No.101423

真・恋姫†無双 金属の歯車 第八話

この物語について
・真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。
・クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は話の本筋にはあんまり関係ありません。

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2009-10-17 02:44:50 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4242   閲覧ユーザー数:3710

「さて虎牢関を抜けたわけだが・・・」

「董卓さんが居ると思われる洛陽はもう目と鼻の先です」

「そうだ、だがここで大きな問題が起こった」

 さも困ったのを強調するように腕を組む。

「放った斥候が一切帰ってこない。よって内部の状況が一切分かっていない」

 そこまで言うと雛里が洛陽の都市図を開いてくれた。気配りに感謝し、数カ所に駒を配置する。

「配置した箇所から斥候が入り込んだ。命じたのは洛陽の詳細図と董卓の所在だ」

「一切帰ってこないというのはどういう事なんでしょうか?」

 朱里と雛里が怪訝そうに都市図を見る。

「相手の対諜報術が優れているのか・・・それとも」

「何かある・・・ということですかな?」

 星の発言に大きく頷く。

一番の疑問点はそこだった。確かに斥候が中に入れば軍の内情、どこにどれだけ兵が配備されているか。兵糧はどの程度か。すべてを理解できる。

知られたくないといえ、いくら何でも穴がなさすぎる。

「袁紹のお姉ちゃんはなんていってるのだ?」

「袁紹なら慎重になってるぞ」

 大天幕の入り口で玲二が顔を見せている。横には長い黒髪の少女が控えている。

「いくら何でも静かすぎる」

「・・・というとそっちもか」

「ああ、内情がさっぱりだ。せっかくここまで来て情報を貰いにきたんだがな・・・無駄足だったんだな。

その件に関してはこの娘に聞いてくれ」

 そういって背中に隠れがちだった女の子を自分の前に引き出す。

おずおずとした態度で自己紹介を始めた。

「は、初めまして、周泰といいます」

「そういえば劉備軍では俺も初対面だな、玲二・・・伊達玲二だ。それと・・・さっき陣の入り口で会ったんだが」

「何度も済まない・・・劉備殿」

 聞いたことのある声。後ろを振り返ると西涼の馬超もお目見えのようだ。

「馬超・・・と隣はどなただ?」

「私のいとこにあたる馬岱だ」

「よろしく~!」

 ちょうど馬超を小さくして無邪気になったような雰囲気だった。

「まさかいとこを質に入れに来た訳ではあるまい。何のようだ?」

 何だそのいいようは、と思いつつ愛紗の言葉に相づちを打つ。

「・・・実は劉備殿が仁徳に篤いと聞いて頼みがあるんだ」

 そういって馬超が頭を下げる。その横では危うく質に入れられそうだった馬岱も頭を下げている。

「人払いが必要な話らしいな」

 申し訳なさそうに笑って桃香以外と孫策軍の二人を下がらせようとする。

嫌そうな素振りを誰一人見せないのはこの軍のいいところだ。

「いや、きっと劉備軍なら大丈夫だ。だけど孫策軍が・・・」

「違うな。玲二達、孫策軍はこの連合の真相を知りたくて来たんだろ?」

 そんなに長いつきあいではないが、彼の事はよく分かっているつもりだし、孫策軍の事情も承知している。袁術と戦う大義名分が欲しいのだろう。

何より玲二の顔が若干にやけているのがその証拠だ。

「何、女性の暴露話ほど興味深いものはない」

 そう発言した彼の顔面に一刀の足がめり込んだ。

 

 

「董卓にあんな悪評が立つとは到底思えないんだ」

「・・・その話も分かったし、貴女が義理堅いのも分かった」

 先の情報通り、董卓が暴政を行っているという事実はなく権力抗争に踊らされているだけであった。

馬騰と董卓の父は親交があり、貴重な情報がもたらされた。馬超たちは事の真相を確かめるべくここまで来たのだ。

「馬超殿、斥候が戻ってこないのはどう考える?」

「それに関しては反董卓の連中じゃないかと思う」

 馬超はこちらの問いにはハキハキと答えてくれる。彼女が心配なのだろう。

「十常侍の生き残りか?」

 十常侍の張譲によって董卓は洛陽に導かれたはずだ。

「いや、袁紹と袁術が文字通り皆殺しにしてるはずだ。生き残りなんていないだろ」

「・・・ねえ、ご主人様」

 桃香の呼びかけもありいったん全員が顔を上げる。

円卓には桃香、愛紗、朱里と雛里、玲二と周泰、それに馬超と馬岱だ。

「ご主人様が言ってた・・・袁紹さんを失脚させるって本当にできるのかな?」

 桃香の一言に玲二が口笛を鳴らす。

「お前、でかいこと言うなぁ。だが劉備さんよ、今の状況じゃそれはちょっとしんどいな」

「・・・裏で誰かが糸を引いているから、ということですか?」

「お、その年で随分とご聡明だな、孔明ちゃん。良い環境作ったな、一刀」

 ふんっ、というかけ声と共に、素晴らしく腰の入った拳が腹にめり込む。

「ぼ、ボディは勘弁・・・」

「なぁ、何とかならないか、北郷殿?」

 虫の息の玲二を他所に馬超が懇願してくる。

「董卓の事情は彼らの不明もある。同情の余地はない」

「なんか、だがって続きそうな言い方だな」

「そうだな。私は朱里や玲二の言う裏で糸を引いている・・・黒幕を知りたい。加えてその懇願は私ではなく桃香と孫策に言うべきだ」

「私は董卓さんを助けたい」

 間髪入れず桃香の声があがる。

「お待ちください、桃香様。もし董卓を招き入れたことがバレたらどうするおつもりですか?」

「袁紹さん袁術さんは目先の野望の達成を目指してるから・・・細工さえすればそう簡単に気付かないと思う」

 珍しく桃香自身が反論する。

仁義に生きる彼女なりの策略だ。

「少なくとも孫策軍は何も口を出さない。この件に関しては俺に一任されているからな」

「曹操さんもおそらくこの後の野望のために連合に参加しています。おそらくこういった権力闘争には興味がないと思います」

 玲二と朱里が付け加えた。

「それに曹操さんは袁紹さんと水面下で対立しています。もし仮に対立しても説得すればこちら側に付いてくれると思います」

「白蓮は普通だから、普通にこっちに付くだろうしな」

 続いて雛里と一刀で愛紗を言いくるめた。どこかから普通って言うな!という幻聴が聞こえたが気にしない。

全員からの説得を受けた愛紗は、ううっと言って縮こまる。

そんな愛紗の頭を撫でてやり玲二と視線を交わらせる。

「一刀、話は纏めてやったぜ?どうせ最初から助けに行くつもりなんだろ?」

「ふっ、つきあいがあると考えを読まれて癪だな」

 信頼で結ばれている御遣いは拳を突きつけ合った。

 

 

「ご主人様、いくらなんでも危険すぎます!」

 愛紗の進言を他所に、馬騰軍の陣内で装備の確認をする。右足、左胸、右腰の小刀、刀。そして・・・腹の装甲に収めているあちらの世界の武器。

面子は一刀、玲二、馬岱に周泰で董卓救出作戦は行われることになった。いずれにせよ、あまり顔が割れていない方が良いとの判断だ。

闇夜に紛れて洛陽に潜入。董卓を説得し、自軍で保護する。口説き文句は多々用意してある。

初めて黒のスニーキングスーツが役に立つときが来た。いつもの袴は脱ぎ、この世界に降り立ったときの服装をしていた。

「大丈夫だ、関羽ちゃん。こいつほどこういうのが得意な奴はいないよ」

「そんなはずは・・・」

「おい、一刀。自分の身の上話、全然してないだろ」

 少し怒気を含んだ玲二の口調。彼にしては珍しい。

「言う必要・・・というか機会に恵まれてなかった。軍の重鎮が行かないとあっちも動いてくれない」

「主、女性の秘密は魅力を引き立てますが、男の秘密はどうかと思いますぞ」

「お、趙雲さんは分かってるねぇ」

「馬鹿なこと言ってないで出発するぞ」

 すっかり皆と仲良くなった玲二に少し嫉妬しながら、彼の後頭部を小突く為に立ち上がる。

「よし、馬岱殿に周泰殿。宜しく頼む」

「はい!宜しくお願いします!御遣い様!」

「宜しくです!」

 

 * *

 

「静かすぎるな」

「守る気がないのも気になる」

 洛陽を護る城壁の上は警備すら行われていなかった。

警備兵を一人引っ捕らえ、董卓の居場所を吐かせたかったがそうはいかないらしい。

「どうだ・・・明命?」

玲二がもっとも前方で情報収集をしている周泰に呼びかける。

「はい、警備が多いところに董卓が居ると思われます」

 そう言って一件の豪邸を指さした。

「あそこが董卓の邸宅と思います。警備の数も多いですし・・・慌ただしいです」

「ホントだ?逃げる算段でもしてるのかな?」

 玲二とは違い空気を読んでくれるお調子者の馬岱が目を細めながら邸宅を見る。

「逃げる算段・・・玲二、いいタイミングかもしれんな」

「おう」

 タイミングという単語に首をかしげる二人を他所に、悪巧みを始める。

董卓の邸宅は警備が多いものの、潜入できないわけではなかった。

そして御使い二人が行動を開始した。

 

 

「月・・・早くしないと連合軍がなだれ込んでくるわよ」

「詠ちゃん、ごめんね。こんな事に巻き込んで・・・」

「張譲から誘いがあった時にもっと注意していれば・・・」

 小さな部屋で少女が二人、後悔の時間を過ごしていた。

二人が顔を伏せたとき、外から僅かだが人のうめき声が聞こえる。警備の者が倒されたのだろう。

「誰!?」

「危害を与えるつもりはない。入ってよろしいかな」

「そんなこと、信じられる訳ないでしょ!」

「どうぞ・・・」

「月!?」

 儚げな少女の言葉に眼鏡をかけた少女が思わず声が上がる。

扉から一人の男が入ってくるのを確認すると眼鏡の少女は身構える。

「劉備軍の北郷一刀だ。天の御遣いと言った方が判るかな」

「・・・その御遣い様が何のご用かしら?」

「詠ちゃん、こんな中、会いに来てくれたんだから・・・」

「すまんが事は急を要する・・・董卓殿と・・・賈駆殿でよろしいかな?」

「・・・はい」

 董卓のうなずきに少し安心して一刀は言葉を続けた。

「西涼の馬超殿、孫策殿、そして我らが劉備の懇願から、董卓殿を・・・保護しにきた」

「・・・へ?」

 賈駆が間抜けな声を上げる。何かの交渉か暗殺か・・・と思っていただろう。

「詳しく説明してもらっても良いですか?」

 目の前の少女は儚げだったが、その眼差しは強いものだった。

「我々連合は、帝がおられる洛陽において董卓殿が悪政を敷いている・・・との風評から袁紹、袁術の甘言に乗りここまで参りました。

しかし我々劉備軍と孫策軍は董卓殿の悪政の事実はないと判断していました。無論最初は貴女を利用して袁紹、袁術を糾弾しようとしましたが、状況からそれは少し困難だと思われました。しかし馬超殿の情報と、我が君主の懇願もありここに来た次第であります」

 下手な敬語だったが、状況説明は十二分だった。

相手の質問を遮るために再び言葉を続ける。

「加えて・・・そちらには利があります。このまま洛陽から撤退し、涼州に戻られたとしても再び連合と相見えなければならないのは確実。しかしここで貴女が何らかの方法で姿をくらませれば・・・故郷を戦火に巻き込まずに済みます」

「あんたの言い分はわかったわ、けど・・・信用できないわ」

 一番聞きたくない・・・だが想定した言葉だった。

これに関しては真心でなければ伝わらないものだった。

「確かに。十常侍の張譲を信用した結果がこれだからな。言い分はわかる」

 敬語で話すのを止めた。敬語は不必要に距離を作ってしまう。

「だが、信じてほしい。旧友の馬超殿と我らが君主、劉備を」

 目は口ほどにものを言う。董卓の目を見つめ、自分たちの想いを伝えようとした。

「一つ聞かせてください」

「ご自由に」

「あなた達に・・・利はあるのですか?」

「孫策軍に関しては・・・袁術と戦うための大義名分。劉備軍は・・・ないな。かといって君を処罰しても何か得があるわけでもない。そうだな、あるとすれば・・・」

 少し虚空を見つめ必死にくどき文句を考える。

玲二だったらあれこれ浮かんでいそうだが・・・生憎慣れていない。

「自己満足・・・か」

 その言葉を噛みしめるように董卓は目をつむり、賈駆を見つめた。

「詠ちゃん。私、この人を信じたい。信じてみたい」

「・・・わかったわ。あんたの策を聞かせてちょうだい。天の御遣い」

「まず、洛陽に二人が死んだとの風評を流す。死因は尾ひれはひれに噂ででっち上げられるだろう。

肝心の二人は馬騰軍の陣営までお連れする。幸い先鋒は馬超軍と劉備軍だ。馬騰殿は董卓殿の父上と親交があることから馬騰軍に長く居られては困るので、服装を変えるなりばれない細工をして劉備軍陣営まで来てもらう。劉備軍は袁紹軍から若干の兵を借りてはいるが、名前を出さなければ大丈夫だ。顔に関しては問題ない。連合の軍議の際、二人の顔を知っているのは袁紹、袁術の二人だけというのは確認しているし、一端の兵が知るよしもない。

兵に関しては投降してもらう。投降すれば、さすがの袁紹、袁術も殺しはしないだろうし、最終的には故郷に帰されるだろう。

後は・・・そして二人には・・・名を捨ててもらう。それとその覚悟だ」

「捨てます」

 儚げだが・・・どこかしっかりとした言葉だった。桃香の時と同じく、これが董卓という人間の重さなのだろう。

「悲しいけど・・・それで周囲の人を巻き込まないで済むのなら・・・」

「ありがとう。では早速お連れしよう。外では馬超殿の従兄弟の馬岱殿、孫策軍の軍師と間諜が控えている」

 そういった矢先、扉が開け放たれる音がする。腹のホルダーに収めていた銃を扉の方に突きつける。

「俺だ、一刀。・・・この調子だとナンパはうまく言ったようだな」

 両手を挙げた玲二だった。いい間だ。

「説得は成功した。急いで離れるぞ。夜が明ける前に馬超軍陣営まで送り届けるぞ」

 

 第八話 月華流詠 ~SnakingMisson~

 

 

おまけ:次回予告

外史は存在する。何故存在する?必要だったから?誰かが望んだから?

外史は予想を超える。答えは出たが解法のわからない数式のように。

そして正史は、外史を飲み込み始める。

 

次回 第九話 Climaciella magna ~悲哀蟷螂~

 

蛇と幽霊は、蟷螂に出会う。


 
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