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鬼畜王文台 蘇りし虎は曹魏を食らう 17 第十二章二節

Degradationさん

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2009-11-05 05:51:19 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6641   閲覧ユーザー数:5129

孫堅の鬼畜作戦:

 

 

 

第十二章

 

 

 

-2-

 

 

 

鬼神孫文台とその忠臣たちによる、百鬼夜行が始まった。

 

蜀軍の軍勢が、草薙刀で海を真っ二つにされたかのごとく、左右へと広がっていく。

猛虎迅雷に乗る孫堅に向かって、必死の形相で立ち向かっていく者たちもいたが、

大半の者たちは、虎に食われるか斬られるかして、その鬼気迫る勢いに気圧されて逃げ出していった。

しかし、逃げ出す者も立ち向かっていく者たちも、すべからく鬼どもに討ち取られ、なぎ倒されていく。

そして、鬼の頭領が南海覇王を一振りするたびに、五十、百と屍の山が次々に出来上がっていく。

孫堅が鬼の神ならば、そばで戦っている関羽は、さしずめ鬼の王だろう。

そして、鬼たちに食われることが運命付けられている最初の獲物が、彼らの前に立ちふさがった。

漆黒の華の牙門旗、華雄の旗だ。

 

 

 

 

華雄「ここから先は通さん!! 我が名は華雄!!! 孫堅よ、我と正々堂々勝負しろ!!!!!」

 

霞「華雄っち!? おま、どうも最近見ぃへん思うたら… 自分、何で劉表軍なんかにおんねん!!?」

 

華雄「張遼か… ここで会ったが百年目、貴様とは一度本気で戦ってみたかったぞ!!

   そちらは関羽、そっちはこの函谷関で守将をしていた張合か…面白い!!!」

 

煌蓮「華雄…? あーーー、思い出した思い出した。

   あたしが生前のころに、街亭でドンパチやった相手か。

   なんだい、十年以上も前の話じゃないか。 小蓮がまだ生まれて間もないころの話だよ。

   よくまぁそんな昔のことなんざ覚えてるもんさね」

 

華雄「ぬうぅ、騒々しい!! 来ないのならこちらから行くぞ!! でりゃああああ!!!」

 

華雄が孫堅に向けて、巨大な斧を振り下ろす。

しかし、その振り下ろされた斧は、孫堅の体を捉えることは敵わなかった。

真桜によって新造された南海覇王。しかも二刀流。

加えて今の孫堅は、一度死から立ち直り、不死身も同然となった存在。

曹操を圧倒した江東の虎は、華雄ごときがどうこうできる相手ではなかった。

 

煌蓮「三下はすっこんでろ!! あたしゃ、劉表許貢黄祖の三匹しか眼中にないんじゃあぁぁ!!!」

 

華雄「ぐううぅっっ!!??」

 

煌蓮「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、オルアァァァァーーーーー!!!!!!」

 

まるで機銃掃射の如く、華雄の斧に南海覇王の連撃をガンガン叩き込んでいく。

その回数は、一秒当たり五合に達しただろうか。

南海覇王の猛攻をもろに受けた華雄の戦斧は、初撃から五秒もしないうちに

手入れの悪い農工具へと姿を変えてしまった。

 

華雄「なっ……!!!??」

 

煌蓮「あがりじゃあぁーー!!!」

 

そして孫堅は華雄が驚いている隙にすばやく懐に入り込むと、

鳩尾に膝を食らわせて気絶させてしまった。

 

華雄「がはぁ……!!」

 

煌蓮「おい悠!! コイツを簀巻きにして、孫呉(ウチ)の陣中にブチ込んでおけ!!

   坊主への捧げモンにしてくれるわ!!!」

 

悠「了解だ!!」

 

哀れ、華雄は酒も冷めぬ間のうちに孫堅によって捕らえられ、

有無を言う時間すらも与えられず孫呉の陣中に放り込まれてしまった。

 

華雄「何でこうなるのだーーーーーー!!??」

 

影が薄い者の哀歌が、戦場で空しくこだました。

 

煌蓮「次の獲物は誰じゃぁ!! どっからでもかかってこんかぁ!!!」

 

 

 

馬超「うわっマジかよ!? 牡丹の奴、あっさりやられやがったぞ!!」

 

魏延「おいおいおいおい!! どうなってんだあれは!!

   アタシらで相手するのはキツイんじゃないのか!?

   つーか、桔梗様はどこ行ったんだ、こんな大事なときに!!!」

 

呂布「……恋が行く」

 

陳宮「お、おやめくだされ恋殿ーー!! いくら恋殿でもあの孫堅は危険すぎますぞ!!!」

 

賈駆「駄目よ恋!!! 今あなたを失ったら蜀は終わりよ!!

   いくらあなたでも太刀打ちできる相手じゃないわ!!!! 戻ってきなさい!!!!」

 

呂布「大丈夫……負けない」

 

魏延「おい翠! アタシらも行くぞ!」

 

馬超「っしゃあ!! ついて来い、たんぽぽ!!」

 

馬岱「はいっお姉様!!」

 

 

 

一刀「………」

 

俺は言葉が出なかった。

文台様の猛攻を、初めて生で見てしまったからだ。

かつての曹魏との戦いのときは、俺は遠くにいたため、

その戦いがどう繰り広げられていたのかは正直よく分からなかった。

ただ、文台様が戻ってきたときには、あの華琳こと曹操が満身創痍の姿にされて

孫呉の陣営に引きずり出されてきたことは、鮮明な記憶として頭に残っている。

 

煌蓮「おんどりゃぁ!! やんのかゴルアァァ!!! ぶっ殺おぉす!!!!」

 

蜀軍兵士「ひ…ひいいいいぃぃぃぃ!!!」

 

文台様の雄たけびが、ここまで聞こえてくる。

そんな中、この小さな軍師たちは、文台様の気迫に当てられて怖気づいてしまっていた。

みんな揃って俺のズボンのすそを掴んで、ガタガタブルブルと震え上がっている。

まだ俺たちの出番ではないとはいえ、こうもビクつかれてしまっては、

兵たちの士気に影響が出かねない。

 

雛里「ふえぇ~~ん、怖いよぉ、朱里ちゃぁ~~ん」

 

亞莎「あうぅぅ……一刀様ぁ……」

 

朱里「はわ…はわはわはわわわわわ……雛里ちゃぁ~ん……」

 

一刀「よしよし…煌蓮さんは俺たちの味方だよ、怖くないからね」

 

この子達が怯えてしまうのも無理はない。

文台様の戦い方は、それはすさまじかった。

斬り飛ばした首を掴んで別の兵士に向かって投げつけ気絶させると、

その敵から奪い取った槍で一気に五人まとめて串刺しにしていく。

そして屍となったものを、騎乗している虎が餌にありつくように、バリバリと音を立てて食らい尽くしていく。

両方の手に首を掴み猛虎迅雷にまたがって咆哮する姿は、まさに触れてはならぬ鬼神のそれだった。

さらに俺たちは、文台様のその目を見てしまった。

青白くギラついた、文字通り人間のそれではない、鬼の双眸を。

なるほど、雪蓮はうまいことを言う。 だから鬼と畜生、すなわち『鬼畜』なのか。

 

真桜「バ…バケモンやあれは。 あの目を見たら祟られるでぇ」

 

沙和「うううぅぅぅ、沙和、怖いのぉ~~……」

 

凪「…私などでは、とてもあのような戦い方は出来ないな」

 

…そうか、だからいつも調練の時は、俺が同行をお願いしても断られ続けていたのか。

この姿を、俺に見せたくなかったから?

そういえば、ずっと前に、雪蓮とも似たようなことが…。

ということは、蓮華やシャオ、それにいつか生まれてくるであろう俺の子も、

成長すればいずれああなるのか?

これが孫家の血筋…?

 

 

 

祭「ぬ……? あれは… おい冥琳! あやつ、もしや虎牢関で見かけた呂布ではないか?

  堅殿のところにまっすぐ突っ込んできておるぞ!!」

 

冥琳「なんですと!? ……本当だ、まずいぞ!!

   しかしああなってしまわれては、最早文台様は北郷の言しかお聞きにならぬ…

   如何にしてお止めするか…?」

 

祭「いや、お止めするまでもなかろう。 例えあの呂布であろうとも、我らが堅殿の敵ではなかろうよ。

  まぁ見ておるがよい」

 

 

 

武烈皇帝孫文台と、飛将軍呂奉先。

これほどの英傑が函谷関で刃を交えるのは、かの劉邦と項羽の戦いのとき以来であろう。

両雄が騎乗するは、方や虎、方や駿馬。

両雄が携える武器は、方や戟、方や二本の大刀。

孫堅と呂布は、互いに距離をとってにらみ合っていた。

 

呂布「………劉表様の所へは、行かせない……邪魔する奴は、通さない」

 

煌蓮「そりゃこっちの言い分さね。 あたしらぁあの糞野郎に一発ブチかまさんと気が済まんのよさ。

   どうしてもどかないってんなら、力ずくの勝負になるけど、それでもいいんかい?」

 

呂布「……望むところ」

 

煌蓮「ほぉ…良いだろう。 万夫不当の飛将軍とやらの力、とくと見せてもらおうじゃないか。

   まずお前さんをとっ捕まえて、許貢と黄祖のゲス共もブッタ斬る。

   袁紹と袁術のクズは、まとめて胡狼(ころう = ハイエナ)の餌にでもしてくれようさね。

   我は呉の皇帝、孫文台。 呂奉先よ、いざ、尋常に、勝負じゃああぁぁ!!!!」

 

呂布は答えない。無言で長大な戟を握りなおす。

そして、馬腹を蹴って、虎を嗾(けしか)けて、孫堅と呂布は相手に全力で斬りかかった。

 

 

 

 

煌蓮「………!!!」

 

呂布「………!!!」

 

 

同時だった。激突した刃は、幾千幾万の火花を散らし、幾里にもわたって轟音を響き渡らせた。

続いて呂布は間髪いれず、孫堅にすさまじい勢いで戟を振り下ろしていくが、

対する孫堅は南海覇王を交差させて、全て真正面からそれを受けきっていた。

両者の力比べが始まった。

渾身の力を込めて戟をギリギリと二本の大剣に押し込んでいく呂布。

対する孫堅も、南海覇王を頭の上で交差させて、呂布の轟撃を押し戻そうとしていく。

馬に跨る呂布に対し、虎に騎乗している孫堅の場合、虎は軍馬より体高が低く、

ロバと同じくらいの高さしかないので、必然的に頭上で受け止める形になってしまう。

この力比べを不利と見て取った孫堅は、交差させている南海覇王を横へずらし、

方天画戟を打ち払って間合いを取った。

馬と虎が戦意を込めていななき、吼え立てる。

ひときわ強い風が吹いた。 それを合図に両者も再び馬と虎を嗾け、

激しく互いの武器をぶつけ合った。

呂布が孫堅の喉笛を狙って、戟を振りかざす。

それを孫堅は、今度は刃を正面から受けず右に受け流させ、

呂布が戟を振り切り刃を戻す隙を狙って、激烈な突きを撃ち込んでいく。、

呂布はそれを体をひねって受け流し、今度は孫堅の空いた体に戟を叩き込もうとする。

それを孫堅は、またも刃を交差させて正面から受け止める。

馬と虎が、高々と前足を掲げていななく。

その鞍上で、両者は激しく南海覇王と方天画戟をぶつけ合った。

馬と虎もまた激しい戦意を示し、互いの体にぶつかり込んでいく。

両雄の目に宿る光は、灼熱の炎よりすさまじい。

 

 

 

煌蓮「コイツぁあたしの取っておきじゃぁ!! 冥界仕込みの技を食らえやあぁぁ、

   『鬼神煉獄閃』!!!! ぬがあああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

鬼神孫堅はそう高らかに技を宣言すると、魔王や邪神でさえ尻尾を巻いて逃げ出すほどの勢いで、

あらん限りの気合と力を込めて南海覇王を戟に叩きつけていった。

 

呂布「……!!??」

 

孫堅の一撃をもろに食らった呂布は、その勢いに耐え切れず、ついに落馬してしまった。

そこに、間髪いれずに南海覇王の刃が、呂布の首元に当てられる。

 

 

呂布「おまえ…強い。 恋……負けた」

 

煌蓮「ほう。 素直な子は、嫌いじゃないよ」

 

陳宮「恋殿ーーーー!!!!」

 

呂布「…ちんきゅ…恋…負けた。 今日からこの人が、恋の新しい、ご主人様」

 

陳宮「恋殿おおぉぉ、恋殿が呉に行くなら、ねねも一緒にお供いたしますぞーー!!」

 

呂布「…ありがと……ねね」

 

 

 

煌蓮「飛将軍呂奉先、この武烈皇帝孫文台が捕らえたりいいいいいぃぃぃぃーーー!!!!

   うるああああああぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」

 

呉軍兵士「オオオオオオオォォォォォォーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

第十二章二節終了


 
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