No.108280

真・恋姫†無双~三国統一☆ハーレム√演義~ #14 謝罪と罰・戦勝の宴/蜀編

四方多撲さん

第14話を投稿です。
一刀と雪蓮の語る不義とは何なのか。……バレバレですか、そうですかww
しかし、雪蓮が一刀と結ばれるにあたり、このフラグの回収は必須、やらねばならんのですよ!!
という訳で、二人への刑罰執行と、決戦直後の戦勝祝いの小宴会(蜀編)をお送り致します。
また、前回実施しました『葉雄(華雄)ヒロイン昇格』アンケートの結果はあとがきにて!

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2009-11-22 04:50:47 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:43401   閲覧ユーザー数:31013

 

 

一刀の口から語られる五胡との決戦の裏側。

偶然か、天命か。彼は雪蓮と再会し。袁術、張勲、張三姉妹、華雄と出会い。

『黄巾傭兵団』を率いて、三国同盟軍を勝利へ導いたのだった。

 

しかし、二人が消息不明であった際の事情を説明した後。

一刀と雪蓮は、三国の皆へと頭を下げ。

不義をはたらいたことを謝罪し、自分達への処罰を決めて欲しいと語ったのだった――

 

 

地を揺るがす馬蹄。燃え上がる河。響く戦場の怒号と悲鳴。鬨の声の如く叫び合う傭兵達。逃げ惑う五胡の兵……

 

そんな中、一刀は無謀にも単身で戦中の河縁まで馬を走らせていた。

炎に包まれた五胡船団。その中央にあった一際大きな闘艦に、未だ仁王立ちした雪蓮を迎えに来たのだ。

 

「雪蓮ーーーー! もういい! 一旦下がるぞ!」

 

それでも、雪蓮はその高笑いを止めない。

戦場の轟音に掻き消され、声が届いていないのかと、一刀は何度も声を張り上げる。

 

しかし、そんなことをしていれば、当然敵兵からも目を付けられる。

一刀は十数人の五胡兵の小集団が、此方へ向かってくることに気付いた。

 

「やべえ! くそっ、しぇれ――」

 

あと一度だけ。そう思い、声を上げながら船を見上げた一刀が見たものは。

闘艦から飛び降りた雪蓮だった。

 

「お、おい!? いくらなんでも――」

 

そう言い掛けた一刀だったが。

 

ズドン!

 

「ククッ、ハハハハハハハ!!」

 

雪蓮は凄まじい音と共に着地し。そのまま五胡兵へと駆け出す。

 

「――脆い!弱い!こんなものじゃ私の炎は消えないわ!!」

 

それは正に修羅の行いであった。

立ち向かう者も。逃げようと背を向けた者も。恐慌し、身動き出来ない者も。

雪蓮の剣は、その悉くを斬り捨てていく。

 

(こ、れが……『江東の虎』の娘――『江東の小覇王』の、本性……!?)

 

冥琳から話には聞いてはいた一刀だったが。目の当たりにしたその狂気とも言える所業に呆然となっていた。

 

その余りにも凄惨で、一方的な虐殺に、とうとう闘艦周囲の五胡兵達は総崩れとなった。

最早近づくことすらなく、ひたすらに逃げるばかり。

 

向かって来る者がないと分かると、雪蓮は更なる獲物を求め、河沿いに走り出した。

 

呆けてしまっていた一刀は、走る彼女の背を見て正気を取り戻した。

 

「――なにビビってやがる! 俺があの女性(ひと)を止めないで、誰が止めるってんだ!!」

 

すぐさま馬で後を追う。

 

(つーか速え!? いくら俺が乗馬苦手だって言っても、人間が馬と同じような速さで走れるのかよ!?)

 

一刀が追いつけずにいる間、雪蓮は戦車に隠れていた兵すらも斬り殺していく。

 

「どうした! 誰も掛かって来ないのか!? それでも勇猛で知られた五胡の兵か!!」

 

しかし、五胡兵は最早逃げ惑うのみ。

雪蓮は癇癪を起こしたように、手近な柵や戦車を斬り壊す。

 

 

「ああああッ! 熱い! 誰ぞ、この熱を――孫伯符の一撃を受けるものはいないのか!?」

 

 

荒れ狂う雪蓮。そこへようやく一刀が追いついた。

馬を走らせながら、雪蓮へと声を掛ける。

 

「雪蓮! もういい! この場の大勢は決した! 引き際だ!!」

 

一刀の声は、今度こそ雪蓮に届いた。しかし――

 

「ハハッ!! そうだ! 掛かって来い!!」

 

雪蓮は助走すらない跳躍で馬上の一刀より高く飛び上がり。

そのまま一刀へと真っ直ぐ宝剣『南海覇王』を振り下ろす!

 

ドオォォォォォォン!!

 

爆風の如き風圧と轟音。

 

「ぐああぁぁっ!?」

 

一刀は乗っていた馬ごと吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

「な、何が……!?」

 

見れば、燃え上がる巨木のようなものが目の前に倒れている。

とうとう炎上した闘艦が崩壊したのだ。その一部が落ちてきたらしい。

直撃しなかったこと、それによって結果的に雪蓮の一撃を回避出来たことに胸を撫で下ろす。

 

(俺の“悪運”も、案外麗羽並みなのかもな……って、雪蓮は!?)

 

慌てて起き上がり、周囲を見回す。

燃え上がる、かつては船だった木材。延焼しつつある柵。放置された戦車。もう周りに人はいない。

 

「――!?」

 

突如、炎の中から何者か――雪蓮しか有り得ないが――が飛び出し、一刀へとタックルし、諸共戦車へ激突する。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

「ぐぅ……しぇ、雪蓮!?」

「あああああ!!」

 

半壊した戦車の上、一刀に馬乗りとなっていた雪蓮は、身体を自らの両腕で抱き締めるようにして吼える。

 

「熱い!……熱いッ!! 気が……狂いそう!!」

 

(これが、冥琳の言っていた……雪蓮の、性(さが)……)

 

かつて……半年前の『第二次五胡戦争』の直後、肩口にヒトの噛み跡を付けていた冥琳に一刀が理由を尋ねた際に、彼女から聞いていた言葉が脳裏に浮かぶ。

 

『伯符は興奮状態になると手が付けられなくなるのだ。クセというか、性癖というか……。身体が火照るのだそうだ。

 まるで熱が身体と思考を侵食するかのようだと言っていた。その火照りは性欲に近しいもので――

 “熱”を冷ますには大切な者と身体を重ねなくてはならん。故に普段は私が相手をしているのだよ。

 以前言っただろう?“私の貞操は伯符に奪われて久しい”とな』

 

(大切な者と、身体を重ねる……!?)

 

一刀の脳裏に浮かぶのは、愛しい仲間達。心のみならず身体をも重ねあった彼女等の相貌。

 

(――それでも。今、目の前で苦しむこの女性(ひと)を放っておける訳……ないだろう!?)

 

一刀は上半身を跳ねるように起こし、身悶える雪蓮を抱き締める。

 

「雪蓮! 俺だ! 北郷一刀だ! 正気に返ってくれ!」

「……か、ず、と?」

 

触れた雪蓮の身体は、異常と言える程に火照っていた。運動後だからとか、そういうレベルではない。常人なら意識を保ってなどいられない程の“熱”が彼女の身体から感じられたのだ。

 

「――かずとッ!」

「つっ!?」

 

突如、雪蓮が一刀の首筋に噛み付く。まるでその血を欲するかのように。

 

(だけど、少なくとも俺を認識するところまでは来てる。このまま落ち着いてくれれば最良だけど……)

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……あつい……あついよぉ、かずと……」

 

一刀を絞め殺すかのように抱き締め。首筋の傷から流れる血を舐めとり。雪蓮はまさしく熱にうかされたように、彼の名を呼ぶ。

一刀は、身体の彼方此方の苦痛を無理矢理無視し、雪蓮を抱き返す。そして、髪を、背を優しく撫でる。

 

「もっと……もっと触って……こんなのじゃ治まらないよぉ……!」

 

(……やっぱりこの程度じゃ駄目なのか……)

 

一刀は覚悟を決めた。

 

「…………分かった」

 

「俺は……不義をはたらいた。そのことを謝罪した上で。みんなに、俺と雪蓮への処罰を決めて欲しい――」

 

三国の首脳達へ、謝罪を述べ、その処罰を求める一刀と雪蓮。

 

この時代、不義密通は厳罰――大概は『宮刑』と呼ばれる肉刑(肉体に損傷または苦痛を与える刑罰)となる。これは古代中国の五刑でも死刑に次ぐ重い刑罰で、男性は去勢され、女性は監房に幽閉されることとなる。

 

混沌とした戦場での事。黙っていれば、誰に知られることもなかったかもしれない。まして二人ともが未婚である。

だが、二人は別々の国の重鎮だ。何より、一刀も雪蓮も。『仲間』達へ隠匿を持つことを潔しとしなかったのだ。

 

 

まず二人の前に進んだのは、蜀王・桃香であった。

 

「ねえ、雪蓮さん。雪蓮さんは、ご主人様との“事”を覚えているの?」

「……あれ程の“熱”に浮かされたのは初めてだったの。だから……殆ど覚えてないわ。気が付いた時には、一刀に寄り掛かっていた……」

 

二人は、燃え続ける船と、半壊した戦車に挟まれた位置におり、雪蓮が意識を取り戻すまで、その戦車に隠れたまま誰にも見つからなかったのだ。

もし、敵兵にでも見つかっていれば、一刀一人では雪蓮を連れて逃げることすら難しかっただろう。

そういう意味でも、一刀の“悪運”――彼の場合は“天運”と言うのか――は相当なものだったと言えた。

 

 

次に二人の側へ来たのは、蜀の筆頭将軍である愛紗だった。

 

「ご主人様。ご主人様は……迷われましたか?」

「……正直、迷った。俺を認識してくれるようになって、何とかなるかとも思ったが……駄目だった。とても移動出来るような状況ではなかったし。下手に人を呼ぼうとすれば、敵兵に見つかる可能性もあったから。何より……苦しむ雪蓮をあれ以上見ていられなかった」

 

 

続いて、雪蓮の『断金』たる親友、冥琳が問うた。

 

「伯符。いつもならば表面上だけでも取り繕って、私のところまで我慢していたろう。何故、今回に限って出来なかった?」

「闘艦で指令官らしき男を斬った辺りから記憶が曖昧で……。ただ、一刀が目の前にいると思ったら、私の中の何かが壊れちゃったような感じがしただけ……。桃香に言った通り、後は殆ど覚えてないわ……」

 

 

雪蓮の妹にして新たな呉王・蓮華。

 

「……一刀。あなたは……雪蓮姉様を、愛してくれる……?」

「!?」

「もし……あなたが呉の人間だったのなら。お姉様の全てを受け止めてくれた?」

「……刑罰に仮の話は……出来ないよ。俺は蜀の主で。雪蓮は呉の先主だ。俺には……雪蓮が魅力的な女性であるとしか、言えない」

「……そう」

 

 

一刀に背を向けた蓮華と入れ替わるように呉の宿将・祭が前へ出た。

 

「策殿。記憶が曖昧であることに……口惜しさはありますかな?」

「……嫌な質問するわね……」

「くっくっく。そのお答えで十分。さて、北郷。おぬしはどうだ?」

「……聞くなよ、そういうことを……」

「わっはっはっは! そうか、そうか! ……では、締めをお願い致しますぞ」

 

 

祭の言葉に現れたのは魏王・華琳。

 

「ならば――まず一刀に問うわ。後悔はない?」

「ない。雪蓮を慰める手段が、これしかなかった以上。たとえ俺がみんなに見捨てられようと。目の前の誰かを――『仲間』を見捨てることは出来ない」

 

一刀は即答した。その答えに嘆息した華琳は、続いて雪蓮と向き合った。

 

「……雪蓮に問うわ」

「如何様にも……って、何か笑ってない、華琳?」

「くくっ……い、いいえ?」

「「…………」」

 

不審げに華琳を見る一刀と雪蓮。

よくよく見ると、桃香も笑いを我慢しているように見えなくもないし、背を向けた蓮華の肩が震えているような……?

 

「さあ、私の質問に答えなさい、雪蓮」

「……え、ええ」

「あなたは記憶が曖昧だと言うけれど。一刀が、あなたと『最後の一線』を越えていないことを知っているのかしら?」

 

「……え゛?」

 

間の抜けた雪蓮の声と表情に、とうとう桃香が吹き出した。冥琳も顔を背けて、肩を震わせている。そう言えば、祭に至っては最初から笑っていた。

不機嫌なのは、愛紗を筆頭に、各国の若輩組ばかりだった。

 

「ど、どういうことよ!?」

 

思わず立ち上がって声を荒らげる雪蓮。

 

「一刀は、あなたを“手と接吻”だけで鎮めてみせた、ということよ」

「う、嘘ぉ!? そ、そうなの、一刀!?」

「え? う、うん。 流石に『最後の一線』を越えるのはまずいだろうと思って……」

「ええ~~っ!? 先に言ってよ、そういうことはぁ~~!?」

「大体、事後の様子からで分かりそうなものだけれど?」

「し、仕方ないじゃない! 私、男に抱かれたこと、ないんだもん!!」

「ね、姉様! そんな大声で!?」

「そもそも、なんでみんなが知ってるのよ!? ……って犯人は一人しかいなーーい!!」

「気付くのが遅いぞ、雪蓮。私が昨日と今日の昼間のうちに根回ししておいたのだよ。ふふっ、“天才”孫伯符を出し抜けるとは、私の謀略もまだまだ捨てたものではないな」

「むっきーーー!」

 

雪蓮は、戦場での一刀との“事”を、冥琳にだけは打ち明けていたのだ。そして、一刀とともに三国の皆へ謝罪と断罪を求めることも。

故に冥琳は、昨日のうちに一刀からも事情を聞きだし、根回しを図った。雪蓮の性、一刀の覚悟、二人の誠意、そして雪蓮の勘違い……全てを三国の首脳陣へと伝えておいたのだ。

 

「では判決を言い渡すわ。まず雪蓮。如何に覚えていないと言っても、皆からすればこれは立派な抜け駆けよね?」

「……そうね」

「とは言え、此度の戦の勝利への貢献は大きい。よって減刑し、あなたは明日の朝より一月の間、北郷一刀に触れることを禁じることとします」

「え!? あ、明日からって……そもそも私と一刀じゃ帰る国が違うじゃない!」

「そういうことよ。但し、万一破った場合は、覚悟しておくことね」

 

つまり、戦勝による一種の恩赦という形をとったということだった。

 

「……みんなも、それでいいの?」

 

雪蓮はそう全員へと問い掛ける。

 

「魏は、私が良いと言った以上、誰にも文句は言わせないわ」

「呉……私達は、姉様が無事に戻られたことだけで、十分です。寧ろ、雪蓮姉様を救ってくれた一刀に感謝したいくらい。ただ――抜け駆けは良くないと思いますから。処罰による規則はちゃんと守って下さいね?」

「蜀は……あはは、何人かはちょっと機嫌悪いけど、仕方ないよね。事情は分かってるから、あんまり気にしないで。雪蓮さんだって、私達の『仲間』なんだから♪」

 

「そっか……ありがとう、みんな。――孫伯符、確かに刑罰を拝承致しました」

 

「さて。問題はあなたよ、一刀」

「……ああ」

「あなたへの刑罰を決定するにあたって、ひとつ聞かなくてはならないことがあるわ」

「何でも聞いてくれ」

「いい覚悟ね。では――あなた、雪蓮に何度“接吻”したのかしら?」

「――へ!? え、ええっと……」

 

情事において、キスの回数を覚えている男などいる訳がない。もし覚えているとすれば、それは回数自体が余程少なかったということ。逆に言えば……

 

「……即答出来ないということは、覚えていない……つまり、数え切れない訳ね?」

 

ということだ。

 

「えー……あー……はい……」

 

一刀も観念し、華琳の言に頷く。

 

「では刑罰を言い渡します。あなたには、雪蓮へした接吻の数だけ、平手を受けて貰うわ」

「…………えー、それはつまり……」

 

数え切れないほど接吻したのなら。数え切れないほど平手を受けるということだ。

 

「頬だとあなたの肉体では耐えられないでしょうから。打つ場所は背中に負けてあげる」

「……アリガトウゴザイマス……」

「これから、雪蓮を除くこの場の全員から平手を見舞ってあげるわ。ふふふふ……#」

「……華琳さん。お怒りはご尤もですが、なんか趣味に走ってませんか……?」

「そぉんなことはないわよ。 さ、順番を決めましょう……#」

 

(確かにこれはこれで立派な肉刑か……この程度で済ませてくれるんだ。感謝しなきゃ……)

 

とは思うものの。叩くのは『三国志』に名高き武将ばかり。

華琳の昏く愉しげな笑みが、死神の微笑みに見える。

 

(……どうか、死にませんように……)

 

最早祈るばかりの一刀であった。

 

 

……

 

…………

 

 

一刀は、上着を脱ぎ、地面に胡坐。叩かれた時に身体が“吹き飛ばない”ように、地面に刺した杭を抱える形で座っている。

 

最初に来たのは桃香。

柔らかだが、少々いたずらっぽい笑み。

 

「頑張ってね、ご主人様♪」 と桃香が、ぱちんと一刀の背を叩いた。

 

 

彼女の後ろから続いたのは、心優しい(或いは寛容な)娘たち。

 

「私がどれだけ悲しんだのか……思い知ってください!」 と朱里が、ぺち。

「ご主人様……おかえり、なさいです……ぐずっ」 と雛里が、ぺち。

「ぐすっ……よく、ご無事で……」 と亞莎が、ぺちん。

「これは……心配を掛けた罰、です……」 と明命が、ぺちん。

「あらあら~。……余り、皆さんに心配をお掛けしないで下さいよ?」 と穏が、ぱんっ。

「全くだ。……よく、戻ってくれた」 と冥琳が、ぱん!

 

「(背中より、心が痛いや……)うん……ただいま」

 

 

次は怒りよりもその行方の心配が勝っていた者達。

 

「…………心配、かけるの。駄目……」 と恋が、ばちん!

「この馬鹿……心配かけんなよ……」 と白蓮が、べちん!

「……兄ちゃん……の!馬鹿ーーー!」 と季衣が、ぺちーーーーん!!

「ひぐっひぐっ……兄様の馬鹿ぁ……っ」 と流琉が、ばちーーーーん!!

「……お覚悟を」 と凪が、パァーーーーン!!

「そうなの!覚悟なの!」 と沙和が、ぱちーーん!

「ウチは道具使いたかったわ……お疲れさん、北郷はん」 と真桜が、ぺちーーん!

「色々、言いたいけれど……罰は罰よ。……心配、させないで」 と蓮華が、ぱちーん。

「……(蓮華様を泣かせた罪は重いぞ、北郷)」 と思春が、バァーーーーーーン!!

 

「(そろそろツラくなってきた……)ああ。ごめんな……」

 

 

怒りも心配も併せ呑み、遠慮の無い者達。

 

「本当に、よくぞお帰りになられた。少々荒い歓迎ですがな」 と星が、ぱーーーーん!

「心配をかけた上に浮名まで。本当に困った方」 と紫苑が、ばちーーーーん!

「全くじゃわい。確と受け止めなされ!」 と桔梗が、べちーーーーん!

「儂はどちらかというと礼を言う側なんじゃが。罰とあってはな(にやり)」 と祭が、ぱちーーーーん!

 

「(い、いだだだ……)……うん」

 

 

心配と怒りが入り混じっている娘達。

 

「ご主人様ッ!あなたという方はッ!私が、どれだけ……どれだけッ!!」 と愛紗が、ばちこーーーーーーん!!

「お兄ちゃん、覚悟なのだーーー!」 と鈴々が、べちこーーーーーーん!!

「あたしの心配を思い知れっ!」 と翠が、ばちーーーーん!

「そうだよっ!」 と蒲公英が、べちーーーーん!

「この馬鹿お館め!!」 と焔耶が、ばーーーーん!

「貴様はっ!馬鹿か!大馬鹿かっ!!」 と春蘭が、ばちこーーーーーーん!!

「華琳様や姉者に余り心労を掛けてくれるな、北郷」 と秋蘭が、ぱーーーーん!

「責任取れ、こんアホッ!!」 と霞が、べちこーーーーーーん!!

 

「(ひぃぃぃ!痛い!いだだだ!!)ご、ごめんなさい……」

 

 

続いて、一刀がへばるのを待っていた謀士たち。

 

「ふっふっふ。そろそろ触るだけでも痛い頃合ですねー。では……風に心配を掛けた罰なのです」 と風が、ぺちん。

「本当に。自身が王であり『天の御遣い』であることを自覚しろと、あれ程言ったというのに!」 と稟が、ぱちん。

「ねね……もとい、恋殿の悲しみを怒りを思い知ると良いのです!」 と音々音が、ぺちこん。

「くくくく……如何に私が非力でも、今ならッ!」 と桂花が、ぺち。ぱち。ぱん。ぺん。ぱちん。ぺちん。……。…………。

 

「(痛い!触られただけでも痛い!つか桂花、何回叩く気だ!?)す、すいませんでした……」

 

 

そして……最後に現れたのは、昏いような、愉しげなような。妖しい笑顔の華琳。

 

「か、華琳さん……」

「あら。背中が真っ赤ね……」

 

華琳は背中側から一刀の肩に優しく両手を置く。

しかし、一刀はその優しげな華琳の挙動が却って恐ろしい。

 

「……ここなんか、特に赤いわね?」 ぐりぐり。

「痛い!いだだ!痛いよ、華琳! それ、平手じゃないし!!」

「そうよ。確認しているだけよ?……あら、ここも随分赤くなっているわね。どう?」 ぐりぐり。

「痛いです!とっっても痛いです!やーーめーーてーーーー!!」

「反省したかしら? 散々心配掛けた挙句に、抜け駆け宣言とは。全く恐れ入るわねぇ?」 ごしごしごし。

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!擦っちゃらめぇぇぇぇぇぇ!?」

「……ふん!!#」

 

べっちーーーーーーん!!!

 

一刀は刑罰を受けたその場に布を敷いてもらい、そこにうつ伏せで寝ていた。

桃香が朱里から軟膏を受け取って、一刀の背に塗っている。

 

「いつつ……予想以上に痛かった……平手でも、結構な刑罰になるもんだね……それに……」

「心が痛い?」

「ああ。雪蓮とのことより、みんな心配してくれた分の平手ばかりだった。でも……帰って来れて、良かったって。心底そう思うよ」

「もう!本当に……心配したんですから!」

 

腰に手を当て、唇を尖らせて語気を強める朱里。ぷんぷんという擬音が聞こえてきそうだ。

 

「そうだね。みんなに謝って回らないとな……」

「……一先ずの戦勝祝いに、小規模の宴会を催すことになりましたので、回るのは出来ると思いますよ? 今、その打ち合わせに愛紗さんが行ってくれていますから」

「そっか。うん、そうしよう」

 

一刀は身体を起こし。今度は背に布を当て、ぐるぐると包帯を巻いて貰う。

ついでに汚れてしまっていた制服は洗濯して貰い、肌触りの優しい蜀特産の絹布の服を着る。

 

と、そこへ愛紗が帰ってきた。

打ち合わせが終わったようで、三国の皆も一旦此方の広場へ戻って来たようだ。

 

「……(何か、愛紗ちゃんご機嫌斜めっぽくない?)」

「……(そうだな。まだ怒ってるのかな……)」

「……(打ち合わせに行く時は、そんなことなかったですよ……?)」

 

「……ご主人様」

「は、はい!?」

「小宴会は、三国で分担……警備・休憩・宴会を国ごとに交代して行われることになりました」

「あ、ああ。分かった。打ち合わせ、お疲れ様、愛紗」

「ありがとうございます。そこでひとつ、お聞きしたいことがございます」

「は、はい。何なりとどうぞ……」

 

どっちが上司なのか分からないやり取りをし始めた二人。

 

「ご主人様が援軍を確保する為に、友誼を結ばれた女性(にょしょう)を呼ばなくてはならないのですが……#」

「……ソウデスネ」

 

「(あー……ちょっと『慈恵雷者(じぇらいしゃ)』ちゃんが出つつあるかな?)」

「(そ、そうですね。既に真名まで許されている方もいるようですし……私だってちょっとは怒ってるんですよ?)」

「(あれ、そうなの? 私は寧ろ、華雄さんが生きていてくれて嬉しいんだけどなぁ)」

「(……流石は桃香様。それでこそ、私達の主でいらっしゃるんですけどぉ……)」

 

「一先ず伝令を――」

 

愛紗が何か言おうとした、その時。そこへ飛び込んできたのは――

 

「かっずとぉ~。私、待ち疲れちゃったぁ~……」

「いつまで待たせんのよ! あんた、ちぃ達の下僕でしょ!? ちょっとは計らいなさいよ! 気が利かないわね!」

「ね、姉さんたち!それは三国会談で催しに呼ばれた時だけって契約なのよ!?」

 

『…………#』

 

天和の黄色い声やら、地和のタメ口文句やらだった。

こういう際、フォローの言葉というものは耳に入らないもの。人和の制止の声は、姉達のみならず、三国の乙女達の耳にも届いていまい。

 

「ちょっとーーーー!なんてタイミングで~~~!?」

 

慌てて張三姉妹を抑えにかかる一刀であったが、最早後の祭り。

乙女達からは怒りのオーラが目に見えるかのようだ。

これらを代表し、三姉妹に声を掛けた(牽制とも言う)のは華琳だった。

 

「……天和。地和。仮にも一国の主に対して随分な口の利きようね?」

 

「か、華琳様!?」

「う!? そう言えば、華琳様もいるんだった……」

「お久しぶりでーす♪」

 

華琳の迫力に顔色を青くする人和、地和。対照的に能天気に挨拶を口にする天和。

 

「ま、まあまあ、華琳。タメ口でいいって言ったのは俺だしさ。……いや、下僕は承知してないからな、張宝」

「ご主人様! どうしてそう女に甘いのですか!?」

「あなたねぇ……。いい加減、自身が“王”であることを自覚なさい!」

 

華琳の迫力に、思わず張三姉妹をフォローしてしまった一刀へ、激昂して詰め寄る愛紗と、苦言を述べる華琳だったが……

 

「――皆様。お初にお目に掛かる方もいらっしゃるかと思われます。

 我等は張三姉妹。かつては曹孟徳様の下、徴兵などを担当しておりました。

 私は、姉妹の交渉担当、末妹の張梁でございます。

 我等は官も武も無き卑賤の旅芸人なれば、姉達のご無礼、平にご容赦をお願い致します」

 

流石は世渡り上手の交渉役。人和は場の混乱が大きくなる前に、跪き最敬礼を以って姉達の無礼を詫びた。

 

「う……。そこまで言われては仕方ない、か……」

「ふぅ。相変わらず、その辺りは人和頼りなのね。全く……」

「面目次第もございません……」

「あは、あはは……(あいっかわらず、華琳様は怖いわ……殺されるかと思った……)」

「えへ♪」

 

人和の真摯な謝罪に、皆怒りを収めたようだった。

やはり天和は反省の色が無かったが。

そこへ戦斧を携えた武将が現れた。

 

「……私もよろしいですか?」

「ああ、葉雄。待たせちゃってごめんな。――皆、先刻の説明でも話したけど……紹介するね。今回、傭兵団の先鋒を率いてくれた葉雄だ」

「葉雄にございます。此度の戦、少しでもお役に立てたのならば重畳」

 

手を打ち、全員に向けて礼をする葉雄。

 

(ホ、ホントに華雄なのだ~~!?)

(鈴々にやられて、よく生きてたもんだ……すげー生命力だな~)

 

反董卓連合として汜水関で実際に華雄と刃を交え、そして勝利した本人であるところの鈴々は驚愕の一言。

対して、単純にその生命力に感嘆する翠である。

 

「葉雄。此度の戦、寡兵ながら多勢への強襲。見事であった。――望みがあれば、何なりと言うがよい」

「……いえ。我が武へのお褒めの言葉を賜り、恐悦至極。私は武にのみ生きる武侠。褒賞は蜀国が主、北郷様より戴いておりますれば、それにて十分にございます」

 

その華雄へ褒美の言葉を掛けたのは、華琳である。しかし、葉雄はそれを拒否した。

 

「ふ……噂通りの無骨者ね。でも聞きなさい。あなたの所属していた傭兵団は、恐らく呉軍の正規兵として吸収されることになるわ。ねえ、雪蓮?」

「そうね。七乃との約束があるから。傭兵達は呉の軍に取り込む形になるわ。葉雄、あなたなら将軍位として仕官することも十分可能よ?」

「しかし、私は戦いの中でしか生きられぬ馬鹿でございます。お誘いは光栄ですが……」

「これから……もう、この大陸で大きな戦いは起こさせないわ。なら、戦場(いくさば)へ最も近くに在る為には武官として仕官しておくべきと思うわ」

「…………」

 

華琳と雪蓮の提案に、沈黙する葉雄。

そこへ声を掛けたのは、一刀だった。

 

「葉雄。今すぐ答えを出さなくてもいい。なんなら、大陸を巡って、様々な場所を見直して。それからまた訪ねて来てくれてもいいんだよ」

「……ありがとうございます。北郷様が仰った通り、出来るならば……暫し時間を戴きたく思います」

「そう。なら、その気になったら、“首都”を訪ねなさい。……待っているわ」

 

華琳が“首都”を強調して話したが、葉雄を含め、特に誰も気にはしなかった。

 

「はっ!有り難き幸せ!!」

「まあ、今晩はちょっとだけ宴会にするからさ。せめてそれくらいは参加してくれよ」

「……はい。ありがとう、ございます。北郷様……」

 

葉雄は深く頭を下げた。

ようやく場が落ち着いたかと思いきや。

 

「ね、ねえ華琳様? ちぃ達にはご褒美ないの?」

「あら? あーんな無礼な態度を取るような連中に、褒美を出せと言うのかしら?(ニヤニヤ)」

「そ、そんなぁ……」

「ぶー! ねえ、一刀~。華琳様を説得してよー。私も頑張って歌ったんだから、ご褒美欲しい~」

「……天和姉さん……そんな火に油を注ぐような……」

 

一刀の腕を取り、褒美をねだる天和に、またまた武将達の間に剣呑な雰囲気が再び。

そしてそんな姉に、頭を抱える人和。

 

「あ、あははは……。ま、まぁ華琳も本気で言ってる訳じゃないから。心配しないでいいよ、三人とも」

 

と言いつつも、やんわりと天和の腕を解く一刀である。

 

「ん?そういえば……七乃はどうしたんだ?」

「北郷様。張勲ならば、袁術らを迎えに行きましたぞ」

 

七乃の姿が見えないことに気付き呟いた一刀へ、葉雄が答えた。

 

「ああ、そうなのか。なら、あの砦にいる人達を全員連れてきて欲しいから、誰か伝令を送ってくれるかい?」

「承知」

 

戦勝を祝って、一先ずの小宴会である。

 

とは言っても、降伏した五胡兵の見張りを疎かには出来ない。また明日になれば、五胡兵の連行や諸外国を封じる為の下準備など、やらなくてはならないことが多々ある。

その為、極簡単に小規模に執り行うということで、各国で宴会・休憩・警戒を交代・分担することとなった。

 

宴会においては、当然将のみならず一般兵にも酒が配給されるが、一刀の指示により、なんと敗軍である五胡兵にも振舞われた。

 

「もう戦は終わったんだ。なら、あとは政治と対話で解決する問題だ。彼等は民なんだから、もう敵でも何でもない。言わば、将来の友人候補ってとこかな?」

 

一刀のこの言葉に桃香は笑顔で頷き、その他誰もが嘆息混じりに、しかし反論はしなかったのであった。

 

 

 

/蜀陣営 宴会場

 

「心配かけてゴメンな、みんな。でも、袁術や張勲に葉雄。それになんと言っても華佗先生のお陰で、ちゃんと元気に帰って来られたよ」

 

……

 

…………

 

そんな一刀の謝罪から始まった蜀の酒宴は……少々混沌とし始めていた。

 

 

「ひぐっひぐっ……ご主人様が死んじゃう~~……」

「いや、生きてるから! 雛里さん!? 俺、目の前にいるよ!?」

「心配(しんひゃい)しゃしぇるのがいけないんでしゅ!いけないんでしゅっ!……ぐずずっ」

 

酔っ払った雛里には一刀が見えていないらしく(川に流されて汚れてしまった制服が洗濯中の為、普段と違う衣装を着ているせいもあるかも知れない)、延々と泣き続ける。

そして、その隣ではやはり酔った朱里が半泣き、噛み噛みで説教中。

 

「ほらほら、足もあるぞ、雛里~? もう何言ってるのか分からないぞ、朱里~?――ぐぼぉ!?」

 

泣き出した雛里をあやしながら、朱里の説教を聞き流す一刀に、突進してきたのは……

 

「ぐずっ、心配させやがって……!」

「お姉様を泣かせて……悪いご主人様だよね……!」

 

右からは翠、左からは蒲公英……従姉妹同士の二人が、左右から同時に一刀の腰にタックルをかまして来た。

抱きついたまま泣く翠と、一刀の背に顔を隠してこっそり涙する蒲公英。

 

「げほっ、ごほっ……うん。ゴメンな、二人とも。……ん?」

 

二人の頭を撫でつつ謝る一刀。……そこに上着の裾を引かれる感覚。

 

「(ぎゅっ)……ご主人様。もう恋から離れちゃ駄目……」

「恋殿!こんなへぼ太守なんぞ……こんな……こんな……うぅ、う゛え゛ぇぇぇぇん!!」

「……ホントごめん、ごめんな、恋……。あああ、ねね~、ほら、泣き止んで」

「う゛え゛ぇぇぇぇん!」

 

一刀の背後には、上着の裾を握る恋と、その傍らに在って悪態を吐く積もりが泣き出してしまった音々音がいた。

 

「ご主人様! 泣いてる娘ばっか構うんなら、たんぽぽだって泣いちゃうんだからぁ!ぐすっ」

「ひっく……ひっく……ご主人様の馬鹿やろー……」

「……ご主人、様……(抱きっ)」

「う゛わ゛ぁぁぁぁん!」

「ああああ……みんな、泣きやんでぇ~~(汗」

 

四方から泣かれてしまい、困窮するしかない一刀。

 

「はっはっは!これはこれは、どうにもなりませんな、主!」

 

そこへ来たのは、すっかり出来上がった星・紫苑・桔梗の蜀国呑兵衛トリオと……膨れっ面の焔耶だった。

 

「はは。まぁ自業自得だしね」

「その通りだ!反省しろ、馬鹿お館め!」

 

ゴンッ!

 

「いだっ!」

「このバカモン!何たる言い様か! 心配したなら素直にそう言えい!」

「ああ、いいんだよ桔梗。焔耶の言う通りだし、その気持ちも分かってるから。――星。紫苑。桔梗。焔耶。本当に心配かけたね」

 

困ったような、申し訳なさげに笑む一刀。

 

「ふん……そら!」

「さ、主。勝利の杯ですぞ」

 

焔耶が鼻息荒く渡した空の杯に、星がなみなみと酒を注ぐ。

飄々としつつも、分かる人間から見れば、至極ご機嫌の星。

 

そして、なんのかんのと言いつつも。

酒を呷る一刀を見つめる焔耶の瞳には涙の粒が浮かんでいた。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様……本当に、こんなことは此れ切りにして下さいな……」

「全くじゃわい。事情を聞いた時には、御本人を見ていても肝が冷えましたぞ……」

「「……夜はお覚悟を……」」

「……ハイ(ガクガク)」

 

紫苑、桔梗からは迎えの挨拶と、“夜討ち”を仄めかされる。

 

その後、呑兵衛トリオに周囲で泣く娘たちを宥めて貰い、ようやく一息。と思いきや。

 

「お兄ちゃーーん!!」

「っっなんのぉ!!」

 

背後からラリアットの如く、跳躍から抱きついて来たのは鈴々。

毎度毎度やられているからか、一刀は見事持ち堪えてみせた。

 

「おおー!よく耐えたのだぁ」

「ふ、ふふ……ちょっと首が痛いけどね……って、ちょっと鈴々さん? 首絞められると苦しいんですけど……」

「心配させて、みんなを泣かせた罰なのだ!……鈴々も、ちょっとだけ泣いたんだよ……!?」

「……そっか。ごめんね、鈴々……」

 

一刀が大陸に降臨して以来、常に共に在った盟友にして愛する恋人の一人。

そして、弱者救済の覚悟を自らに課し続ける尊敬すべき女傑。

その彼女が――その本質が幼子であることを理解していても――泣いたという事実は、一刀に強い衝撃を与えた。

 

「そうだぞ、北郷。女を庇ってってあたりが如何にもお前らしいけどさ……」

 

其処へ杯と酒瓶を手に現れたのは白蓮。

白蓮は一刀へ杯を渡し、酒を注ぎながら目線を落とし。

 

「……あんまり、心配、かけんなよぉ……」

 

やはり、その目には涙が浮かんでいた。

 

「――ああ。本当にゴメンよ。思わず体が動いちゃってね……」

「もう!無茶するなら、強くなるのだ!なんなら、鈴々がてってーてきに鍛えてあげるのだ!」

「ぐずっ……そうだな。これで暫くは平和が続くだろうし。この際、しっかり鍛えて貰え」

「うえ!? 鈴々の訓練は、俺には難易度高過ぎだよ! たんぽぽだって逃げ出すのに!? おまけに“てってーてき”とか絶対無理!!?」

 

 

そんな調子で。

蜀将達に心配させた罰とばかりに、揉みくちゃにされつつ。

結局、全員から強烈な抱擁と酌を受け。

ようやく一刀は解放されたのだった。

 

「やあ、葉雄。楽しんでくれてるかい?」

「これは北郷様。武人にとって、戦勝の宴は戦場の次に落ち着く場ですからな」

「ははっ!成る程ね」

 

葉雄とその親衛隊は蜀陣営に交じって宴会に参加していた。

 

「……実は先程まで、こっそりと張遼殿と呂布殿が見舞ってくれておりましてな」

「霞と恋が?……ああ、そうか。君が董卓の下にいたときは同僚だったんだよな」

「そのようで。しかし、もう私にはその記憶はございません。少々、ばつの悪い感じになってしまいましたが……」

「そんなことはないさ。たとえ君が今は『葉雄』なのだとしても。かつての友が生きてくれていると知ることが出来ただけで。あの娘たちは喜んでくれているよ」

「そう、ですね。真名を……預けて戴きました。ただ私は、真名を失った身ゆえ。返答に困るというか……」

「いいじゃないか。彼女達の信頼を受け取っておけばいいんだよ。きっとそれは君の力になる」

「……貴方様のお言葉は……私の心に、沁み入ることばかりです。全く――敵いませぬ」

 

困ったような、嬉しげなような。そんな複雑な笑顔の葉雄。

 

「そうかい?……実は、俺のところに董卓もいるんだ。君が生きていてくれていることを知ったら、必ず喜んでくれるよ。それに、俺も君が生きていてくれることを喜んでいる一人なんだ。それを……忘れちゃ駄目だよ?」

「あ、貴方様にまで、でございますか!?」

「当然だよ。確かに君が記憶を失う直前。当時俺たちは敵同士だった。だが、“敵”ってのは相対的なものだ。今、戦乱が治まり……もう君は“敵”なんかじゃない。なら、生きて、笑ってくれることが嬉しいんだ」

「は、はっ! 肝に銘じまする////」

 

一刀は葉雄の堅苦しい返答に苦笑していたが。

当の葉雄は口説き文句のような台詞に顔を赤らめていた。

 

「お邪魔する」

「おー、華雄なのだ。元気かー?」

「こら、鈴々! まずは名乗らんか!」

 

とそこへ現れたのは愛紗と鈴々だった。

 

「しょうがないなぁ。じゃ、俺から紹介するよ。左が関羽、右が張飛だ」

「これは世に名高きお二方でありましたか。私は葉雄にございます」

「ああ。此度は我等が主人を守って下さり、お礼申し上げる」

「うん!ありがとうなのだ!」

「いえ。これも傭兵の務めなれば――しかし、お二方とも……」

 

そこまで和やかな雰囲気だったのだが。葉雄の瞳がギラリと光る。

 

「何という身の熟(こな)し……褒美の代わりと言っては何でしょうが。この葉雄と一戦交えて下さらぬか?」

 

そこにいたのは一人の武侠だった。

 

「ふむ。ならば、この関雲長がお相手仕る」

「ええー!? 愛紗、ずるいのだ!!」

「(お前は汜水関で一度戦っているではないか!)」

「(ぶぅーー……)」

 

 

……

 

…………

 

 

かくして互いの得物を手に、相対する愛紗と葉雄。

 

「参る!」

 

先手を打ったのは葉雄だった。愛器『金剛爆斧』を遠心力を加えて大きく振るう。

 

「なんの!」

 

対して愛紗は真っ向から『蒼龍偃月刀』で受け止めてみせる。

 

「ぬぅぅぅぅ!」

「はぁぁぁぁ!」

 

鍔迫り合いとなっても互いに一歩も退かない。

 

「今度は――此方の番だな! 受けよ、我が豪撃を!」

「くぅっ!?」

 

斧を横に流し、上段から愛紗が『蒼龍偃月刀』の刃を振り下ろす!

葉雄は斧の背で受けるものの、衝撃で数メートルと地面を滑る。

 

「流石は世に聞こえし関雲長の一撃……だが、私も敗けぬ!!」

 

発奮した葉雄は、突進からの連撃。並々ならぬ気迫が発せられていた。

 

「やるな!」

 

愛紗はその全てを受け止めている。刃と刃がぶつかる度、火花が飛び散り、衝撃を放つような轟音が響く。

 

 

「――強い、のだ」

 

鈴々が、二人の攻防を見て、そう零した。

 

「そう、だね。でも……愛紗はまだ余裕ありそうだけど……」

「それはそうなのだ。でも、華雄は、鈴々と前に戦った時とは、全然違うのだ」

「そうなのかい?」

「うん。あの時の華雄は、自分の武のみ頼んでて。相手を倒すことしか考えてなかったのだ」

 

どこかで聞いた言葉。一刀は、それが先日の三国会談で、悪ガキに鈴々が言い放った言葉だと気付いた。

 

『お前の“目”は、相手を倒すことしか見てないのだ。そんな拳では鈴々には勝てないのだ!』

『鈴々が強くなったのは……誰も守ってくれない、弱い人達の為! そんなみんなを守る為なのだ!』

 

その時、彼女は確かにそう言っていた。

 

「……今の葉雄は。相手を倒す以外のことが“目”に映ってるってこと?」

「そうなのだ。今の華雄は……鈴々と同じ……守るべきものを背負っているのだ」

「……そうか」

 

一刀は、彼女が自分の武を誇るだけでなく。その武に目的を持つことが出来たのだと、鈴々の言葉から理解出来た。

 

 

「はぁ、はぁ……ふふっ!参りますぞ、関雲長殿!!」

「ならば、私も渾身の一撃で受け立とう!」

 

「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

交差する、二人の身体。

 

弾かれ、地面へと突き刺さったのは、葉雄の『金剛爆斧』だった。

 

「……参りました。何たる豪撃。これが――世を、民を守る一撃、か……」

「何を言われるか。貴君の一撃にも確かに籠められておりました。平和の為に己が武を振るわんとする気概が」

「――!!」

 

愛紗の言葉に、葉雄は大きな衝撃を受けたようだった。

 

「真ですか……そうか、この“力”が……。我儘を聞き入れて戴き、ありがとうございました。私は……大切なものを手に出来た気が致します……」

「……あなたも我等と同じ、大陸の平和を求める同志です。これからも、互いに励みましょう。……あなたが真名を失われたことは伺っておりますが、是非、我が真名を預かって戴きたい」

「わ、私のような一介の傭兵に!?」

「今、申したではありませんか。あなたは我等と同じ、大陸の平和を求める同志です。我等に何の差がありましょうや」

「……なんと勿体無きお言葉。ありがたく真名をお預かり致します」

「姓は関、名は羽、字は雲長。真名は、愛紗。この真名、確かに葉雄殿にお預け致す」

 

そして二人は笑顔で握手したのだった。

 

 

 

その後、鈴々も真名を葉雄へと預け、愛紗と鈴々は自陣へと戻った。

 

一刀と葉雄は、二人でまた酒を酌み交わしていた。

ふと一刀は尋ねる。

 

「葉雄は、この後……どの辺から回る積もりなんだい?」

「……暫しは、鮮卑を初めに、五胡の領土を回ろうかと考えております」

「そうなの?」

「はい。これから冊封されるとは言え、治安は乱れるでしょう。飯の種、ということもありますが……暴動、紛争、それらを収めることが貴方様のお力に――この大陸の民の為になると知りました故に」

「……そうか。ありがとう、葉雄。余裕が出来たら、手紙くらいは送ってくれよ?」

「は、どうにも無精者ゆえ……確約は出来ませぬが」

「はははは! そっか、まあ気長に待ってるからさ♪」

 

嬉しげに笑った一刀は、酒瓶を手に立ち上がる。

 

「さて、葉雄の親衛隊のみんなにも酌して回らないとね」

「は!? 親衛隊と言っても、所詮は私の私兵ですぞ! 総大将御自ら酌など……」

「何言ってるのさ。今回は、あんな少数で突撃したんだ。労って当然でしょ?」

「は、はぁ……まあそうかも知れませんが……」

「さあ、一緒に行こうぜ」

「は、はい……」

 

かくして一刀は葉雄と共に彼女の親衛隊へと酌に回ったのだった。

 

「ぷはぁ~……結構呑んじゃったなぁ……」

 

自陣に戻ってきた一刀は思わずそう零した。

 

「この程度で酔うなんて、お兄ちゃんは意外と酒に弱いのだな?」

「あはは♪ お疲れ様、ご主人様♪」

 

鈴々は一刀の首に腕を回したまま、背負われていた。

少々ぐったり気味の一刀に、桃香が気遣いの言葉を掛け、朱里が水差しを手渡す。

一刀がぐるりと蜀メンバーから酌を受け、また葉雄とその配下と呑んでいる間に、朱里は酔いを醒ましたようだった。

 

「はい。ご主人様。お水をどうぞ」

「あ、ありがとう、朱里。……んぐっんぐっ、ふぅ……」

 

ようやっと一息吐いた一刀へ、桃香と愛紗が寄り添った。

 

「えへへ~♪ でも、ご主人様。成都に帰ったら……ねえ、朱里ちゃん?」

「そうですね。麗羽さんと猪々子さんはともかく……月さんや詠さん、斗詩さんにも一杯泣かれたり怒られたりすると思いますよ♪」

「う……そ、そうだよなぁ……」

「あははは! 詠は、怒って蹴りながら泣きそうなのだ!」

「ふふ、そうだな。……どうです。皆の心配が身に沁みましたか?」

「……そうだね。本当に俺は幸せ者だ……」

 

酔いに顔を赤らめながら、愛紗の問いに一刀は本当に穏やかに微笑んだ。

 

「でもね、ご主人様?」

 

桃香が一刀の右腕に自らの腕を絡ませながら、その瞳を見つめる。

 

「――まだ、三分の一だよ?くすくす……」

「へ!?」

「……そうですね」

 

驚く一刀の左腕に、愛紗が腕を絡ませた。

 

「ご主人様を心配していたのは、蜀の者だけではないのですから。ふふっ、今晩は眠れませんね?」

「「「!?」」」

 

更なる驚きに、愛紗を見つめる一刀だったが、愛紗の表情には影は見当たらない。

正直言って嫉妬深い彼女が、他国の者とだけの宴会への参加を認めたことに、一刀のみならず桃香も鈴々も心底驚いていた。唯一、朱里だけが穏やかな笑みを愛紗へ向けていた。

 

「愛紗ちゃん……吹っ切れたのかな?」

「星や鈴々を初め……皆のおかげです」

「そうなの? 鈴々、役に立った?」

「ああ。お前には重要なことを教えて貰ったぞ、鈴々」

「そっかー。にゃはは~♪」

「うふふ♪ でもご主人様。愛紗さん、“手綱”は放してくれないそうですよ?」

「しゅ、朱里!? ご主人様の目の前で……!」

「あははは! そっか、そうだな。俺の手綱は愛紗が握ってるようなもんだよなぁ。はははは!」

 

先日の宴会の際の一言を暴露された愛紗だったが、本人である一刀は納得の大笑いである。

桃香や鈴々、朱里も忍び笑いを漏らしている。

 

「うぅ……じょ、冗談、ですよ?」

「ふふっ、いいんだよ。嫌われ役をやってくれる愛紗には、いつも感謝してるんだから」

 

一刀が首を傾け、自分の顔を愛紗の髪に埋めて、感謝を述べた。

 

「う……勿体無いお言葉です////」

「愛紗ちゃん、お顔真っ赤~♪」

「と、桃香様~……(汗」

 

「……ねえ、朱里。もし……もし、俺が魏や呉の娘と仲良くなっても……。三国同盟は大丈夫なんだろうか……?」

「そ、それは……」

「許されるなら、たとえ他国の娘であっても――『仲間』である女の子を泣かせたりなんかしたくない。……でも、今のままじゃ無理だ。何か、手はないのかな……?」

「ご主人様……」

「…………」

 

一刀の苦悩に、朱里も愛紗も言葉を返せない。しかし……

 

「――大丈夫だよ、ご主人様」

 

片腕を一刀の右腕に絡ませたまま、もう一方の腕を自身の胸に当て。

一瞬、悩むように眉をひそめたが、すぐさまに笑顔を取り戻し。

 

「絶対……なんとかなるよ!」

 

明るくそう断言してみせたのは、蜀王・桃香だった。

 

「お姉ちゃんは相変わらずなのだー……」

「あ、あのね、桃香。そんな簡単な問題じゃないんだよ? そもそも、皆からしたら“浮気”っぽいのに……」

「ご主人様の浮気性は、もうみんな分かってるよ(にこにこ」

「そんなはっきりと……。そ、それはそれで男としてはどうなんだろう……?」

「それこそ今更ですよぅ……」

「う゛っ……」

 

朱里の止めの一言に、全く反論出来ない一刀であったが。

 

「大丈夫、大丈夫。ご主人様がこうしてみんなの傍にいてくれるだけで……。うん、それだけで――もう大陸の平和は戻ったも同然だよ♪」

 

笑顔で言い放つ桃香。その余りにも自信に満ちた雰囲気に、周囲の者も呆然となった。

 

「桃香……?」

「「桃香様……?」」

「お姉ちゃん、何かいいこと思いついたのだ?」

「えへへ、まだなーいしょ♪」

 

「「「「…………」」」」

 

「ね、ご主人様。今は……心配を掛けちゃった魏や呉の娘たちに、しっかりと顔を見せてあげて――」

 

この場は桃香のこの言葉で締められたのだった。

 

 

 

続。

 

諸葛瞻「しょかっちょ!」

曹丕「そうっぺ!」

周循「しゅうっちの!」

 

三人「「「真・恋姫†無双『乙女繚乱☆あとがき演義』~~~☆彡」」」

 

諸葛瞻「お読み戴き多謝でしゅ。諸葛亮こと朱里の娘にして北郷一刀の第23子、しょかっちょでしゅ!」

曹丕「乱文乱筆なれど楽しんで戴けたかしら。曹操こと華琳の娘にして北郷一刀の第9子、そうっぺよ♪」

周循「少しでも面白いと思って下されば重畳。周瑜こと冥琳の娘にして北郷一刀の第25子、しゅうっちで~す☆」

 

 

周循「え~、父さんと雪蓮様の疑惑については……『ちょっ、そんなオチかよ!?』と思われた方が大多数かと思われますが」

 

曹丕「まったくね。戦場という極限状態での一夜の過ち、というところに浪漫があるというのに!」

 

諸葛瞻「それはちょっと……というか、一夜も時間経ってないでしゅよ。ともかく、お父しゃまへの刑罰は、鞭打ちならぬ平手打ちだったわけでしゅが。ぶっちゃけ、お母しゃま方から散々叩かれたら、鞭より酷いことになりかねない気もしましゅねぇ。その辺は、泣いていても、怒っていても、ちゃんと手加減しゃれていた、ということで」

 

周循「鞭打ち刑を受けた傷跡は、見ていて痛々しいことこの上ないからな……そう言えば父さんの身体って、あんまり傷らしい傷がないな?」

 

曹丕「おっと駄目よ、しゅうっち。それはネタバレを含みかねないわ」

 

周循「は、はぁ……そうなのですか?」

 

曹丕「そうなのよ。まだまだ先の話になるのだから。ふふっ」

 

 

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○議題:アンケート『葉雄(華雄)ヒロイン昇格』結果発表

 

周循「前回は急遽のアンケートに多数の方にご回答を戴きました!真にありがとうございました!(ぺこり)」

 

曹丕「という訳で、結果発表よ。……しょかっちょ」

 

諸葛瞻「はい。結果は――『ヒロイン昇格決定!』でしゅ! 今、必死に筆者がプロットを弄りつつ、子供の設定を考えておりましゅ」

 

周循「場合によっては、子供の序列に変更があるやも知れません。影響を小さくしようとすれば年少下級以下にすればよいのですが……それだと他の娘達と絡ませにくくなってしまう可能性がありますので」

 

曹丕「また、本作では華雄様、即ち葉雄様が真名を名乗らない理由を“記憶を無くしているから”としている訳だけれど。思い出すにせよ、名付けるにせよ、オリジナルで真名を設定する方向で考えているそうよ」

 

諸葛瞻「読者様に納得のいく真名が思いつけばいいでしゅけど。まあ何れ……ということで」

 

 

三人「「「アンケートご協力、ありがとうございました! 葉雄様、ヒロイン昇格おめでとうございます!」」」

 

 

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周循「さて、前回は緊急アンケートでゲストの募集が出来ませんでしたので、前々回の落選組に来て貰いました」

 

于圭「ちょっ!それ、ヒドいのよ!?」

 

李禎「そうやそうや!」

 

周循「そうだな。二人にはこんなことになってしまい……『本当に……すまないと思っている』(ジャ●ク・バウアーの真似)」

 

李禎「てんで似てへんし!!」

 

周循「ツッコミありがとう(超笑顔)。 さ、自己紹介をしてくれ」

 

 

李禎「なーんか納得いかへんわ……ごほん。李典こと真桜の娘で北郷一刀の第31子、李禎(てい)や。諱は史実での李典の子の通りやな」

 

于圭「ほんとなのよ!う~…… 于禁こと沙和の娘で北郷一刀の第32子、于圭(けい)なのよ。禎ちゃんと同じで、諱は史実での于禁の子そのままなのね」

 

 

諸葛瞻「お二人とも、しょかっちょやしゅうっちと同じ、年少上級でしゅ。姉妹に何組かいる、“妊娠したのは同じ日”という姉妹でしゅね」

 

曹丕「あと、リクエストがあったので彼女にも来て貰ったわ」

 

楽鎮「お邪魔しております。楽進こと凪の娘にして北郷一刀の第13子。楽鎮です。今回は『三羽子烏』集合ということでお呼び戴きました」

 

 

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○質問:特技・特徴は何ですか?

 

李禎「うちの特技ちゅーたら『発明』やな!」

 

曹丕「何だか前回も同じ言葉を聞いた気がするわね」

 

李禎「しゃーないやろ!?文煕【猪々子】の方が先に呼ばれてんやから! ま、ウデはうちの方が上やけどな!!」

 

諸葛瞻「……まあこんな感じで、毎日毎日二人は切磋琢磨している訳でしゅ。鳳宏ちゃん【雛里】と袁譚ちゃん【麗羽】の不毛な争いよりは余程いいんでしゅけど」

 

楽鎮「しかし発明品の暴発やらで、被害も馬鹿にならないのでは……? 但し二人は真桜母上によって火薬を使用する研究は禁じられているらしいです。まあ危険物ですし、当然と言えば当然ですが」

 

李禎「んー、何か父ちゃんと母ちゃんで何か約束があるらしいで? そやから火薬の研究開発は、本職でもごっつい重要な理由があらへんと許可が下りへんねん。……そもそも、うちと文煕【猪々子】は完全禁止されてんけど」

 

曹丕「それこそ、あなた達や私達の安全の為でしょう。……それにしても、皇帝たるお父様と『開発†無双』所長であられる真桜様との密約ね……(荀惲【桂花】に調べさせてみようかしら)」

 

諸葛瞻「えー、『開発†無双』というのは、大和帝国の誇る技術開発研究機関でしゅ。真桜様は『洛陽警備隊』の十番隊組長と『開発†無双』の所長を兼任されているのでしゅ」

 

李禎「学校卒業したら『開発†無双』に所属するのが、うちと文煕【猪々子】の夢やな~。なんせ開発には金が掛かるのが問題やからなぁ。……文煕【猪々子】の奴はどないしてあんな金持ってんやろ? 正直、小遣いの額は明らかにうちの方が貰っとる筈なんやけどなぁ……。鎮も圭も、ちぃっとも金貸してくれへんし」

 

楽鎮・于圭「当たり前だ(なのね)!!」

 

曹丕「(文煕【猪々子】が違法賭場の麻雀で荒稼ぎしていることを知っているのは限られるものね。資金に劣りながらも互角の勝負をしているあたり、流石は真桜様の実子ということかしら?)」

 

于圭「次は圭の番なのね~! 圭の特技は『鑑定』なのよ♪ 骨董品から最新の衣装、貴金属に宝石、なんでもござれなのね~」

 

諸葛瞻「まあ流行に敏感で、装飾品や衣装の価値に詳しいのは分かるんでしゅけど……」

 

周循「うむ。于圭が特技と堂々と宣言出来るのはその“眼”だな。金属の比率や、書画・宝石の真贋まで見抜くその眼力は……恐らくは袁譚【麗羽】の『霊感』などと同じ、霊妙な力の類なのだろう」

 

曹丕「お父様は『真理眼』なんて、大仰に呼んでいるけれど。実際、どんな風に見えるものなの?」

 

于圭「ん~、モノの『氣』みたいなものが見えるから、それで判断するのね。例えば真贋を見抜く場合は、“誰かを欺こうとする念”が“黒く”見える、みたいな感じなのね」

 

楽鎮「圭が『真理眼』を発動している時は、両目に『氣』が集中することが分かっています。“物品を見抜く”ことに特化した先天的方術かと。父上は『千里眼』などの亜種で『眼で見るサイコメトリー』ではないかと仰っていました」

 

曹丕「成る程ね……。そんな訳で、于圭は真偽を確かめなくてはならない物品の鑑定の為に偶に“仕事”を頼まれることがあるくらいなのよね」

 

于圭「そうなのね。お父さんの役に立てるとすっごい嬉しいし、お母さんも褒めてくれるから、“仕事”は大好きなのね♪」

 

周循「勿論、于圭による『鑑定』は証拠にはなりませんので、実際の裏付けには明命様などが動かれているようです」

 

 

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○質問:特に仲の良い姉妹は?

 

李禎「まずはなんちゅーても、母ちゃん達が仲がいいんで、一緒に育った楽鎮と于圭やな。ホンマは鎮は年上なんで“鎮姉やん”と呼ばなあかんのやけど」

 

楽鎮「今更そんなこと言われたら、寧ろ気持ち悪い……というか、何か企んでるんだろうと思うな」

 

李禎「それは言い過ぎちゃうん、鎮!?」

 

于圭「あははは♪ でも圭もそう思うのね~♪」

 

李禎「はぁ、次々。何度も出てるけど、文煕【猪々子】とはライバルや! 『大陸一の発明王』とまで謂われてん母ちゃんの娘として、アイツには負けられへん!」

 

曹丕「勝率はどのくらいなの?」

 

周循「そうですね……。発明品の精度は大差ありませんね。大概どっちも暴発しますので」

 

李禎「そらないで、しゅうっち~~!」

 

周循「事実は事実だ。上手くいったものなど、数える程しかないではないか。敢えてどちらが上かと言えば、李禎が一歩先を行っている感はありますね、素人判断ですが。但し、身体能力などは文煕【猪々子】の方が上ですので、『発明品を使った戦闘勝負』となると、結局五分五分といったところでしょうか」

 

諸葛瞻「しょかっちょもほぼ同意見でしゅね。補足するなら、文煕ちゃん【猪々子】は一部の発明品の精度が高く、李禎ちゃんは満遍なく様々なものを作っている、という感じでしゅ」

 

曹丕「ふむ。文煕【猪々子】の高精度作品は、さっき李禎が零していた“資金”の問題なのね。元手があれば何度も実験出来るのだから、当然精度も上がるし、上等な材料も使えるものね」

 

楽鎮「流石は皇女でも神童揃い。冷静な判断ですね」

 

李禎「ま、そんな訳で文煕【猪々子】とヤり合う為に、鳳宏【雛里】とツルむことが多いわ」

 

諸葛瞻「しょかっちょも何度李禎ちゃんの発明品の犠牲になったやら……(嘆息)」

 

李禎「しゃーないやん、しょかっちょは鳳宏【雛里】側なんやもん」

 

楽鎮「……禎がいつも済まないな、しょかっちょ……」

 

諸葛瞻「……いいんでしゅよ。そもそもの原因は鳳宏ちゃん【雛里】と袁譚ちゃん【麗羽】でしゅから……」

 

于圭「圭もまず挙げるのは鎮ちゃんと禎ちゃんなのね♪ お母さん達と圭たちの六人でお食事にいくことも多いのよ。頼むメニューは……4対2で別々になるけど」

 

楽鎮「仕方ないじゃないか。私と母上しか激辛料理は食べられないんだ」

 

周循「その辺は完全に遺伝だな」

 

于圭「次に仲が良いのは、馬承お姉ちゃん【蒲公英】、張刻(こー)【天和】、張槓(かん)【地和】、張順(しゅん)【人和】かな? 鎮ちゃんも禎ちゃんもファッションにはあんまり興味ないから。服とか装飾品を買いに行ったり、阿蘇阿蘇とか読んだり。趣味仲間なのね♪」

 

諸葛瞻「(于圭ちゃんが一緒の買い物は、偽者を掴まされることがないでしゅから、安全でしゅねぇ)」

 

楽鎮「武官にチャラチャラした服は要らないんだからいいんだ!……大体、こんなに背が高いと、似合う服なんて……」

 

曹丕「あらあら、そんな風に自分を卑下しては駄目よ。あなたのそういうところは本当に凪様にそっくりなのね」

 

于圭「そうなのね!鎮ちゃんの私服は大抵が圭が選んであげてるのね!……なんなら、下着丸見え超ミニとか着せてあげるのね!うふふふふ♪」

 

楽鎮「そっ、そんな恥ずかしいの穿けるかぁーーー!?」

 

于圭「でもでも、それをお父さんに見せたら……」

 

楽鎮「父上に!?」

 

于圭「そしたらぁ……『こんな破廉恥なものを穿くような娘に育てた覚えはない!』って、お尻ぺんぺんとかしてくれるかもなの♪」

 

楽鎮「ち、ちうえに……お尻……え、えへへ……」

 

李禎「あ!圭、ジブンまた鎮のスイッチ入れおったな!?」

 

于圭「だってぇ~、面白いんだもん♪」

 

楽鎮「ああ……ごめんなさい父上……鎮は、鎮は悪い娘ですぅ~……もっと、もっとぉ♪」

 

周循「……駄目だ、完全にトリップしているな……」

 

曹丕「もう、結局これがオチになっちゃったわね。放っておいてもいいけど……しっかりなさい!」

 

(ばちーん!)

 

楽鎮「ひゃぁああああん♪(ばったり)」

 

諸葛瞻「……幸せな顔で気絶してましゅね……」

 

李禎「あ~あ……」

 

于圭「あはははははは、あははははは!!」

 

曹丕「しまった……妄想に実際の衝撃を与えたせいで昇天しちゃったのね。……もういいわ、放っておきましょう」

 

周循「南無……(-人-)」

 

 

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○アンケート:次回、読んでみたい姉妹は?

 

周循「えー、という訳でまたまたゲストのリクエストを募集したいと思います。以下の二つからお好きな方をお答え下さい。コメントの端に、ちょこっと追記して頂ければ幸いです」

 

A:白蓮・季衣の娘たち

B:張三姉妹、天和・地和・人和の娘たち

 

 

 

楽鎮「……えへへ……むにゃむにゃ……」

 

曹丕「……結局おいしいところを楽鎮が全部持って行った感じね(嘆息)」

 

周循「まあ一際キャラ立ってますからね……。さて、次回は魏と呉の小宴会を父さんが回る様子をお送りする予定です。……オチが見えるようだ……」

 

諸葛瞻「桃香様は何かに苦しみつつも、大陸の平和を確信しているようでしゅね。いよいよハーレム近し!と言ったところ。一先ずは宴会で更なるフラグ回収でしゅ。それではまた次回!」

 

 

(6-1)人「「「「「バイバイ真(ま)~~~☆彡」」」」」

 


 
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