余興が終わり反董卓連合が本格的軍事侵攻を汜水関に開始した。
≪桃香サイド≫
愛紗ちゃんの傷も癒え、いよいよ汜水関を攻略する時が来た。
でも・・・私は汜水関攻略とは違うことを考えていた・・・
愛紗ちゃんと北郷夫人との訓練だ。
突然の愛紗ちゃんの申し入れに私は止めようとした。
でも、北郷夫人は即座に了承した・・・
あの愛紗ちゃんに戦いを挑むなんて自殺でもする気かなと思ってしまったほどだ。
私は愛紗ちゃんに『出来る限り、手を抜いて、愛紗ちゃん』と頼んだ。
朱里ちゃんも『戦力低下になるから出来るだけ手加減してください』とも言った。
鈴々ちゃんも『弱いもの苛めはよくないのだ』とも言った。
雛里ちゃんも『出来るだけ傷つけないようにお願いします』と言った。
私達の誰も愛紗ちゃんの勝利を疑いはしなかった・・・
でも・・・・・・
愛紗ちゃんだけは自分の敗北を悟ったかのように私たちにこう言った・・・
「その心配は無いでしょう・・・もし手を抜いたら私は負ける・・・」
私達はまさかーと愛紗ちゃんの言葉を信じれなかった。
でも・・・戦いになると愛紗ちゃんの攻撃は全て無力化された。
逆に、北郷夫人の攻撃は防御しようが、いなそうが、かわそうが、全て損傷をうける。
しかも全然余裕そうだった。
「あの人、全然本気を出していないのだ!」
そう鈴々ちゃんがいう。
私は最初、その言葉が信じられなかった・・・
だってあの愛紗ちゃんがあんなに必死なのに、あの人が全然本気を出してないなんて考えられなかった・・・
でも、あの人を見ていると鈴々ちゃんの言葉が事実であることを嫌でも思い知らされた。
あの人は、汗一つすら流してない、それ所か、全ての動きに余裕すら伺える・・・
武術の得意じゃない私にも解るくらいその動きは優雅で、力強くて、そして、
・・・美しかった・・・
討ち合っていて突如、北郷夫人がこう言った。
『一刀様、100分の1から10分の1で戦うことをお許しください』と・・・
ありえない・・・あれで100分の1・・・
しかも更に10分の1で戦うと言う。
私は止めに入ろうとするが、鈴々ちゃんに止められた。
「ダメなのだ! 桃香お姉ちゃん! 愛紗は負けて無いのだ! 今止めたら愛紗はきっと後悔するのだ! だから・・・」
言葉とは裏腹に鈴々ちゃんの手は強く握られていた・・・
そうか・・・鈴々ちゃんは耐えているんだ・・・
愛紗ちゃんを信じて・・・
解っているのに・・・愛紗ちゃんの勝ちなど無いことぐらい・・・解っているのに・・・
それでも愛紗ちゃんの・・・義姉を信じたいんだ・・・
私は何を諦めているんだろう・・・愛紗ちゃんや鈴々ちゃんは諦めてないのに、
・・・義姉である私が・・・
・・・彼女達の主である私が・・・
諦めちゃいけないのに・・・
決めた!! どんな事があっても私は仲間を信じる!!
北郷さんを見れば解る。
あの人は、信じている・・・
北郷夫人を・・・
趙雲さんを・・・
郭嘉さんを・・・
程昱ちゃんを・・・
多くの兵隊さん達を・・・
そして彼等もまた、信じてるんだ・・・
北郷 一刀さんを・・・
・・・私みたいな脆弱な信頼じゃない・・・
確固たる信念を持って信じあってるんだ・・・
悔しい・・・
今まで感じたこと無い悔しさが私の心を支配していた・・・
そして、愛紗ちゃんは北郷夫人の攻撃で吹き飛ばされた・・・
北郷夫人が愛紗ちゃんを抱えて私たちの所まで来た・・・
「大丈夫・・・気を失っているだけ・・・直ぐに目は覚めるわ・・・」
その声は、母親が子供に語りかける優しさに似た慈悲深いものを私は感じた。
アレほどの闘気を放ち、アレほどの斬撃を放った後なのに・・・
あたしは振り返り立ち去る北郷夫人に質問をぶつけた。
「貴女や北郷さんたちは何の為に戦っているのですか?」
北郷夫人は振り返る事無くこう言った。
「私達は、全世界の人達を平和にすることなんて出来ない・・・
私達は、そこまで万能でもないし超人でもない・・・
人は弱い生き物なの劉備、人は誰かに頼らないと生きていけないものなの・・・
それでも・・・それでも私達は、力を合わせて目に見える人達の幸せの為に、
暴力に頼って傷付ける人達を是正し、力ない人達が戦わなくてもいい様に・・・
そんな、祈りにも似た思いで私達は戦っている・・・
どんなに力があっても守れないものもある。
どんなに知略があっても救えない人はいる。
でもソレを諦めの言い訳に私達はしたくない。
その為に私達は自分の信念に忠を尽くす。
これは、私たちの、一刀様に付き従う者達のそして、一刀様の信念でもあるわ」
そう言い、北郷夫人は去って行った。
その言葉にどんな想いが込められているのか私は計り知れなかった。
その背は温かくも、力強く、そして・・・悲しみに満ち溢れていた・・・
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恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。