この作品を故・曽我部和恭さんに捧ぐ。ご冥福をお祈りします。
* *
「北郷様、玲二様、急いでください。正体不明の部隊が邸宅内に・・・」
「おいおい、董卓軍は何してるんだよ!?」
董卓と接触し、洛陽にいる董卓軍全て投降せよとの命令が下った矢先だった。
周泰が屋根の上から降りてくる。
董卓と賈駆は洛陽を出る準備を終え、今から出発といった時だった。
「特徴は?」
「白装束に・・・化け物のような執拗さです」
「白装束だぁ?」
第九話 Climaciella magna ~悲哀蟷螂~
いつの間にか白装束で邸宅の庭は埋まりきっていた。
とんがり帽のような目出し帽に闇夜に似合わぬ白装束の群れ、群れ、群れ。
董卓軍の警備が必死に応戦してるものの、その光景は異様な物だった。
「おいおい、Dawn of the Deadじゃあるまいし!」
玲二が包囲網を抜けてきた白装束の顔面に蹴りを入れる。
その隙に一刀は左腰に刺してあったナイフを左手に構える。
「お、久々に見られるか?」
「閉所戦闘・・・しかもこの乱戦だ。仕方あるまい。それに・・・これはかなり嫌な予感がする」
そういって襲いかかってきた白装束の腕を取り、壁に思いっきり叩きつける。
「奇遇だな」
続いてきた白装束の顎と思われる部分を横から殴打し、相手の首がやや自由になったところで、腰と回転の力を生かした回し蹴りでドミノ倒しを実演する。
その隙に玲二も左手のトンファを取り出し、右手にはボウガンを取り出す。
「おいおい、ボウガンとは随分良い物を作ったじゃないか」
「試作でぶっ壊れやすいけどな。なけなしの給料使っての自費制作だ・・・泣けるぜ」
戯れ言を言いつつもしっかり仕事をする。それがジェームス・R・伊達・・・ゴーストの良いところだ。
襲いかかってくる白装束を蹴り飛ばしつつ、文字通りの血路を切り開く。馬岱と周泰は退路の確保に動いているはずだ。
「董卓さま!ここは我々にお任せを!!」
「またお会いできることを心から願っております!!」
「皆さん・・・」
「くそっ・・・」
これが洛陽で悪政を敷いているなどと噂が流れるような少女だろうか。混沌という情勢(Scene)を恨みながら勇士達を見送る。
そして兵達との信頼によって邸宅から城壁までの最短距離が開け放たれる。
しかしその最短距離は白装束によって埋まっていた。その白装束達の上空に一人の男が浮遊している。あちらの世界の技術である両手が金属の義手が目立つ。
「貴様・・・マグナか!?」
??/CodeName:Magna
ImageCV:中村悠一
「誰だ?」
横にいた玲二は歯をむき出しにし明らかな敵対の意志を見せている。
「元アメリカ特殊作戦軍カウンターテロ部隊のサイキッカーだ・・・」
一刀と玲二がそれぞれM9とFive-seveNを空中浮遊しているマグナに突きつける。
「そうか・・・十常侍が董卓を排除しようとしていたが・・・」
「ESP能力で操るとはやってくれる」
「我々はこの世界を綺麗にしやすくすればいいのだ。貴様らも知っているだろう、我々の目的を・・・この外史を混沌に導くということを!」
義手がやかましい音を立て漆黒に突き上げられる。
「戦争屋風情が、何を偉そうに」
「私は覚えてるぞ・・・スネーク。15年前、貴様に奪われた両腕の痛みを!」
「私を・・・知っている?両腕を奪った?」
一刀には記憶がなかった。
彼の怪訝な顔を尻目に、マグナは玲二に向き合う。
「ゴーストか・・・久しぶりだな」
「久しぶりだと!?なら今すぐ今生の別れにしてやる!!」
ゴーストが腰から金属の塊を取り出す。人間工学に基づいて作られたサブマシンガンP90だ。
爆音は真夜中の洛陽に響き渡る。
「スネーク!こいつは俺がやる!」
「Stop!Don't forget Sneaking Misson!」
P90の銃弾はマグナに届くことなく撃ち止む。
「俺たちが今成すべきは董卓と賈駆を無事に救出することだ!」
「見えるぞ・・・お前の感情が・・・」
理論の分からない空中浮遊を終えたマグナが地上に着地する。
「怒り・・・憎しみ・・・人が生み出しやすく、それでいて最も力が強い感情だ」
「悪い、一刀・・・あいつの言うとおり、俺は自分の感情を抑えきれねえ」
「・・・分かった。俺が彼女たちを誘導する。後で合流しよう。ESPに喰われるなよ」
「・・・お前もな。さっきから一人称俺になってるぜ」
彼らしい戯れ言だったが余裕があるようには聞こえなかった。
一刀は董卓と賈駆を庇うように自分の後ろに来るよう促し、僅かにあいている隙を見つけその場を後にする。
その後ろ姿を確認し、マグナと白装束の群れに向き直った。
「さあ・・・仇を討たせてもらうぞ!!」
「それに似たものを・・・あの人も使っていました」
董卓がハンドガンを見てそう呟いた。
「この武器は相手を殺した感触が残らない・・・悪い武器だ」
「そうじゃなくて、あんたがあいつらの仲間じゃないかって疑ってるのよ!」
「・・・あ」
賈駆の指摘に間抜けな声を上げる。
完全に抜けていた。というか包囲網も抜けて気も抜けてしまっていた。
「・・・まあ今の反応を見ると違うみたいね」
「何で分かる?」
「貴方が力説したじゃない。信用しろって」
その言葉に妙な納得を覚え、笑いを漏らす。
「私の安い言葉を信用してもらって感謝する。賈駆」
作戦中だが思わず笑みがこぼれた。あちらの世界には兵士の精神を管理するメンタル小隊が存在するくらい、精神状態は重要だ。
それにこの雰囲気は嫌いじゃない。
目の前に脱出地点を確認できた。周泰と馬岱がこちらに手を振っている。
「玲二が敵を抑えている。二人は董卓と賈駆を頼む」
「りょーかい!」
「わかりました!」
* *
「マグナぁ!!」
P90が火を噴き続ける。
連射力も貫通力も高いサブマシンガンだが、マグナには当たらない。
白装束が壁になって彼を守り、そして彼に肉薄してくるのだ。兵器は勝っているが数の暴力では負けていた。
「ゴースト!撤退するぞ!」
ハンドガンを数発発砲しながら一刀が戦場に戻ってくる。
それも白装束の壁に阻まれマグナには届いていない。
「きりがない、撤退するぞ!」
「畜生が!!」
腰にぶら下げていた茶飲みのような形状をしたものをマグナに投げつける。
「グレネードか・・・」
若干の焦りを見せながら両手の義肢をやかましく鳴らせながら後退する。
しかし爆発したのはスモークグレネードだ。あたりに白煙が立ち籠もり視界を遮る。
その煙が晴れたときに御使い二人は姿を消した後だった。
「まあいい、戦争の種は植えた。もう奴らに用はない・・・」
マグナがそういうと白装束が気を失ったかのように倒れていき、最後の一人が倒れたとき彼は闇夜に消えていった。
* *
「すまん・・・歳柄もなくカッカしちまった」
「・・・いや、構わんよ」
玲二があんなに激怒することはない。人当たりがよく、人の機嫌を取るのも得意だ。
それを考えるとよほどの因縁だということだ。
「しかし、あいつが糸を引いてるとなると・・・袁紹と袁術を糾弾することは危険だな」
「ああ、連中と手を組んでいる・・・いや利用されているとも考えられるしな」
洛陽近くの茂みに隠れながらアホ君主二人を思い浮かべ、言葉を言い直す。
マグナは外史を混沌に導くと言っていた。となるとこの戦いは彼に仕組まれたものだと考えた方が良いだろう。
董卓を嵌めて今の地位と洛陽へ導いた。
そして董卓の地位を妬んだ袁紹、袁術をつけ込み、反董卓連合を組織させる。
その話を振り出しのマグナに戻せば、袁紹、袁術を糾弾する前に何か対処される可能性があった。何せ彼には・・・。
「サイキッカー・・・ESPってもんは厄介だな」
「くそっ、裏で糸を引いてる奴がいると思っていて・・・何で正史の連中を考えなかった」
「抜かったな。うかつに行動するとこっちの立場がない」
思わず玲二が苦虫を噛む。
「・・・目標は達成できた。そこはよしとしよう」
馬超軍の陣が見えてきた。
陣の入り口では馬超が手と結ばれた髪をこちらにぶんぶん振っている。
御使い達の長い夜は終わった。
「これはこれは・・・面白い物が見られた」
洛陽の城壁に一人、白のローブに全身を隠した人物が佇んでいた。
まだ彼が歴史の表に出てくることはない。
* *
蟷螂「別に私は、女男のパイロットだったりめっちゃ硬いホムンクルスだったり、ましてや眼鏡をかけた超絶イケメンパイロットではない!!」
玲二「一気に中身がわかるな」
蟷螂「そう!これこそ愛だ!!」
玲二「そーですねー(棒読み)」
Tweet |
|
|
27
|
1
|
追加するフォルダを選択
この物語について
・真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は話の本筋にはあんまり関係ありません。
・ならその設定を使うなよ。
続きを表示