ルークはまたクスッと笑いました。ルークが笑う事自体が珍しいので、ステイシーはゾクッとします。
「僕には全部、見えてしまうんだ。相手が好意を持っているか、悪意があるかどうかがね…」
「私が好意を持っている事も知っているのでしょう?」
「ええ、悪意がない事も知ってますよ?」
「そうですか。相手の事が見え過ぎるのも辛いでしょうね」
「あのおばあさんがローラに対して好意がある事も悪意がない事も見抜いていたんだ…」
「あのおばあさんはマルヴェールに移住されたのですよね」
「多分ね。ローラの事を相当、気に入っていたようだから」
「あなたも気に入っているのでしょう?」
ルークは突然、立ち上がるとステイシーを壁際に追い詰めました。ステイシーは驚いてルークから逃げようとします。
「なぜ避けるんだ…。僕とこう言う関係になりたくて惚れ薬を飲ませようとしたんじゃなかったの?」
「私が好きなのは…アウローラに夢中で他の女には見向きもしないルークなの」
「うーん、追われると嫌になってしまうタイプなのかな?」
「あなたは私の事を…本気で愛してはいないのでしょう?」
「今は本気じゃなくても、これから本気になるかもしれないよ?今愛していなかったらダメなの」
「これから先、私が愛される可能性があるのなら、今は愛してなくても良いけど…」
「僕が誰かを愛する事の方が難しいんだ。今の僕の記憶の中で僕が誰かを愛した記憶は一つもないから…」
「愛した記憶がないなら、愛した者の記憶を別の相手との記憶にすり替えると言う惚れ薬は効果がなくなるんじゃ…」
「そう、だから僕の記憶は消えない。誰も愛してないから」
「惚れ薬を飲んだ後に私を愛してるフリをして私と付き合うつもりでいたのね」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第365話。