No.1051741 空飛ぶ戦車ドクトリン 第三話 おじいさんと俺三日月亭さん 2021-01-16 13:05:46 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:562 閲覧ユーザー数:562 |
1904年俺はここブリニストで燻っていた。
正確には行きつけの喫茶店でだが。
俺は自分がいる世界、この世界の歴史を知ることから始めた。
理由としては簡単でとにかく情報を集めたかったからだ。
その甲斐あってか色々分かってきたことがある。
先ずは言語だ、元の世界ではうろ覚えだが多種多様な言語が存在しいろんな人種が存在したが、この世界では中世から近世にかけての間に起きた大厄災の所為で人口が著しく減少し、その結果言語の差異が無くなり、ほぼ統一言語と言ってもいい状態になった。
歴史書では小難しい名前で呼んでいたが、口伝集などの言葉を借りれば…
『ゆりかごの君事変』
っていううらしいんだが正直、異界から来た俺からしたら大事のように見えるこの人口減少もこの世界では大したことないのかもな、殆どが眉唾物の事ばかり書かれている。
このゆりかごの君自体何者なのかすらよくわかっていない。
もしくは何かの隠語なのか…当面気にすることでもないが気にならないと言えば嘘になる。
その様な如何わしい事変があったものの、歴史は下り戦は近代化を歩む。
中世後半の銃器の登場、銃を中心にした戦術…、やはり人間度の世界であっても理屈は変わらんものだな。
昨今に目をむければ、機関銃が登場し戦争の形態が一変した。
俺自身その手に取って撃ったりもしたあれだ、あれがあるだけでだいぶん変わるんだが如何せん、皆が皆使うものだから対策を練られてしまう。
その結果先の俺の誕生地と呼ぶべき戦場でも塹壕戦を強いられていた。
しかも国境沿いに塹壕を引き戦争状態になればそこに大砲の弾が降ってくる。
戦争は鼬ごっこだ。
この世界の歴史を簡単にまとめて手帳に記すとを、その歴史の本達をテーブルの隅に追いやると俺は一枚の紙をテーブルの上に広げた。
「当面の問題はこれ…だよな」
何の紙かと言えば、ここブリニストからヘクサォとの国境付近の地図の略図だった。
尉官になったからではないが、この戦争に興味がないというのは嘘になる。
何より好きで来たんだ、先ずはこの俺が出来ることなら主導権を握りたいと思う何のとは言わないが。
「国境、森、国境の付近の街ブリニスト」
国境からこの街を指でなぞりながらその戦地からどれだけ近いかを実感する。
戦争は端からやってくる、内乱でない限りは国境い線沿いだ。
ここブリニストの鉄道は首都を中心とした放射線状に敷かれている。
首都へ人間、物資を集中させるのと同時に、中央の軍部の差配で人と物資を前線に配ることが出るように組まれている。
特にこの巨大国家に隣接してる街への鉄道は大きめの車両が運用できるように客車を引っ張る列車とは別途に用意されているほどだ。
俺は自身で集めた情報をその地図に書き込んでいく。
前線であるフェルキア・ヘクサォ国境での戦闘は俺が舐めた辛酸以上で、苦戦を強いられている。
その一つが何と言っても『飛行機』なるものだ。
俺のあやしい記憶の中でも存在するもので飛行機は戦争をする際非常に便利だ。
何と言ってもその高さを生かした攻撃と航空偵察この二点に尽きる。
実際飛行機編隊に爆弾を持たせて我がフェルキアの物資運搬用の路線を破壊されている。
これは兵站の観点で言えば致命的だ。
何せ物流はこのブリニストで止まり、そこからは車両か馬車、最悪荷駄か人力になる。
理由はやはり飛行機だ、はるか上からの攻撃に対し歩兵の兵装では太刀打ちできない何より早くて狙えない、全てが異次元なのだ。
物流はまだ何とかなる問題は後方から前線より、前線から後方への運輸手段が止められたのが不味い。
前線では多かれ少なかれ負傷者、死傷者が出る、なのに戦うことも出来ない兵士や死体を前線基地にいつまでも置いておけるものではない。
兵士の交代も含めたこの人員の交代がままならなくなったのだ。
線路の復旧という手もあるが、時間がかかる上に飛行機は常に飛んでおり、線路は逃げも隠れも出来ないので壊したい放題だ。
つまり直すだけの時間も与えてくれないうえ、工兵に危険が及ぶのだ。
「あの小うるさいハエを落とす術か、ハエ自体を使えなくしないとにっちもさっちもいかないという事じゃな」
俺が自前の地図を見ていると頭の上のほうから声がする。
声のほうに顏を向けるとそこには、このトロイ・リューグナーも結構人相が悪いほうなのにそれ以上に人相の悪い老人が不機嫌そうにこっちを見ている。
「しかもヘクサォの連中、戦上手と見える」
人相が悪い老人は俺の地図を見て更に愚痴をこぼす。
「どういうことです?」
俺はつい聞き返してしまった。
その言葉に人相の悪い老人は鼻を鳴らし俺の前の席に座る。
どうでもいいが何故かヴィルマの顔がつい浮かんでしまった、ここは公共の場で喫茶店だ。
俺が座ってない時は誰かがこの席を使ってるだろうに、なのに自分の前に座る人間が彼女以外だとどうにもしっくりこないと思うのはわがままなんだろうな。
「先ず小僧、この国境戦争が起きた理由は知っているか?」
この戦争の理由、それは…。
「14年前のヴィージマの侵略戦争から端を発する地図の書き換えですよね」
14年前ヴィージマの国土政策によって現ヴィージマ領にあたる小国三つが併呑された一件だ、その戦果はすさまじく統治政策はとらずにただ国土を増やすという暴挙にでたのだ。
つまり侵攻した三つの小国の人間を皆殺しにしてその領土と資産だけ併呑したのである。
「その侵攻後、ヴィージマが発行した世界地図が世界中を肝を冷やした」
老人が俺の思考の補足をするように言葉をこぼす。
その通りだ、世界地図の書き換え自体何も問題はないがその時期が侵略して三日後の事だという事だ。
予定を組んで地図を作っていたことになる。
世界を好き自由にするという宣戦布告ともいるその行為に各国は驚いたのだ。
「戦争気運が高まり各国が軍備拡張を続けてる中、去年の暮れからヴィージマ・ヘクサォの両国がこのフェルキアに侵攻を開始した、ヴィージマはやはりヘクサォとの戦争を見越した前線基地としてのフェルキアを抑えたいって感じで、ヘクサォは…」
ヘクサォ、この国は比較的豊かな国だ侵攻する理由は平時であればあるはずもないが、今の状況を考えるとやはり対ヴィージマへの緩衝地帯確保といった線が強いと考えいるんだが…。
「確か、ブリニスト付近にある山地がヘクサォの前身のマギカ共和国の領土だったとかなんとか、元々は自分の領地だったんだから返せって感じの事が理由でしたよね。」
私見は控えてここは情報だけ出すことにする。
特に深い理由はないが、だからと言って考えを出す話すほどこの爺さんと仲が良い訳でもない。
「確かに公式の宣戦布告でもそう言ってきてた」
まぁいいだろう、そんな感じの事を言いたそうな態度を示した爺さんは地図を見ている。
「あの」
つい俺は爺さんのあの言葉が気になり声をかけてしまう
「なんじゃ?」
「先ほど貴方が言っていた"戦上手"ってどういうことですか?」
爺さんは言った「しかもヘクサォの連中、戦上手と見える」と、確かにフェルキアは苦戦を強いられているがそれは飛行機のせいでそれが戦上手と言えるものなのか?、という疑問が俺の好奇心を刺激したというところだろう。
「つまり、わしに教えろと言いたいんじゃな小僧?」
爺さんの癇に障ったのか、機嫌がいいのか悪いのかわからない悪い人相を一層悪くして俺に聞き返してくる。
「なら先ずは自己紹介しろ小僧」
その言葉に気が付く、そういえばしてなかったな自己紹介。
「失礼しました、私はトロイ・リューグナー…」
待てよ、今俺平服なんだよな、そもそも相手が軍人じゃない時ってどうするんだろう階級言うのかな?えっと…。
「リューグナー"少尉"かワシはスタインバックだ」
「え、ええよろしく」
あれ俺階級口にしたか、まぁいいか。
「少尉、お前は兵棋演習をしたことないだろう?尉官級に昇進したから佐官との同席も増え意見を求められるからと、こんなところで勉強でもしとったのか?」
兵棋演習というと、一度だけ見たことがあるでっかいジオラマみたいなので真面目に遊んでるあれか…そうか確かに尉官だと佐官と喋る機会もあるだろうしそうみられても仕方ないか。
「まぁそんな感じですかね」
少し生返事の様な感じだがそう答える。
「ワシが現役でなくてよかったな少尉、さもなきゃ憲兵に通報してぞ」
現役…つまり元軍人かこの爺さん…いやスタインバックは。
「地図に描かれているもの全てが情報の塊だ、この前線な辺りは公式に発表がない所だろ、喫茶店のオープンテラスでやるもんじゃないな少尉」
その言葉にぐうの音も出ない、まぁ元々軍人でもないかったし…でも確かに言われたらその通りだ。
「少尉、兵棋演習は今後は家でするんだな、でだ、おい紙をよこせ」
一通り何か言い終えた後にスタインバックは俺から地図を取り上げた。
「説教はこれぐらいにしてお前の質問に答えてやるか」
このスタインバックという男の奇妙な講義が始まったのである。
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以前なろうで書いてた頃の文章を直して投稿しようと思っていたのですが、今も馬鹿なんですが、書き始めたころも大分馬鹿で、今見てると頭が痛くなってきたうえに、ものの凄くいらない設定が多かったので、この回から本気でリメイクすることになったという。
多分作品説明じゃなくこの場は愚痴しか書かないかもしれないがご容赦を。
ところで、この異世界なにはともあれ過去の世界史の流れをなぞったりアレンジしたりしてる訳で、今まで知らなかったこと知るいい機会なったという意味でも自分の中では大きな意味を持つ作品だなって思ったりします。
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