No.996207 英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~soranoさん 2019-06-13 23:24:40 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:2087 閲覧ユーザー数:1818 |
1月16日、同日AM9:00―――
メンフィル帝国の大使館に到着したアリサ達は応接室に案内され、アリサ達が壁際に用意されていた椅子に座り、オリヴァルト皇子とクローディア王太女は背後にアルゼイド子爵とユリア准佐を控えさせた状態でソファーに座って待機して数分待っていると、部屋の扉が開かれてパントとルイーズ、瞳の色と同じ緑の髪を腰まで届く長髪と落ち着いた美貌を持つ女性が応接室に姿を現した。
~ロレント郊外・メンフィル帝国大使館・応接室~
(あの人がメンフィル帝国の大使の代理を務めるパント大使か……何となくだが雰囲気がルーファスさんに似ていないか?)
(言われてみれば……)
(兄上…………)
(というかどう考えても二代の皇帝を支えた宰相とは思えない程見た目が若すぎるんだけど。)
パントを見たガイウスの感想を聞いたラウラは頷き、ユーシスは辛そうな表情をし、フィーはジト目でパントとルイーズを見つめ
(……ッ!何て霊力(マナ)……!あの大使代理もそうだけど、その後ろにいる女も少なくてもヴィータよりも確実に上ね。)
(ええ……メンフィルには凄まじい術者が一体どれほどいるのかしら……?)
パントとパントの背後にいる女性からさらけ出されている凄まじい魔力を感じ取っていたセリーヌは目を細め、エマは不安そうな表情をしていた。
(綺麗な人……もしかして奥方かしら?)
(確かに美人だけど……彼女も相当な使い手よ。)
パントの傍にいるルイーズの美しさにアリサは見惚れ、ルイーズの強さを感じ取っていたサラは真剣な表情をしていた。
(隣にいる女性がパント大使の奥さんだとして、背後にいる女性は一体どんな立場の人なんだ…………?)
(軍服を着ている事からして、少なくてもメンフィル帝国軍の関係者だろうね。―――それも代理とは言え、一国の大使と共にいるのだから恐らくは上層部クラスだ。)
(多分、あの女性が女王陛下の話にあった”Ⅶ組”のみんなに興味がある”パント大使の知り合い”だとは思うのだけど…………)
パントとルイーズの背後にいる女性が気になったマキアス、アンゼリカ、トワはそれぞれ考え込んでいた。そしてパント達が近づくとその場にいる全員は立ち上がった。
「―――お待たせしました。私の名はパント・リグレ。メンフィル帝国の大使を務めているリウイ陛下の代理を任されている者です。―――お初にお目にかかります、クローディア王太女殿下、オリヴァルト皇子殿下。」
「パント様の妻のルイーズと申します。パント様共々以後お見知りおきをお願いします。」
「―――お初にお目にかかります。私はエレボニア皇帝ユーゲントが一子、オリヴァルト・ライゼ・アルノールと申します。」
「お初にお目にかかります。わたくしの名は、クローディア・フォン・アウスレーゼ。リベール女王アリシアの孫女にして、次期女王に指名された者です。本日は”中立の立場として”オリヴァルト殿下とパント大使閣下達との交渉に立ち会う為に殿下達と共にこちらを訊ねました。ちなみにお二方の後ろにいる方は確かセシリア将軍閣下…………でしたよね?もしかして、Ⅶ組の皆さんに興味があるパント大使閣下のお知り合いというのは…………」
オリヴァルト皇子とクローディア王太女に近づいたパントとルイーズが自己紹介をするとオリヴァルト皇子と共にクローディア王太女はそれぞれ自己紹介をした後パント達の背後にいる女性に訊ね
「ええ、私の事です。―――初めてお会いする方達もこの場にいらっしゃっているようなので自己紹介を致します。私の名はセシリア・シルン。シルヴァン皇帝陛下の側妃の一人にしてシルヴァン皇帝陛下の親衛隊を率いる”皇帝三軍将”が一人―――”魔道軍将”です。以後、お見知り置きを。」
クローディア王太女の質問に答えた女性―――シルヴァンの側室の一人にしてシルヴァンを守護する親衛隊を率いている3人の将軍―――”皇帝三軍将”の一人―――”魔道軍将”セシリア・シルンはアリサ達を見回して自己紹介をした。
(ええっ!?しょ、”将軍”!?)
(それもシルヴァン皇帝陛下の親衛隊を率いる将軍とは…………)
(更にはシルヴァン皇帝陛下の側妃の一人でもあられるという事は、シルヴァン皇帝陛下の名代としてこの場に参加したのか…………?)
(”皇帝三軍将”という呼び名からして、恐らくシルヴァン皇帝の親衛隊にはセシリア将軍も含めて三人の将軍が存在しているとは思うのだけど…………)
(”魔道軍将”…………なるほどね。まさにその呼び名通り、あの女将軍は魔術師としても相当な使い手なんでしょうね。)
(ええ…………でも、どうしてそんな人が私達に興味を持ったのかしら…………?)
セシリアの身分を知ったエリオットは驚き、ラウラとユーシス、サラは真剣な表情でセシリアを見つめ、セリーヌの言葉に頷いたエマは不安そうな表情でセシリアを見つめた。
「2年前のリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下の結婚式以来になりますね、セシリア将軍閣下。お元気そうで何よりです。」
「ふふ、王太女殿下こそ女王陛下共々ご壮健そうな様子で何よりです。ユリア准佐も、あれから更に腕を磨かれたようですね。」
「…………恐縮です。」
クローディア王太女と軽く挨拶を交わしたセシリアに話しかけられたユリア准佐は目礼をして答え
「オリヴァルト殿下もご壮健そうで何よりですが…………我が国と貴国の関係がここまでこじれてしまっての再会は個人的には非常に残念に思っていますわ。」
「いえ……これも全て私達の不手際ですので、将軍閣下がお気になさる必要はありません。ところで、将軍閣下はパント大使閣下とお知り合いのご様子ですが、一体どのような関係なのでしょうか?」
セシリアの指摘に対して静かな表情で答えたオリヴァルト皇子はセシリアとパント達の関係を訊ねた。
「セシリアと私の関係は”師弟”の関係で、セシリアは私にとっては”最初の弟子”にもなります。」
「宰相だけでなく、”総参謀”も兼ねているパント様からは魔術の師として…………メンフィル帝国軍人の師として…………そして敬愛すべき御方にして私が心から愛している御方であられるシルヴァン陛下を政治方面でも支えたい事を願う女の師として、あらゆる方面でお世話になりましたわ。」
「そうだったのですか…………」
(…………どうやらあのパント大使という人物は私達が想定していた以上の”大物”のようだね。)
(うん…………それに今の話が本当ならセシリア将軍も軍事面だけでなく、政治面でも相当強力な相手って事にもなるよね…………)
パントとセシリアの説明にクローディア王太女が驚いている中、真剣な表情でパントを見つめて小声で呟いたアンゼリカの推測に頷いたトワは不安そうな表情でセシリアを見つめた。
その後その場にいる全員が着席した後オリヴァルト皇子達と対面した状態でルイーズとセシリアと共に着席したパントは早速話を始めた。
「―――さてと。本日オリヴァルト殿下達が私達を訊ねてきた理由は昨日(さくじつ)アリシア女王陛下より粗方伺っておりますが…………まずは、やはり妹君の行方についてお知りになられたいのですか?」
「はい…………やはり、二日前にアルフィンは単身でこちらを訪問されたのでしょうか?」
パントの問いかけに頷いたオリヴァルト皇子はパントに訊ねた。
「ええ。二日前の夜に飛び込みで我が国の大使館であるこちらを訊ね、その際にリウイ陛下とイリーナ皇妃陛下、エクリア殿が対応しました。」
「え…………という事は二日前の時点ではリウイ陛下達はこちらにいらっしゃったのですか?」
パントの答えを聞いて驚いたクローディア王太女はパントに訊ねた。
「はい。元々”大使代理”を務める私に業務の引継ぎを終えた陛下は翌日にはイリーナ皇妃陛下達と共に大使館(こちら)を起つ予定でしたので。」
「……………………単刀直入に伺います。アルフィンは今、どのような状況に陥っているのでしょうか?」
パントがクローディア王太女の疑問に答えるとオリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って問いかけた。
「”アルフィン殿”でしたら、”3度目の要求内容”にも記していた通り―――”エレボニア帝国皇女という身分を捨てさせて、メンフィル帝国が定めたアルフィン殿に対する処罰内容を受けています。”」
「!!」
「………………っ!」
「お、お待ちください…………!まさかリウイ陛下達はエレボニアからはるばるメンフィル帝国の大使館に交渉に来たアルフィン殿下を問答無用で拘束したのですか!?」
パントの答えにアリサ達がそれぞれ血相を変えている中、オリヴァルト皇子は目を見開き、アルゼイド子爵は拳を握りながらも表情を変えず目を伏せた後すぐに目を見開いてパント達を見つめ、クローディア王太女は驚きの表情で声を上げて訊ねた。
「いいえ、陛下達の話によりますと元々陛下達は我が国の盟友であられる貴国とかつての戦友であったオリヴァルト殿下に免じて、アルフィン殿には一晩大使館に泊まってもらって翌日には祖国であるエレボニア帝国に帰国するようにとアルフィン殿に帰国を促したとの事ですが…………そのアルフィン殿が自ら、メンフィル帝国が定めた処罰内容を受ける事を申し出たのです。」
「な――――――――」
(ア、アルフィン殿下自らが…………!?)
(それ程までにユミルの件に責任を感じていたというのか、アルフィン殿下は…………)
(…………っ!)
ルイーズの話を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中オリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、アリサは信じられない表情をし、ラウラは重々しい様子を纏い、ユーシスは辛そうな表情で唇を噛み締めて身体を震わせていた。
「エレボニア帝国が戦争回避の為に我が国の要求を呑もうが、今回の戦争で滅びようがアルフィン殿がメンフィル帝国が定めたアルフィン殿に対する処罰を受ける事は”決定事項”です。実行は少々早いかもしれませんが、アルフィン殿ご自身がユミル襲撃に対するご自身の償いをする為に申し出たのですから、”中立の立場”である貴国もその件について特に意見はないかと思われるのですが?」
「…………っ。確かに大使閣下の仰る通り、アルフィン殿下自らが本当にそのような事を申し出たのでしたら、リベールとしてはその件について何もいう事はありませんが…………失礼を承知で申し上げますがそれは貴国の主張であって、アルフィン殿下自らが貴国が定めたアルフィン殿下自身に対する処罰を受けたという明確な証拠を示されていないのですが?」
パントに試すような視線を向けられて問いかけられたクローディア王太女は唇を噛み締めた後すぐに気を取り直して厳しい表情を浮かべてパントに指摘した。
「勿論、証拠はありますのでご確認ください。」
クローディア王太女の指摘に対してパントは全く動じない様子で懐から一枚の書状を取り出して目の前のデスクに置いた。
「…………失礼します。―――!これは…………オリヴァルト殿下もご確認ください。」
「失礼する。―――!!アルフィン自身がエレボニア帝国皇族の身分を捨て、1度目のユミル襲撃の件でメンフィル帝国が定めたアルフィンに対する処罰内容を受ける事をアルフィン自身が承諾したという誓約書か…………確かにこのサインはアルフィンのものだし、その隣の皇印もアルフィンが持っている皇印だな…………」
(不味いわね…………本人のサインと印鑑付きの”誓約書”まで用意されている以上、アルフィン殿下を返還してもらう事はほぼ”不可能”な状況よ…………)
(そ、そんな…………)
(アルフィン殿下は一体どんな処罰を受けているんでしょうね…………?)
書状を手に取って確認したクローディア王太女は複雑そうな表情を浮かべた後オリヴァルト皇子に手渡し、手渡されたオリヴァルト皇子は書状の内容を確認した後重々しい様子を纏って呟き、オリヴァルト皇子の話を聞いたサラは厳しい表情を浮かべ、サラの推測を聞いたエリオットは悲痛そうな表情をし、エマは不安そうな表情を浮かべた。
「…………アルフィン自身が1度目の”ユミル襲撃”の件に対するメンフィル帝国が求めるアルフィンへの処罰を受ける事を申し出たと仰っていますが…………アルフィンはその処罰内容も把握した上で、申し出たのでしょうか?」
「はい。」
「ちなみにアルフィンさんの処罰内容はメンフィル帝国に所属する貴族の使用人兼娼婦として、一生その貴族に仕える事ですわ。」
「しょ、”娼婦”ですか…………?一体それはどういった意味を示しているのでしょうか…………?」
オリヴァルト皇子の問いかけにパントが頷いた後に説明をしたルイーズの話を聞き、”娼婦”の言葉を初めて聞くオリヴァルト皇子達がそれぞれ困惑している中クローディア王太女が不思議そうな表情で訊ねたその時
「アンタ達(ら)…………幾ら自国の領土が襲撃される原因の一端を担っているとはいえ、まだ10代の少女のアルフィン皇女に”女として”あまりにも酷な処罰を受けさせる事に何も思わなかったのかしら?」
「セ、セリーヌ…………?それは一体どういう事なの…………?
厳しい表情を浮かべたセリーヌがパント達を睨んで指摘し、セリーヌの言葉を聞いたエマは困惑の表情でセリーヌに訊ねた。
「…………”娼婦”って言ったら、今よりも遥か昔に存在していた”身体を売る事を生業としている女性”―――今の時代で言うと売春行為をする女性の事よ。」
「「な――――――――」」
「何ですって!?」
「ば、”売春行為をする女性”って、ま、ままままままま、まさか……!?」
「え、えっと……それって、もしかして…………」
「男が女を抱きたくなった時にお金と引き換えに男に抱かせる女の事でしょ?わたしがいた団の男連中も法をかいくぐって裏でコッソリやっているそういう施設に行ったみたいな話をしているのを聞いた事があるし。」
セリーヌの説明を聞いたオリヴァルト皇子とクローディア王太女はそれぞれ絶句し、サラは厳しい表情で声を上げ、アリサは顔を真っ赤にして混乱し、トワは表情を引き攣らせ、フィーはジト目で呟いた。
「我々の世界ではそういう施設を”娼館”と言う名前で呼んでいてね。ゼムリア大陸の国家は売春行為による商売を違法行為扱いしているようだが…………我々の世界では”娼館”も立派な”公共施設扱い”されているんだ。だから、ゼムリア大陸の我が国の領土の栄えた都市―――例えばセントアークにも”娼館”は存在するよ。」
「ば、売春行為の商売をする施設が”公共施設”って……!」
「しかもかつてはハイアームズ侯爵家の本拠地であったセントアークにそのような施設が存在しているとは…………ハイアームズ侯爵閣下がその事実を知れば、どう思われるだろうな…………」
「それよりもアルフィン殿下だよ。今の話通りなら、既にアルフィン殿下は操を…………」
「…………っ!何故ですか!?例え貴国の領土であるユミルが襲撃される原因になってしまったとはいえ、何故ユミルが襲撃されるように意図的に行動された訳でもないアルフィン殿下にそのようなあまりにも酷な処罰をメンフィル帝国は求められたのですか!?」
「リベールも”中立の立場”として問わせて頂きます!ユミル襲撃の超本人であるカイエン公やアルバレア公ならまだ理解できますが、ユミル襲撃の”被害者”でもあられるアルフィン殿下に対して何故そのような人道から外れたあまりにも惨い処罰をアルフィン殿下に受けさせる事にされたのですか!?この事がゼムリア大陸の国家にも知れ渡れば、間違いなく貴国はアルフィン殿下に対する人道から外れた処罰内容の件で各国から非難を受ける可能性も考えらえるのですよ!?」
パントの説明を聞いたマキアスが信じられない表情をし、ラウラとアンゼリカはそれぞれ重々しい様子を纏って呟き、ユーシスは悲痛そうな表情で、クローディア王太女は怒りの表情でパントに問いかけた。
「フフ、王太女殿下もそうですが皆さんも”娼婦”という存在に気がとられがちなご様子ですが、アルフィン殿の件は言い換えれば一種の”政略結婚”にもなるのですから、アルフィン殿は皆さんが推測されているような状況には陥っていませんよ?」
「…………それは一体どういう意味なのでしょうか?」
苦笑しながら指摘したセシリアの指摘が気になったオリヴァルト皇子は真剣な表情でパント達に訊ねた。
「先程も説明しましたように、アルフィン殿の処罰内容は『メンフィル帝国に所属する貴族の使用人兼娼婦として、一生その貴族に仕える事』―――すなわち、”メンフィル帝国が指定する人物専用の娼婦”という事になるのですから、当然アルフィン殿に肉体関係を強要する事が許されるのは”メンフィル帝国が指定した人物のみ”になります。その為、その人物以外がアルフィン殿に肉体関係を強要すれば”犯罪者扱い”されて、メンフィル帝国の法によって裁かれます。勿論例外はありませんので、例えアルフィン殿に肉体関係を強要した人物がメンフィル帝国の貴族や皇族であろうと、その人物は間違いなく裁かれる事になります。」
「つまり、アルフィン殿は言い換えれば”メンフィル帝国が指定する人物の使用人兼愛人”という立場でメンフィル帝国の”民扱い”される事になりますから、勿論メンフィル帝国人としての人権も存在しますし、アルフィン殿が仕える人物にもよりますが、運が良ければアルフィン殿は”愛人”ではなく”妻”としての立場にしてもらえる事も十分に考えられます。」
「上流階級の女性が自身の操を捧げるのは一生を共にすると決めた伴侶である事は私達の世界でも”常識”です。それについてはゼムリア大陸でも変わらないと思われるのですが?」
「それは……………………」
パント達の説明に反論が見当たらないクローディア王太女は複雑そうな表情で答えを濁した。
「…………オリヴァルト殿下、パント大使閣下達への質問をしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。」
「ありがとうございます。…………パント大使閣下達の話によればアルフィン殿下は我々が邪推しているような状況には陥っていない事は理解できました。ですがオリヴァルト殿下もそうですがアルフィン殿下にとってのご両親であられるユーゲント皇帝陛下とプリシラ皇妃陛下、そして弟君であられるセドリック皇太子殿下はアルフィン殿下はどのような人物に一生お仕えする事になった事についても心配されています。せめて、その人物の性格等について教えて頂く事はできないでしょうか?」
オリヴァルト皇子に許可を取ったアルゼイド子爵はパント達に訊ねた。
「それでしたら、問題はないでしょう。―――何せアルフィン殿が”使用人兼娼婦として一生仕える事になるメンフィル帝国が指定する人物”は子爵閣下やオリヴァルト殿下達もよくご存知のメンフィル帝国の貴族―――”シュバルツァー男爵家の跡継ぎなのですから。”」
「へ。」
「ア、アルフィン殿下がお仕えする”主”が”シュバルツァー男爵家の跡継ぎ”って事は…………」
「リィンがアルフィン殿下の”主”という事になるな…………」
パントの答えを聞いたアリサは呆けた声を出し、マキアスは信じられない表情で呟き、ガイウスが呆けた表情で呟いた後その場にいる者達は石化したかのように固まり
「ええええええええええええええっ!?」
やがて我に返ると驚きの声を上げた!
「何でリィンがそんな超展開になっているとか、訳がわからないわ…………」
「道理でアルフィン皇女は自分の処罰内容をあっさり受け入れた訳だね。リィンもそうだけど、アルフィン皇女も心配して損した。」
「フィ、フィーちゃん。」
サラは疲れた表情で呟き、ジト目で呟いたフィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいた。
「確か”シュバルツァー男爵家”は今回の戦争の発端となった”温泉郷ユミル”の領主であり、その跡継ぎであられるリィン・シュバルツァーさんはⅦ組の皆さんのクラスメイトだと伺っておりますが…………何故アルフィン殿下の件で彼に白羽の矢が立ったのでしょうか?」
「メンフィル帝国政府もそうですがメンフィル皇家である”マーシルン皇家”もエレボニアの内戦勃発後、エレボニアの領土と隣接しているユミルにエレボニアの内戦に巻き込まれた際に対処する軍を派遣しなかった件でシュバルツァー家に対する”負い目”があった為、その”負い目”に対する”詫び”として元々アルフィン度の仕え先の有力な候補としてシュバルツァー家が挙がっていたのですが…………」
「殿下達もご存知のようにリィンは先日のクロスベルでの迎撃戦の活躍の件があった為、それが後押しとなり、メンフィル帝国政府並びにマーシルン皇家はアルフィン殿の仕え先をリィンに決定したのです。」
「そうだったのですか…………クロスベル侵攻軍の空挺部隊のおよそ過半数がヴァリマールに撃墜された事やルーファス君がリィン君に討伐された事はある意味不幸中の幸いでもあったのか…………という事はアルフィンは今、リィン君の元に?」
戸惑いの表情を浮かべているクローディア王太女の質問に答えたルイーズとセシリアの説明を聞いたオリヴァルト皇子は安堵の表情で溜息を吐いた後パント達に訊ねた。
「ええ、そうなりますね。実際にアルフィン殿の対応したリウイ陛下達からの話による推測になりますが、今頃アルフィン殿は彼自身が遠慮していても自らの意志で彼の”使用人兼娼婦”を務めていると思いますよ?」
「え、えっと………何故そのような推測を?」
苦笑しながら答えたパントの答えにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クローディア王太女は苦笑しながら訊ねた。
「フフ…………リウイ陛下達の話によりますと、アルフィンさんはご自身が使用人兼娼婦として仕える相手がリィンさんだと知った時にこう仰ったそうですわよ―――『不謹慎ではありますが、わたくしが一生お仕えし、貞操も捧げる相手がリィンさんである事を知った時正直な所安心すると共に、”嬉しさ”も感じましたから』、と。」
「ええっ!?」
「なっ!?という事はまさかアルフィン殿下はリィン少佐の事を…………!?」
微笑みながら答えたルイーズの話を聞いたクローディア王太女とユリア准佐はそれぞれ驚きの声を上げ、アリサ達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。
(ハッハッハッ、アルフィン殿下がリィン君に想いを寄せている事は私達も感づいていたが、まさかこんな形で叶う事が厳しいご自身の恋を叶えるとはさすがはアルフィン殿下。追い詰められながらもまさかの大逆転をするなんて、転んでもただでは起きなかったようだね♪)
(か、感心している場合じゃないよ、アンちゃん。とりあえずアルフィン殿下は大丈夫な状況である事がわかったのは幸いだけど、幾らアルフィン殿下自身の意志とはいえ、ユーゲント皇帝陛下達に何も話を通さずにそんな状況になるなんて、大問題だと思うし…………)
(ううっ、まさかアルフィン殿下にまで先を越されるなんて…………)
暢気に笑っているアンゼリカにトワは困った表情で指摘し、アリサは疲れた表情で呟いた。
「そういう訳でアルフィン殿の件に関しましては納得できましたか?」
「…………正直な話、父上達の承認もなしにエレボニア皇家の一員のアルフィンがそのような状況になる事には問題があると思いますが…………私個人としてはアルフィンの今の状況には安心しました。」
「……………………」
パントの問いかけに対してオリヴァルト皇子は静かな表情で答え、アルゼイド子爵は目を伏せて黙り込んでいた。
「―――さてと。次はアルフィン殿の件で話に出たリィン少佐や彼の婚約者であるエリス嬢とセレーネ嬢がリウイ陛下の”帰還指示”によって我が国の帝都である”ミルス”にリィン少佐と共に帰還し、帝城の客室での”待機指示”が出されていた彼らが何故、メンフィル軍に入隊し、クロスベルでの迎撃戦にも参加した経緯についての説明を先にした方がよろしいでしょうか?」
「はい、是非お願いします。」
パントが次に話にする内容を口にするとアリサ達はそれぞれ血相を変え、オリヴァルト皇子は静かな表情で頷いて話の続きを促した。そしてパント達はリィン達がメンフィル帝国軍に入隊し、戦争に参加した経緯や理由を説明した―――
今回のBGMは空シリーズの”荒野に潜む影”か閃4の”それぞれの覚悟”のどちらかだと思ってください♪
Tweet |
|
|
3
|
1
|
追加するフォルダを選択
第21話