尚更『綺麗なお姉さん』から遠ざかっているような気がするぞ……」

 

張刻「えー?公孫続お姉ちゃん【白蓮】って面白いし、何でも言うこと聞いてくれるから大好きだよ?」

 

周循「面白い……。アレをそう言えるのは、ある意味大物なのかも知れん……」

 

張槓「カンが一番仲が良いのは許儀【季衣】だよ♪ 典満【流琉】含めて、三人で一緒にいることも多いかな~?」

 

諸葛瞻「そのせいで許儀ちゃん【季衣】がどんどんシモネタを覚えちゃってるんでしゅよね……。典満ちゃん【流琉】もすっかり耳年増になっちゃったみたいでしゅし……」

 

張槓「あと、馬承お姉ちゃん【蒲公英】と于圭お姉ちゃん【沙和】かな。服や装飾品を買いに行ったりするよ」

 

曹丕「それは相当に姦しそうな三人組ねぇ……」

 

張順「シュンが仲が良いのは、ドール蒐集仲間の呂琮(そう)姉さん【亞莎】かな。それとファッション関連で、カンと一緒に馬承姉さん【蒲公英】と于圭姉さん【沙和】とも一緒にいることも多いです」

 

周循「そう考えると、呂琮【亞莎】も結構な浪費家ということか?」

 

張順「そうかも。呂琮姉さん【亞莎】は『着物』の蒐集家でもあるもの。私より上かも……」

 

諸葛瞻「……とてもお小遣いではやりくり出来るレベルではないでしゅから。やっぱりお父しゃまにおねだりしてるのでしゅかね?」

 

張順「多分。呂琮姉さん【亞莎】は甘え上手だもの。……シュンはアイドル修行の代わりに、ママから多めにお小遣いを貰ってる分があるから、なんとか遣り繰り出来てるの」

 

曹丕「人和様は、いつか張順をアイドルデビューさせる気なのね。私から見ても素質十分だと思うわ」

 

張順「ありがとうございます、そうっぺ。……最初のように三人でアイドルデビュー出来たら嬉しいんですけど。コーもカンも努力が嫌いというか、集中力が続かないので……」

 

曹丕「……色々大変でしょうけれど、頑張りなさい。応援しているわ」

 

 

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○アンケート:次回、読んでみたい姉妹は?

 

諸葛瞻「毎度のゲストのリクエスト募集でしゅ。以下の二つからお好きな方をお答え下しゃい。コメントの端に、ちょこっと追記戴ければ幸いでしゅ。リクエストのみでも全然OKでしゅよ~。なお、前回、Aと答えて戴いた分もカウントに含めてましゅ。ということで宜しくお願い致しましゅ(ぺこり)」

 

A:白蓮・季衣の娘たち

B:七乃の娘二人(一刀とは、義理の娘の姉と実子の妹)

 

 

 

諸葛瞻「ここまで延々とフラグ回収でしたが。本編はいよいよ“選択と決断の時”でしゅね!」

 

曹丕「そうね。次回は宴会の裏で、休憩していた各国陣営の様子を。そして一気に加速して、とうとうお父様に決断の時が訪れるわよ!」

 

周循「では、次回……『桃香の選択、皆の想い、そして一刀の進む道』にてお会いしましょう! せーのっ」

 

 

六人「「「「「「バイバイ真(ま)~~~☆彡」」」」」」

 


 
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