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真・恋姫無双~魏・外史伝47

 こんばんわアンドレカンドレです。
皆さん、台風の方は如何でしたか?僕の方は台風のせいで今日は大学が休校となりました。今週は月曜日に友人たちとカラオケ、くし揚げ、ボウリングと夜遅くまで遊んでいたせいで投稿がずれてしまいました。さて、今回は二十章、朱染めの剣士+呉√の完結章となります。朱染めの剣士こと、一刀君の復讐劇は如何に!?
 それでは真・恋姫無双 魏・外史伝 第二十章~君は誰がために・前編~をどうぞ!!

2009-10-08 17:50:32 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5467   閲覧ユーザー数:4774

第二十章~君は誰がために・前編~

 

 

 

  「ふぅ・・・、生き返った気分だよ。」

  「もう・・・、傷の具合は良いのですか?」

  「うん、もうバッチしねぇ♪それに、祭さんが殺されちゃったから・・・、後は僕がやらなくちゃ

  いけない。僕が成都にいた間、ある程度まで作ってくれた様だけど、まだ完成ってわけじゃない。」

  「ですけど、あんなものを作った所で、一体何の意味が・・・?外史の外に運び出せるわけでもない

  のに・・・、結局はこの外史を消滅させる際に一緒に消す事になりますよ。」

  「仰る通り。でも・・・別にいいんだよ、それでも。やっぱり最後はドーン!と派手にやらかしたい

  だけだから。これぐらいぶっ飛んでいた方が、楽しいでしょ?」

  「は、はぁ・・・、よ、よく分かりませんが・・・。」

  「ふふ・・・♪その内、分かる時が来るさ。・・・じゃ、またね。僕らのお・か・あ・さ・ん♪」

 

  「・・・・・・・・・。」

  「・・・・・・・・・。」

  朱染めの剣士から彼の全てを聞いた蓮華。そして再び沈黙が二人の間に流れる・・・。

 ある程度予想は出来ていたとはいえ、まさかこれほどのものだとは思いもしなかった。彼は今まで

 そのような重い運命をたった一人で背負い、生きていた事に・・・。慰めの言葉など、彼を癒すはずも

 無く、蓮華は次にどんな言葉をかければいいのか、それを探していた・・・。そんな彼女に、朱染めの

 剣士は、一刀は歩み寄っていく。近づいてくる彼に、蓮華は反射的に全身を強張らせる。二,三歩間を

 取った距離まで近づいた一刀は、身に纏っていた赤黒く染まった、かつては綺麗な白だったはずの襟元が

 ボロボロになった学生服の内側から何かを取り出した。それは何枚の紙が重ねられてで出来た、今で言う

 ノートの様な書物であった。

  「これは・・・?」

  自分に差し出されたその書物について、彼に尋ねる蓮華。

  「・・・奴を探し、この外史を渡り歩いて・・・、ようやく見つけた、奴の根城にしていた場所で

  拾った、奴の研究日誌だ・・・。」

  「研究日誌・・・。」

  蓮華はその研究日誌に手に取る。

  「すでに、もぬけの殻ではあったが・・・、それだけが、わざとらしく残されて、いた。」

  蓮華は彼の話を聞きながら、日誌を開き、その中身を確認する。

  「・・・今となっては、何の意味も無いだろうが・・・、奴がこの外史で何をして来たのかが

  書かれている・・・。そして・・・、最後の方を。」

  蓮華は彼の言う通りにその日誌の最後のページを開く。

 

   ○月×日

  祭さんの口から伏義が倒された事を知った。倒したのはこの外史の一刀君だそうだ。

 成程・・・、祝融が懸念していたのも納得がいく。無双玉二個分の力を持っていたはず

 の伏義を倒してしまうなんて大したものだ。そんな彼に僕は興味が湧いた。祭さんには

 別の事をして貰って、僕は成都に行く事にした。でも、僕が行くのはそれだけじゃない。

 僕が動けば、彼も必ず動く。僕が孫権ちゃんにちょっかい出せば、確実にね・・・。

 さぁ、楽しいぱーてぃの始まりだ・・・!

 

  そこにこう書かれていた・・・。

  「これは・・・!」

  「恐らく、成都を襲撃する前に書いたものだろう。・・・そして、重要なのは、ここ。」

  そう言って、ある箇所を指でさす。

  

  祭さんには別の事をして貰って

 

  「別の事・・・、それは建業を襲うって事じゃ・・・。」

  「・・・かもしれない。だが、祭さんはあの時こうも言っていた・・・。」

 

―――・・・成都での戦いにて致命傷を負った女渦は今、その傷を治している最中。わしはその間の

  時間稼ぎのために、この街を襲った・・・。

 

  「女渦は、あの戦いで傷を負う羽目になろうとは、思いもしていなかった・・・。傷を修復するため

  に、急遽、祭さんにその時間稼ぎとして、建業を襲わせたんだろう・・・。となれば、ここに書かれて

  いる別の事は・・・、建業を襲う事と、違う件・・・。」

  「・・・じゃあ、この別の事って一体何だって言うの?」

  「・・・分からない。ただ、この書き方から考えると・・・、何かの準備だと思う・・・。」

  「準備・・・。」

  「そして・・・、それが完了すれば、奴は必ず動きを見せて来る・・・。祭さんはそれを伝えようと

  したかったのだろう、けれど・・・。」

  「祭は死んでしまったわ・・・。」

  「・・・俺が、殺してしまったのだから。」

  「っ!?違う!」

  一刀の発言を咄嗟に否定する蓮華。だが、一刀は首を横に振る。

  「違わない。あの時・・・、俺が祭さんを、この手で・・・。それは、紛れも無い事実だ。」

  自分の右手の平を見ながら、そう言う一刀。

  「だとしても・・・!」

  蓮華は一刀の右手を両手で取ると、彼の右目をのぞき込むように彼の顔を見る。

  「祭は・・・あの時、祭は笑っていた。自分が死ぬというのに。祭は私達のために自分を偽って、女渦は

  それを知っていた上で、祭を、その心を弄んでいたのよ!あなたはあの男から祭を解放したの。あなたの

  この手で祭は救われたのよ!」

  唇を震わせながら、蓮華から顔を背ける一刀。

  「違う・・・!」

  「違わない。今までだってそう。あなたは女渦から私を・・・、私達を守って・・・。」

  「違う!!」

  蓮華の話を遮るように、顔を背けたまま声を荒げてそう言い放つ。

  「違うんだ・・・!俺は・・・、俺は・・・!」

  言葉がのどの手前まで来ているにも関わらず、そこで止まってしまうかの様にそこで言葉が詰まる一刀。

 そしてようやく言葉が口から出て来ようとした、その時であった・・・。

 

  「ちょ!?そんなに押され・・・。ひゃああぁぁ~~~っ!?」

  「わ~~~っ!!小蓮さま~~!」

  ズド~ンッ!!!

  「えっ!?」

  「・・・ッ!?」

  一刀と蓮華の背後の草むらから素っ頓狂な声を出しながら、飛びだして来たのは・・・。

  「小蓮・・・!」

  「・・・・・・・・・。」

  突然現れた小蓮に目を丸くして驚く蓮華と呆気にとられる一刀。

  「大丈夫ですか!?小蓮様!」

  小蓮が飛び出してきた草むらから今度は明命が現れ、うつぶせに転んでしまった小蓮に駆け寄る。

  「も~・・・、だ、誰なの~?シャオのお尻を押したの~!」

  「それは思春さんが・・・。」

  「わ、私のせいだと言うのか、亞紗!?」

  亞紗と思春の二人も草むらの中から現れる。

  「あれだけ後ろから押していれば・・・。」

  「ですよねぇ~。」

  互いに相槌を打つ明命と亞紗。

  「あなた達まで・・・!一体これはどう言う事なの?」

  草むらから出て来た四人を猛禽類の様な眼で問い詰める蓮華。

  「しゃ、小蓮様がどうしても、と・・・。」

  先に口を開いたのは亞紗だった。小蓮に誘われたと言いたかったのだろうが。

  「ちょっと待ってよ!!皆だって乗り乗りだったじゃない!」

  と、小蓮が口を挟む。

  「なん、ですって・・・?まさかあなた達、私の後を付けて来て・・・。」

  「申し訳ありません。蓮華様の御身を思い、影から見守っていた次第で・・・。」

  「ちょっと思春!何一人綺麗に纏めようとしているの!」

  「そうですよ!私達より先に後を付けていたではありませんか!」

  「言い分けは見苦しいと思いますぅ・・・。」

  「な・・・っ!?お、お前達・・・!!」

  「思春・・・。あなたまで・・・。」

  一番信頼していた臣下の行動に怒りを通り越し、呆れる蓮華。

  「・・・・・・・・・。」

  もはや何も言えなくなってしまった思春。そんな彼女を余所に横から小蓮が蓮華に向かってびしっと

 人差し指で指した。

  「って言うか、お姉ちゃんもお姉ちゃんだよ!こんな所で一刀と何をしてるのよぉ!

  一体いつの間に一刀とそんなに仲良くなっているの!?」

  思いがけない妹の発言に蓮華は吹き出す。

  「ち、違うわ小蓮!あなたは誤解をしているわ!彼はあなたの言っている人とは・・・!」

  「何が違うって言うのよ~!そりゃあ見た目がだいぶ変わっちゃったみたいだけど、そんな

  事で一刀だと分からない様なシャオじゃないもん!!ね~、一刀♪」

  事情を知らない妹、小蓮(明命、亞紗も同様・・・)に慌てて説明しようとするが、肝心の妹は姉の話

 など耳を貸す気も無く、一刀に飛び付いた。

  「小蓮!話を聞きなさい!」

  話を聞こうとしない妹に話を聞く様に促すが、以前聞く耳を立てない。

  「そっか~、一刀があの朱染めの剣士だったんだ~♪でも、どうして今まで連絡の一つも

  してこなかったのよ~!私の前から突然どっかにいなくなっちゃったってすっごく心配したんだよ。」

  一刀に抱きついたまま、上目遣いで見上げながら話しかける小蓮。

  「・・・そうか。それは、済まない事をしたな。俺も俺で・・・、やらなくてはいけない事があって

  、心配をかけたね・・・シャオ。」

  一刀はそう言うと、小蓮の頭を優しく撫でる。小蓮はくすぐったそうに、でも嬉しそうな表情を表わす。

  「あ、あなたまで・・・。」

  小蓮の話に合わせる一刀を見て、ちゃんと誤解を解いておくべきではないのかと忠告しようとしたが、

 彼が顔を上げた瞬間、蓮華は口を止める。一刀は穏やかな笑顔を見せていたからだ。先程まで影がかかった

 暗い顔をしていたと言うのに、まるで憑き物が落ちたようにそこにはそんな様子が微塵も無かった・・・。

  「こんな気持ち・・・、久し振りだ。やはり、君達は彼女達と何も変わらない。いつどこで会った

  か・・・ただその違いだけなんだ。」

  「・・・・・・。」

  微笑みながらそう答える一刀に顔を少し赤く染める蓮華。そして一刀は自分に抱き付いている小蓮の両肩

 に手をやるとゆっくりと自分から離した。

  「あれ?一刀、何処に行くの?」

  小蓮の疑問に縦に頷く事で答える。

  「まだ、やらなくていけない事があるから・・・。」

  それだけを言い残すと、一刀はその場を離れ、彼女達の横を通り抜けていく。そして思春の横を通り抜け

 ようとした時。

  「何処に行く気だ?」

  思春の言葉に一刀は足を止める。

  「奴の・・・、いる場所へ・・・。」

  「一人で戦う気か?」

  思春にそう言われると、一刀は不敵な笑みを零し後ろを振り返る。

  「さて・・・。それは、君達次第。君達に、奴と戦う意思が、あるならば・・・。」

  そして再び前を向く。

  「・・・最後に、君達に会えて良かった・・・。」

  そう言い残し一刀は、朱染めの剣士はその姿を消した・・・。

 

  それから数日・・・、破壊された建業の街の修繕を行う一方で、雪蓮達も女渦の行方を独自に探っていた。

 しかし、今だ有益な情報は得られずにいた・・・。

  「そう、もう下がっていいわ。」

  「はっ、失礼します。」

  そう言って、兵士は王座に座る雪蓮に一礼すると、早々とその場を下がった。

 傷が癒えた雪蓮は斥候として放っていた兵士の報告を聞き終え、その兵士の背中を見送ると一息をついた。

  「随分と疲弊しているな、雪蓮・・・。傷が塞がっているとはいえ、もう少し体を休めておくべきでは

  ないのか?」

  雪蓮の横に立っていた冥琳が声を掛ける。

  「そりゃ私だってそうしたいけどさ。今は悠長に横になって寝ている訳にもいかないでしょ?」

  頬笑みながら、そう答える雪蓮。しかし冥琳の言う通り、まだ体力が完全に戻っていないのだろう。

 その笑みには少し元気がなかった・・・。

  「あれからもう四日・・・。今だにあの男の行方が分からない。」

  「そう簡単に分かるのであれば、当に彼が始末しているだろうさ。」

  「・・・そうね。今頃何処で何をしているのやら・・・。」

  「彼の事が気になるのか?」

  「あら、ひょっとして妬いてるの?」

  「・・・さあな。」

  「ちょっと~、何よその言い方ぁ~!そんな風に言われたら逆に私の方が妬いちゃうじゃないの~!」

  冥琳の素っ気ない態度に、ぶーぶーと頬を膨らませる雪蓮。

  「おやおや、随分と仲のよろしい事で・・・。」

  そしてそんな二人の目の前に、何処からともなく干吉が現れた。二人は固まった様に動かなくなる。

  「失礼、もう少し後に来るべきでしたね?それではごゆるりと・・・。」

  軽く一礼すると、干吉はその場を去ろうとする。

  「待て、干吉。余計な気遣いはする必要はない。」

  冥琳にそう言われ、干吉はその足を止める。

  「それは助かります。さほど時間がありませんからね。」

  「時間・・・?どう言う事かしら・・・。」

  「それについては追々説明しましょう。・・・朱染めの剣士殿から言伝を承ったので、それを伝えるべく

  ここへ馳せ参じました。」

  干吉は雪蓮の疑問を軽く流すと自分がこの場に現れた理由を述べた。

  「・・・冥琳。皆を呼んできて頂戴。」

  「御意。」

 

  半刻後・・・、王宮内には呉の武将、及び愛紗、星、紫苑の蜀の武将達が召集されていた。

 干吉から、朱染めの剣士の言伝を聞くために・・・。干吉はすでに彼女達に状況の説明を始めていた。

  「私は朱染めの剣士殿の頼みで女渦の行方を追いかけるため、彼と行動を共にしていました。

  そして二日前、夷州の周辺にて女渦の波動を察知した私達は急ぎ夷州へと向かい、と小島群の中から

  あるものを見つけました。」

  「あるもの・・・?」

  干吉の言ったあるものについて問いただす雪蓮。

  「一つの島並みの巨大な・・・、言うなれば動く海上要塞。」

  「海上要塞?海の上に要塞が浮かんでいるとで言うのか?」

  言葉で言われた所で、どんなものなのかがいま一つ想像できていなのか、疑いの目で干吉を見る思春。

  「そんな感じです。最初は私達も気が付きませんでした。周囲の小島の中に紛れていたのですから・・・。

  木の葉を隠すなら、森の中に・・・。小島を隠すなら、小島群の中に・・・。やってくれたものです。」

  「その海上要塞だが・・・、具体的にはどのようなものだ?」

  海上要塞についての詳細を聞く冥琳。

  「見た目は・・・、そうですね。例えるのであれば、巨大な亀・・・、さしずめ霊亀(れいき)の怪物

  とでも言えばいいでしょうか?」

  「れいき・・・?」

  頭の上に?を浮かべる小蓮。それを見た穏が霊亀について解説を始める。

  「『礼記』礼運篇に記されている古代神話に登場する霊妙な四種の瑞獣(ずいじゅう)の一つに

  挙げられる、空想上の怪物の事ですねぇ。ちなみにこれらは四霊(しれい)とも呼ばれていて、他にも

  麒麟(きりん)鳳凰(ほうおう)応竜(おうりゅう)がいるんですよぉ~。」

  「「へぇ~~~。」」

  小蓮と一緒に何故か明命も納得する・・・。

  「それに書かれている霊亀は背中の甲羅の上に蓬莱山(ほうらいざん)と呼ばれる山を背負うとされる

  巨大な亀とありますが・・・、あの霊亀もそうであればまだ可愛げもあるでしょうが・・・。」

  「・・・どういう意味だ?」

  意味深な発言をする干吉に対して愛紗は彼にその意味を尋ねる。

  「少なくとも、我等にとってあまり宜しくないモノである事は間違いなさそうではあるな。」

  と、横から星が取って付けた様な言い方をする。

  「中に入って直接調べたわけではありませんが、あれは恐らく・・・兵器でしょう。それを使って、女渦は

  この大陸を攻撃しようとしているのでしょう。」

  それを聞いた雪蓮は頬杖を止める。

  「なるほど。その霊亀はもう動くのかしら?」

  「その時、女渦は霊亀起動の最終段階に入っていました。恐らく近いうちに動きを見せるでしょう。

  そのため、朱染めの剣士殿は一足先に要塞内に侵入し、向こうの動きを窺っています・・・。」

  「それであなたは彼の代わりにここへ来たと、そう言う訳ね?」

  「如何にも。」

  「そう・・・。そうなると、次の戦いは・・・海上戦になるわね。」

  そう言うと、雪蓮は王座から立ち上がる。

  「穏、亞紗、あなた達は船団の準備を。あまり時間は無いようだから、迅速にね。」

  「御意。」

  「了解しました~。じゃあ行きましょう亞紗ちゃん♪」

  「は、はい・・・!」

  穏は亞紗を連れて、その場を離れる。

  「思春、明命は兵站の調整をお願い。戦いからまだ日が浅いから兵の皆には出来るだけ休養を与えて

  あげて頂戴。」

  「「御意!」」

  その場で一礼すると、二人は早々にその場を離れる。

 

  「戦うのですか?」

  干吉は雪蓮に尋ねる。

  「えぇ、それがどうかしたかしら?」

  何を当たり前の事を言わんばかりにそう答える雪蓮。

  「・・・さしでがましいかもしれませんが、あなた達が動かずとも彼が何とかして下さるでしょう。

  現実問題、あなた達が何をしようが・・・、それは無駄に終わるのは火を見るより明らかかと。」

  「・・・・・・随分な言われ様ねぇ。」

  「事実ですからね。女渦に関して言えば、彼の力は・・・実際に戦った事のあるあなたならば分かるはず

  です。」

  「・・・・・・。」

  干吉の言葉に雪蓮は黙ってしまう。女渦の強さはその身に痛いほど染み付いている、だからこそ何も言え

 ない・・・。

  「それでも、戦うのですか?無駄と分かった上で・・・。」

  「無駄・・・か。確かにその通りだわ。」

  「ほう・・・?」

  雪蓮の意外な反応に干吉は興味を示す。

  「私達がやろうとする事は他の人間から見れば、無駄で無意味なものでしょう・・・。でも、

  私達が求めるものは・・・いつだって、そんな無駄で無意味なものの先にあるのよ。今までも・・・

  そしてこれからも・・・ずっとね。」

  「・・・・・・。」

  今度は干吉が黙ってしまう。そしておもむろに手から何かが現れる。

  「それは?」

  「朱染めの剣士殿が送って来て下さった・・・要塞内の見取り図です。戦いの参考に使って下さい。」

  そう言って、干吉はその見取り図を雪蓮に向かって投げる。雪蓮はそれを手で取ると、にやにやと干吉

  を見る。

  「何ですか?私の顔に何か?」

  「いいえ・・・。ただ・・・、あなたも意外といい人なんだなぁ~と思って・・・。」

  「ふっ・・・、嫌味にしか聞こえませんよ。」

  そう言って、干吉はその場から姿を消した。

 

  「成程、あなたがその命を削ってまで守ろうとするのが今なら分かるような気がします・・・。

  無事を祈る事は出来ませんが、あなたの復讐劇が平穏に終幕する事を・・・外史の挟間から

  祈るとしましょう。」  

  干吉は知っていた・・・、彼の死が逃れる事の無い運命である事を・・・。

 朱染めの剣士の復讐劇は、いよいよ終盤を迎える・・・。その先にあるは幸ある終わりか、それとも

 ・・・。


 
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