今日は『三世界平和宣言』がある日だ。
あの日から楓は元気になって友達と遊んでいる。
でも俺に対しては憎しみを思いっきりぶつけて来て、みんなも楓に嫌われた俺をさけている。
覚悟はしてたけどやっぱり辛い。
稟や桜はホントの事を言うべきだと言ってくれたけど今はまだダメだ。
今ホントの事を知ると楓は多分耐えられない、俺がガマンするしかない。
『平和宣言か。魔族や神族の子供がここに来ると友達になってくれるかなあ』
俺は空き地でそんな事を考えながらぼんやりとしていた。
そこに誰かの声が聞こえて来た。
『やはり此処の空間が不安定になっているな、強引な開門が影響しているようだ。まあ、俺には好都合だったがな。何が平和宣言だ!魔力もろくに持たない人族と対等に付き合えなんて冗談じゃない、此処の空間をぶち壊せば三世界は再び分断されるはずだ』
そんな危なっかしい事を言っている男が居た。あの長い耳は魔族だ。
そしてその魔族の男は爆弾みたいな物を取り出した。
『待てよ!何をするんだ!』
俺はその男に飛びかかって爆弾みたいな物を奪い取ろうとした。
『な。何だこのガキは!離せ、くそっ!…あっしまった!』
男の手から爆弾が落ちた。
『くそうっ魔力補給が十分じゃないってのに、邪魔した罰だ!そのまま死んでしまえ!』
『…えっ…』
男が逃げだすと爆弾から光が飛び出し、爆発した。
ドガアアアーーーーーーン!
『うわああーーー!』
厳戒態勢の中で起きたその爆発は直ぐに神魔の警備隊に察知されその魔族はあえなく取り押さえられた、そして爆発のあった空き地には一つの帽子が焼け焦げた形で落ちていた。
……それは稟が忠夫にあげた帽子だった……
ある病院で彼は目覚めた。
『うう……』
『目が覚めたかい?』
『先生、この子は大丈夫ですか?』
『ああ、もう峠は越したからね』
『本当ですか、良かった』
忠夫が目を覚ますとそこには涙を流しながら微笑んでいる夫婦が居た。
その夫婦の名は横島大樹と横島百合子と名のった。
『この人達は傷だらけだった君を助けてくれたんだよ』
『そうなんだ、ありがとうおばちゃん達』
『そんな事はいいのよ。ねえ、君の名前は?』
『俺の名前……忠夫…』
『忠夫君かい。それから?』
『後は………わかんない…』
その後彼は夫婦の養子になり、『横島忠夫』として生きて行く事になる。
この世界での『再会』と『出会い』は運命だったのか…それとも……
第四話「激震!嵐のバーベナ学園!!(後編)」
授業が終り、休み時間になるとタマモとプリムラが横島達の教室へとやって来た。
「ヨコシマ、新しい学校はどう?」
「おうタマモ、そっちはどうだ?」
「プリムラと同じクラスになったわ」
「そうか、プリムラ、タマモをよろしくな」
そういってプリムラの頭を撫でる。
「うん、タマモは友達だから//////」
ピクッ
横島に頭を撫でられて紅くなるプリムラを見て男共の表情が険しくなる。
「あれ、ひょっとして楓だけじゃなくプリムラちゃんまで落としたの?」
ギラリッ
男共の眼が紅く光る。
「横島忠夫ーー!!人誅の時間だーー!!」
「何じゃ、お前らはーーっ」
「問答無用ーー!大人しく地獄に召されろーー!!」
「冗談じゃないわーーい!」
タタタタタタタタッ
横島はすぐにその場から逃げ出す。
「逃げたぞ、追えーー!!他のクラスからも援軍を出すんだ!!」
「応ともよ!!」
ドドドドドドドドドドドドドドッ
そうして男共は横島の追撃戦へと入って行く。
「…何なのアレは?」
「アレは楓とプリムラちゃんの親衛隊で『きっときっと楓ちゃん』KKKと『プリムラちゃんプリティープリティー』PPPよ」
「バカみたい」
「そのうちタマモちゃんにも出来るかも」
「全っ力で遠慮したいわ!!」
「それにしても横島さまは大丈夫でしょうか?」
「あんな有象無象(ザコキャラ)がいくら集まってもヨコシマの敵じゃないわよ」
「忠夫くん、そんなに強いの?」
「まあ、見てなさい」
窓の外を見てみると校舎から出て来た忠夫が校舎の間の通路で親衛隊『KKK』と『PPP』に挟み撃ちにされていた。
「はーーーーははははははっ!!これで最後だな横島忠夫!さあ、皆の者止めだーー!!」
「おおおおおおおおおーー!!」
襲いかかって来た親衛隊を横目に見ながら忠夫はほくそ笑んで指を鳴らした。
パチンッ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
KKK→【穴】(゚∀゚)【穴】←PPP
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「平安京エイリアンの術ーーー!」
突然足元に現れた穴に親衛隊達はなすすべなもなく落ちていく。
「い、隠居掘りだとーー!?」
「わはははははっ正義は勝つーーー!!」
忠夫は穴の中でもがいている親衛隊の頭を踏み台にして走り去った。
「あいつ、何時の間に穴なんか掘ってたんだ?」
「あはは…確かにすごいね」
(こんな事に文珠を使って、ばれたらどうするのよ。もっとうまい方法あっただろうに)
(タダくん、不用心です)
その後も休み時間のたびに忠夫は追いまわされたがのらりくらりとかわし続け残りの親衛隊、『SSS』『SSSⅡ』『RRR』は忠夫の動向を監視する為に待機していて、稟はおそらく入学以来初めてあろう平穏な休み時間に一人涙していた。
そして昼休み、亜沙とカレハも一緒に屋上で昼食を取りながら話をする事になった。
「ゴーストスイーパー?」
「そうよ、ヨコシマはGSなのよ」
「でもそんな職業聞いたこともありませんわ」
「ああ、俺とタマモは平行世界を移動して来たんです」
「へえ~、それじゃあ忠夫ちゃんとタマモちゃんはこことは違う別の人界から来たの?」
「はい。もっとも俺は元々この世界に住んでたんですけどある事情で向こうの世界に飛ばされてそれからタマモと一緒にこっちに帰って来たわけです」
「どうやって?」
「それは、その~、何と言うか……」
「ああ、言いにくい事なら無理に言わなくてもいいのよ」
「すんません」
「それで向こうはどんな世界なんだい?やっぱり神族や魔族もいるのかい」
「まあな。ただ向こうでは神族と魔族は明確に聖と邪に分かれていて対立してるんだ。もっとも今はハルマゲドンを回避するためのデタントが進んでいて表立った対立は少なくなっているがな」
そこまで言うとシアとネリネは辛そうな顔をした。
「向こうの神族と魔族は敵対してるんだよね」
「残念です」
「だ、大丈夫大丈夫。全員が対立してるわけじゃないから。実際に俺の友達には神族も魔族もいるし」
「敵対勢力同士なのにお互いの友達がいるのか?」
「ヨコシマは基本的に種族に垣根を作らないのよ。完全な敵じゃない限りは魔族だろうが妖怪だろうが差別することなく同じ目線で接してくれるのよ」
「接して|くれる(・・・)?」
「あ、そうか。麻弓達には言ってなかったけど私は妖怪なのよ、それも最強の妖狐として名高い金毛白面九尾の妖狐よ」
「えーーっ!?あ、あの九尾の狐なのタマモちゃんは?」
その事に驚く亜沙達だが横島は慌てずに説明をする。
「九尾の狐が邪悪だっていうのはただのでっち上げなんだよ。本当は身を守るために時の権力者に身を寄せて居たんだ。それを陰陽師達が妖怪だというだけで邪悪と決めつけただけなんだ」
「そうなんだ、じゃあ何の問題もないね。これからもよろしくね、タマモちゃん」
「私もよろしくお願いしますねタマモさん」
「俺様は美女と美少女の味方だからね、俺様もよろしく」
「私も友達だからね、よろしくなのですよ」
「良かったな、タマモ」
そう言って忠夫はタマモの頭を優しく撫でた。
「うん…ありがとう……」
ドドドドドドドドドドッ
其処にやって来たのは『KKK』と『PPP』。増援を募ったのか、更に人数が増えていた。
「やはり此処にいたな横島忠夫!今度こそ覚悟してもらうぞ!」
「ええ~い、しつこい奴らめ」
タタタタタタタタタタッ
「逃がすなーー!!」
ドドドドドドドドドドッ
「懲りない奴らね」
「平和だな~~」
稟はコップのお茶を飲みながら青空を見上げながらそっと呟く。
「土見くん、オヤジ臭~い」
「あはは……」
「無理ないっスね~」
「そういえばシアとネリネは稟の婚約者候補って本当なの?」
「はい、本当ですよ」
「えへへ、照れるっス//////」
(私もいつかは)
と、桜は呟き。
「世の中間違っている」
と樹は不貞腐れていた。
「ひがまないひがまない」
「そうか、良かった。とりあえず恋敵にはならないのね」
「忠夫ちゃんはモテてたの?」
タマモは溜息を付きながら遠い眼をして言った。
「ヨコシマに想いを寄せているのは人・神・魔・妖、種族に関係なく沢山いたわ。ただ、ヨコシマはナンパやセクハラを繰り返す割には自分に純粋に向けられる好意にはとことん鈍感なのよ」
「へ~忠夫がね。何だかその娘達が可哀想だな」
稟はそう言うのだが……
《お前が言うのか!!》
タマモを除いた皆の心が一つになった瞬間であった。
「横島くんに恋人は居なかったの?」
(!!)
「さ、さあ。居るには居たらしいんだけど皆そのへんは詳しく教えてくれなかったのよ(悪いけど今はあなた達に教える事は出来ないわ)」
(タダくんには……あの女性(ひと)が…たぶん今も心の中に…)
「な、何か変な事聞いちゃったかな?」
麻弓がそう言った瞬間、校舎の外から横島の声が響き渡った。
『平安京エイリアンの術ーー!!』
『あ、秋葉掘りだとーーっ!?』
『・・・・・・・・・・』
そして放課後、せっかくだから皆で帰ろうという事になり横島達は亜沙達の部活が終わるのを屋上で待っていた。
「お待たせーー」
「お疲れ様です」
「う~~ん、いい風」
外を眺めると空は夕焼けに染まっていた。
そんな夕焼けを女性陣は手すりに掴まりながら眺めている。
「うわ~~、すごい夕焼け」
「何で夕焼けってこんなに綺麗なのかな?」
「……昼と夜の間の一瞬の隙間、短い間しか見れないから余計に綺麗…なんだってさ…」
シアのそんな疑問に横島の口からは“あの言葉”が零れていた。
「ひゃ~~、忠夫ちゃんてばロマンチストなんだかr……忠夫ちゃん?」
「どうしたの、忠夫くん?」
「え、何が?」
「忠夫、泣いてる」
プリムラにそう言われ、横島は自分が涙を流している事に気付いた。
「あれ、ははは…いや、何でも……何でもないんだ…」
「また紅葉さんの事思い出したのか?」
「いや、違うんだ…ただ、ううう」
「ヨコシマ?」
(タダくん、やっぱり傷は癒えてないんですね。そこまでルシオラさんの事が……)
亜沙は涙を堪えている横島の肩を優しく抱いてそっと言った。
「ねえ、忠夫ちゃん。泣きたいんだったら思い切り泣いちゃいなよ。大丈夫、此処に居る子たちは笑ったりしないから、安心して泣いていいんだよ」
「うう、お、俺は…うわああ……うわあああああーー!!」
堪え切れなくなったのか、横島は優しく抱いてくれる亜沙の膝に顔を埋め、声を上げて泣き出した。
(ルシオラ、この世界の夕日も優しくて綺麗だ。俺はもう一度お前と夕日が見たい……もう一度、お前と見たかった。でもそれはもう…叶わない……)
横島は恋人を想って泣いた。今生ではもう会えない、会う事が叶わなくなった……蛍の少女を想って……
続く…
《次回予告》
ちゃらっちゃー←あの予告のノリ。
「横島の前に立ちはだかる漢達。
彼らは闘う、己が信念の為に。
たとえ報われぬ想いだとしても誓いを共にした仲間達が居る限り。
次回「さらぶぁTTT。おとくぉたちのぬぁみだはいちどぅおだくぇえ!」
(CV・千葉繁)
親衛隊の掟は俺達が守る」
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後編、完成です。
楽しんでくれると嬉しいな。
書き換えと修正をしました。
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