No.994382

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第13話

2019-05-26 23:11:55 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1990   閲覧ユーザー数:1748

 

1月14日、同日PM3:30――――

 

 

一方その頃、リィン達がクロスベルに侵攻したルーファス達エレボニア帝国軍をメンフィル・クロスベル連合軍の一員として殲滅し、活躍した事を新聞で知り、更にその後に来たエリスから来た手紙を読み終えたアルフィン皇女はある決意をしてバッグに最小限の荷物を入れて自分やエリスが通っていた女学院を見つめていた。

 

~聖アストライア女学院・校門~

 

(………短い間でしたがお世話になりました。中等部も卒業せずに学院から去ってしまう不出来な生徒をお許しください、先生方…………)

女学院を見上げたアルフィン皇女は悲しそうな表情を浮かべた後バルヘイム宮が建っている方向へと視線を向けた。

(お父様…………お母様…………別れの挨拶もせずに去ってしまう親不孝な娘の事はどうか一日でも速くお忘れください…………オリヴァルトお兄様…………お兄様にも相談もせずに去ってしまう事…………どうかお許しください。そしてもし”Ⅶ組”のみなさんが再び立ち上がる時がくれば、わたくしの代わりに彼らの後ろ盾になってあげてください…………セドリック…………メンフィル帝国との件がどんな形で終わってもエレボニアはメンフィル帝国に対する贖罪を終えるまで苦境に立たされ続ける事になるでしょう。エレボニアをそんな状況においやった愚かな姉であるわたくしの事は幾らでも恨んでもいいから、エレボニアとお父様達の事をお願いね…………)

バルヘイム宮にいる家族に心の中で別れを告げたアルフィン皇女がその場から離れようとしたその時

「――――やはり行かれるのですね?」

ミント髪の女学生が女学院から現れてアルフィン皇女に近づいた。

 

「ミルディーヌ…………えっと、何の事かしら?」

自分にとって親しい後輩である女学生にして貴族連合軍の”主宰”であったカイエン公爵の姪――――公女ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエンの登場に驚いたアルフィン皇女は気まずそうな表情を浮かべてごまかそうとしたが

「ふふっ、リベールのロレント地方にあるメンフィル帝国の大使館に行かれるのでしたら、空港での乗船手続きの際は偽名を使われた方が姫様の捜索に遅れが生じて連れ戻される可能性を低くできますから、偽名を使う事をお勧めしますわ。」

「フウ………助言ありがとう。それよりも一体いつから、気づいていたのかしら?」

”自分がこれからどこに行くのか全てわかった上”の公女ミルディーヌが助言を口にすると疲れた表情で溜息を吐いた後公女ミルディーヌに訊ねた。

 

「―――今朝から帝都を含めたエレボニア中を騒がせている内容――――クロスベルを侵攻したエレボニア帝国軍がメンフィル帝国と連合を組んだ”クロスベル帝国”によって迎撃・殲滅され…………その迎撃戦にはエリス先輩のお兄様――――”灰色の騎士”がメンフィル・クロスベル連合軍の一員として参加されていて、お一人でエレボニアの空挺部隊の多くを撃破した所か侵攻軍の”総大将”にして貴族連合軍の”総参謀”であったルーファス卿を討伐した内容が書かれている新聞である”クロスベルタイムズ”を姫様が顔色を悪くして読んでいるご様子を偶然目にした時から、メンフィル・クロスベル連合軍との戦争が本格的になる前に姫様は動かれると想定しておりました。―――最も、新聞を読んだ当日に行動なさる事は”少々”想定外でしたが。」

「そう…………貴女は止めないのね?」

「…………帝国貴族として、そして姫様の後輩としてお止めしたいですが、私には姫様をお止めする資格はございませんわ。――――姫様にそのような決断をさせる原因となった元凶の一人である貴族連合軍の”主宰”であったクロワール叔父様を親類に持つ私には。」

静かな表情で問いかけたアルフィン皇女に対して公女ミルディーヌは複雑そうな表情で答えた後静かな表情を浮かべてアルフィン皇女を見つめた。

「確かにユミルの件にはカイエン公も関わっていたけど、ユーシスさんのように貴族連合軍に関わっていない貴女まで責任を感じる事はないわ。―――でも、”最後”に貴女に会えてよかったわ。」

「…………姫様…………――――どうかご無事で。再びエリス先輩と共にお会いし、以前のように”乙女の嗜み”やエリス先輩ご自慢の”リィン兄様”についての談議ができる事を心からお祈り申し上げますわ。」

寂しげな笑みを浮かべたアルフィン皇女を辛そうな表情で見つめた公女ミルディーヌは静かな表情で会釈をして微笑み

「フフ、そうね。―――それじゃあ、”またね。”」

公女ミルディーヌの言葉に苦笑したアルフィン皇女はミルディーヌに微笑んだ後帝都にある国際空港へと向かい始めた。

 

(やはり”想定通り姫様はメンフィル帝国へと向かわれましたか。”将軍からの連絡によれば”黄金の戦王”との婚姻の話が纏まったユーディお姉様もキュアさんと共に近々クロスベルに亡命するご様子。ならば私も”指し手”として動く時が来るのも後少しですね。―――”メンフィル・クロスベル連合を含めた西ゼムリア大陸の全国家・組織との戦争に敗戦した後のエレボニアの未来の為”に…………そして”本来の盤面よりも2年も早まった想定外の盤面”をどのような結末へと導くのかをお傍で見せて頂くためにも、私も近々貴方の元に参りますわね?―――”灰色の騎士”様――――いえ、”私の未来の旦那様”♪)

アルフィン皇女を見送った公女ミルディーヌは真剣な表情を浮かべた後意味ありげな笑みを浮かべてまだ見ぬリィンの顔を思い浮かべた。

 

その後空港に到着したアルフィン皇女は偽名で乗艦手続きをして、まずリベール王国の王都―――グランセルへと向かい、グランセルに到着後は定期船でロレント市へと向かい、そしてロレント市に到着後は徒歩でロレント市の郊外にあるメンフィル帝国の大使館へと向かった。

 

 

同日、PM8:30―――

 

アルフィン皇女が大使館に到着する前リウイはしばらくの間”メンフィル帝国大使”としての代理を務める自分と同じ隠居した立場にして、かつては”宰相”として自分とシルヴァンの二代のメンフィル皇帝を支えた大貴族――――パント・リグレへの引継ぎを終えていた。

 

~リベール王国・ロレント市郊外・メンフィル帝国大使館・執務室~

 

「夫婦揃って隠居生活を楽しんでいた所をわざわざ異世界にまで呼び出し、面倒な仕事を押し付ける羽目になってしまってすまないな、パント。」

「いえ、異世界――――ゼムリア大陸には前から興味がありましたから、私にとっては渡りに船ですから、どうかお気になさらないでください。―――それよりも、今回の戦争、本当に私は陛下達の御力にならなくてよろしいのでしょうか?」

リウイの言葉に対して謙遜した様子で答えたパントはリウイにある事を訊ねた。

「今回の戦争相手――――エレボニア帝国はお前の知恵が必要な程手強い相手ではないし、メンフィル側の軍師はシルヴァンの名代も兼ねたセシリアが纏める事になっているから、心配無用だ。」

「まあ…………セシリアさんが。それでしたら何の心配もございませんわね。」

リウイの答えを聞いた金髪の婦人――――パントの妻であるルイーズ・リグレは目を丸くした後微笑んだ。

 

「そのようだね。だったら私達はお役御免になった後の事――――動乱の時代が終わって平和になったゼムリア大陸での旅行の計画でも立てておこうか。」

「ふふっ、それはいい考えですわね。」

「クスクス、そういえば私達も”新婚旅行”はまだですから、戦争が終わったら私達もゼムリア大陸で旅行をしませんか、あなた?」

「…………そうだな。全て終えて落ち着いた後でならいいかもしれんな。」

パントの提案にルイーズが頷いている様子を微笑ましく見守っていたイリーナの希望を聞いたリウイは静かな笑みを浮かべて頷いた。するとその時部屋に備え付けている内線が鳴った。

 

「―――こちら執務室。何があった?」

「こちらエントランス。夜分遅くに申し訳ございません、陛下。どうしても陛下にお会いしたいという人物がこの大使館に飛び込みで訊ねてきたのですが…………」

「何?こんな夜遅くにか?―――一体誰だ?」

「それが…………エレボニア帝国皇女アルフィン・ライゼ・アルノールと名乗っています。本来でしたら追い返すべきだと思われるのですが、証拠としてエレボニア皇家の一員であることを示す皇印も見せられた以上陛下に判断を委ねる必要があり、ご連絡致しました。」

「…………何?少し待て。その者が本人かどうかを確認する。」

予想外の人物が自分を訊ねてきた事に驚いたリウイは端末を操作してエントランスにある監視カメラの映像を見ると、そこには学生服姿のアルフィン皇女がいた。

「…………確かに本人のようだな。―――いいだろう。今から会うから執務室まで案内してやれ。」

「御意。」

「あなた、何があったのですか?」

リウイが内線を終えるとイリーナが不思議そうな表情を浮かべて訊ねた。

 

「…………今エレボニア帝国のアルフィン皇女がこの大使館に訊ねてきて、俺との面会を望んでいるとの事だ。」

「ええっ!?アルフィン皇女が!?一体何の為に…………メンフィル帝国とエレボニア帝国はもはや戦争状態に突入しているというのに…………」

「まさかご自身がメンフィル帝国に対する人身御供となる事で戦争を止める為でしょうか?」

リウイの説明を聞いたイリーナは驚いた後困惑し、エクリアは複雑そうな表情で自身の推測を口にした。

「さてな…………エレボニアへの侵略を中止する要求内容はアルフィン皇女も知っているだろうから、自分の身一つを差し出した所で何の意味もない事は承知しているとは思うが…………」

「陛下、もしよろしければ私が対応致しましょうか?」

リウイが考え込んでいる中パントは自分がアルフィン皇女の対応する事を申し出た。

「いや、アルフィン皇女が護衛もなしに俺に会いに来たという事はアルフィン皇女自身の独断で”そこまでの覚悟”を持って来たという事だろうから、俺が対応する。あまり大人数で対応してアルフィン皇女を委縮させる訳にもいかないから、お前とルイーズは一端部屋に戻ってくれ。会談が終わり次第状況を説明する。」

「ハッ。それでは我々は一端失礼致します。」

「失礼します。」

そしてパントとルイーズが部屋を退出して少しすると、アルフィン皇女が執務室に通された。

 

「―――このような夜分遅くの突然の訪問に応えて頂き、誠にありがとうございます、リウイ陛下。」

執務室でリウイ達と対峙したアルフィン皇女は上品な仕草で会釈をし

「直接顔を合わせて話をするのは帝都(ヘイムダル)での夏至祭以来か……………………それで、メンフィルとエレボニアが戦争状態に陥っているこの状況で、今更何をしに来た、アルフィン皇女。」

「「……………………」」

会釈をされたリウイは静かな表情で答えた後目を細めてアルフィン皇女に問いかけ、その様子をイリーナは複雑そうな表情で、エクリアは静かな表情で黙って見守っていた。

 

「まずは内戦の件について謝罪させてください…………シュバルツァー男爵夫妻の好意に甘えて軽はずみにも貴国の領土であるユミルに潜伏し続けた結果、ユミルが猟兵達によって襲撃されてその襲撃でテオおじ様が重傷を負われ、貴国の令嬢であるエリスまで拉致されるという貴国としてはとても許されない所業を我が国が行ってしまい、誠に申し訳ございませんでした…………!」

リウイに問いかけられたアルフィン皇女はその場で深く頭を下げた。

「今更謝罪をした所で、我が国のエレボニアに対する”怒り”は全く収まらないがな。まさかとは思うが、ユミル襲撃の元凶の一人である自分の身をメンフィルに差し出せば、メンフィルは”怒り”を収めるような甘い事は考えていないだろうな?グランセルのエレボニアの大使館を通じてエレボニア帝国政府に送り付けた要求内容にも書いてある通り、今更”帝位継承権がある皇女一人の身如き”で我らメンフィルの”怒り”は収まらんぞ。」

「……………っ!」

「あなた…………何もそこまで言わなくても。」

しかしリウイは冷たい答えを口にし、その答えを聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情で息を呑み、イリーナはアルフィン皇女を気にしながらリウイに指摘した。

 

「いいえ…………リウイ陛下の仰る通りですし、わたくしもそのような甘い事は考えておりませんのでどうかわたくしの事はお気になさらないでください、イリーナ皇妃陛下。」

「……………………」

「―――それで?ここに来た本題は何だ?」

アルフィン皇女の答えを聞いたイリーナが複雑そうな表情で黙り込んでいる中リウイは静かな表情でアルフィン皇女に要件を訊ねた。

「…………リィンさん達の事です。二日前我が国がクロスベルに侵攻した際に、リィンさん達もメンフィル帝国軍の一員として戦い、多くのエレボニアの軍人達だけでなくルーファスさんも討ったとの事ですが…………実は今日エリスから手紙が届きまして。エリスの手紙によりますとメンフィル帝国軍にはリィンさんやセレーネさんだけでなく、エリスまで入隊しているとの事ですが…………もしかして、リィンさん達がそのような状況に陥った原因の一つはわたくしを含めたエレボニアの人々と親しくなり過ぎた事でしょうか?」

「…………まあ、理由はアルフィン皇女が考えているような内容ではないが、リィン達が今回の戦争に参加するためにメンフィル帝国軍に入隊を志望した理由はアルフィン皇女が関係している事は否定しない。」

辛そうな表情で訊ねたアルフィン皇女に対してリウイは静かな表情で答えた。

 

「っ…………!やはり…………!リウイ陛下、リィンさん達が貴国に忠誠を疑われる責任はリィンさん達の好意に甘え続けたわたくし達”アルノール家”に一番の責任があります!わたくしが”アルノール家”を代表してメンフィル帝国が望むわたくしへの裁きも受けますので、どうかようやく辛い戦いを終えたばかりのリィンさん達を再び戦いに駆りだすような事は止めてあげてください!お願いします…………!」

リウイの説明を聞いて辛そうな表情で唇を噛み締めたアルフィン皇女は頭を深く下げてリウイに嘆願したが

「どうやらアルフィン皇女は盛大な勘違いをしているようだな。」

「え………」

リウイの言葉を聞くと呆けた表情を浮かべた。

 

「―――リィン達が今回の戦争に参加する為にメンフィル帝国軍に入隊した理由は俺達を含めた誰の意志も介入していない―――つまり、自分達の意志で今回の戦争に参加する事を決めたリィン達自身によるものだ。」

「!!ど、どうしてリィンさん達が自らの意志でエレボニア帝国との戦争に…………もしかして、ユミルの件に対する”報復”でしょうか…………?」

リウイの答えを聞いて目を見開いて驚いたアルフィン皇女は悲しそうな表情を浮かべてリウイに訊ねた。

「…………あなた、アルフィン皇女がご自身の身も顧みずリィンさん達の為にお一人でここに訊ねてきたのですから、教えてあげたらどうですか?」

「僭越ながら私もイリーナ様の意見に賛成致します。エレボニアで結んだ親しい方々にも刃を向ける辛い決意をして早速”結果”を出したリィンさん達の為にも、その当事者の一人であるアルフィン殿下にもお教えるべきかと。」

「……………………―――いいだろう。リィン達が今回の戦争に参加した理由は――――」

イリーナとエクリアの意見を聞いて頷いたリウイはアルフィン皇女にメンフィルが求めるアルフィン皇女の処罰内容を含めてリィン達が戦争に参加した理由を説明した―――

 

 

という事で今回の話でミュゼがフライング登場しました♪なお、アルフィンが女学院を去るときのBGMは閃4の”それでも前へ”、リウイがアルフィンにリィン達の事について話し始めるときのBGNは碧の”想い、辿り着く場所”か、VERITAの”それでも生きる”のどちらかだと思ってください♪


 
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