No.107449

恋姫SS 蜀endアフター 第一話

イアドさん

もし魏endのようなことになったら・・・
蜀end後のそんなお話です。それでは第一話、どうぞ

2009-11-16 22:47:38 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:47618   閲覧ユーザー数:36506

 

 If 蜀endアフター 第一話

 

と、いうわけでまずこの小説を見るに当たって注意事項↓

 ・結構ストーリーも時代設定も捻じ曲げちゃってるかもしれません。

それでもいいという方、お進みクダサイ。

 

第一話では今のところコレだけです。多分お話が進み、ゲームと離れていくたび、

増えてくと思います。

ではどうぞ。

 

 

 「お~い、桃香~」

 

 俺は森へ来ていた。愛紗に桃香を探しに行ってくれ、と言われた。その日、昼ぐらいから桃香は森へ出かけたまま帰ってきてないらしい。普通なら愛紗が探しに行くんだろうが・・・、桃香に気を使っているのか、俺に探しに行って来てほしいと言った。まぁでもそう簡単には・・・

 

 「・・・見つかるはずないよなぁ・・・」

 

 「ッ・・・! ご主人様・・・!?」

 

 「うおっ! と、桃香!」

 

 いや、案外早く見つかった。そこはいつか桃香と初めて結ばれた場所、開けた空き地でせせらぎの傍。桃香は石に座っていた。二人ともちょっとの間黙って互いの足元に視線を落としたままで、辺りには虫の声や、水の音などが流れる。

 

 「「えーと・・・。 !!」」

 

 声をかけるのも、顔をあげるのも、驚くのも同じタイミング。思わず口元から笑みがこぼれる。だが、桃香は・・・

 

 「・・・」

 

 「あの、桃香?」

 

 相変わらず、うつむいたままで。さっき驚いた以外には特に表情の変化はなかった。

 

 「どうか、したのか?」

 

 「・・・」

 

 その後、少しの時間桃香はだまり、そして口を開いた。

 

 「ねぇ、ご主人様」

 

 不意に桃香から声をかけられた。

 

 

 「ん?」

 

 「ご主人様は・・・天に帰りたい・・・とか、思う?」

 

 「う~ん、どうなんだろ・・・」

 

 『どうなんだろ』という言葉は比較的まとを得ていた。それは俺自身も疑問に思っていたことであり、深く考えてみたこともある疑問だ。確かに家族、友人、知り合いから離れてさびしかった日もある。

 

 だけど・・・

 

 「・・・やっぱり俺は、この世界が、みんなが、桃香が・・・好きだよ。だから、帰りたくないし、これからもずっとみんなと此処にいたい」

 

 「ご主人様・・・」

 

 桃香は何も言わずただ抱きついてきた。だがそれはいつもの甘えるような抱擁ではなかった。

 

 「・・・桃香。」

 

 「・・・なぁに?」

 

 その声にはいつものはきはきとした感じはなかった。

 

 「だけど・・・俺は、もう・・・」

 

 『それ』はもううすうす気づいていること。夢の中ではあの頃の生活の記憶が飛び交い、目が覚めてからは時折激しいめまいに襲われる。わかっている。もう近づいてきているのだ。

 

 「それ以上は言っちゃダメ」

 

 「桃香・・・」

 

 「あのね?ご主人様こないだね、街で新しい華蝶仮面の人を見たんだよ。それでね?」

 

 桃香は突然立ち上がりそのあたりをぐるぐる回りながら一心に話を続けた。まるで何かを振り払うかのように。

 

 「・・・桃香、・・・桃香!、・・・桃香ッ!」

 

 「ッ・・・!」

 

 呼んでも無視を決め込む桃香の肩をがっしりと掴んで半ば無理やりこちらを向かせた。その肩はいつもの桃香の肩より、ずっと細いような気がした。桃香は必死に下を向いたままで互いの目をあわせまいとしているようだった。

 

 「今から言う話を・・・聞いてくれ」

 

 「イヤ・・・、聞きたくない・・・。」

 

 次の瞬間、俺の足元から蛍のような光が舞い始め、俺の体は・・・透け始めた。その時がきた。

 

 

 「・・・桃香」

 

 「・・・ッ!ご主人様・・・!!」

 

 その時桃香と俺は不意に目が合った。彼女の瞳は震えていた。とても一国の主とは思えないほどに頼りなかった。

 

 「やっと、目が合った・・・」

 

 「天に・・・帰・・・るの・・・?」

 

 「ごめん・・・桃香」

 

 光が出て行くと同時に逆にゆっくりと一刀の姿は消えていく。

 

 「こないだね、愛紗ちゃんがすっごくおいしい炒飯作ったんだよ!その時ご主人様いなかったから残念だったけど今度ご主人様のためだけに作るって言ってたよ!」

 

 「・・・そりゃ楽しみだなぁ。今度頼んで作ってもらおう」

 

 「鈴々ちゃんがお箸をキレイにもてるようになったんだって!また一緒にご飯が食べたいって言ってた!」

 

 「そうだな・・・。また、今度鈴々ともラーメンでも食べに行かなくちゃ」

 

 「星ちゃんがね?自分でメンマ作ったんだって!一番最初にご主人様に食べてもらいたいって!」

 

 「ははは。星のことだからすごい凝ったのを作ってそうだな。今度ちょっと貰おうっと・・・」

 

 「翠ちゃんがね、ついに競馬百連勝なんだって!ご主人様にもほめて貰いたいそうだよ!」

 

 「うん。そりゃ褒めたげないとな。今度はいーっぱいなでなでしたげないと」

 

 「朱里ちゃんが自分で本書いて、それが今度出版されるんだって!」

 

 「へぇ!すごいな。また今度本屋に買いに行って朱里に読んだ感想を伝えてやろう」

 

 「あとねあとね・・・」

 

 「・・・桃香は?」

 

 「え・・・?」

 

 「桃香のお願いは・・・?」

 

 

 愛しい人の足元から躍り出る蛍の光はだんだん弱々しくなっていき、漆黒の闇が二人を中心にあたりを包み込むように迫ってくる。

 

 「・・・私は、ぐすっ・・・ご主人様に・・・私の傍にずっといて欲しい・・・。それで・・・ずっとずっとご主人様の傍にいたい・・・。」

 

 桃香の瞳から涙があふれた。指を頬にあてがって涙をぬぐってやろうとするけれど・・・、その指が桃香の涙を受け止めることはなかった。

 

 「桃・・・香」

 

 「どうして帰らなくちゃいけないの?なんで?理由を頂戴・・・?」

 

 「理由・・・か。俺は、役割を終えた。劉備を蜀の王にさせ、天下三分の計は見事成就し、乱世は終結した。そして最後の最も大切な役割は桃香を魏にも呉にも負けない立派な君主にさせることだったんだと思う」

 

 「・・・立派な・・・君主」

 

 「もう俺がいなくても蜀もみんなも桃香も大丈夫だから。桃香は立派な王に育った。それこそ・・・俺が要らないほどに。これからは劉備が・・・愛紗達と蜀のみんなを支え、・・・支えられていくんだ」

 

 「・・・イヤだよ!!ご主人様は要らなくない!!そんな理由なんだったら私は立派じゃなくていい!!」

 

 桃香は泣き叫ぶようにそんな台詞をはき捨てる。だがもう一刀はどんなことをしてもここには残れない。

 

 「おいおい・・・、愛紗が聞いたら・・・怒るぞ?」

 

 「ご主人様がいるから・・・私はちゃんと王として振舞えるんだよ・・・。イヤだよ・・・いかないで」

 

 「もう・・・時間がない・・・みたいだ」

 

 すでに一刀のからだは周りの景色に溶け込みそうになっている。互いの声は次第に届かなくなっていく。大空を見上げると、天高く星も月も輝き、まるで一刀を迎えに来たようだった。

 

 「帰るのも、流れ星になって・・・帰るのかなぁ・・・」

 

 「また・・・あえる・・・?ぐすっ・・・死ぬわけじゃ・・・ないよ・・・ね?」

 

 「どう・・・だろうなぁ・・・」

 

 「イヤだよ・・・」

 

 「どんな・・・手を使っても・・・あいに来てあげる・・・よ」

 

 「約束・・・だよ?」

 

 「うん・・・約束」

 

 自分の言葉に真実味がないことくらいわかっている。そして桃香にも多分見透かせれている。桃香はそんなことは重々承知しながらも少し安心したそぶりをみせ、自らの頬を伝う涙を拭く。

 

 「ご主人様はこないだ受け取った仕事の案件、まだ残してるでしょ・・・」

 

 「うっ・・・」

 

 「愛紗ちゃんに言いつけてやるんだから」

 

 「ははっ・・・、怖い・・・なぁ」

 

 桃香はスネたように頬をぷぅーっと膨らませる。そして、下を向いて・・・。

 

 「言いつけて欲しくなかったらここにいて?」

 

 震えてる・・・。

 

 「うーん・・・無理・・・かな」

 

 「私のこと、キライになっちゃった?」

 

 体も・・・、声も・・・。

 

 「そんな・・・こと・・・無・・・」

 

 「みんなが待ってるんだよ?桃園の誓いも・・・忘れちゃったの?」

 

 記憶の中の桃香はいつも元気で。

 

 「・・・みん・・・な・・・には・・・ゴメ・・・って・・・伝・・・」

 

 「みんなと約束したんでしょ?どこにも行かないって」

 

 こんな桃香は、見ていたくなかった。

 

 「・・・う・・・ん」

 

 「返事は?してくれないと聞こえてるのか分からないよ?」

 

 「・・・」

 

 「ご主人様・・・私をこんだけ夢中にさせといていまさら逃げようったってそうはいかないんだからね?」

 

 「・・・」

 

 「あっ・・・」

 

 

 一刀は自らの体に残った力で桃香を抱き寄せ、思いっきり抱きしめた。もう既に互いの声は聞こえない。だが体の感覚まではまだ消えていない。桃香も消えかかっている目の前の愛しい人を抱きしめる。けれど・・・

 

 「ご主人様・・・冷たい・・・」

 

 目の前の愛しい人はもう既にぬくもりを失いかけていた。後ろの背景と溶け合っている彼の顔を見ると、彼は泣いていた。すごく。涙をぼろぼろとこぼしていた。けど、その雫は地面に落ちる前にすべてがどこかへ消えていく。私の頭にかかることもない。おかしい。彼の胸に顔をうずめているはずなのに。いつもの大好きな匂いも、感触も、暖かさもない。私の涙だって彼の胸にかかることなく地面に落ちる。こんなに悲しい抱擁は今までになかった。

 

 「・・・」

 

 不意に、彼が私から離れる。そして、向こうももうすでに声が届かないと知っているのだろうか。涙でくしゃくしゃになった彼の顔が最後に弱々しい笑顔で微笑んだ。彼の唇が動き、何度も、それこそ何度も耳元で囁かれ、それでも求めたあの言葉の形に動き、後ろの背景に溶け込まれそうになりながらもその一言は確かにハッキリと桃香の心へと届いた。

 

 「――とうか、あいしてる・・・――」

 

 「――ご主人様――!!」

 

 桃香は力いっぱい彼を抱きしめようとした。この腕が千切れようともかまわない。とにかく『触れている』という事実が欲しかった。しかし、既に視認さえ厳しかった彼の体は最後の一言を境に一気に消滅にかかる。桃香の指が触れるか触れまいかのところで、星の輝くような淡い青白い光と共に彼はいなくなった。それと同時に桃香の周りは闇が包む。なんでこんなに悲しいのだろう。桃香は泣き続けた。いつまでも泣き続けた。 のどが熱い、胸が熱い、体が、頭が、心が・・・すべてが熱い。燃え尽きて炭になるんじゃないかというほど。

 

 その日、桃香は延々と泣き続けた。まるで、泣いていると彼がいつも私に向けてくれたあの笑顔で帰って来てくれるというふうに――。桃香の上、はるか彼方、成都の碧空には周りの星々を掻き分け東方へと夜空を貫く大きな白い流れ星が飛んだ・・・

 

 

 

・・・どうでしたでしょうか。

『第一話』と言っているので、続かせてみたいとは思います。

書いてる間に皆の性格が変わってしまいそうで恐いです。

次も・・・、がんばります!!見てください。

              続け。

 

 
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