初陣の後、四人は部屋を与えられて客将として公孫賛の下で盗賊討伐の日々が続いていた。
下の姉妹の武名を知らぬものいないというれるほどの活躍をしていた。
しかし蒼天は、確実に黄塵によって覆い隠されてようとしていた・・・。
第三話 臥竜鳳雛 ~Dragon and Phoenix~
「白連ちゃんがね、これは私たちにとって好機なんじゃないかって」
「・・・独立か」
黄巾の乱。この世界は確実に彼が知っている歴史を歩み出していた。
王座の間では白蓮が桃香に独立を勧めているところであった。
ちょうど白蓮の元で仕立てて貰った袴も、座右の銘である「忠」の文字とオオアマナを刻んだ羽織りも体になじんできた時だった。
「ご主人様はどう思われます」
「私の故郷にこんな諺がある」
愛紗が顔をのぞき込んできたので思わず視線をそらす。
「急がば回れ。だ」
「どういうことだ?」
「先を焦っても実力が伴わないのであれば行き詰まる」
桃香と愛紗を視界に入れる。
「私たちに・・・その実力が備わっていると思うか?」
「私や鈴々、二人の優秀な将。それに兵達もたゆまぬ訓練を・・・」
「それは白蓮のところの兵だろう?それに将や兵が良くとも、作戦立案者がいなければ生かすことは出来ない」
「しかし私に桃香をつきあわせる訳にもいかない。時は金より貴重なんだから」
この人のいい太守はどこまでもお人好しのようだ。
「桃香はどう考えている。手勢もない私たちの実力が、行動に伴っているか。私たちは前に進むべきか・・・」
「確かに我々には手勢がない・・・」
「手勢ならば街で集めればいい。な、伯桂殿」
「なっ」
白蓮と星が舌戦を始めるがこれはおおかた星の勝ちである。名誉なら器量やら言われたら人の上に立っている人間は弱い。
「手勢は五百・・・その程度くらいなら集まるでしょう」
「・・・前に進むよ、ご主人様。今こうしている間にも苦しんでいる人がいるんだから」
手勢が集まらなくても桃香の答えは決まっていただろう。
「よく言った、桃香。せいぜい少ない頭から作戦を捻り出してやるよ」
「なんだ、結局桃香の味方なのか」
おもしろくないといった感じに白蓮が一刀を見る。
「なに、覚悟を見たかっただけだ。それに実力なんてものは訓練よりも実践の方が身に付きやすい。
・・・さて兵站部に手配して貰おうか」
羽織りを翻し王座の間を後にした。
当初五百人程度と思われていたが結局六千人も集まってしまったのだ。一旗あげようとするものよりもおそらく飯にありつきたいだけだろう。
「六千ともなると・・・本格的な知識が必要だな」
正直驚きを隠せなかった。
「お兄ちゃんの知識ではダメなのか?」
「私の知識はあっちの世界のものでな。あっちの世界とこちらとでは武器も違えば、地形や天候などの情報も先にわかっていることも多い。私の焼き付け刃で作戦を考えれば、数が命取りになる」
「単純に増えたと考えたらダメなの?」
「軍も街も国も大きく膨らむと行動が遅くなる。情報伝達の時間も倍かかると思ってもいいだろう」
太ったら動きにくいだろ?と軽口をたたくが桃香には深刻らしい。ちょっと涙目だ。
「しかし・・・これからどうしましょうか」
「こうきんとーを探し出して、片っ端からやっつけるのだ!」
「勇ましいが情報が少なすぎる。まずは間諜を放って情報収集しつつ・・・」
「しゅ、しゅみましぇん!あう噛んじゃった」
顔を左右に回すが、声をあげたであろう人物の姿が見えない。ちなみに自分の身長は目の前の三人に比べれば背は高く、あっちの世界では175cmくらいと記憶している。ある程度遠くても気付くはずだが・・・。
「声は聞こえど姿は見えず・・・」
「はわわ、こっちです。こっちですよぉ~!」
「すまん。少しからかいたくなっただけだ。で、どうしたのだ?見ない顔だが・・・」
「こ、こんにちゅは!」
「ち、ちは、ですぅ・・・」
対照的な帽子だが、姿格好の美しさは双方可憐。しゃがんだ先には少女が二人こちらをみていた。
「名前を聞かせてもらおう。呼ぶのに不便だからな」
「わ、私はしょ、諸葛孔明れしゅ!」
「私は、あの、その、えと、んと、ほ、ほと、ほーとうでしゅ!」
「・・・二人ともカミカミすぎなのだ」
「んーと、諸葛孔明ちゃんに・・・」
「・・・諸葛に・・・鳳統だと?」
聞き間違えがなければそう言っていたはずだ。
(時期が早すぎる・・・もし三顧の礼があったとしてももっと後・・・鳳統は赤壁以降で劉備陣営に・・・)
なにやら早口言葉でいろいろしゃべって端部しか聞こえなかったが、言葉遣いは理知的なものを感じさせる。
「んー。ご主人様、どうしよっか?」
「戦列の端に加えるには、年が若すぎるような気もしますが・・・」
「男にしては華奢な私がいうのも何だが確かにな。・・・二人とも水鏡塾と言ってたね?」
「は、はひ!あ、また噛んじゃった・・・」
「私は孫子というのを聞いたことがあるが・・・あくまでこれは基本のもの」
「そ、そうですか?真髄だと思いますが・・・」
愛紗もどうやら目を通したことはあるらしい。
「水鏡塾で学んだこと、経験してきたことを今ここで披露してくれ。私たちが・・・特に愛紗が納得できるように」
そういって愛紗のほうに目を向ける。当の彼女は居場所が悪いのか顔が少し赤い。
「えと、孫子、呉子、三略、司馬法・・・それに九章算術、呂氏春秋、山海経、あとはいくつかの経済書と民政書を勉強しました」
「ほう・・・」
愛紗が感嘆をあげる。
この量には正直舌を巻く。孫子と呉子は知っているが、そのほかのものは・・・おそらく兵法書であろうが・・・名前すら知らない。
「すごーい、愛紗ちゃん愛紗ちゃん。この子達ってば、もしかしてとってもすごい子かも」
「よくやった、二人とも。鈴々は分からなさそうな顔をしているが、とりあえず皆納得したらしい」
そういって二人の頭をなで回す。
「私の名前は北郷一刀。さっきの会話で出てきた天の御遣いとかいう如何にも怪しい身分の者だ」
「わ、私はえと、姓は諸葛、名は亮、字は孔明で真名は朱里です!朱里って呼んでください」
「んと、姓は鳳で名は統で字は士元で真名は雛里って言います!あの、宜しくお願いします!」
こうして劉備様ご一行に二人の軍師が加わった。
・・・もっともこれが入社試験だったら二人とも落ちていたかもしれないが。
* *
場所は変わり、時は過ぎた。
劉備率いる義勇軍の目前には一万近い黄巾党の軍勢が交通の要所を守っていた。
朱里と雛里の二人が考えた策により、義勇軍は乱世に身をゆだねる前準備が完了した。
「桃香、これが私たちの初陣だ。気合い入れて行こう」
桃香が靖王伝家を振り上げる。
「うん!全軍、微速前進!」
振り下ろされた剣の先は未来を指していた。
* *
おまけ
貂蝉「聞けぃ、全ての兵士達よ!三国戦争はやがて終わる!曹魏に孫呉、そして蜀漢。彼らにはもはや世界を導くだけの力も権威も残されていない!泥沼と化した南蛮平定に蜀漢が苦しんでいる間・・・」
朱里「はい、カットです~それはもう色んな意味でカットです~」
貂蝉「なんでぇ、まだしゃべりだしなのにぃ」
一刀「声優ネタは落ち着け」
貂蝉「なぁにぃ、ご主人様は中の人が決まってない癖にぃ」
一刀「・・・黙れ、筋肉ダルマ」
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この物語について
・真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーになるのかな?まあ混ぜている作品は題名でわかるよね。
・クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は話の本筋にはあんまり関係ありません。
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