If 蜀endアフター 第二話
と、いうわけでまずこの小説を見るに当たって注意事項↓
・結構ストーリーも時代設定も捻じ曲げちゃってるかもしれません。
・描写が多い。
それでもいいという方、お進み下さい。
第二話でも注意事項はコレだけです。多分お話が進み、ゲームと離れていくたび、
増えてくと思います。いや、増えるのか?
ではどうぞ。
蜀Side
「桃香様ー!!ご主人様ー!!むぅ・・・おかしい。これだけ探しても見つからないとは・・・」
城の太守二人が戻らないということで至急捜索隊が組まれ、愛紗たちは森を探しているところだった。もう朝である。
「愛紗・・・ちゃん?」
「とっ・・・桃香様!!」
喜びの声を上げかけた愛紗は次の瞬間絶句した。それもそのはずだろう。なんせ桃香の顔は涙の跡で汚れ、目の下には隈ができ、のどはつぶれているのだろうか、声はガラガラだったからだ。
「桃香様・・・?このような所でいったい何を・・・」
「なんでもない・・・。なんでもないの・・・。さっ、いこっ?」
「『さぁ』と申されましても・・・。ご主人様がまだ見つかっておりません。ご主人様はどちらにいらっしゃるのです?」
「ッ・・・」
「桃香様。ご主人様と共におられたのではないのですか?桃香様?」
「ご主人様・・・はね?帰ったよ・・・」
「帰った?城に・・・ですか?ではいきちがいになったのでしょうか。それにしても桃香様はなぜこのような所にお一人で?」
「ちがうよ・・・。愛紗ちゃん・・・。ご主人様は・・・天の・・・天の国へ帰ったんだよ・・・」
「!? そっ・・・、それは、どういう・・・」
そして桃香は突然その場で崩れ落ちた。夜中じゅう泣き続け、もう限界だったのだろう。愛紗は何を考えるでもなく――、いや、何も考えられず、自らの頬を伝う涙を拭い、桃香を抱きしめ、一刀がいなくなった悲しみに自分も泣いた・・・。胸にこみ上げてくる熱いものを必死に押さえ込みながら。
その日は緊急の軍議ということで皆が集められた。あるものは調練、あるものは政務、またあるものは休みだったが、『緊急』ということで集められ、みんな不満たらたらだった。
「・・・ったく、なんであたしたちの久しぶりの休日が軍議でつぶれるんだよ・・・」
「お姉様がまたなんかしたんじゃないの?」
そういって蒲公英は口に手を当て、にまーっと笑う。
「?? なんのことだ?あたしはなにかした覚えないけど・・・」
ホントになんの覚えもないというふうな翠の隣にはいつのまにか星が座っていた。
「四日前の夜、主の閨・・・」
悪魔の微笑だ。
「・・・・!!! なっ、なんでお前がそのこと知ってんだよ!!」
「そのこと?」
変わりに鈴々が天使の笑顔で聞く。
「し、しまった!!星、お前・・・!!」
「案ずるな。愛紗には黙っておいてやろう」
「ホントかよ・・・」
そういうと翠ははぁーっと目の前の机にうなだれる。
「・・・そういえば今朝、緊急の軍議だということなので主の部屋に行って起こして差し上げようか思ったのだが、主の部屋はすでにもぬけの殻でな。だれか昨夜主と共に夜を過ごした者はおらぬのか?」
だれも答えなかったので朱里が答えた。
「それを聞いて答える人もいないでしょうけど・・・、でもこの場にいる人と一緒にいたのならその人と一緒に来てるんじゃないですか?」
「ふむぅ・・・。それもそうだ、ならば主は愛紗と共に閨にこもっている。ということでよろしいですかな?軍師殿」
「はわわわ・・・。そ、そこまで言ってないですよ~・・・」
「あわわ・・・、桃香様ということも・・・」
「ほほう。鳳雛殿も枕事にそこまで頭が回るとは。いやはやこの趙子龍、感服ですな!」
「あわわわわ・・・」
「相変わらず蜀の軍師はヤラれ役である」
ふむ。と納得したようなそぶりを見せた星の後ろの方で扉が開いた。
「・・・皆、すまない。少々遅れてしまった・・・」
「それはいいが、愛紗よ。主はどうしたのだ?おぬしがつれておらぬということは昨夜は桃香様と・・・?」
「ッ・・・!!」
星の核心を突いた一言に愛紗は自らの血の気が引いていくのが分かった。
「まさか・・・、本当にそんなことのために我等を緊急招集させたのか?貴様がそのような態度をとっているからいつまでたっても桃香様が独り立ちできぬのだ」
「せ、星・・・。言い過ぎだって・・・」
「星姉さま・・・」
皆が星をなだめている途中、愛紗は自身の唇を噛みしめながら星の言葉を聴いていた。
――たしかにそうかもしれない。私が甘やかしてきたから。だから桃香様はかけがえのない人との別れに心がもたなかったのかもしれない。どんなに辛い思いをしたことだろう。千里先の離れた民のことまで心配できるような人が自分に最も近い人を失ったのだ。心身共に鍛えぬいた私ですら泣き崩れてしまいたいのに・・・、それを桃香様は目の前で――
そんなことを考えていると愛紗の瞳からは二筋の涙が流れ落ちた。
「あっ・・・愛紗ちゃん!?」
「・・・ご主人様は・・・天へと・・・帰られた」
「!!!?」
紫苑にも反応せず、ゆっくりと愛紗が答える。その言葉に皆は動揺の色を隠せずにいた。
「・・・愛紗?鈴々は、愛紗が何を言ってるのか分かんないのだ」
最初に口を開いたのは鈴々。この時の鈴々の声には憤りすら感じられた。鈴々が口を開くまでの時間はすごく痛かった。『嘘だと言ってくれ』と皆が思った。ただ愛紗の口からその言葉が出ることは無かった。次に落ち着いた声で紫苑が聞いた。
「愛紗ちゃん? 落ち着いて聞いてね?まず聞きたいのだけれど・・・、
それは・・・、いつの話なの? そして桃香様がいないのは、なぜなのかしら」
こんな質問の答えなど紫苑も皆も重々承知していた。否、承知せざるを得なかった。昨日桃香を彼が探しに行ったことは皆が知っている。
「・・・昨夜の・・・晩だ。桃香様を探しに行ったご主人様は・・・桃香様と話を・・・された後、
天へと帰っ・・・ひっく・・・帰ったらしい」
愛紗の声は今にも消え入りそうだった。そして次の瞬間、愛紗も泣き崩れた。そして地面に跪く格好の愛紗に皆が駆け寄ろうとしたが、いち早く愛紗の体制が崩れたとき、飛び出したものがいた。
「・・・すまなかった。愛紗、今は・・・この私が肩を貸そう・・・」
「・・・せ・・・い? うう・・・すま・・・ない・・・。とうかさまが・・・ごしゅじんさまが・・・」
飛び出したのは星だった。二人は互いの肩に顎を乗せる形で寄り添いあっていた。星の瞳にも涙があふれていたがこの雫に愛紗が気づくことはない。
「特に親しかった人たちだけを・・・集めて・・・ひっく・・・ご主人様の帰還を・・・祝いましょう・・・!」
そういったのは朱里だった。目を真っ赤に泣き腫らし、それでも力強く皆に言った。
「蒲公英・・・行くぞ」
「お姉さま? い、行くって・・・どこへ・・・?」
「きまってんだろ・・・城壁だよ。あそこが・・・この城で一番・・・天に近い」
皆、翠の言葉に従って、少し落ち着いた者から一人、また一人、と軍議室から城壁へと移動を開始した。
「なんなのだ・・・これは・・・」
愛紗が城壁に上り、町を見渡してみると驚きの光景があった。町を見渡すと道という道、屋根という屋根に人がいて、その手には小さな猪口が握られてあったのだ。
「ははっ・・・。どうなっておるのだ・・・? 我が国の警備体制は・・・。情報が駄々漏れではないか・・・」
軍議室から会話がもれていたのだろう。明らかに『森の中で偶然見かけました』という人数ではなかった。本来これほどの人数が集まれば、喧騒や犯罪などが起きやすいのだが・・・、そこに集まった人たちはただただ静かに城壁を見上げていた。そんな民の姿をみて愛紗はまた自分の瞳に涙がたまるのを抑えられなかった。
「・・・ご主人様、人気者だったもんね」
その時後ろから、城壁にいるはずない人の声が聞こえた。
「とっ、桃香様!ダメです!お部屋でじっとしていただかなくては!!」
桃香は特に足元がおぼつかぬわけでもなく、声もしっかりしていて、とても一晩中泣いていた者とは思えないほどだった。ただ、目のしたの大きな隈を除いては。
「ううん・・・。今は・・・、こうしていさせて? みんなでご主人様のこと、祝おう?」
「・・・桃香様」
そこまで言うと愛紗はまた違う音を聞いた。ガラガラとまるで荷台を引くような。
「玄徳様、酒をお持ちいたしました」
「・・・私が手配しておいたんですよ。さあ、みんな杯を受け取って」
そういうと紫苑は皆の手に杯を渡し始めた。皆の手に杯が渡ると今度は酒をそそぎはじめる。よく晴れた青空は杯に、皆の心を移したような青を映した。
そして朱里が、口を開く。
「桃香様、民の皆様に祝いの号令を」
「・・・うん」
桃香は息を大きく吸い込む。吸い込む間のほんの一瞬、桃香の脳裏には彼との思い出が一気によみがえる。一緒に町を歩いた、一緒に点心を食べた、一緒にサボって怒られた、一緒に兵の死に悲しんだ・・・、一緒に愛し合った。そんなことを思い出しながら桃香は目の前の民に話しかける。
「みなさん・・・。今日は蜀にとって、とても悲しい一日となりました・・・。」
その声に先ほどまでの静かさも忘れるような静寂が訪れる。戦場にだって無い。『皆がひとつになった』そんな感覚だった。
「私たちは大切な人を失ってしまった・・・。かけがえのない人を・・・。決して誰にも贔屓せず、蜀の人を平等に愛してくれた・・・あの偉人を。今の蜀があるのは彼のおかげといっても・・・過言ではありません」
その声に後ろからはすすり泣きの声が上がる。だが桃香は後ろを見なくてもそれが兵士のそれだと言うことに気がついた。兵士たちは将軍たちには迷惑かけまいと泣く声を必死に抑えているようであったが周りには何の音もない以上、その声はよく透き通り、皆の耳へと届く。その音に、景色に皆はただ涙を流した。
「そして、彼は無事天へ帰りました・・・。国にとって、民にとって、仲間にとって・・・、これほど悲しいことはありません。しかし・・・彼の友として。こんなに・・・嬉しいことはないでしょう」
桃香の声はただ静かに成都に響き渡る。その声は決して大きくはない。戦場での号令のような闘志を起こす武官のそれでは無くて。皆に語りかけるように。千里先までこの声は届くだろうか。そんな気にもなってしまうほど。桃香の悲しい旋律は皆の深く傷ついた心を慰めるようにただただ皆の心に染み渡り深い哀愁を誘った。
「私には・・・一つ。心残りがあります。ひっく・・・彼にこの景色を・・・見せてあげたかった。『あなたのために集まったんだよ』と・・・ひっく、そう言ってあげたい。普段から着飾らない人だったから、こんなこと言うと照れてしまって・・・出てこないかも知れないけど・・・ひっく。でも、彼が命を賭けて守った人たちがこんなにも・・・団結している所をあの眼にうつして・・・あげたかった」
いまや、すすり泣きはあちこちからあがっている。兵、民、将軍。みんな込みあがってくる悲しみに自分を抑えられない。
「だけど・・・ひっく・・・それももう・・・叶わない夢。ぐすっ・・・彼はいつも民のことを心配していた・・・。その彼は・・・もうどこにもいない。これからは・・・彼が私たちを心配しないように。・・・」
『もう彼はいない。』そう。自分が一番よくわかっている。だけどここでくじけてしまえば彼がこの世界に舞い降りた『意味』が無くなる。私にできること。それは彼が築いたこの国を守っていくこと。この杯を飲んでしまえば彼のことは忘れてしまわなければいけない。そんな考えが頭の中を駆け巡る。桃香はこの杯の酒をおもいっきり地面にぶちまけてしまいたかった。
「ここで・・・、彼とこの世界を・・・断ち切ってあげなければいけないのです。そうしなければ・・・彼はこの世界に縛られなくてはいけなくなる。・・・彼を想えばこそ、このお酒で・・・過去を断ち切る覚悟を!!」
そして最後の一言は自分に言ったようなものだった。みんな桃香の言葉を聴き終わると同時に自らの杯を傾け酒を自らに流し込む。さっきまで号泣している声やすすり泣きの声が聞こえていた町も、再び静寂へと引きずり込まれる。桃香も酒を口につけた。なんだこれはと思うほど不味い酒だった。はきたくなった。それ以上にこの酒を飲み終わればあの楽しかった日々ともお別れという事実が余計に桃香の喉を動かさない。祝い酒がこんなに不味かったという記憶はない。これならばあの人と政務を抜け出して町で買って飲んだ安い安い酒の方が100倍はうまかった。
はきたくなる思いをこらえ、桃香は飲み干した杯を高く振り上げ足元にたたきつけた。皆もそれにならい、杯をたたきつけた。
「「「「「「「「「「――旅立ちに――!!!!!」」」」」」」」」」
その日、蜀の国はむせび泣く人でいっぱいだった。今日だけは泣かせて欲しい。愛しい人を失った悲しみに浸りたい。
今日だけ。今日だけは仕事を休む。行商がこようと使者がこようと王がこようと。今日だけは浸らせて欲しい。
「きっと、あしたからまたがんばるから!」
・・・どうでしたでしょうか。
『第二話』です。続きました。期待を裏切ってしまった人、申し訳ございません・・・。
今回は別れ話でもないのでさほど泣けなかったと思います。
一話ハリキリすぎました・・・。まぁでもほどほどでいい感じではなかったでしょうか?
三話は一刀がメイン?かな? 三話・・・あるのかな?
需要・・・あるのかな? 供給・・・あるのか!?
次でやっと投稿作品3作目。やっと見習い卒業。出来ること増えます。コリャ書かなくちゃ!
とりあえず続け。
あとがきのあとがき
ここで真・恋姫に対する疑問を一つ。
呉ルートの時に蜀に出した使者が丸刈り&マッパで返品。
いやいやいや、だれがやったの?愛紗?いや、桔梗かな?桔梗だな。
てかその時の使者が新しい自分に目覚めたらどうするんですか桔梗さん!?
ていうか帰る途中、途中の町で服買えよ。
いや、違うな。もうその使者は己の趣味に目覚めた後だったというわけか・・・。
使者「服などいらぬ!!」
・・・黙祷・・・
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第一話の続きです。一話の悲しみを取るように
読んでいただければ幸いです。