寄せられたご意見に対する返答:
・ちんこが空気気味のようだが、彼は主人公ではないのか?
上記質問に対する答えですが、本SSの題名のとおり、
<一刀は主人公ではございません>。
あくまでも主人公は孫堅です。
一刀はハルヒにおけるキョンのような立場であるとお考えください。
張合と徐晃に関して:
張合(ちょうこう)と徐晃(じょこう)につきましては、
郁さんの作成された、No.84571[恋姫†徐晃【創作】]
およびNo.79982[恋姫†張合【創作】] をご参照ください。
尚、ご本人様あてに、すでにメッセージは出しております。
合 = 合の右側に、部首「おおざと」
張合 字 儁乂(しゅんがい) 真名 悠(ゆう)
徐晃 字 公明(こうめい) 真名 菖蒲(あやめ)
第十章
-1-
~乾宮 玉座~
煌蓮「蜀だぁ??」
西方、蜀にて新たな皇帝を名乗るものが現れた。
この一報を華琳より耳にした文台は、開口一番、そういぶかしんだ。
煌蓮「蜀ってぇと、なんだ、あの西にある辺境の国か。
あそこらあたりったら、不毛の荒野ばっかで、
黄巾党の残党どもがいまだに跋扈してるどうしょうもない場所だろ? 何で今頃になってまた?」
冥琳「それが… 文台様の政を良しとしないものたちがその西方の蜀に集結し、
大規模な反乱軍を挙兵しようとしているようなのです」
煌蓮「反乱軍…ねぇ。 まぁ遅かれ早かれそういった連中が湧き出てくるってこたぁ
あたしもある程度予測してたけど、何でまたいきなり?」
秋蘭「なんでも、大義名分は、『孫呉に正当な王を』。
恐らくこれは蓮華殿の事を指しているのであろうと思います」
煌蓮「蓮華ぁ? あいつぁ王として立つにゃ力量不足だよ。 まだまだこれからってとこさ。
坊主と勝ったり負けたりどっこいどっこいの仕合しか出来んってぇのに」
冥琳「文台様…魏呉以外での国におけるあなた様の評判は、決して芳しいものではありませぬ。
むしろ、稀代の暴君や独裁者として名の通っている面が多いのです」
煌蓮「はんっ、あたしが暴君ねぇ。 そんな戯言は一度建業まで赴いてから言えってんだ。
あたしゃ民草を無碍に扱ったことなんざ一度としてないと胸を張って言えるよ」
秋蘭「ですが、建業や洛陽では名君で通っていても、
ほかの国々ではえてして、文台様の凶暴な側面のみが誇張されて
一人歩きしているのが現状なのです。 なにとぞご理解いただきたく」
煌蓮「ふ~ん、まぁ納得いかない部分もあるけど、それが向こうさんの主張ならそれも仕方なかろうね。
で、あちらさんは、このあたしに何を望んでいるんだい?」
冥琳「帝位の禅譲、および政への不関与、以上の二点です」
煌蓮「そいつぁ無理だね。 あたしらにゃまだまだやるべきことがテンコ盛りなんだ。
治水、街道整備、農地開拓、治安回復…
それらを全部片付けてからじゃないと、隠居なんでとてもじゃないけど出来やしないさね」
秋蘭「では、戦を起こされるのでしょうか?」
煌蓮「まぁ、どっちにしろドンパチは避けられないだろうねぇ。こっちからは仕掛けやしないけれど、
向こうが喧嘩上等って言うんだったら、それもまた已(や)む無しってところかね。
で、宣戦布告はこっちに寄越されたのかい?」
秋蘭「御意。先ほど建業の城門前に、このような旗が」
煌蓮「どれ、見せな」
煌蓮「…なんだこりゃ? これがあの、劉表って奴の牙門旗なのかい?」
冥琳「推測の域を出ませんが、恐らくは」
煌蓮「真っ茶っ茶に、深緑で『劉』か… なーんか、不気味なものを感じるね」
秋蘭「いかがいたしましょうか、文台様?」
煌蓮「そうだね… 全軍に通達! 蜀とのドンパチが始まるから、軍備を整えろって伝えな!
それから三日後、全武将を対象に御前試合を開く! 日頃の鍛錬の成果を存分に発揮せぇ!
いいね!!」
二人「御意!!」
蜀との戦が始まる。
相手の正体はまったくの不明。
ただ彼らの中に、あの趙雲や呂布、ほかには西涼の騎馬兵団が混じっていることは確からしい。
魏呉全軍に発布されたこの通知を目にした俺たちは、いつも以上に調練と仕合に余念がなかった。
城内のあちこちで組み手の剣戟の音が聞こえる。 ガキン、ガキンと、まるで金槌でも打っているような音だ。
北の城壁では愛紗と春蘭、東の城壁では鈴々と季衣、西では、思春と明命、
南では凪・真桜・沙和の三人が筋肉二人組みと乱戦を繰り広げていた。
華琳と秋蘭の二人は兵糧の確保、祭さんと冥琳は武器の調達に向かったため、城内にはいない。
白蓮と霞は、元々率いている部隊が騎馬軍団のため、
建業郊外の調練場まで騎兵を率いて出て行った。
で、残った俺たちボンクラ共はというと…
蓮華「ハァ~ッ、ハァ~ッ、ハァ~ッ、ハァ~ッ……」
一刀「ゼェ~ッ、ゼェ~ッ、ゼェ~ッ、ゼェ~ッ……」
雪蓮「ほーらぁー、どーしたのよ二人ともぉー、そんなんで息が上がっちゃったら
戦いについていけないわよー。 さっきから勝ったり負けたりの繰り返しじゃない」
一刀「…るっぜ、こっちは必死なんだよ」
蓮華「……なかなかやるわね、一刀」
一刀「力押しで挑んでも勝ち目はないからな…」
風・穏「……ぐー、すやすや……」
一刀・蓮華「寝るなっ!!」
風の鼻提灯を蓮華が割る。俺は穏の頭にチョップをくれた。
風・穏「おをうっ!?」
一刀「ったくこのへっぽこ軍師共は…お前らだけだぞ、たるんでるのは」
穏「うみゅうぅ~~、ずびばぜん…」
風「申し訳ないですお兄さーん、でも風と穏ちゃんには大してやることがないのでー」
蓮華「むぅ……」
文台様と稟・朱里の三人は、行軍における経路の選定と、
現地到着後における陣取りの構成について協議を行っていた。
亞莎・雛里は新兵の募集、桂花は輜重隊の荷車の確保に向かっていた。
風の言うとおり、この二人と桃香・雪蓮・小蓮には大してやることがなく、
要は爪弾きにされてしまったのである。
桃香や虎の娘たちはともかく、軍師を遊ばせておくなんて、あのお母さんは一体何を考えているのだろう。
というわけで、桃香と小蓮は、あの歌姫たちと一緒に町に繰り出して遊びほうけていた。
一刀「…煌蓮さんに仕事でももらってきたら?」
穏「おおおおぉぉ~ 名案ですねぇ~一刀さん、風ちゃんはどうですかぁ~?」
風「賛成でーす、それではお兄さーん、また後でー」
一刀「うーん、あの二人って案外馬が合ってるのかもしれないな」
蓮華「そうかもしれないわね…少しのんびりしすぎなのが玉に瑕だけれど」
一刀「辛辣だなぁ」
雪蓮「でもいいじゃない。 あーいうお気楽極楽な軍師っていうのも」
一刀「それ、褒めてるんだか貶してるんだか分からないぞ…」
雪蓮「え~、ぶーぶー」
蓮華「あら…? 戻ってきたわよ?」
雪蓮「ずいぶん慌ててるわね。何かあったのかしら」
見ると、穏が大きな胸をユサユサ揺らしながら風を抱えてこっちに走ってくるのが見えた。
穏「一刀さあぁぁぁ~~ん、はぁ、はぁ、はぁ」
風「お兄さーん、文台様がお呼びですよー、雪蓮ちゃんと蓮華ちゃんも急いで来るようにとのことですー」
雪蓮「母様が? 何があったんだろ」
風「何でも、文台様とお兄さんに保護を求めてきた人たちがいるとのことですー」
一刀「なんだろ? 行ってみよう」
王宮の広間に、全ての将軍・軍師・部隊長格が集められていた。
階段の下で跪いている、洛陽から逃げ延びてきた二人の将を迎え入れるためだ。
???「お初にお目にかかります、孫文台陛下、御遣い様… 我が名は徐晃。
このたびは我らの身勝手な願いをお耳に入れてくださり、まことに有難く存じます」
???「同じくあたしの名は張合。 元々あたしらは孟徳の親方の下で仕えてたんだ。
で、あなた方呉がうちら魏とやりあう直前に、孟徳の親方から命が来たんだ。
『万が一魏が倒れた時は、函谷関を可能な限り守り続けよ』って。
で、そんときゃまさかそれが事実になるとは思わなかったんだけど、
結局現実になっちまったから、あたしらはいつか親方に会えることを信じて
そのまま函谷関に張ってたんだ。
で、そのまま張り続けて二ヶ月が過ぎようかって時に、あの凶暴な連中がやってきたんだ」
彼女らの話をまとめるとこうだ。
――――― 蜀。
西方にある第三の大国。 孫呉が曹魏を平定したのと同時に、西では彼らが動いていた。
兵たち一人一人がすべて一騎当千の豪傑揃いといわれる劉表率いる劉蜀正規軍七十万。
その大兵団が、電光石火のごとき素早さで散関の関門を突破すると、勢いにのって周辺の都市を次々と制圧。
兵力を東方に集中させていた魏呉は、手薄だった西方を見事に突かれてしまった。
結果、わずか一週間のうちに長安を占領され、擁州以西をあらかた蜀に奪い取られてしまったのである。
彼らは皆一様に将校以外は服も鎧も茶色で、頭には黒い目だし帽をかぶっていた。
平民には誰一人として危害を加えていなかったらしいが、
彼らは闇夜と共に、牙門旗も掲げず黒獣の如く番兵たちに襲い掛かると、
まるで獲物を食らうかのごとくその喉笛を食いちぎり、
幕者に火を放って暴虐の限りを尽くしていった。 後はほとんど、戦いにもならなかった。
彼らの規律には一糸の乱れなく、まるで部隊全体が何匹もの黒い獣のようであった。
それらが一気に襲いかかり、魏の領地を飲みつくし、食い尽くしていく。
彼らにはおよそ容赦というものがなかった。
周辺の支城を攻略するときは、降ってくる矢を盾で防ぎ、城門の隙間から剣や斧を振り下ろして破壊する。
扉の一部が壊れると、今度はそこから槍を突き込んで、兵たちを次々に串刺しにし、
最後は巨大な投石器で大岩をぶち当てて、城門を壁ごと破壊する、という苛烈さだった。
彼女たちは決断を迫られたのである。 建業に逃げるか、それとも徹底抗戦か。
建業に逃げ込めば、確かに曹操や孫堅らに合流できる。
しかし、仮にも洛陽が魏の首都である以上、うかつに放棄して逃げ出すわけにもゆかぬ。
だが、蜀軍の鬼気迫る攻撃の前では、彼女たちの率いていた函谷関守備隊三千など無力に等しかった。
新たな一兵の供給もない中で函谷関を守り続けるなど到底不可能。
完全にジリ貧であった。
結局彼女ら二人は、これ以上函谷関を守ることかなわずと判断。
五百以下にまで減った少数の手勢のみを引いて、かつて仕えていた曹操のいる建業に向けて
洛陽を脱出し、半月の行軍を経てここまでやってきたのである。
煌蓮「なるほどねぇ… 長旅お疲れさん。 さぞかしキッツイ戦だったろうねぇ…。
このあたしがもっと早くに気づきゃぁ良かったんだけど… お前たちにゃすまんことをしたね」
徐晃「有難きお言葉、まことに恐れ入ります… ですが、新たな兵の供給もない中で、
あの関門を守り続けることは、いつか必ずや不可能になるものと考えておりましたので…」
華琳「確かに私はそのような命を出した覚えがあるわね。
ということは…なるほど、あなたたちがその守将だったというわけね」
張合「あぁ、間違いない。 でも孟徳の親方はなんで、魏が滅んでも函谷関を守り続けるようにっつった
命令をよこしたんだ? 魏が滅んで王が禅譲するか処刑されたら、
その命令は最早命令なんかじゃなく、単なる遺言に過ぎなくなるから、
その時点で遵守義務もなくなるって考えなかったのか? 親方は」
華琳「…この私を試しているのかしら? 貴方は」
張合「何とでも言ってくれ。 こちとらあんたの無茶苦茶な命令のお陰で大事な子分たちを
バッサリ蜀の連中に持っていかれたんだ。
それで王としての資質を疑わないほうがおかしいって。
新たな一兵の供給もない中であのただっ広い関門を守れって? 冗談じゃないね。
仮にも覇王を名乗るくらいなら、それくらい簡単に予見できたはずだろ?
なぜあたしらにあんな命令を出したんだ」
徐晃「ちょ…ちょっと、悠…」
煌蓮「うらあああぁぁぁぁぁ、お前ら、いい加減にせんかあぁっっ!!!!??
このあたしのまん前で余計な喧嘩なんかすんじゃないよっっ!!!!」
出ました、文台様の怒号。 そして、ドカアァァァァン、と南海覇王を打ち付ける轟音。
あのお方を怒らせるとこうなる。
華琳も張合さんも徐晃さんも、あの一撃でいっせいに口をつぐんでしまった。
煌蓮「お前たちゃぁ、このあたしに面倒見てもらいに来たんじゃなかったのかい!!?
面倒見て欲しいんだったら、さっさと自己紹介済ませて真名を言っちまいな!!
どうなんだい!!? さっさとしな! 自分で言うのもなんだけど、
あたしゃそう気が長いほうじゃないんでね!」
徐晃「は…は…はっ!
わ、わ、私(わたくし)、姓を徐、名を晃、字は公明、真名を菖蒲と申します!
い、以後、お見知りおきお願い申します!!」
張合「あ、あたしは、姓は張、名は合、字は儁乂、真名は悠。よ、よろしく頼む!
(怖えぇぇぇぇ、ムッチャコエェ!! さすが魏を潰しただけあるわ!
こりゃ下手に逆らわないほうが身のためだな)」
煌蓮「おうよ。 最初っからそう言えばいいんだ。 んで、牙門旗はどこだい? さっさと出しな」
菖蒲「は、はいっ、こちらに!」
煌蓮「ん、分かった。こいつぁ孫呉(ウチ)が責任もって預かっておこう。
んで、秋蘭、冥琳、こいつらの所属はどうするよ?
話聞くにゃこいつらぁ元は魏の将だったみたいだけど、
どうも今の喧嘩見るに、この二人は華琳ちゃんとは面識薄そうだね。 真名も知らなかったみたいだし」
秋蘭「そうですな… 我らのところに新たに加えても、お互いにギクシャクするだけでしょう。
ひいては軍内の不和をもたらしかねませぬ。 それでしたらばいっそのこと、
お二方とも北郷殿に預けてみるというのはいかがでしょう?」
一刀「なぬぅ!? 俺ぇ!!??」
悠「ほぅ。 御遣いさんがあたしらの新しい親方になってくれるのか。
……へ~ぇ、よくよく見ればなかなかいい男前じゃないか、気に入ったよ」
菖蒲「よ…よろしくお願いしますっ、主上(しゅじょう)!!」
一刀「なっ……マジか!?」
ヤ…ヤバイ!
ムチャクチャヤバイ!
危険! 危険!! 脱出警告!!!
し…視線が痛すぎる!! 特に、愛紗とか蓮華とか愛紗とか蓮華とか愛紗とか蓮華とか!!!!
愛紗「ごぉぉしゅじんさまああぁぁ……???」
蓮華「かぁぁぁずとおおぉぉ???」
一刀「に…逃げr「むあぁぁちなさぁぁぁぁいいい!!!」
春蘭「むあああぁぁてぇぇぇ北郷おおぉぉぉ!!!!」
華琳「霞、真桜! 一刀を追いかけなさい!!」
真桜「っしゃぁ! 追いかけんでぇ、姐さん!!」
霞「合点や!!」
一刀「ひ…ひいいぃぃぃぃぃ!!!」
……南無阿弥陀仏。
第十章一節終了
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