No.1051058

空飛ぶ戦車ドクトリン  第二話 吾輩はトロイ・リューグナーである

三日月亭さん

第二話なんですが、前小説書いてた時に、友人に見せたら、今回出てくるヒロインを異世界転生した片割れなのかと尋ねられたので、プロローグという形で街燃やしてる人を一人描いてこいつだよ言う形にしました。
これは異世界転生物の小説なんです、ヒロインはヒロインなんです。

最後に今回から登場人物がスケッチしてますって体でイラストを添えていこうと思います。

2021-01-08 22:47:20 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:505   閲覧ユーザー数:505

かつてのヴィージマの皇帝曰く。

 

「世界を制覇するということは、その地を誰の血で染めることかだ」

 

と謳っていた、その皇帝は領土拡張の為に敵の血で新領土を染めていく。

翻って自国の安定を保つためには民の血をで国土を染めていく。

 

ヴィージマは緯度が高い土地にある為、寒く雪が万年積もっているところもあるので、古語にて"ベラヤスプラヤ"という名で呼ばれていたことがあった意味は白い国、白い国土と言うべきかその雪にちなんで呼ばれていたが、雪の下は赤く黒いものであった。

 

その皇帝も弑逆されこの世のものではない。

 

だがその意志はその国土が受け継いだが如く、今も同じように侵略戦争を続けている。

 

 

 

 

今も見上げるあの空から落ちて、数か月が経った。

今はアパートの一室にある机の前に座りここに来てからの事を日記にまとめようと思う。

先ずはそう…落ちた場所が戦場ともあってここに来てすぐに死にかけた所からだな。

 

改めて俺の名前を確認する、名前は『トロイ・リューグナー』落ちる寸前までに自分の粗方を忘れてしまっているはずなのにこうも他人の名前にはしっくりとくるものがない。

素性に関しても何も知らない男なので、戦場に居た事を利用し記憶喪失を装っている最中だ。

 

現場だが俺は戦場でどうも死んですぐの男の体で目を覚まし、その直後の記憶が飛び飛びになっているが次に目を覚ました軍病院では上官らしき人や記者に囲まれていて、時分がちょっとした英雄に祭り上げられていたのを知る、何よりその時に正直に記憶がない事を吐露し公式にも記憶喪失で通してもらっている。

そのように取り払ってもらえたのは、このトロイ・リューグナーという男の出自に問題があったのだろうか、軍部の人間もそうなんですと言わんばかりに俺の事を勝手に考えた筋書きで彩っていった。

 

トロイ本人であれば不服に思うところはあるだろうが、中身があかの他人の俺からしたらその場で政府公認の俺の設定を聞けるのだから助かるというものだ。

 

ちょっとした英雄…何故そうなったのかは飛び飛びの記憶だがそれはすぐに明かになった、俺の寝ている病室に俺に助けられたといった兵士が礼をしに来たのだ。

 

その人数は多く中には涙を流しているものまでいたりする。

 

そこからは確かに俺がインしたトロイなんだが記憶が飛んでいたりするのでそこだけは申し訳ない気持ちになったものでる。

 

まぁ兎も角だ、俺は戦場で目を覚まし、軍病院で養成後8階級特進という異例の進級を成し遂げた後、退院し今はここフェルキアの辺境にあるブリニストに住んでいる。

 

いきなり戦場だったが今は後方に回されている、理由は二つある。

 

一つは片足がちぎれ飛んでなくなっているという点。

まぁ士官であれば上役に行ければ知能がものをいう仕事につけたんだろうが…元二等兵故か首都では住めずにここまで来たという感じだ。

 

二つ目は記憶にない英雄行為を買われての後方での公演のにんむを受けたということだ。

ブリニストにいるのもここにいる住人に国の政策には協力的であってほしいと訴える公演がありその中の英雄譚を語る役割になっている。

 

そしてここブリニストはヘクサォと呼ばれる巨大国家から侵攻を受けている…つまりは国境戦争だ。

 

全く前の戦場はフルンソリア方面でヴィージマと戦い今度はヘクサォと来てる、呪われているのかこの国は…。

 

 

そういうことで俺は今ブリニストの小さなアパートに住んでいる男が一人で住むには事足りる程度の広さのアパートだ。

 

英雄ともてはやすが金は出さないといったところか。

兎も角一応当面暮らすには不自由のない金額は頂いているわけだから文句は言えまい。

 

「それにもうすぐアレも届くしな。」

 

そう、アレ…義足だ。

 

今の俺は片足がない状態で松葉杖を使っている。

戦場に行かないなら義足なんて必要ないと軍部はケチったが広報の方で新聞に書く時などに体裁の良い呼び名が欲しいという事で

急遽義足をくれることになったとの事。

 

くれるものなら病気以外なら何でももらう方針だ。

 

その時にとったメモ書きなどを手掛かりに日記を仕上げていく。

 

「慣れてないことをしていると疲れるものだな」

 

俺はそう言ってため息をつくと窓ガラスに目をやる。

そこには見覚えのない顔が訝しげに俺の事をにらんでいる。

 

「別にあんたを乗っ取ったわけじゃないんだぜ、トロイ・リューグナー…あんたが勝手に死んで、俺がそこに入っただけだ。」

 

はたから見たら自分に言い聞かせてるだけに見えるが実際はというと…別人に話しかけているのだ。

 

これが手記をつけようと思った原因の一つだ。

あかの他人に入り込んだせいでタダでさえ記憶のない俺が自分を保てない時がある。

せめて遠路遥々ここまでやってきたのだから初志貫徹で事を進めたいものだ。

 

俺はふと机に置いてある置時計に目をやり、時間を確認する。

時計の針は11時を指してた。

 

「もうお昼前か…」

 

一言漏らすと俺は、机の横に立てかけてある松葉杖を手に取り、出かける準備をする。

 

「特に約束をしているわけではないんだが…」

 

そうぼやきつつ、俺はたすき掛けの鞄に、本を詰め込み部屋を後にする。

 

アパートでると少し肌寒い、季節は3月…もうすぐ春になるんだがあまり暖かくなった気がしない。

 

見慣れた街ブリニストは寂れた片田舎って感じだ。

閑散とした感じで見ているとどこか落ち着く。

 

一度だけここへ送られる際に首都に立ち寄ったことがあったが小国ながら結構栄えてた。

 

個人的意見ではあるがこういう寂れた田舎の様な場所のほうが落ち着くと言うものだ。

 

案外お気に入りの店も一個確保出来てしまったしな。

 

ラ・バン、そこが俺のお気に入りの店だ。

そこのオープン席が俺に用意された席でよくここで本を読み漁っている。

基本はこの世界の歴史とかだ、本で歴史、新聞で世界情勢ととにかく状を集めることにしている。

今日もお気に入りの席に着き、コーヒーとサンドイッチを注文する。

 

まぁなんにしても、いきなり何かできるわけでもない…つまるところ

 

「戦争の準備は進んでます?少尉さん」

 

俺の思おうとしたことを誰かが口にした。

 

「いや、まだまだかな、クレマンさん」

 

気が付けば目の前の席に若い一人の女性が座っていた。

 

名をヴィルマ・クレマン、この街に来て初めてできた知り合いといったところだ。

 

「相変わらずですね…私はヴィルマでいいですよ少尉さん」

 

「君も私を名前で呼んでくれたらそうするよ」

 

会うと必ずやるこのやり取りは、会って直ぐではなくここ最近の事だ。

 

出会いに関して言えば、格好がつかないものであったが彼女の勤め先の酒場で暴れた輩がいたのでそれを諫めようとして更に喧嘩になったという、本当に格好のつかない出会いだったな。

 

その出会いから何度か会う内に自分の中では何かこう進展があってもいいと思ったので名前でいいよと彼女に声をかたわけだが、彼女からは…

 

「少尉さんが私の事を名前で呼んでくれたら」

 

などと言う返事が返ってきて、そこで素直に名前で呼べばよかったのに俺も天邪鬼が顔を覗かせのか、

 

「いや君のほうから言ったらいいだろう」

 

などとついつい口にしてしまった為に現在のやり取りに相成っているのであった。

 

まぁこの席にお互い向かい合って座ったところで何として話すわけでもないがこの時間に俺が決まってきてるものだから、相手も合わせてくるようになり、いつの間にか約束事の様になってしまったのだ。

 

「歴史の本、歴史の本、これも歴史の本、軍人さんって歴史が好きなんですね」

 

ヴィルマは俺の読んでいる本に目を通しながら半ば呆れたような声で話しかける。

 

「まぁ、いきなりの尉官級に昇進したからね、今まで見たいに酒場でバカ話というわけにはいかんのですよ」

 

と、もっともらしい嘘をつく。

仕方あるまい、まさか別の世界から来たのでこの世界の歴史を知らないんですなんて言えるはずもないからな。

 

「…少尉さんは戦争にはもう行かないんですか?」

 

本に目を通しながらこちらの顔を見ずヴィルマはその様な質問を投げかけてくる。

 

普通の人間なら知らんがこちとら特殊な人間だその言葉は耳が痛い。

戦争が大目的で来たはずなのにな。

 

「まぁ、時間はかかるが行くつもりではあるよ」

 

俺もヴィルマに目をやらずに一言返す。

全てなくしたと思える俺の記憶の残滓が俺の脳髄と言える部分で引っかかる。

 

覚えている理由とは他に引っかかるんだ。

 

狂えるほどの夢を、恐ろしくなる程に羨望した夢の残滓が引っかかるんだ。

 

「早く戦争に行けるといいですね、軍人さんはみんな戦争に行くんですものね」

 

俺の返答にヴィルマはそう答える。

 

その言葉を最後に会話は途切れ途切れになっていった。

 

別に空気が悪くなったわけではなく、いつもこんな感じなのだ。

俺は本を読み、彼女は他愛のない世間話をする。

そしてそれが途切れていき、いつの間にか彼女は仕事に出かけているのだ。

 

「…いつも通りだな…」

 

俺は居なくなった彼女の席に一瞥してして独りごちた。

 


 
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