No.1024369

司馬日記外伝 淮南純愛組!

hujisaiさん

お久しぶりで御座います。
その後の、元ヤンの舎弟(舎妹?)たちです。

2020-03-30 00:07:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3616   閲覧ユーザー数:2996

 定時で業務をあがり、更衣室で私服に着替えて庁舎を出る。日が伸びてまだ夕焼けの道を三国一へと向かいながら、今日の合同演習反省会で発表した考察文を思い出す。

『「初撃で相手を殴り倒せなかったのが苦戦の原因でした」』

そう書いて出したら隣に座ってた徐盛から死ぬほど駄目出しを食らった。

「馬ぁっっっ鹿じゃないの!?あんたが馬鹿みたいに先頭切って突っ込んでって軍勢が縦に延び過ぎると横っ腹から後続がやられて囲まれるから自重しろって最初に亞莎が言ってたの、これっぽっちも覚えてなかったでしょ!?馬岱さんが全く打ち込まずに完全に受けに徹してて、周り見ながらゆっくり退いて誘い込まれたのにも気づかずに一人で囲まれて!こっちが先に馬超さん上手く誘い込んで、将軍級五人がかりで運よく当たり判定取ってなかったらズタボロの全滅だったのよ!?もう少し脳ミソ使ってよ!」

 あのアマがキーキー喚くのは慣れっこだが、穏も亞莎も苦笑いするだけで何も言ってくれない方が堪えた。

反対の隣に座ってた馬超って奴は強えぇみたいだけど、あたしがボロクソ言われてるのを聞いて慌てて自分の考察文を書き直していた。

しかし突っ込んでって殴り倒すのは基本じゃねえのか?東呉で毒殴連合やってた時はそれが当たり前だったし雪蓮とタイマンやった時だってそれで誰も何も言わなかったんだけどな。

 そこでふと、これから会う相手がそういった事に長けていそうな事に気が付いた。仲達様が『美貌のみならず、文武に長け見習うところが多いです』と仰るからにはきっとそうなんだろう、性格はクソみてぇな奴だが。話のついでに聞いてみるか。

 そう思いながら三国一の暖簾をくぐり、予約の太史慈ですけどと店員に告げると奥の個室の座敷に通された。履物を脱ぎ障子を開けると、見るからに性格がねじくれていそうな軍服金髪の女が既に手酌で始めていた。

 

「早ぇな。もしかして魏の連中って暇なのか?」

「相変わらず無礼な奴だな。呉では十分前行動という言葉を教えていないのか、それとも習っても右から左の阿呆猿なのか」

「んだと?」

「貴様の喧嘩を買ってやりたいのはやまやまだが、今日は先に用を済ますぞ。酌ぐらいしてやるからとっとと状況を言え」

「ああそうだったな」

御猪口を突き出すと、頬杖を突きながらぞんざいに注ぎやがる。一刀様の前じゃ正座して笑顔で両手でお酌をするくせに。

清酒を今日の演習の鬱憤ごと飲み干すと、一息ついた。

 

「仲達様の―――――だけどよ。手配は万事順調だぜ」

 

 

***********************

 

 

酒はいい気分の時に飲むに限る。いい気分の時に飲む一杯は格別だ。それはあたしらが東呉に居た頃から知っていた事で、目の前の相棒も同意見だ。

今日は子義姐さんの下について久々の対外陸戦演習だった。結果は呉の勝利、しかもあたしら自身が勝利に貢献したとなれば酒が旨くない筈が無い。

「五合だぜ!向こうの将軍級と打ち合って五合持ったぜおい!」

「あいつら都尉だってよ都尉!秀(張英)お前、あっちのおっぱいでかい桃色の方だったろ!?あたし貧乳の青い方から逃げ切り寸前まで行ったぜ!」

「そのあたしらの時間稼ぎのおかげで子義姐さんがあの馬岱?だっけ?って奴倒して、ほかの連中と蹴散らしてくれたからなぁ!姐さんも『お前らよく粘った』って褒めてくれたしなぁ!」

「もうあたしら来年牙門将なっちゃうんじゃね!?」

 

そう馬鹿みたいにはしゃぎながら飲んでいたのがいったい何分前だったのかも思い出せない程、沈鬱な空気があたしらの寮室内に充満していた。

「…どうするよ…?」

「どうするって…」

言われても。叩き込まれた情報がとんでもなさ過ぎて、思考が追い付かない。

 

 

***********************

 

 

隣室から姐さんの声が聞こえてきた時は、秀(張英)が祝勝会で乗り込んじまおうかと軽口を言っていたが、姐さんの声を聞いて固まってしまった。

 

『仲達様の―――――だけどよ。手配は万事順調だぜ』

 

は?

何だって?

「そうか、それは何よりだ。金の方は?」

「俺が用意した。お前も一口乗りたいんだろ?それなら半分払えよ」

「まあな、奴には私も世話になっている。今は持ち合わせが少ない、明日昼休みに払いに行く」

「あー…いいけどよ、こんだけしたぜ?こんな事でばれるとは思わねえけどさ、現金だとちょっと目立たねえか?」

「む、結構だな…それなら後日振り込もう」

「それがいいぜ。それよか、一刀様はこの件御承知なんだよな?」

「ああ、お話は通してある。たかが―――――如きではあるが、誰かの妬みを買わぬとも限らん。一刀様の周りには常に誰か控えているからな、周囲にばれぬようお話しするのは中々骨が折れた」

「一刀様、何か言われてたか?」

「仲達は今回昇進であるからな、これくらいの事はあってもいいだろうとの御言葉だ。『本当は俺自身が動かなきゃならないところを、内密に二人に動いてもらって申し訳ない』と仰っていた」

「お優しいな」

「全くだ。本来、このような事は我々のような下々の者で手を回すべき事だ」

 

…これは聞いちゃいけない話じゃねえのか?

(逃げよう)

(あ、ああ)

秀(張英)と目配せをし、足音を忍ばせて個室を出て、会計も釣りはいらねえと大枚を置いて寮へと一目散に逃げ帰った。

 

 

***********************

 

 

「…姐さん、なんか厄介事に巻き込まれちまってんのかな…」

「…分かんねぇよ」

東呉で毒殴連合やってた時から曲がった事はしねえ方だった。殴るのは決闘を申し込んで来た奴か、明らかに悪りぃ奴だけ。孫策との決闘は今でも語り草だ。

それが、なぜ。

「…明らかにあの司馬懿…って奴?の悪事の片棒、担いでる感じだったよな」

「…あたしの聞き違えじゃないよな。――――って言ってたよな」

「ああ…」

 

あの司馬懿って無表情女。

初対面は蹴り倒された挙句にとっとと失せろ、と一喝された最悪の記憶だ。

完全にあの女はあたしらを殺す気だった。

憎悪。

憤怒。

狂気。

東呉時代にも浴びせられた事の無い、圧倒的な殺意。

後で知ったが一刀兄貴が殺すなと言ってくれてなければ本当に八つ裂きにされてたと思う。正直あの時少しちびってた。

その後、姐さんの取りなしで謝らせてもらった時も

「…一刀様の御指示なので特に許します。今後は性根を入れ替えて一刀様に尽くすように。…次は無い」

平坦な声と冷徹な視線に刺し穿たれたように、当時『姐さん以外の言う事は聞かねえ』とイキってた自分らがへぇ、とあっさり頭を下げた。

しかし姐さんの話によるとあの女、腕も結構立つ癖にやたら賢くて一刀兄貴への忠義は凄ぇらしい。頭良くて美人で無表情で影薄いとか、いかにも悪の黒幕にしか思えないが。

そんな奴が、犯罪に手を染めている。この治安のいい都の、べらぼうに法律だらけの宮中で。いや、決まりが複雑過ぎるからああいう奴が抜け穴を見つけて甘い汁を吸えるのか?

 

「それによ、これ一刀兄貴も知ってるっぽいじゃん」

「…ああ。しかも、なんか容認してる…ってえか、兄貴自身で揉み消さなきゃいけないのを姐さんとあの郝昭ってのが空気読んで始末してるみたいじゃね?」

そしてなにより、あたしの心を暗くさせている事が思わず口をついた。

「…………子義姐さん。そういう事、しそうもねぇ方だと思ったんだけどな…」

「…………いや、そりゃ…お前…」

あたしがため息をつくと、何故か秀(張英)が顔を赤くして口籠った。

「なんかお前、姐さんが変わっちまった理由とか知ってんの?」

「だ、だってお前…」

「?なんか知ってんなら言えよ」

増々頬を紅潮させる相棒に、思わず首をかしげる。

「だ…だって、お前っ…い、一緒に見ただろ!?」

「何を?」

「あ、あのっ!『まじっくみらー』の部屋で!」

「………はっ…?はぁっ!?い、今それ関係あんのか!?」

あの、一刀兄貴と子義姐さんの強烈に濃密な一夜が瞬時に脳裏に浮かび上がると共に頭に血が上っていく。

「ああああるに決まってるだろ!だって考えてみろよ!一刀兄貴のだよ!?ち、ちっ…ちんち…っ、をあんなに嬉しそうにしゃぶって!いやしゃぶってってか飲んで!」

「わ、分かった!分かったから言うな!」

「素っ裸にひん剥かれて!ま、股っ…体じゅう舐められて!」

「やめろ思い出すから!今夜寝られなくなる!」

「裸で抱きしめられてっ!ちんっ…入れられてっ、あ、溢れるくらい出されてあんな幸せそうにべろちゅーして、もぉ言いなりにならないとか有り得ねぇだろ!」

「も、もういい分かったからでかい声出すな、他所に聞こえる!」

暴走する秀(張英)を何とか黙らせるが、脳内で交わり続ける二人があたしの下腹を地味に疼かせる。

…まぁ、分かった。もし自分だったら絶対一刀兄貴の言いなりだ。言うこと聞くなら抱いてやるって言われたら、人を傷つけるわけじゃないその手の悪事の片棒くらいなら多分平気で担ぐ。…気がする。

 

「…あの郝昭ってのも、きっと同じなんだろうな」

「…あー」

ふと口から出た推論に、秀(張英)が同意する。司馬懿程じゃないが生真面目そうなあの女も、寝床でメス堕ちしてるんだろう。

「そう思うと、一刀兄貴って恐ろしい奴だよな」

「そうだとして、今更お前、一刀兄貴と姐さんから離れて地元帰れんの?」

聞き返されて、絶句してしまう。

もう無理だ。今後抱かれる…抱いて貰える事があろうと無かろうと、もう二人から離れて地元に帰るとか有り得ない。その事実から、一つ答えが見つかった。

「…って事はさぁ。もうあたしら、姐さん達がやってる事は黙って見てるしかねえんじゃねえの?」

「…んー…」

曖昧に頷く秀(張英)。

「だって他にねーべ?」

そう念を押すと、それでも姐さんに一度確認したい、という秀(張英)の顔は珍しく真面目だった。

 

 

***********************

 

 

「…………そっかぁ、聞かれちまったか」

真面目な話があるんす、と言って忙しい姐さんに寮室に来て頂いて。

秘密にされてました、司馬懿…様の、―――――の件。偶然聞いちまったんです。

 

小さな卓を囲んでやや乗り出すように腰掛け、そう切り出すと姐さんはきょとんとした後、自然に、ごく自然に頭を掻いて笑われた。

「うん、まぁ分かってると思うけど誰にも喋んなよ?」

「…はい」

当然だ。ここは秀(張英)と話し合って決めた答え。

「仲達様には凄ぇお世話になってるからな。俺もこれくらいの事はして差し上げないとな」

「そ、そうっすか…」

司馬懿の悪事の尻拭いを子義姐さんがするという点はどうしても納得しきれないが、姐さんがされたい、と言うならもう止めはしない。

「そう言やぁ、お前らの事仲達様褒めてたぜ?『一刀様への態度に改善が見られます。今後も励むように伝えて下さい』って。お前ら、最近仲達様となんかお話したのか?」

「いえ…全く覚え無いすけど」

秀(張英)と顔を見合わせて互いに首を振る。一度は殺されかかった身だ、恐ろしくて姐さんの居ない所でこっちから近づくとか出来る気がしない。と言う事はどこかで見られていたのだろうか?それはそれでぞっとする。

「ふーん…仲達様、一刀様に態度悪い女は気配だけでわかるって噂される位だからな、ひょっとしたらお前らの事も感知したのかもな」

「はぁ…」

なんて女だ。

「ま、何にせよこの件絶対誰にも喋るなよ?酔っぱらってポロリとかも無しだからな!」

「「はい!」」

「ん。じゃ、俺一刀様に御用事があっからもう行くからな。じゃな!」

「はい、お呼びだてして申し訳ありゃっせんした!」

 

パタン、と子義姐さんが部屋の扉を閉めると肩の力が抜け、背凭れに体を預け大きく息をついた。

「はぁぁ……」

「はぁぁじゃねえよ!行くぞ」

一息ついた筈なのに、こいつは何を焦って立ち上がってあたしの袖を引っ張るのか。

「は?どこにだよ?」

「馬鹿、姐さんの後を追うんだよ!」

「何でだよ!?」

「おまっ、ホント気が回らねえなぁ!?姐さん、多分あたしらが気付いたって事を一刀兄貴に注進に行くんだよ!そこで何話してるか聞ければ、何か見えてくるかもしれねえだろ!?」

「!そっか、待てよあたしも行く!」

馬鹿に馬鹿と言われたのは癪だが、事が事だけにあたしも慌てて立ち上がって秀(張英)の後を追う。

一旦は姐さんの後姿を見失ってしまっていたが、行き先がわかっているだけに直ぐに追いついた。

庁内は曲がり角が多く、姐さんにあたしらに気づいた様子はない。警戒されてたらあたしらの尾行なんて直ぐにバレるが、完全に無警戒のようだ。

 

「あ、陽(太史慈)ちょうどいいところに」

「あっ一刀様!」

「(ヤベェ!)」

「(むぐ!?)」

あと三つ曲がれば一刀兄貴の執務室って所で、急に角を曲がらずに後ずさった秀(張英)の後頭部に鼻を強打した。

「(なっ、何急に止まるんだよ!?)」

「(兄貴だよ!)」

「(げ)」

鼻がつーんとして涙目になるのを堪えて、秀(張英)に倣って壁にへばりついて耳を澄ます。

「忙しいとこごめん、今ちょっと時間いい?」

「はい、今お部屋に伺う所でした!」

「あ、長話じゃないからここでいいよ」

「はい、では…ちょっとこちらで」

一刀兄貴はそのまま立ち話するつもりだったみたいだけど、姐さんがちらっと周りを見回して園庭に兄貴をいざなった。

二人の姿が壁でちょうど死角になるのを確認して、一刀兄貴達が居るであろうあたりから壁一枚を挟んだ廊下に忍び寄って秀(張英)と目で互いに合図する。

 

「いやそんな改まった話じゃないんだけどさ」

「はい」

「陽(太史慈)の舎弟…舎妹?の二人、えっと、秀(張英)ちゃんと絢(于糜)ちゃんだけどさ」

「はい。あっ、名前覚えてて下さったんですね、二人とも喜びますよ」

「いやいやそりゃ忘れないよ、ま、それは置いといて」

「(…っしゃ)」

「(…ひひ)」

二人で密かに顔を見合わせてにやけ合う。初めは姐さんに無理矢理差し出させられた真名だったけど、覚えてて当然だって一刀兄貴が言ってくれた。覚えてて当然だって。へへへ。

「蓮華から今度の人事(昇進リスト)見せてもらったら二人の名前があってさ」

「はい」

 

 

 

 

「なら、二人に『――――』どうかなって」

 

 

 

 

…………………………………はい?

思考が停止する。

何だって?

えっ?もっかいお願いします、何ですって?

あたしが聞き間違えたのか?聞き間違えたんだよな?

自信が持てなくなって隣を見ると、口を開けたまま完全に停止している秀(張英)の間抜け面があった。多分あたしの顔もこんなんだろうなと妙に冷静に我が身を振り返る。

 

「ええ…まだちょっと早いんじゃないでしょうか、あの二人には…?」

えっ?

『まだ早い』?

えっ?時間の問題って事ですか?姐さん?

「あ、でもねぇ、蓮華に聞いてみたら今人材足んないしそれでもいいって。がっつり将軍並みにって訳にはいかないけどってさ」

「そうですか、蓮華様が宜しいなら良いですけど…」

えっ?

いいの?

呉の姫さん公認なの?

マジで?

てか姐さんも公認?

いやそれ困…困るんですけど?

「魏の人達はもう基本役職だけど、呉の地元とか下位の人の御褒美って基本これだって聞いてたし」

「まあそうですね…」

呉の地元の下位の連中の御褒美が基本『これ』。いやいやいや?おかしいだろ?

 

「あ、そうだあの二人なんですけど、仲達様の―――――の件、二人に気づかれちゃいまして…」

「そうなんだ。まあ接点無さそうだし問題ないかもしれないけど、口止めしといてくれた?」

「はい勿論。でもあの二人そそっかしいので出来れば、一刀様の方からも御指導頂けますと…そうだ、さっきの『――――』の話と合わせて、一刀様から直接二人に命じて戴けませんか?」

「口止めはいいけど、『――――』の方は俺からでもいいのかな?」

「正式には蓮華様経由でしょうけど、一刀様から予告頂く分には大丈夫です。それに、二人も一刀様から直々に命じられたらきっと『はいっ!何でもします!』って喜んで励んじゃいますから。ふふっ」

「あはは、そうだといいけどね」

「では早速ですけど、仲達様の事があるので今夜にでも少し御時間頂いて二人にお命じ頂いても宜しいですか?二人には今私から言っておきますので、『三国一』の一刀様専用のお部屋に六時とかで如何でしょうか?」

「うん、お願い」

「はい。二人に伝えてきますね」

「「!」」

(やばい、戻るぞ)

(お、おう)!

秀(張英)に目で合図をし、足音を忍ばせてその場を離れると一目散に寮の自室へと逃げ帰る。

先に部屋へ飛び込んだ相棒に続いて部屋に転がりこみ、急いで扉を閉めてへたりこむ。

 

「ど、どうしよう、秀(張英)」

「どうしようも何も、姐さん直ぐ来ちまうだろ!と、とりあえず姐さん待つしかねえじゃんよ!?」

どうしよう。

どうしよう。

一刀兄貴が。

一刀兄貴と。

姐さん公認だし。呉の姫さんまで公認で。

頭の中を『どうしよう』がぐるぐる巡る内に部屋の扉がコンコンコン、と叩かれてた音にびくっとする。

「おうお前ら、…って何床に座り込んでんだよ?」

「あ、…ちょ、ちょっと床の掃除してまして」

「まあいいけどよ。ところでよ、今日はお前らに大事な話があるからよーく聞けよ!」

「「は、はいっ!」」

「いや、床で並んで土下座しろとまでは言ってねえんだけど…」

「い、いえ、このままでいいっす…」

「…このままの方が聞き易いんで、お願いします」

正直、顔を見て話を聞けない。

突然平伏したあたしらに姐さんは引き気味だけど、今は勘弁して欲しい。

 

「そ、そうかよ。で、話ってのはな、今夜、一刀様が!至らねぇお前らの為に!お時間取って下さって、有難い御命令を下さるって事だ!」

「…はい」

「はい…」

「あれ?意外と驚かねぇのな、あたし抜きでお前らだけなんだぜ?」

「と、とんでもないっす!驚き過ぎて口から心臓出そうっす!」

「あたしもっす!ぶっちゃけ、腰抜けてます!」

訝しがる姐さんにもう知ってますとも言えないが、あらためて聞かされるとその事実にがくがくと震えが止まらない。

 

「いやまあ驚けよって命令してるわけじゃねえんだけどな…んで場所と時間だけどよ、三国一の一刀様専用個室に六時にお伺いすることになってるからな、遅れるんじゃねえぞ?」

「は、はい…」

「はい…姐さん、一つ聞いてもいいすか」

「おう、なんだよ」

秀(張英)が顔を上げる。

 

「姐さんは…一刀兄貴が、あたしらに何命令するかって、ご存じなんすか?」

その問いに、姐さんは少し考える風を見せたのち、にかっと笑って答えた。

「まあ知ってんだけどよ…まっ心配すんなよ、お前らにとっていい話だからよ!」

「い…いい話、なんすね。姐さんから見て」

「そりゃそうさ」

当然と言わんばかりの姐さんの肯定に、思わず顔を上げて口をはさんだ。

「姐さんは、それがあたしらの為になるって、思われてんすよね?」

「ったり前だ!お前らもいい機会だからよ?一刀様の言う事よく聞いて、御心に感謝して!いっぱしの女になれってこった」

「…はいっ」

「は、はい…」

隣で意を決したような秀(張英)の返事に引きずられるように、思わず承諾の返事をする。もう後戻りは出来ない。

「じゃあよ、俺もう行くから。分かってるとは思うけど失礼の無い様にしろよ?…ってお前等顔真っ赤じゃねえか、昼間っから飲んでたのか!?」

「と、とんでもないっす!」

「お、驚き過ぎただけっす!」

「そういや酒臭くねえな?けど念の為に風呂入っとけよ、におったりしたら失礼だからな。あと一刀様の前に出んだから、それなりのカッコでな。んじゃな」

 

パタン、と扉が閉められると力が抜け、土下座の姿勢から二人揃って床に転がった。

「確定だ…」

「そうだな…」

朧げな知識でしか知らない『――――』。秀(張英)の方がそっち系の事は自分より知っている筈だ。

「なあ…例のアレってさぁ…お前、そういう小説持ってたよな?」

「…見るか?」

「ああ…あたし、よく覚えてないし」

「じゃこっち来い」

秀(張英)の手招きに応じて二段寝台の上の段に登り、並んでうつ伏せに寝そべると流石に狭いが仕方が無い。秀(張英)が布団の下をごそごそと探ると一冊の本が出てきた。

「これのよ…遠紹って奴の章んとこ。…こっから先」

「お、おう」

妙に慣れた様子で頁を開く秀(張英)に一抹の不安を感じながら、指差された箇所から読み始める。

 

 

 

 

『な、何をするんですの!?一刃さんっ』

 

 

―――――する玲羽の抗議の声を無視し、一刃は―――――

 

 

『河北の雄たるわたくしにっ、このような事…!』

 

 

―――――は羞恥と怒りに顔を朱に染める。しかし―――――

 

 

 

『んひぃっ、お、おやめなさいっ』

 

 

―――――背筋を突き抜ける、未知の感覚に戸惑いを―――――

 

 

『い、今ならまだ許して差し上げますわっ、ねえっ、一刃さんっ』

 

 

―――――して自身を襲うであろう快楽に、恐怖し―――――

 

 

『も、もう…っ、止めを…止めを刺して下さいまし…』

 

 

―――――屈服を口にする玲羽。しかし、これは未だ―――――

 

 

『なんでもっ、なんでも言う事を聞きますわっ!ですから、一刃さんのっ…!』

 

 

―――――淫らな蜜口に添えられながらも、決してそれ以上の―――――

 

 

『こ、これ以上はっ狂ってしまいますわっ!許してっ、お許しになってぇ!』

 

 

―――――身をじくじくと焼き続ける欲情に、必死に腰を振ってこすり付け―――――

 

 

『ああああっ!な、なりますわっ!今日からわたくしはっ、ああっ、一刃さんのぉっ!雌奴れ』

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――――――――――――――――――――――――」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――――――――――――――――――――――――」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――――――――――――――――――――――――」

 

 

***********************

 

 

「………も、もういい…」

ヤッベェ。

「もういいのかよ、この先まだあるぜ?最後、完全にキマッてて笑顔で兄貴のその…ソレをしゃぶってお掃除する所がすげえやらしいんだぜ」

「いいっつってんだろ!」

これからあたしらがこういう目に…?つか、あたしが一刀兄貴に何をした?いや初対面で胸倉掴んで脅してたね、はい詰んだ。

「つ、つかこれどっかの君主で一刀兄貴に楯突いてた奴なんだろ、あたしらと全然違くね?」

「そうだけどよ、行きつくところは同じだぜ?あ、兄貴がしゃぶれって言えばしゃぶって、脱げって言われたら脱いで、尻出せって言われたらよ、四つん這いになって自分で指で拡げて、お、おねだりする雌」

「落ち着け落ち着け!」

秀(張英)の目つきがとろんとしだしたので慌てて止めさせる。

 

「…あらためてこれ、姐さんも、呉の姫さんも公認なんだよな」

「おう。姐さん、言う事よく聞けって言ってたしな」

「でも兄貴、『将軍並みにがっつり』じゃねえって言ってたよな?」

「あー…甘寧って奴がこういうのが大好きらしいから、そういうの並みにはしねえよ?って事じゃねえ?」

薄々思っていて聞きにくいが勢いでついでに聞く。

「あとどうでもいいけどよ…お前さ、結構願ったり叶ったりだったりしねえ?」

「ん…」

急に秀(張英)の目つきが遠くを見るような、熱に浮かされたような表情になる。

「あ…あたし、一刀兄貴にだったら…こういう焦らし責めされ抜いて、雌奴隷にされるのもイイな…多分可愛がってくれるし…お前は違うの?」

 

不思議そうな顔をするな。あたしだって一刀兄貴のものになれたら、それは嬉しいけど。

諦めた筈の夢想をふと思い出して、妙に喉の奥に突っかかりを感じる。

「あ、あたしはなぁ、そういうのよりかはさ」

 

あれ?

「一度だけでいいからさぁ…」

何故か、目の前が滲んでいく。

「あ、兄貴にさぁ…、『可愛いよ』って言われて優しく抱かれたかったなぁ…」

ぽたぽたと、目から雫が落ちて秀(張英)の寝台の敷き布に染みを作ってしまう。

「絢(于糜)…」

「ち、ちゅってして、ぎゅってしてもらって…う、嘘でもいいから、可愛いって、言って欲しかったよぅ…うえぇぇ…!」

「な、泣くなよ…」

一刀兄貴は本当は三人の王様達のものなんだろう。良くて姐さんの旦那だし、そんな事は分かってる。

でもしょうがないだろ?

尊敬する姐さんが惚れるような男でさぁ。

姐さんだって妾なのにその子分の真名普通に覚えててさぁ。

船上演習じゃ他の連中に分からないようにうちら応援してくれてさぁ。

んで初対面で脅迫した奴許してくれる皇帝いねえよ。そりゃ落ちるさぁ!?

「な、泣くなよぉ…お前可愛いって!う、うぇぇ…、一刀兄貴、絶対言ってくれるって!あ、あたしからもお願いしてやるよ、兄貴優しいから、調教するとしたって絶対言ってくれるって、なぁ?…う、うぁ、…うわぁぁぁぁん!」

「ひぐっ、お、お前の方が可愛いだろっ、お前が泣くなよぉっ…うふぇっ、うへぇぇぇぇぇん」

隣でもらい泣きし始めた秀(張英)が妙におかしくて、笑ってんのか泣いてんのか分からない変な声をあげながら二人で暫く抱き合っていた。

 

 

***********************

 

 

今日ちょっとこの後夕飯食いながら約束あるんだ、と言うと仲達さんはではお早めにお上がり下さいと会議を中座させてくれた。これが詠ならこうは行かない。どっちもそれぞれなりの優しさだとは思うんだけど。

まあ今日の話は仲達さんの件を口外しないようにお願いして、昇進の連絡とついでに呉の下位の軍務職の様子を少し聞いて燗二本位飲んでもらったら切り上げよう。明日は出張だし。

三国一でも一番奥にある俺専用の静かな座敷でそんな事を考えながら一人手酌でちびちびやっていたら、個室の引き戸がコンコンとノックされた。

 

「はぁい」

「あ、絢(于糜)っす」

「秀(張英)っす」

「はぁいどうぞ、…………………」

声が上ずっていた二人を緊張させないためになるべく明るくフランクな声で返事をしたつもりだったが、その姿に思わず真顔になった。

何故ならば二人はバニースーツだった。

うん、何故?

「…えっと、」

「こっ!この度はっ…そ、その…宜しくお願いしやす!」

「よろっ、宜しくお願いしますっ」

今日なんかあったの?と聞く前に、二人して真っ赤な顔して平伏された。あと服装に目が行って気づかなかったけれどなんだか妙にでかいバッグを抱えているけど何か仕事道具が入ってるのか?

「あー、うん…?こちらこそ、ってかまあ、そんな緊張しないで座ってよ」

「は、はい」

おかしい。頭の中の信号機が黄色を灯した。

出会った当初から比べると、言葉遣いとか身だしなみとか大分都の人っぽくなってきたけど別に彼女らは普段こんなのは着ない、つか見た事無い。陽(太史慈)から何か罰を受けているのか?

スルーするべきか?いやさすがにそれは無理だ、不自然過ぎる。

 

「今日はまた、随分そのー、セクシーだね?」

「その…姐さんから、一刀兄貴の御召しなんで『それなりのカッコしろ』って」

「自分ら、これぐらいしか持って無いんで」

それなりのカッコというものは普通はこうじゃないのでは?確か軍の平服とかあった筈だし。

縮こまって答えた秀(張英)ちゃんの輪チラを思わず凝視してしまっていたら、何か言いたそうな顔で俺の方が凝視されていた事に気づいて慌てて視線を逸らす。スケベでごめんなさい。

「…………」

何か空気がおかしい。二人して上目遣いでちらちら俺の方を見ながらも何も言わない。いや、確かに俺が呼んだんだから俺が話をするのは当たり前っちゃ当たり前なんだけど。

「えっ、えっとさぁ、急にお呼びだてしてして申し訳なかったね。大体どういう件だか、陽(太史慈)からは聞いてるのかな?」

「はい…全部、聞いてます」

良かった。話が通ってる事を聞いてホッとした。昇進の話だし、お礼に?陽(太史慈)が余計な気を廻してセクシーな恰好しろって言ったんだろう。

「あっそう、それなら良かった話は早いね。じゃあ早速だけど…」

「は、はい…!…おい」

「あ、ああ…」

…んんん?

なんで二人は立ち上がって卓の向こうからこっちに移動して来てるの?お酌は差し向かいでも出来るでしょ?つかお銚子も持って無いしなんでそのバッグ持ってくるの?つか君らまだ飲んでない筈なのに顔真っ赤で既に出来上がってない?

「一刀兄貴…」

「あ、兄貴っ」

「はい!?」

両サイドに座られてそれぞれに腕を取られた時点で、脳内信号機がオールレッドになった上にサイレンまで鳴り始めた。

 

「生協の貸し出し品っすけど、あたしらで思いつく限り御用意したんで、そ、そのっ…め、滅茶苦茶にして下さい…!」

「あたしはっ…で、出来れば優しく…!」

「な、何で!?」

絢(于糜)ちゃんがバッグの紐を解くと、中からゴロゴロと出てきたのはいわゆる桐花(荀攸)とかがそういう事用に使う革製の拘束具やら縄やら大人の玩具やら。

「ちょっと待とうか!?うんちょっと待って!?」

両方からしな垂れかかられながら耳元に熱い息を受けて、動転しながらも慌ててストップをかける。

前にもあったよこういうの!?うん、これ絶対なんか誤解あるやつだ!ここは冷静にね!冷静に誤解を解くよ!俺皇帝だからね!

 

「い、いきなりお預けプレイっすか…」

「ち、違げえよ、焦らしプレイってんだよ…」

「多分どっちも違うなぁ!?てかさぁまず今日の用件の確認をしようか!?」

「へ、へぇ」

うん、落ち着いて、冷静に。行き違った原因を整理しよう、絶対この二つのどっちかなんだから。

「えっとまず一つ目は、仲達さんの(俺と会食する為の)『お食事券』を陽(太史慈)が手配してるのを黙っててねって話でいいかなぁ!?」

「はい、『汚職事件』の事は誰にも言いません!」

「姐さんの顔潰すような事はしません!」

「もう一つはさぁ君達の腕が評価されて、御褒美に大して広くないとこで悪いんだけど『領地』をプレゼントって事なんだけど誤解無いよねぇ!?」

「は、はいっ!(部屋の)広さなんて関係無いっす!兄貴自ら、あたしらに『凌遅』い、頂けるんならっ…喜んでお受けします!」

「あっるぅぇぇぇぇぇぇ!?おっかしいなぁ合ってるねぇ!?全部合ってるねぇ!?」

「自分ら、もう覚悟決めてきましたんで…」

「覚悟!?あと領地受けるのに手錠着ける必要ないよね!?」

「え…?ま、まず自分の立場の分からせが一手目だって…」

「あっ…おい、最近の(凌遅)はこういう道具使わないのもあるって書いてあっただろ」

「あ、そ、そっか…じゃ、ま、まず、『御挨拶』から…」

「ちょっと待って何脱がそうとしてるの!?何に挨拶しようとしてるのかなぁちょっと待って待って待って!!」

 

 

***********************

 

 

「…申し訳ないっす」

「マジすんません…」

「ぜーっ…、はーっ…、分かりあえて何よりだよ…」

目の前で再び平伏する二人を前に、凌遅する側だったはずらしい俺の方が半脱ぎにされながらも辛くも互いの理解が通じた事に安堵する。

「陽(太史慈)にそんな悪事のもみ消しとかさせたりしないから。で、君らには税制とか法令とか変わっちゃって領内なら何してもいいって訳じゃないけど、ま、自覚を持ってもらうって意味で長になってもらって、今後も頑張って下さいって事だから」

「「…はい」」

「うん、じゃ今日は紛らわしい事して悪かったね。ゆっくり休んでよ」

流石にここから飲み直す気にはならないだろう。しかし俺が脱がされかかった服のボタンを留め始めても、なぜか二人は顔を見合わせるばかりで動く気配が無い。

と言うか、飲んでない筈なのに未だに顔赤くて息荒くない?

 

「いやもう…無理っす」

「自分ら初めてだったんで…ここ来る前に処方箋貰って、生協で買った合法なやつキメちまってて」

「…は?」

合法って何が?

「身体熱くて…もうここまで来たら、一刀兄貴に貰ってもらうしか」

「合法なやつなんていつから売られるようになったの俺聞いてないんだけど!?つか先走り過ぎじゃない!?」

「…一刀兄貴、さっきあたしの事か、可愛いって、言ってくれましたよね…?」

「言ったよ言った!確かに君ら凄い可愛くなったうんそれは認めるでもね!?」

「よ…良かった…ぁ…ううっ…ぐすっ…」

「良かったな…!やっぱり言ってくれたじゃねえかよっ、お前は可愛いんだって…ふぇっ…じ、自信持てよ…うぇぇ…!」

「ぐすっ、へ、へへっ、お前だって可愛いって言われてるじゃねえか」

「そ、そんな事ねぇよ…一刀兄貴、あたしなんか、可愛くないっすよね?」

「いや可愛いよ!でもね、何か感動的なやりとりっぽいのしながら馬乗りになって人の服脱がすのはちょっとどうかな!」

「か、可愛っ…え、えへへっ、あざっす!…もう自分、兄貴の言う事なら何でも聞きます!」

「自分もなんでもします!も、もう熱くって…あたしらも脱いでいいっすよね?」

「何でも聞くって現在進行形で俺の言うこと聞いてないよねぇぇぇぇぇ!?」

 

 

***********************

 

 

昼食に庁内食堂で丙定食を受け取って、空席を探すと見知った奴らの顔があった。

「よう」

「あ、姐さん…ちわ」

「…ちわっす」

並んで食っている二人の前にお膳を下ろし、薬缶からぬるい茶を注ぎながらふと昨日のやり取りを思い出す。あの後、こいつらは一刀様から領地の辞令を貰った筈だった。県長だったかな、もっとその下だったかな、忘れちまったけど。

「おっ、そうだったお前ら。まぁ何はともあれ、おめでとさん」

「あっ、あざっす」

「あああ有難う御座います、その、マジで」

「お、おう?俺は何にもしてないけどな」

アホなこいつらの事だからさぞ調子に乗ってるんだろうが今日ぐらいはいいか、と思っていたら二人して真っ赤な顔してぺこぺこと頭を下げ続けている。一刀様の事だからちょっとおだて気味に伝えて下さってたかと思ったけど、意外と気を引き締めろみたいな事を訓示して下さったのかも知れない。まぁ、調子くれてんじゃなければ今日はちょっと位褒めてやるか。

 

「(官職が付いて)これで漸くお前らも一人前の女だな、どうよ気分は?」

「そ、その…最高っした」

「マジ幸せっす…」

「一刀様にはちゃんと御礼言ったか?」

「も、もちろんっす!」

「飲み過ぎなかっただろうな?」

「あ、はい、その…全然。兄貴が、無理して飲まなくていいって」

「自分ら、の、飲ませて下さいってお願いしたんすけどっ」

「…あァ?じゃ舐める位だったのか?」

「…………!」

馬鹿二人は真っ赤な顔してこくこくこくこく、と壊れた玩具のように縦に首を振る。こいつらが酔っぱらうと面倒臭いのは一刀様も御存じだから、余り飲むなと注意されたんだろうか。と言っても、こいつらの酒好きは優しい一刀様がちょっと注意された位で飲むのを止めるような程度じゃなかった筈だけどな。

「とか言って、お前らの舐める程度って一体どれくらいだよ?」

「いっ、いえマジでっ!ちょこっと、ぺろぺろってさせて貰った位で!」

「そ、そうっす、姐さんみたいに『ごっくん』とか全然してないっす!」

「ホントかぁ~?」

「本当っすよ…つか…すげえがっつり飲まして頂いてる姐さんが羨ましいっすよ、なあ?」

「ええ…やっぱ、姐さんはちょっと貫録が違うって言うか」

「そ、そうか?」

こないだは確かに一刀様との御席にこいつらも連れてったけど、あん時俺そんなに飲んだっけ?まぁ、一刀様との席でも俺が見張ってられる時ならこいつらにも少し飲ましてやるか。

「おう、じゃあよ、今度俺が一刀様とそういう(酒を飲む)事になったらよ、御前等にも飲ましてやるからついて来いよ」

「えええーっ!?」

「い、いいんすかっ!?」

「お、おう?」

なんだこの食いつき?こないだ飲んだ時は妙に大人しかったから来たくねえのかと思ってたけどな、遠慮してたのか。

「水臭ぇな、俺と御前等の仲じゃねえか。まぁまず俺が(酒の)飲み方のお作法を見せてやるから、それ見てしっかり真似するんだぞ?ハハハハハハハ!」

「「はい!」」

 

 

 

 

(この約一ヵ月後の某夜にとんでもない羞恥プレイをさせられる羽目になる事に俺は全く気付いていなかった)


 
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