No.1055049

艦隊 真・恋姫無双 154話目 《北郷 回想編 その19》

いたさん

今回、ウォースパイトがやや壊れ気味ですが、あくまで小説内でのお話ですので。

2021-02-22 10:26:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:624   閲覧ユーザー数:611

 

【 秘密 の件 】

 

〖 南方海域 連合艦隊側 にて 〗

 

 

日は完全に昇り、波も風も穏やか。

 

如何にも出発に相応しい天気だが、ウォースパイトと一刀達一行は、予定していた出発時刻になっても全員揃っていた。

 

損害は想定以上に酷く、なるべく近い方がいいだろうとの判断したウォースパイトにより、第二艦隊を近くまで呼び寄せ、補給等が直ぐにできるよう手配を頼んだからだ。 

 

その間、双方の代表であるウォースパイトと一刀は会合し、互いの労をねぎらう事となった。 

 

 

『────北郷提督……貴官の働きは大変素晴らしいものでした。 この活躍は必ず奉上させて頂きますので。 You're gonna love it(楽しみに待って下さい)』

 

『いや………本来というか、大部分は……消えた彼女達の知謀と戦力であって、私の活躍では……』

 

『謙遜は無用です。 Between you and me(ここだけの話)……彼女達の活躍は秘密にした方がいいのでは? 上に報告で上げれば、Terrible event(大変な事)になりますよ』

 

 

唐突に声を潜めたウォースパイトからの言葉には、思わず息を呑まざる得ない。 一刀が危惧し、どう対応しようと考えていた問題を、向こうから話題として出してきたのだ。

 

本当は早めに対応するつもりで、それなりの手札も用意していたのだが、先の戦での疲労や華琳達の行方知れずという衝撃的な内容で、口止めを伝えられなかった。

 

 

『─────そ、それは!!』

 

『安心して下さって結構ですよ。 今回の件……私達は秘密にするつもりです。 私の持つRegalia(レガリア)に誓い、そして皆にも誓わせましょう。 何人にも秘密を口にしないと』

 

『し、しかし………』

 

『それに私達としても、中将が行った作戦、深海棲艦化した事実があります。 その件を対価とし、互いの秘密として約束して欲しいのですよ。 恩人に対し失礼な話ですけど……』

 

『……………………』

 

『情けない話ですが、元帥は中将に甘いため………隠蔽工作を行う意向です。 私達は反対しましたが………結局。 だからこそ、せめて私だけでも……貴方とは誠実にありたい!』

 

 

そう言って目を閉じて姿勢を正し、頭上の王冠、手に持った王笏と宝珠を見せつけた。 その威厳ある姿に一刀は、知らず知らずのうちに深く頭を下げる。 

 

そんな一刀の仰々しい態度に、ウォースパイトはユックリと姿勢を直すと、楽にして欲しいと要望。 慌てて元の姿勢に戻し、ウォースパイトの約束を信じることを表明した。

 

 

『Thank you from the bottom of my heart(心から感謝します)北郷提督。 私達は援軍として赴いたのに役に立てず、しかも借りまで作ってしまいました』

 

『いや、此方としても助かります。 ですが、中将の件と彼女達の件は互いの秘密として、私に借りなど───』

 

 

一刀の言葉を聞いてウォースパイトは真顔になり、その言葉が真実だと理解すると、大きく溜め息を吐(つ)いた。

 

 

『北郷提督……貴方は御自分の価値を知らな過ぎます。 気を付けないと、将来的にPull the rug from under you(足をすくわれる)こととなり兼ねませんよ?』

 

『それは………?』

 

『彼女達───Spirit(精霊)の存在です』 

 

 

Spiritの言葉を聞き及び、一瞬にして一刀の顔は驚愕に彩られるのであった。

 

 

 

◆◇◆

 

【 回顧 の件 】

 

〖 南方海域 ウォースパイト視点 にて 〗

 

 

世の常識で問うと、深海棲艦に関する知識は───

 

曰く、深海より現れし人類の敵となる、未知なる生命体。

 

曰く、相対し生まれた出た艦娘と敵対する存在。

 

曰く、深海棲艦に通じる攻撃は、艦娘達の力より他は無し。

 

 

──に集約されると聞いています。

 

 

実際、海軍大本営で聞いた話だと、深海棲艦に現代兵器の類、例えばミサイル等の攻撃を仕掛けたが、駆逐艦レベルの相手さえも無傷だったという報告が上がっていると言うし。

 

そのため、深海棲艦を攻撃し撃退できるのは、神から選ばれ断罪できる権利を有す私達だけだと、私は……これまで信じていました。

 

だけど、非公式とはいえ、世界の各地から私たち艦娘以外で、深海棲艦を撃破したと報告されていたのも事実。

 

この広大な世界で何時か……特別な力を持った存在に遭遇することを……密かに心待ちしていました。

 

 

 

そして、ある時───

 

 

『( ───おい、Lady! 見てみろ! この国には何とも凄い者達が居るようだ! 余と共に向かってみないか!?)』

 

『(はあ………まずは、ノックをしてから入ってと、何回も言わせないで欲しいのだけど………)』

 

『(そんな些細なことは忘れろ! それより、余とどうだ? かの地なら、Ladyを満足させられる自信があるのだ!)』

 

『(………………その前に、貴女が力強く握って変形している書籍を読ませてもらってもいい? 多分、それが今回の騒ぎに関わる情報源だと推測するのだけど)』

 

 

いつも達観した様子を見せつける彼女が、一冊の本を持って私の部屋に突入し、興奮した様子で見せ付け、私を何処かに向かわせようと誘ってきます。

 

丁度、Tea timeしていた私は、飲み掛けのカップを下ろし、日頃から言っている小言を言った後、ネルソンの持参した書籍を受け取り、丁寧に中身を拝見させて貰いました。

 

 

それは───極東の島国で発行された教本。 

 

 

普段、思想書や政治経済等の書籍を読む為、この様に図解が多数を占める書籍など初めて。 読書を趣味にしている私としては、少し心が踊ってしまいますね。

 

実際に手に取り中身を確認すると……格闘技の教本でなのでしょうか? 対戦する二人が互いに攻守を交代させながら、技の解説をしています。

 

大きな図と説明が付属されているので、内容は直ぐに分かりました。 だけど、興味深いことに心理戦も考慮しているのか、対戦相手との掛け合いまで詳細に書かれていますね。

 

思いの外、書籍の内容に没頭する私に『この島国の神秘的で独自技術には興味深い物があるから、Ladyなら当然の反応だろう』と言われてしまいましたけど。

 

特に此処には、世界より注目されている……『かの者達』が居る国だと記載されています。 もし、参考になれば、私達の戦力増強が期待できるかも。

 

だが、一読しても余りに非現実過ぎな内容。 空想の産物だというのは一目で分かりました。 これは、戸惑いつつも否定の言葉を掛けるしかありません。

 

 

『( ……………信じられないわ。 艦娘でも無い人間が、こんな真似が出来るなんて………)』

 

『(ふっ………現実的なLadyなら、そういうと思った。 だが、考えて見るがいい。 あの国は、故国と大国を敵に回しながら、最後まで孤軍奮闘したSamuraiの国だぞ?)』

 

『(────確かに、故国と変わらない領土で、あんな驚異の粘りを見せたのは……この技術と……かの者達が?)』

 

『(さて、な。 だが……Seeing is believing《百聞は一見にしかず》っていうだろう。 もし、これが真実なら、貴重な力を得る機会を失うかもしれんぞ?)』

 

『(…………………)』

 

『(それに、各国の艦娘達が………この島国へ渡航しているのも事実。 だから、余は遅れを取る前に向かうべきだと、進言しているのだ。 あの国へ!!)』

 

 

私は熟考の末、この地に赴任する事を決めました。 

 

広い世界を見聞するのも、愛する故国と私自身の為になり、そして、可能ならば……かの者達と接触し、深海棲艦を倒せる……新たな力を得たいと。

 

駄目なら力を貸して貰うだけでも、もしくはヒントになる行動だけでも見せて貰いたい。 許可を得るのは難しいと思うけど、私は何回でも頭を下げて嘆願するつもりですから。

 

多分、慣れぬことをするからには、かなりの苦労があるのは十分覚悟しています。 

 

だけど、それは………望むところ!

 

私の大事な仲間達に被害が少なくなるのでしたら──このくらいの苦労など感じることも厭いません。

 

前の大戦のように仲間達を……救いの手を差し伸べる間近で………轟沈する姿なんて……もう見たくないのだから!

 

 

 

 

 

かの者達────

 

 

《 Japanese comics 》と記載されし教本に描かれた、この極東に伝わる、特殊なる呼吸を使い敵を倒す強者たち。

 

Ripple user(波紋使い)、Demon Slayer(鬼狩り)という名の方達から……教えを請いたいと。

 

 

 

 

 

────まさか……Before a month had passed(一月も経たないのに)……こんな早く遭遇するなんて、夢にも思いませんでした。

 

 

祖国から遠く離れた島国……この日本の海軍へ赴任し、初の任務である救援要請を命じられ、意気揚々と出撃した私を待っていたのは、正に東洋の神秘と言って相応しい光景でした。

 

 

そこに広がるは、壮絶なる奇想天外な戦場。

 

 

───海上を鬼気迫る勢いで突撃する軍勢。 

 

Arms(武装)は異国情緒溢れるArmor(鎧兜)、手に持つは剣や槍、それとPole axe(ポール・アックス)と似た形状の物。

 

他に注視しても、代わり映えしない普通の人にしか見えない。 海面の上を走っているけど。

 

でも、海面上を走り抜けるのは確かに異常だけど、それなら私達艦娘と変わらないわ。 Armsも遥か昔の時代錯誤的な物で、敵対する相手に通じるとは思えません。

 

 

───そして迎え撃つ相手と言うのは、私達の敵でもある駆逐イ級。 しかも、数十隻の艦隊編成という絶望的な展開。

 

あの禍々しい形態、声とも鳴き声とも分からない雑音を響かせ、自分達の巨大な体躯を利用して、彼らを一網打尽にしようと怒濤の如くHigh speed(高速)で迫っているのです。

 

 

私の頭に浮かぶのは、この僅か先に見る未来は、一方的な虐殺によりの結果の末、軍勢の敗北。

 

勿論、本来ならば私が手助けに入るのが筋なのですが、不運なことに任務中、しかも今は私………だけ。

 

援軍として赴いた先、途中ではぐれ……んんッ! 旗艦の私が先行し過ぎ、皆を置いてきぼりにした為です。 仕方がなかったとはいえ申し訳ない事をしました。

 

そもそも援軍を要請した北郷提督が率いる艦隊に、急ぎ間に合わせるのが私の任務。 Noblesse Oblige(高貴なる者の義務)として、間に合わせるのは当然の行いだったからです。

 

 

だ、誰ですか!? 

 

私のドジっ子属性だからだなんて仰る方はッ!?

 

 

は、初めて旗艦になったから、少し浮わついてしまったとか! 元ドジっ子だからってわけでは……ありません!!  

 

決して、絶対…………多分。

 

だけど、まさか………このような場面を目撃する、歴史の証人になろうとは、全く予想もしていませんでした。

 

 

 

◆◇◆

 

【 迷走 の件 】

 

〖 南方海域 ウォースパイト視点 にて 〗

 

 

『北郷提督……貴方は御自分の価値を知らな過ぎます。 気を付けないと、将来的にPull the rug from under you(足をすくわれる)こととなり兼ねませんよ?』

 

『それは………?』

 

 

私の言葉に反応し、北郷提督の顔が近付きます。 た、確かに興味がある話は理解していますけど、余りにも無造作に距離を詰めるので、心臓に悪いですよ。

 

……………強引な方も悪くはありませんけど。

 

 

『彼女達───Spirit(精霊)の存在です』 

 

 

あんまり見つめられると、赤面がバレてしまいますので、早々と答えを出しました。 

 

ほんの少し……残念だと思ったのは内緒ですね。

 

そんなモヤモヤを急いで霧散させ、北郷提督が尋ねてくる言葉に対し、どう返事をするか言葉を整理します。 断言をすれば、必ず理由を欲するのは必然なんですから。 

 

そう考えると、あの時に見た光景が頭の中で再生され、再度確認しますが、やはり可笑しいです。

 

あの戦いは……結局、軍勢の圧倒的な活躍で、駆逐イ級を瞬く間に轟沈させていきました。 将と思われる女性も優秀な活躍をされ、ついでに海路も教えてもらい助かりましたけど。 

でも、どうみても普通の剣で斬り、普通の槍で突き、駆逐イ級を抵抗する術も無く撃滅。 通常、あれだけの敵艦規模になれば、私達の艦隊でも損傷は免れないのに。

 

もしかして、これが……Culture shockって言うのかしら?

 

 

そんな体験を元に私は考えます。 

 

幸いにして、私の母国は有名な名探偵達を輩出した国。 これくらいの謎、推理すれば容易く解るのです。

 

それで、まず常識的に考えるのが……基本に立ち返る。 この考察が最初の一歩です。 そして、この考察に浮かぶのは、人間が海上を立てない、艦娘に男は居ない事。 

 

もし、そのような事態が確認できるのならば、私やネルソン、他の艦娘の皆さんが御存知の筈ですから、まず間違いなく、そんな常識はあり得ないと分かります。

 

では、ネルソンが言っていたStandと言う者なのでしょうか? Ripple userの中に居るって聞いていたけど。

 

実は……これについては、ネタは既に割れているのですよ。

 

此方へ来て分かりましたが、ネルソンからの見せて貰った資料は、殆んど虚構だったことが判明。 まさか、娯楽本からの情報だったなんて、思いもしませんでした。

 

他の艦娘達から笑われたのはBark past(黒歴史)……I want to enter if there is embarrassing hole!(穴があったら入りたい!)……です。

 

えっ? Demon Slayer……の影響、ですって!? 

 

わ、私は……その…………い、今は関係ありません! 

 

 

で、では……グラーフが言っていたWalküre(ワルキューレ)……私の国で言うValkyrie(ヴァルキリー)か? 

 

 

これも、私的には答えは──NOです。

 

一般的には、Valkyrieは女性しか居ないとか、現れる時は騎乗してくるとか、書籍に記載されていますから、そこを根拠に言えば、聞く人は納得されるでしょうね。

 

ですが、実際に見た人など幾人も居ないでしょうから、真実は分かりません。

 

ですが、Valkyrieの意味は《戦死者を選ぶ者》の意なのに、目撃者の話に由れば、北郷提督を助ける為に出現したと。

 

これでは幾ら選ぶ者としても、片方の勢力に力添えするなど、Valkyrieの名に反する行為になると思うのよ。 何故なら選ぶのは《戦死者の中で勇猛な者を選ぶ》のだから。 

 

それに、私自身が実際に接して違和感に思ったのは…………書籍に記載してあるValkyrieにしては、余りにも人間らしい仕草が見られるから。

 

唐突に現れ、私を見るなり作法の教授を願った、あの素直な教え子。 そんな教え子の友人らしい北郷提督と共に現れた少女が述べた紅茶の感想、そして恥じらう表情。

 

二人を観察した私自身が違和感を感じるのです。 私と同じ気高さを纏い、Noblesse Obligeを知る高貴なる者だと。

 

 

では────正体は何か?

 

 

私のLittle grey cells( 灰色の脳細胞 )が、静かに囁きます。 

 

 

《これではっきりした。 考えていたことがあったのだが──勘違いだったことがはっきりした》

 

 

北郷提督から話を伺った際、今回の作戦は付き添っていた少女から提示された物であり、今の軍勢も少女の配下、そして仲間の皆様だと紹介されたそうです。 

 

 

纏めると、海面上を走り抜け、駆逐イ級を難なく撃破し、尚且つ戦術、貴族的作法も詳しい。 そして、それなりの責務を背負い、行動を行っている。

 

そして、仲間と配下が、あの少女には居る。

 

 

これらを踏まえると、ネルソンが考えていた人間でもなく、

グラーフが考えていた神の遣いでもない。 

 

該当する者と考えると、私の頭に浮かぶのは………ただ一つ。

 

あの雄大で、勇ましくも悲しい有名な物語。 

 

その物語で主要な役割を果たした重要な方々。

 

 

────《アーサー王物語》に現れる《湖の乙女》達。

 

 

彼女達が精霊であるのなら、海面上での動き、性別の違いも説明できます。 精霊ですので生身は無いですし、男女の精霊もあります。 いざとなれば変身も可能だとか。

 

それに、攻撃する武器も普通の物に見えましたが、実はExcalibur(エクスカリバー)級の威力を内包していたのなら、凄く納得できますもの!

 

私にお茶の作法を教えてくれる様に懇願されたのは、湖の乙女は湖上の城に住んでいるとのこと。 現世に現れる機会が少ないので、新しき作法を学ぶためだったのでしょう。

 

そう言えば、髪型もそっくりのご様子。 もしかして、姉妹だったかもしれませんね。 あのご様子なら《妹様》に自慢出来て、さぞ嬉しかったと思います。

 

あと、湖の乙女は……かの大魔術師アンブローズ・マーリンの弟子とか。 偉大なアーサー王に助言し導いた方の弟子であれば、的確な戦術指南も納得できますね。

 

事実、そのお陰で任務を果たすことが出来たのですから、一度正式に謝罪と御礼を申し上げなければ。 

 

これが、私の導き出した答えです。

 

 

ですが、その名を直接出してしまえば、かの英雄王の名に傷が付く恐れがあります。 これほど湖の乙女から積極的に助けられた者が居ると知られれば、反感を持つ者が必ず。

 

だから、私は少し暈して言ったのですが、当の湖の乙女は………この配慮をどう取られるか、心配です。

 

 

◆◇◆

 

【 急転の件 】

 

〖 南方海域 ウォースパイト視点 にて 〗

 

 

『彼女達───Spirit(精霊)の存在です』 

 

『………………………』

 

 

この言葉を掛けてから、北郷提督は何も言えないまま、黙りをしています。 もしや、私が秘密にしていた部分を解き明かしたことに、驚き過ぎて声を上げられないかも。

 

そう言って冷静に接しているよう見えますが、実際は私自身も内心では物凄く興奮しているんです。 

 

Fairy(妖精)、Spiritというのは、童話やおとぎ話で憧れる、女の子にとって非常に興味ある素晴らしき存在ですから当然。 

しかも、アーサー王物語に出てくる湖の乙女なら尚更。

 

 

 

だから───

 

 

だってだって、実際に見るなんて普通は出来ないのよッ!? そもそもSpiritは自然豊かな静寂な場所を好み、間違っても喧騒な戦場に出現する筈が無いのに!!

 

しかも、円卓の騎士であるランスロット様、大魔術師であるマーリン様に関係深い、あの湖の乙女って!?

 

それなのに、それなのにぃ!! 

これは、どういう訳なのぉ!?

誰かッ!教えてぇぇぇぇ!!!

 

 

……………………ふう。 

 

 

取り敢えず、気が紛れましたね。 

 

旗艦を命じられた私が自分の趣味に興じては駄目。 冷静沈着に落ち着いた対応をしなければ。

 

そうそう、北郷提督の返答をお聞きしないと…………

 

 

『────そうだった! 今まで普通に接していたから、つい特殊な存在だった事を忘れていたッ!!』

 

『Wow, I can't believe you just said that!( 呆れた、貴方がそんなこと言うなんて! ) Are you thinking about something else!?( 何を考えてるのよ!? )』

 

『いや、あんまり違和感が無さすぎて……あ、あれ? 俺は華琳って少女と初対面だったのに、何で………ん?』

 

 

─────Oh my!!?

 

あんまりなSpiritへの塩対応に、思わず口が開いて怒鳴ってしまったヨ!? あっ、金剛の口調が……って、違う!!

 

いやだって、あんな可愛いSpiritが親しげに接しているのに、普通の接し方って、最低でも跪いて拝みなさいよッ!!

 

全く、近頃の提督は躾がなって───う、うぅん………それよりも……北郷提督の反応は……だ、大丈夫? 

 

母国語で怒鳴ったから理解するのは……はう! 普通に……返してきたぁぁぁ………しかも……内容も理解しているぽい。 

 

あは、あはははは………はぁ。 

 

で、でで、でも! 北郷提督だって何か他の事を考えているみたいだし、このまま畳み掛けて有耶無耶に───!!

 

 

『────中将と彼女達の件、どちらも隠蔽が必要なhighly confidential information (極秘機密)よ! だから、Regaliaに誓いを立て口外無用を約束したというのに!!』

 

『ご、ごめん!( あれ……なんか理路整然とした罵倒。 昔、何処かで頻繁に受けたような……… )』

 

 

………………あーあ、全く私ときたら……何やってるのよ。

 

あまりにも私の剣幕が激しかった為か、北郷提督が怯えて黙ってしまいました。 元はと言えば、私のせいなのに。 

 

そんな気まずい雰囲気を察してか、私達の様子を確認するように、ネルソンが近づいてきました。 

 

 

『────おう、Lady! 話は終わったか………っうお!? 何だ何だ!? 何があったのだ!? 余を涙目で睨むとは、普段のLadyは違う………一体どうしたのだ!!』

 

『………………………』

 

 

ネルソンは鷹揚な態度で私に聞いてくるけど……正直、私の未熟な行動が理由。 そんな話、いくら同郷の仲間にも恥ずかしくって答えたくないわ。

 

だから、俯いて黙視を決め込んだのが、運のつき。

 

それが……まさか、こんな事になるなんて。

 

 

『北郷よ! まさかLadyに、何か良からぬことをしたのかッ!?』

 

『ち、違う! 俺は何もしてない! 何かに誓ってもいい! 絶対やっていないッ!!』

 

『ほほう………犯罪者は自らを弁護するため、必ずそう言うんだ。 正直に言わねば、余が直々にNelson Touch(ネルソンタッチ)で答えさせてやろう。 んん………?』

 

『お、俺は無実だぁぁあああぁぁぁ!!』

 

 

北郷提督の慌てる様が見えて、私は可笑しいと笑いながら、高ぶるネルソンを止めに入りました。

 

とても平和な長閑な時間。 

 

まるで、戦場に居ると思えないほど、和やかな空間でした。

 

 

『─────て、敵艦隊、発見ッ!!』

 

 

周辺に配置していた見張り役の艦娘からの報告により、その時間は急に緊迫した状態に早変わりとなりました。

 

北郷提督との合流、三本木中将の捕縛、敵艦隊の撃退と重要な任務が終わり、皆が皆、油断して気を抜き、私達の防衛意識が薄くなったのを狙っていたのでしょう。 

 

そして、同時に……今まで私達を護衛してくれたSpirit達が消えるのを………待ち望んで。

 

言っておきますが、私達は決して警戒を解いていません。 

 

ですが………………周辺は絶対に安全だと、心中で油断していたのが大きな間違いでした。

 

 

『フフフフ……………今度コソ…… 絶望ヲ抱キナガラ……冷タキ水底ヘ…… 落チテイクガイイ!!』

 

 

皆が注目する方向に顔を向ければ、背筋が凍りつきそうな寒気を覚えます。

 

視線の先に見えるのは、敵艦が一隻。

 

ですが、その敵は………付近に存在すると報告を受けながら、最後まで姿を現さなかった姫級を誇る南方棲戦姫。

 

彼女は不敵な笑みを浮かぶたまま、上空に多数の艦戦を飛ばし、両手の艤装へ装着した主砲を此方に向けていたのです。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択