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真・恋姫無双外史 ~昇龍伝、人(ジン)~ 第四章 涼州驚愕、天水の少女

テスさん

この作品は、真・恋姫無双のSSです。

旅を続け、涼州に辿り着いた北郷と趙雲のお話。あの少女と出会います。

注意:恋姫以外の登場人物が登場します。作者の勉強不足と作品の都合で、いろいろとおかしなところがあります。でも楽しんで頂ければ幸いです。

2009-10-05 00:56:02 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:32224   閲覧ユーザー数:23863

真・恋姫無双外史 ~昇龍伝、人(ジン)~

 

第四章 涼州驚愕、天水の少女

 

(一)

 

俺たちは洛陽を離れ、涼州に入る。

 

涼州は大陸の左上に位置し、ローマへと通じるシルクロードへの入口である。

 

西域への交通の要所であり重要拠点だが、この時代の人がそれを認識するにはまだまだ遠い年月が必要になる。そのため洛陽の人間には辺境地として認識されている。

 

西方の異民族との争いの舞台であり、時には彼らと共存し貿易を行い、また広大な土地を生かした放牧など、今まで歩いてきた土地とはまた違う場所だ。

 

峠を越えた辺りから、所々枯れた草木を覗かせた草原が広がる。

 

「馬が無いと話にならないな・・・」

 

「そういえば、北郷は馬に乗れるのか?」

 

俺は首を振り、やることが増えたと再び溜息をつく。

 

簡単になら読み書きができるようになった。次は兵法、さらに馬術か。考えるだけで嫌になる。

 

「涼州は馬の練習に持って来いだ」

 

がんばれよと、趙雲が俺の背中を叩く。

 

そんな話をしながら俺たちは朧西郡、天水という街に到着する。

 

噂通り、天水は今まで立ち寄ってきた街に比べれると平和なようだ。

 

「民の笑顔有りか・・・」

 

そう言って、ちと仕官してくると歩いて行った。

 

俺はこの街を散策する。市には元気な声と笑顔が溢れていた。洛陽もこれぐらい笑顔に包まれていれば、平和だって確信できるんだけどな。

 

考え事をしながら歩いていると、何やら目の前が騒がしい。

 

「どうしたんですか?」

 

「馬車の前に男が急に飛び出してきたんだ」

 

その現場に目をやると、突然女性の悲鳴が聞こえる!

 

凶器を持った男達が数人現れ、馬車を強襲した。

 

 

(二)

 

手綱を握っていた御者に斬りかかり、彼をそこから蹴り落とす。

 

周りにいた兵士達は油断していたのか、一瞬で倒されてしまう。男の一人が中にいた従者を下ろすと、そのまま連れ去ろうと慌ただしく動き回る。

 

「誰かぁっ!中にいる御方を!!!」

 

悲鳴を上げるかのように叫ぶと同時に、馬が嘶き馬車が動き出す。考えている暇なんて無さそうだ!

 

俺はその馬車にへばり付くと、徐々に速度を上げて走りだす。

 

落ちればただでは済まない速度になり、何とか馬車の扉まで辿りつく。

 

ノックすると中から扉を開かれる。少女が姿を現し、赤く腫らした瞳を俺に向ける。

 

「怪我はないか!?」

 

「大丈夫です!」

 

「あっ!貴様、何してやがる!」

 

やばっ・・・見つかった。大声で叫ぶんじゃなかった!

 

男が弓矢で俺に狙いを澄ます。

 

馬車が跳ねた一瞬、俺は無我夢中で少女の胸に飛び込み、小さな体を押し倒す。

 

「許せ!」

 

謝ると、彼女は頭をコクコクと縦に振る。

 

立ち上がろうと腕に力を入れると、髪が引っ張られる。

 

「痛たた!」

 

どうやら馬車の中で絡まってしまい、身動きが取れなくなってしまった・・・

 

「だ、大丈夫ですから・・・落ち着いてください。少しだけ、じっとしていてくださいね」

 

そう言うと少女が動き始める。絡み合った箇所を少しずつ解いて行く。

 

俺の頭が後ろから押され、そのまま彼女の胸に埋まる・・・

 

「と、取れました・・・」

 

「あ、ありがとう・・・」

 

顔を赤くして俯いてしまった。・・・それよりも!

 

二人で恥ずかしがっている場合ではない!この状況を何とかしよう!

 

俺は気配を探り、馬車の壁面に剣を突き刺す。危ねぇ!と叫び声が聞こえる。

 

「後ろを取った!馬車を止めろ!」

 

馬車が止まると、異様なほどな静けさに包まれる。外には息を潜めて待ち構えているのだろう。

 

状況を確認するために扉をそっと開けば、案の定、矢が扉に突き刺さる。

 

出口は片方しかないため、このままでは外に出ることができそうにない。

 

「・・・すまない。立派な馬車だけど、壊して出口を作るけど構わない?」

 

少女が頷いてくれたので、俺は反対側を刀で切り抜いて逃げ道を作る。

 

・・・気づかれていないか?

 

念のため、扉に気を引かせるためにそっと開ける。すると再び矢が数本扉に突き刺さる。

 

「危険だけど・・・逃げるよ?」

 

馬車から先に下りてから、彼女を静かに受け止めた後、息を潜め距離を取っていく。

 

俺たちはそっと草むらの中に身を潜める。

 

出て来るのを待っていても時間が無駄だと考えたのか、男の誰かが勢いよく馬車の扉を開ける。

 

勿論そこは物けの空。俺達を逃したことに気付く。

 

「くそっ!まだ遠くに行ってない!探せっ!」

 

男たちは森の中へと走って行った。

 

「んー」

 

「どうしたのですか?」

 

「いや、逃げるチャンスなんだけど、俺、馬に乗れないんだよ」

 

「!?」

 

しばらく何かを考えた末に、少女は顔を真っ赤にして言う。

 

「だ、大丈夫です!わ、私に掴まってください!」

 

「馬、乗れるのか!」

 

「涼州の民は、皆馬と共に生きておりますから」

 

その笑顔に俺は安堵する。一大決心をして目の前の少女に運命を託す。

 

足音を立てないようにゆっくりと馬車に近づき、慣れた手つきで繋がれた馬を自由にしてやる。

 

少女は優しく馬を撫でて、何やら話しかけてから馬の背に飛び乗った。

 

「さぁ、早く!」

 

「わ、わかった!」

 

彼女の後ろに飛び乗ると、馬は徐々に加速して風を切って走り出す。

 

馬の背が上下して、尻が突き上げられる。その痛みを堪えようと必要以上に強く抱きしめる。

 

「い、痛いです」

 

「うぅ、ごめん!でも、予想以上に!!いてぇぇぇぇぇl!」

 

「お、落ちないように、馬の腹にしっかり足を挟んで私に捉まっていてください!」

 

馬から振り落とされないように、必死で少女を抱きしめて、俺たちはこの場から離脱した。

 

途中、旗をなびかせて慌ただしく走っていく騎馬部隊とすれ違うのも気付かずに・・・

 

 

 

 

「おや?あれは北郷?」

 

高貴な姿に身を包んだ少女と、その後ろで必死にしがみ付いていた少年は、その旗と声に気づくことなく走り去ってしまう。

 

「ふむ。まさか・・・」

 

だがそれなら楽な初仕事となりそうだ・・・

 

愛槍を背負いながら、龍の髭を思わせる柔らかな髪をなびかせて、その少女はその任務がすでに終わっていることを悟った。

 

 

 

 

天水の街に無事に戻ってこれた俺は、ぐったりしていた・・・

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「少し、慣れない経験をしたもんだから・・・」

 

「横になりますか?」

 

「そうするよ」

 

俺はのそのそと横になると、突然頭を持ち上げられる。

 

「よいしょっと」

 

あの・・・?

 

「へぅ、駄目・・・ですか?」

 

「いや、かなり嬉し、い」

 

爽やかな風が頬をなぞる。

 

最後まで言えなかった。今まで体験したことのない疲労が襲いかかり、俺は一瞬で意識を手放した。

 

 

(三)

 

木漏れ日の下、少女は瞳を閉じてその暖かさに身を委ねた。

 

「ゆ、月~!」

 

愛する人を見つけ、居ても立ってもいられずに走ってきた少女が、膝をつきながら滑りこんで愛しい友を抱きしめる。

 

「詠ちゃん?きゃぁ!」

 

膝枕したその姿勢で少女は横へ押し出される。

 

ゴン!

 

「あっ!」

 

呼吸を忘れるくらい長い沈黙のあと、眠りから目覚めない少年に安堵して、少年の頭を持ち上げて再び膝の上に乗せる。

 

頬に付いた土を落とすかのように愛おしく撫でて、細い指で前髪を掻き分ける。

 

その光景に、親友である詠という少女は驚いてしまう。

 

「月?」

 

「うん、馬車が強盗に襲われて・・・この人が私を助けてくれたの」

 

「気持ち良さそうに月の膝枕で寝ているコイツが?・・・たった一人で?」

 

首を縦に振る。

 

「そうだよ詠ちゃん」

 

「うわっ、ニヤニヤしてるし・・・正直信じられないけど、月がそう言うなら信じるわ。それで名前は?」

 

「・・・知らない」

 

見ず知らずの男の人が、たった一人で賊から命を張って守ってくれた。

 

「私に・・・そんな価値あるのかな」

 

「・・・月、二人で誓ったでしょ?弱き者を守るために私たちは強くなるって」

 

―――だから月、そんなこと言わないで。

 

悲しそうに呟くと、詠という少女は優しく抱きしめる。

 

「・・・詠ちゃん」

 

そんな二人の存在を無視して、膝の上で背伸びをする男が一人・・・

 

「きゃぁ!」

 

「あっ!ごめん!」

 

「いぃぇ」

 

顔を赤くして、俺を覗き込む。なんだか目を逸らせない。

 

「いつまで・・・見詰め合っているのかしら?」

 

「へぅ」

 

俺は声のしたほうに視線を向けると、眼鏡を掛けた少女が何故か怒って立っていた。

 

「アンタ!いつまで月に膝枕して貰ってるのよっ!」

 

思いっきり腹を踏まれる。

 

「ぐはっ!」

 

「え、詠ちゃん!」

 

「だって月!」

 

「だってじゃないでしょ?」

 

私、怒ってますと眉を吊り上げて、少女の行動を咎める。

 

「うぅ~~~~早く起きろ!ばかっ!アンタのせいで、月に怒られたじゃないか!」

 

「詠ちゃん!」

 

「うぅ~~~~」

 

「だ、大丈夫だから。気にしないで」

 

名残惜しいが重い体を持ち上げてから、もう一度背伸びをする。

 

「月、申し訳ないんだけど、かなり急ぎの用事ができたの。本当に申し訳ないんだけど・・・」

 

「わかりました。旅の御方、賊から助けて頂いてありがとうございました。お礼も何もできずに立ち去らねばならないことをお許しください。」

 

「困ったときはお互い様さ。それにお礼なら膝枕して貰ったしね。気持ち良かったよ」

 

俺はうんうんと頷くと、目の前の少女は顔を赤くして俯いてしまう。

 

「へぅ」

 

そんなやり取りをした後、二人は慣れた具合に馬に飛び乗る。

 

「旅の者よ。私の親友を助けてくれて本当にありがとう。恩にきるわ」

 

「あっ!貴方のお名前を、良ければお聞かせください!」

 

「姓は北郷、名は一刀。字と真名が無い場所から来た。またな!」

 

「姓は董、名は卓、字は仲穎と申します!」

 

「ちょっと、月!」

 

「構わないの、一刀さん!お元気で!」

 

俺はそう言って手を振ると、彼女たちは馬に乗って走って行ってしまった。

 

・・・この世界は、俺が知っている歴史から、大きく外れているようだ。あんな可愛い子が、民を脅して、悪政を働くはずがない!きっと何かの間違えだろう。

 

「・・・ここで考えても仕方ないか。俺も馬に乗れるようにならなきゃな」

 

そう言って宿へと向かった。

 

 

(四)

 

まず俺がやらなきゃいけないこと、それはこの真実を趙雲に伝えねばいけないことだ。

 

「趙雲。俺の知っている歴史のことなんだけど、大きく外れているようだ」

 

どうでも良いと判断されたのか、肘をついて座っていた趙雲が俺から視線を外す。

 

「また・・・突然どうした?」

 

「いや、俺の歴史の董卓に関しては・・・話をしたと思うんだけど」

 

考えながら、俺の教えた董卓という人物を語る。

 

「・・・暴虐、暴政。劉弁を廃して劉協を皇帝に立て、歴代皇帝の墓を暴き洛陽に火を着けて長安に移る・・・ふむ。どこまでも極悪人だな」

 

「あぁ。偶然にも・・・その董卓という人物に出会った」

 

清廉潔白、品行方正、いろいろな言葉が俺の頭に浮かんでくるが・・・やっぱりこれだろう!

 

「あんな可愛い子が、俺の知っている董卓である筈がない!」

 

支えていた頭がずれて、趙雲がかくんと揺れる。でも俺は間違えていない!

 

私利私欲に生き、この時代では珍しい丸々とした体を持った大男を想像していただけに、良い意味で裏切ってくれた少女を頭の中に思い浮かべる。

 

「北郷は・・・己の知識に囚われ過ぎているのかもしれんな」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「歴史とは人の手によって作られ、文字として綴られるものだ。勿論その過程に人の手によって改竄されることもあるわけだが・・・」

 

一呼吸おいて、俺を見る。

 

「未来がどうなるか・・・誰も分かるはずがない。まだ起きてもいないことを間違えていたと判断するのは早計であろう?」

 

―――未来が間違えていた。可笑しな話だとは思わないか?

 

「董卓もしかり。人の心は変わりやすい上に、簡単に壊れてしまうものだからな」

 

的を射たその一言に俺は沈黙する。

 

「下も見ずに先のことばかり考えていると、いつか転んで痛い目に遭うぞ?・・・その目は何のためにある?」

 

年下であろう趙雲に説教されてしまうとは・・・年上としては情けない。もっとしっかりしないと。

 

「ふむ。だが気になる・・・気になるぞ・・・」

 

ぶつぶつと何やら言い出した趙雲が口元に怪しい笑みを浮かべる。

 

「明日にでも董卓を見に行くぞ?」

 

 

 

 

次の日、俺たちは屋敷から董卓が出て来るのを隠れて待っていた。

 

覗きはいけないことだと思うんですけど?

 

「と言ってもだな・・・董卓という人物は表舞台には、滅多に顔をださぬそうだ」

 

「え?」

 

「誰もが董卓という名は知っているが、その姿を知る者はごく一部。董卓の側近と軍幹部の数人だそうだ。徹底的な秘密主義。それが董卓と呼ばれる人物だ」

 

「それじゃ、趙雲は董卓に会えなかったのか?」

 

趙雲がこくりと頷く。

 

「・・・あの数人の中には?」

 

入り口から出てきた数人を眺める。

 

「あっ、ほらあそこ。小柄で髪が肩までの子」

 

「ふむ。あれが・・・董卓か」

 

董卓の姿をみて、趙雲が俺に手を差し伸べる。俺はその手をがっちりと掴む。

 

ここに董卓連合の結成である!

 

「そこにいるのは誰だ!?」

 

ちょっ、見つかったっ!

 

隣を見ると、いつの間にか趙雲は姿を晦ましていた・・・

 

「流石趙雲・・・俺は逃げ切れそうにないな」

 

ここで逃げたら完璧に不審者だし、恥ずかしながら草むらから出て董卓に手を振る。

 

「一刀・・・さん?」

 

董卓の周辺には昨日の眼鏡の少女の他に、戦斧を持った武人の女性が立っていた。

 

「貴様、何者だ!そこで何をしていた!」

 

董卓が何か言おうとしたときに、隣の眼鏡の子がそれを止める。

 

「・・・アンタ、間諜だったの」

 

誤解を解かないと本気でやばそうだな。

 

「間諜じゃない」

 

「ならば、こそこそ何をしていた!?」

 

下手な言い訳はまずいか・・・趙雲、どう転んでも俺を怨んでくれるなよ。

 

「友達の主探しの旅に同行させて貰っているんだが・・・董卓の噂を聞いて此処まで来た。でも董卓に会えそうに無いらしい」

 

彼女達は俺の素性を確かめようと、ずっと俺を睨み続けている。

 

「俺が出会ったという話をしたらね・・・姿だけでもって思ってね」

 

「ということは、アンタ以外に・・・もう一人いたってこと?」

 

「あぁ。俺が気付いた時には、もう姿を消していたよ。友達ながら流石だと思うよ」

 

「・・・」

 

何か思うことがあったのか、眼鏡の少女が答える。

 

「確か・・・月に会わせろと、仕官して間もない者が名乗り出てきたと・・・報告に聞いてるわ」

 

「たぶん、それだろうな」

 

「・・・残念だけど、月には会わせることはできないわ。涼州の豪族を束ねる立場上、月は公の場に姿を見せるわけにはいかない・・・甘い認識を持たれると困るのよっ!舐められる訳にはいかないのよっ!!」

 

―――特に、アンタみたいな奴にね。華雄!

 

俺に左手を向けて、従者の名を叫ぶ!

 

「任せろ!」

 

力任せに振られた戦斧が俺の目の前を通り過ぎる。・・・本気で洒落にならねぇ!

 

何とか横に跳び、彼女から繰り出される戦斧の軌道から逃れる。俺は全速力で彼女から逃げ回る。

 

「えぇぃ!逃げるな!このっ!」

 

さすがにあの一撃を受け止めると刀が折れそうだし・・・そういえば彼女、華雄って言ってたっけ。華雄、華雄・・・あぁ!三国志演義の泥水関の戦いで関羽にやられた奴か!

 

「北郷!何をしている!?」

 

「ちょ、趙雲!見れば分かるだろう?助けてくれ!」

 

「ふふっ。見つかったお前が悪い!」

 

何故か他人事のように、董卓と並んでこの状況を楽しんでいた。

 

「い、いつの間に!・・・アンタは何者なわけ?」

 

「そう怯えることは無い。あそこで追いかけ回されている男の友だ。さて・・・華雄とやら!そのような逃げ腰の者を相手をして何が面白い!」

 

「むぅっ、貴様はっ!?」

 

「北方常山の趙子龍!・・・我が友、北郷に代わってお相手致そう!」

 

「ならば来い!返り討ちにしてくれる!」

 

二人の武将の一騎打ちが始まる。

 

・・・助かった。どうやら趙雲が助けてくれるみたいだ。

 

俺は董卓の元へ駆け寄る。

 

「かず、いえ、北郷さん。どうしてこんなことを・・・」

 

「説明した通りさ。信じるか信じないかは董卓さんに任せる。でも信じて貰えないなら、涼州を後にするしかないかなぁ・・・」

 

お、そろそろ趙雲と華雄の決着が付きそうだ。

 

「華雄とやら。なかなか良い武を持っているな・・・だが、その程度では私には勝てぬぞ!」

 

「ちょっと・・・華雄が押されるなんて!」

 

「華雄さん!」

 

「・・・」

 

誰かと仕合をする趙雲を見るのは初めてだけど、やっぱりすごいな・・・

 

華雄の相手はあの軍神と称される関羽と並び立つ将。それに武の相性も悪かった。趙雲の洗練された槍捌きから繰り出される瞬突。体勢を崩されたところに斧を絡めとられて、武器を手放してしまう。

 

「くっ!」

 

「勝負ありだ・・・」

 

俺に向かって眼鏡の子が話しかけて来る。

 

「・・・私達をどうするつもり?」

 

「え?」

 

「え?じゃないわよ!どうもしないなら・・・どうして、こんな事になってるのよ!」

 

「成り行きだろ?」

 

「アンタと話してると、腹立って来るわ!」

 

すると今度は趙雲に大声を上げる。

 

「趙子龍とか言ったわね!望みは何!」

 

「ふむ。では董卓殿が如何様な人物であるか、この目で確かめさせて頂ければ」

 

「月はどう?」

 

「私は大丈夫だよ」

 

「そう・・・華雄以上の武を持つ人が月の護衛してくれるなら心強いけど、問題はアンタよ」

 

「俺?」

 

「何が望みなの?」

 

「趙雲の希望は叶ったし、別に何も」

 

「何も無い方が逆に怖いのよ。私利私欲とか普通あるでしょ?董卓の名を出せば・・・この涼州なら大抵の事なら通る。それが狙いなんでしょ?」

 

目の前の少女が舌打ちをして、時間が勿体ないと俺を急かす。

 

「そ、それじゃ・・・馬の乗り方を俺に教えてくれ!」

 

その一言に誰もが沈黙する中、誰かがクスクスと笑いだす。

 

董卓。字は仲穎、その人である。

 

 

(五)

 

「何で?どうして!?てか、何で馬なのよ!訳分かんないわ!」

 

「詠ちゃん・・・もしかすると、本当に大した用事なんて無かったのかもしれないよ?」

 

「月、こんな奴の言うことを真に受けちゃダメ!・・・絶対に何か裏があるに違いないわ!」

 

「・・・」

 

ぶつぶつと、何か考え始めた彼女の名前は、賈文和。

 

「私の幼馴染で大親友なんです!」

 

満点の笑顔で彼女のことを紹介され、俺は早速望みを叶えて貰っていた。

 

「では・・・乗ってみてください」

 

乗ってみてくださいって言われても・・・

 

「どうやって?」

 

董卓は俺の胸辺りまである馬の背に、いとも簡単に飛び乗ってしまう。

 

「すげぇ・・・」

 

「それほど難しくないですから、やってみてください」

 

スタッっと馬から飛び降りて、さぁどうぞと馬の背を撫でる。ここに飛び乗れと俺に促す。

 

意を決して勢い良く飛び乗ると、馬が嫌がりバランスを崩してそのまま向こう側に落ちてしまう。

 

「ぷぷっ――何だそれは!貴様、満足に馬も乗れんのか!」

 

趙雲に打ち負かされた華雄が俺のことを嘲笑する。

 

「・・・月、こいつは間諜でも、刺客でも何でもないわ。ボクの勘違いだった。ただの間抜けだった」

 

ボクが間違えていた。許してね・・・と、腰から斜め四十五度に傾けて、董卓に頭を下げる。

 

「さすが北郷。早くも彼女達の疑いを晴らすとは―――だが馬に乗れなかったからとは」

 

趙雲は必死に笑いを堪えている。

 

「初めてなんですから、失敗はつきものです。最初は難しいかもしれませんけど、大丈夫です」

 

「ぐすん・・・董卓さんは、優しいんだね」

 

「そ、そんなこと・・・ないです」

 

顔を真っ赤にして否定しているけど、彼女達と比べれば天と地の差はあります。十分優しいです。

 

・・・そう。普通の優しい女の子なんだよな。これが董卓。・・・俺の知っている歴史の董卓とは正反対。俺はそんなことを思いながら、彼女の指導を受けていた。

 

 

(六)

 

董卓の元に身を寄せて一カ月以上が過ぎ、俺は順調に乗馬の技術を磨いていた。

 

「どう!?」

 

「上手ですよ」

 

先生の教え方が良い御蔭で、俺はそれなりに乗れるようになった。馬に乗って武器を振り回すことはできないが、昔に比べればかなりの進歩と言って良い。

 

董卓は一カ月以上、俺に付きっ切りで面倒を見てくれていた。以前、その理由を尋ねたことがある。

 

 

 

 

「その・・・反乱を抑えきれなかったために、官位剥奪になりまして・・・今は無職です」

 

自虐的な笑みを浮かべて、俺に教えてくれた。

 

武力行使を避け、話し合いで解決しようとした努力も報われず、煮えを切らした朝廷が武力鎮圧にでたそうなのだ。

 

少女は呟く。

 

「私にもっと力があれば、無益な戦いを避けれたかもしれない。あの人達も死なずに済んだかもしれない」

 

遠い目をして、反乱した人達を止められなかった自分自身を責め続けていた。

 

「董卓さんは、川の氾濫を防ぐためには・・・どうする?」

 

突然、内容違う質問を投げかけられた董卓はハテナマークを浮かべつつ、どうでも良さそうな質問に律義に答えてくれる。

 

「えっと、堤防を作ります・・・」

 

俺はその答えに頷き、再び質問を投げかける。

 

「上流から土砂が流れてきました。川底が高くなり、再び堤防近くまで水嵩が増えました・・・どうする?」

 

「えっ?えーと・・・」

 

「堤防を作り同じことを繰り返す。いつしかその土地よりも高くなった川が決壊し、すべてを飲み込んでしまう」

 

彼女は俺を見詰めながら耳を傾ける。

 

「武力で抑えつけることは、そんな川を堰き止めていることと同じさ」

 

俺が言いたいことに気がついたのか、はっと声を上げる。

 

「川の流れは民の想い。土砂は朝廷への不満・・・ですか?」

 

「ちなみに堤防は漢王朝ね」

 

「!?」

 

少女は俺の口を慌てて塞ぎ辺りを見渡す。誰もいないことに安堵して彼女の手が離れて行く。

 

「・・・反乱をした人たちは、漢王朝の流れから変わろうとしたんだ」

 

自分を責め続ける少女に伝えたいこと。

 

「彼らの意思を止められなかったことに、董卓さんが責任を感じる必要は無い。それは命を掛けて変わろうとした人達への冒涜だよ」

 

「そう・・・ですね」

 

「それに氾濫した後は、土地も肥える。悪い事ばかりじゃないさ!」

 

「そ、それは・・・本当の川の話で・・・」

 

弱々しいツッコミの後、俺が惚けるとクスクスと笑ってくれる少女。

 

そんな少女と二人っきりの時間が増え始めたのは、そんな話をしてしばらく経った頃からだ。

 

 

 

 

「そろそろ休憩しましょうか?」

 

「そうだね」

 

木陰に入り腰を下ろす。明日は俺がどれくらい上手く乗れるようになったか、皆の前で馬術を披露することになっているのだ。

 

「こんなにも早く乗馬を習得できるなんて思わなかったよ。先生が良いからだな」

 

「そんなことありませんよ・・・一刀さんが、その・・・がんばったから」

 

俯いて、照れながら謙遜する。

 

「そ、それに涼州では、騎射ができなれば一人前とは呼べませんよ?」

 

「うっ・・・手厳しいなぁ」

 

ふわわっと董卓が隣で大きな欠伸を一つ。顔を赤くしてあたふたと説明してくれる。

 

「き、昨日、知り合いが尋ねて来まして、夜遅くまで飲んでいましたので」

 

少し眠いんです。そう言って少女は目を擦りながらえへへと笑う。

 

「そうなんだ。天気も良いし昼寝には持って来いだね」

 

風も無く、ぽかぽかと暖かい日差しが俺たちを照らす。俺はふと彼女が膝枕してくれたことを思い出す。次は俺の番かな?

 

俺は正座して膝をとんとんと叩く。その行動を見て彼女は気づいたようだ。

 

「へぅ・・・良いんですか?」

 

「勿論。こんなの安いものさ」

 

「で、では・・・お言葉に甘えて・・・」

 

猫のように俺の膝の上で寝息を立てる少女を眺める。

 

う~ん。華奢な容姿で、たどたどしく、優しくて可愛い。守ってあげたくなるって感じだな。

 

のんびりと暖かな日差しを浴びて、平和な一日をのんびりと惚けていた。

 

 

(七)

 

宿に戻り、趙雲と晩飯を共に取り、寛いでいた所で趙雲が突然呟く。

 

「働かずして乗馬の練習。しかもその合間に玉のように可愛い娘を膝枕で懐柔し、その寝顔をたっぷりと眺めるなどと・・・誰とは存じませぬが、一体全体どのような御身分なのでしょうな?」

 

どうやら、董卓と休憩していた現場を目撃されていたようだ。

 

「ふむ、羨ましい・・・じ・つ・に、羨ましいですなぁ・・・」

 

腕を組みながら俺に近づくと、下から覗くように睨みつける趙雲。

 

最近気付いた趙雲の性格。その一、気に入らないことがあるとネチネチと問いただす。

 

「これは・・・賈駆殿に報告するべきか否か」

 

さすがにそれはまずそうだ・・・彼女のことだ。すっ飛んで殴りに来るに決まってる。

 

「えっと・・・趙雲さん?」

 

趙雲はすっと床を指差すので、俺は床の上に胡坐を組む。

 

「人の話を聞くのにも、礼儀というものがあるとは思わぬか?」

 

さっと正座した途端、趙雲が俺に向かって歩いてきて、俺を軽く持ちあげて座っている位置をずらす。

 

「えっ、何?」

 

その後、少し距離を取り、突然こちらに向かって飛んでくる!

 

ぼすんと床が軋み、俺と趙雲の体が跳ねあがる。そして、ぐりぐりと俺の太ももに顔を埋める。

 

「ど、どうしたんだよ!ちょ、趙雲!くすぐったいっ!」

 

くるりと仰向けになり、悪戯な笑みを浮かべながら俺の顔を見上げる趙雲。

 

「・・・何か?」

 

趙雲の行動に戸惑っていると、再びゴロゴロと後頭部を太ももを押しつけてるように転がる。

 

くすぐりという拷問に彼女に屈する。そもそも拒否権なんてものは俺には無い。

 

「結構。ふむ、これは・・・」

 

横になって俺の膝枕を堪能する趙雲。しばらくすると寝息が聞こえてくるわけで・・・

 

え?このまま?何の罰ゲームだよ・・・おーい?

 

うーん。遊んでばかりじゃ、趙雲に悪いか・・・

 

横になって気持ち良く寝ている趙雲を見ていると・・・素晴らしい名案が閃いた。

 

 

(八)

 

今日は皆に俺の練習の成果、集大成を見せる日だ。

 

「おぉ!最初と比べるれば、ずいぶん上手くなったではないかっ!」

 

「当り前でしょ?月が付きっ切りで見てるんだから、上手くなってない方が可笑しいわ!」

 

「詠ちゃんも、素直に上手になったって、言ってあげればいいのに」

 

「まぁ、走る分に関しては問題あるまい」

 

上々な感想が返ってきたので一安心。俺は再び馬を走らせる。

 

風を切る感覚なんて中々味わえない。素直に馬で走ることを楽むことにする。

 

 

 

遠くから、北郷の遠吠えが聞こえてくる。

 

賈駆殿がそんな北郷の姿を見て、飽きれながら思った事を口にする。

 

「馬に乗って走ってるだけなのに、馬鹿みたいに楽しそうね」

 

「初めて乗れた時・・・私も嬉しかったよ?」

 

「ま、まぁ、ボクもそうだったけど」

 

「そんな気持ちを、私たちは知らず知らずのうちに、忘れてしまったのかもしれない」

 

「・・・]

 

賈駆殿は董卓殿の事をじっと見つめている。

 

「おや?賈駆殿は北郷に董卓殿が奪われるかもしれないと・・・不安で仕方ないようだ」

 

「なっ!趙雲!」

 

顔を赤らめて、ぷんすかと怒りだした賈駆殿を見ていて飽きないと思うのは、私だけだろうか・・・

 

「詠ちゃん、安心して。私は詠ちゃんとずっと一緒だよ。大好きだよ、詠ちゃん」

 

「ち、ちょっと月!皆の前で恥ずかしい事言わないで・・・趙雲!聴いての通り、そんなはず無いでしょ!」

 

「ふふっ。全く・・・仲が宜しい」

 

「お前達こそ、仲が良いではないか・・・」

 

溜息混じりで、華雄は私と北郷を見て言う。

 

「あれはな、からかうと楽しいぞ!」

 

私は用意していた練習用の槍を手に、馬に乗って北郷の元へ駆けつける。

 

「北郷、受け取れ!」

 

「ちょ、これは?」

 

状況を判断できぬ間抜け面に目掛けて一振りする。

 

「あ、危あぶねぇ!俺とじゃ相手にならないって!ちょっ、やめっ!」

 

無駄口を叩く北郷に攻撃を仕掛ける。

 

「できないからと言い訳して逃げる気か?これは賈駆殿に・・・」

 

「ちょ!脅迫じゃないか!」

 

「はて?どういう見解で脅迫と?それっ!敵は待ってはくれぬぞ!・・・・ほらほらっ!」

 

その光景を見て、涼州組みは思い思いのことを叫んでいる。

 

「あ、危ない!」

 

「馬の上なら文官のボクでもアイツに勝てるかも・・・」

 

「まぁ、生粋の武人がすることではないな」

 

練習用の槍に目掛けて数回打ち付けると、何とか踏ん張る北郷。

 

槍を軽く回転させ、その勢いを持って北郷の槍に打ち付けると、体勢を崩して馬の上から滑り落ちる。

 

馬に乗った将との一騎打ちに関しては全くの素人か。相変わらず戦に向かんな・・・

 

「北郷一刀、この趙子龍が打ち取ったりぃぃ!」

 

北郷で遊んでいると、報告に来た男が賈駆殿に耳打ちをする。

 

「そう?すぐ行くわ」

 

「お楽しみのところ悪いんだけど、趙雲来てくれるかしら?」

 

「詠ちゃんどうしたの?」

 

「少し用事が出来たわ。それと・・・華雄も来て。悪いけど手伝ってもらえるかしら?」

 

ふむ、邪魔が入ったか。北郷のことは諦めて、賈駆殿の後ろに続いて屋敷へと戻ることになった。

 

 

 

 

「・・・酷い目に遭った」

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫。あれでも手加減してくれてるし、痛っ」

 

俺は腕を擦りながら、董卓さんしかいないことに気づく。

 

「皆どこかに行ったんだ?」

 

「はい。何か用事ができたようです」

 

「そっか。なら俺も少し用事を済ませるよ」

 

そう言って、持ってきていた包みを解く。

 

「竹細工ですか?」

 

「あぁ。ちょっとした道具を作ろうと思ってね。昨日、趙雲に休んでいた所を目撃されていてね。私は仕事してるのに、お前は遊んでるのかー!って怒られて・・・そのご機嫌取りに」

 

「へぅ。他人事とは思えません・・・」

 

「董卓さんは俺とは違って、ずっと働いていたわけだし。良い休養だと思うよ?」

 

俺達は木陰に移動して、黙々と作業することにする。董卓は何ができるのか気になるようで、それができるまで俺の手元を見ていた。

 

「良し、できた!」

 

それを見て、首をかしげる董卓。

 

「もしかして、それは」

 

俺はその道具を使う素振りをして彼女に手渡すと、それを使ってみる。

 

「これ・・・すごいです」

 

凄い物を発見した少女の顔がやけに可笑しくて笑ってしまった。

 

「へぅ・・・」

 

「ごめんごめん。でもそんなに驚くこと?」

 

「ほんの少し形が違うだけで、こんなに違うものなのかと・・・」

 

何か良い事を思いついたようで、彼女の顔が花開くようにパッと明るくなる。

 

「北郷さん!これ、もう一つ作って貰えませんか?私も詠ちゃんにご機嫌取り、しなきゃいけませんし・・・」

 

それに喜こんでくれると思うんです!と付け加えて力強く頷く。

 

俺は眼鏡をかけた少女の姿を想像する。

 

「あ~、絶対喜ぶと思う」

 

「はい!」

 

そう言って彼女は満点の笑顔を俺に向けてくれる。

 

「じゃぁ、いつもの御礼に」

 

俺は彼女にそれを渡す。

 

「いいんですか?」

 

俺が頷くと、彼女は嬉しそうにそれを見詰めている。

 

彼女の友達のことを想像しているのだろうか。その手が微かに動いた後、嬉しそうに笑みを浮かべる。その彼女の笑顔に見惚れてしまう。

 

とても素敵だと。何時までも見ていたいとそう思った。

 

 

(九)

 

宿に戻り、夕食を取って寛いでいると、趙雲が機嫌を損ねて帰ってきた。俺を見つけた途端、

 

「今日も可愛い娘と乳繰り合っていたのか?まったく羨ましい話だな!」

 

何故か喧嘩腰の趙雲。

 

「乳繰り合うって!」

 

どうやらかなりの厄介事だったようだ。少し機嫌が悪そうだ。

 

再び膝枕を要請され、そこへ趙雲はゴロッと寝転がる。男の膝枕って良いものなのだろうか?

 

そう思いつつ、少し気が治まった趙雲を見て、昨日考えついた案を実行に移す。

 

「趙雲、趙雲」

 

「どうした?」

 

「耳かきしてあげようか?」

 

「何っ?」

 

一瞬俺の膝の上で跳ねて起き上がって、俺の様子を窺う。俺が手にした耳掻きをちらりと見て、少々驚いたかのような物言いで、

 

「ふむ。これは流石に予期していなかった・・・」

 

「どうする?」

 

「折角の北郷の好意。無駄にする訳にも・・・」

 

顔を伏せながら呟くと、そそくさと俺の膝の上に寝転がる。

 

「それじゃ・・・えーと」

 

「趙雲、力抜いて・・・」

 

「はぁ!?私がどう耳掃除されようと勝手ではないか!」

 

逆ギレですと!?

 

「い、いや!でも、ほら!震えてると危ないからさ」

 

「な、ならば・・・これでっ文句はあるまい」

 

先程より少し力が抜けた趙雲の耳を軽く摘まむ。

 

「そ、それじゃ・・・入れるね」

 

先程から挙動が怪しい趙雲の耳の中に、それを軽く添える。

 

「ひゃっ!」

 

びっくりして思わず引き上げてしまった。しかし・・・耳かきでまさかの反応。

 

趙雲ってこんな声出すんだ。初めて、趙雲の女の子らしい悲鳴を聞いた。

 

数秒ほど言葉をなくした後、俺の本能が告げる。・・・これは流せと。

 

再び耳掻きを入れて動かしていくと、必死に耳掃除に耐える趙雲。

 

「趙雲、力を抜いて身を委ねて」

 

「やっ・・・でも、んっ」

 

・・・趙雲。

 

「俺をからかおうと、わざと色っぽい声を上げるのは・・・勘弁してくれ」

 

「・・・ふふっ、ばれていたか」

 

趙雲は横を向いているので、どのような表情をしているのかは分からない。

 

でも耳かきであそこまで反応されると、俺もどう反応すれば良いのか困るな。

 

その後は肩の力を抜いて、身を委ねてくれる。耳かきする立場としてはとても楽になった。

 

さくさくと耳掻きを動かして、はい終わりと耳に勢いよく息を吹き掛ける。

 

肩が跳ねて、のろのろと這いつくばって起き上がってくる。

 

何故か趙雲は頬を染め、何か言いたそうな恨みつらみな目で俺を見てから、再びぐりぐりと俺の太ももに顔を埋めて逆向きになる。

 

耳に掛った髪を除けて、俺は再び趙雲の耳掃除に没頭する。

 

「・・・婿に来るか?」

 

「・・・婿?そうだな・・・この乱世が終わったときにでも考えるよ」

 

「・・・そうか」

 

終わりだと、趙雲の耳に息を強く吹きかける。

 

耳掻きを布で拭いていると趙雲がそれを手に取る。

 

「どれ、私も北郷の耳掃除をしてやろう」

 

そう言って、趙雲が正座して、ほれっと太ももを叩く。

 

ミニスカートの様に短い着物から白い太ももが、絶対領域・・・うぅぅ、目が放せない。

 

「う、嬉しいけど、良いの?」

 

「あぁ、来い」

 

膝枕してくれて、耳掻きまでして貰えるとは・・・彼女の言葉に甘えようと恐る恐る頭を寝かせた。

 

その時、趙雲が動いた!

 

「ひらりっ」

 

俺の頭は空を切り、そのまま床の上に落ちる。

 

「あははははっ!ここまで見事に!いやっ、もうっこれだから止められんっ!」

 

腹を抱えて、苦しそうに笑う趙雲。

 

穴があれば入りたい。これは・・・黒歴史だぁぁ!

 

俺の純情を弄び、傷心の俺を嘲笑うかのような、そんな趙雲の泣き笑いは彼女が床に就いても続いていた。

 

 

(十)

 

平和も、楽しい一時も永遠じゃない。

 

俺と趙雲は、董卓の屋敷に呼ばていた。

 

アンタが馬に乗れた祝いよ!っと董卓さんたちと昼飯を食べていたまでは良かったのだが・・・

 

突然彼女の屋敷に飛び込んできたのは、怒り心頭の韓遂と名乗る者とその他大勢だった。

 

急遽、賈文和がそれに対応し、代表者である韓遂が屋敷に招き入れられる。

 

「あなたが董卓なの?・・・私達涼州勢は、漢王朝に反旗を覆すわ!」

 

「理由を・・・お聞かせ願いますか?」

 

韓遂は、中央での董卓の扱いに激怒したことを順に説明していく。

 

「董卓さんを中央に呼んだ奴らは、味方のはずよ?それなのに涼州は辺境だって、田舎者呼ばわりして相手にしないなんて無茶苦茶よ!・・・しかも官職を剥奪するなんて!」

 

「そ、それは私が反乱を解決できなかったからです」

 

短い髪を何回も振り、否定の意思を韓遂は伝える。

 

「その反乱のこと・・・調べさせて貰ったわ。貴方は間違えていない。正しい方法だと私は信じている。でも中央はそんな貴方の気持ちを無視して、武力で片付けてしまった」

 

台を力強く叩き、突然立ち上がる。

 

「これほど良い治世者である董卓さんを遠ざけて、この国を建て直す気がない中央にヘコヘコしてられないわ。この涼州は彼らから独立するの!・・・董卓さん、貴方に涼州の民の指揮を取ってほしい!・・・私たちを導いてほしい!」

 

彼女を座らせようと、董卓が彼女に寄り添う。

 

「今はまだその時ではありません。何とか耐えてください」

 

「そうよ。命を無駄にしてはいけないわ。どこで貴方達が反乱することを嗅ぎつけたか知らないけど、長安から討伐隊が派遣されたと報告を受けてるわ・・・涼州なんて目と鼻の先よ?」

 

だが動き始めた董卓を慕う民達は止まらない。

 

「聞こえるでしょ、董卓さん!貴方を慕って屋敷に集った涼州の民の声を!」

 

その声を聞いて、賈駆が舌打ちをする。

 

「・・・月の人の良さが裏目に出るなんて、この賈文和、歴史上始まって以来の厄日だわ!」

 

 

 

 

董卓は面倒見がよく、羌族や配下の者から人望もあった。それはこの涼州が他民族である羌族と友好的であり、平和である事が裏付けている。

 

それが脆くも崩れ去ろうとしていた。

 

隣りにいた羌族の青年に、俺はこの一部始終を教えて貰うことができた。自慢げに董卓と羌族の繋がりを話す。

 

「羌族の族長たちが董卓様の元を訪問した時に、その人柄に大層感激したのが俺達と董卓様の始まりだ」

 

だが一瞬にして彼の表情が曇る。

 

「董卓が中央にいることを良い事に、涼州を収めていた太守たちが、羌族を馬鹿にしてな・・・その時にも俺たちは反乱を起こそうとしたが、董卓様は俺達を説得して反乱を沈めたんだ。凄いもんだぜ。だから俺達は彼女を信じている」

 

「だが、この国の為に朝廷が董卓様を引っこ抜いた割には、彼らは董卓様を辺境の田舎者と言って非協力的だって聞いた。・・・戦う理由は十分だ!」

 

 

 

俺たちは庭に出て、緊迫した状況で熱を帯びた体を静めていた。

 

「話し合えば分かってくれる。だって私たちは他民族である羌族とこうして仲良く生活しているのに・・・」

 

冷たい風が俺たちの体を撫で、心と体を冷やしていく合間に董卓さんは決心したのか、決意の言葉を口にする。

 

「私は闘います。涼州の民を守るために・・・止めるために闘います。詠ちゃん・・・私に力を貸してください」

 

「月が闘うと決めたなら、私は月と共に闘うわ!」

 

「だが董卓殿は官位を剥奪されている。軍も持たずして、どう戦う御積もりか?」

 

「それに関しては大丈夫よ。涼州は辺境と言っても、長安と目と鼻の先。そんな場所で反乱が起こったりしたら、洛陽にいる人間は、本当に洒落にならないわ」

 

確信を握った様に、この推測は間違えていない。絶対だと力強く答える。

 

「必ず月に官職を与えて、涼州反乱の鎮圧を命じるはずよ」

 

あ、それからと賈駆さんが俺たちに言う。

 

「二人は時期を見て、この涼州から離れなさい。これは涼州の人間の問題でもあり、私達の闘いよ」

 

そう言うと董卓さんは頷いてから、二人は屋敷に戻って行く。

 

趙雲は背を向けて歩いて行く彼女たちを見詰めながら呟く。

 

「北郷と出会って、董卓殿は強くなった。いや・・・あれが本来の強さなのかもしれない」

 

俺も彼女達の知らない一面を見せられ、思い知らされることになる。

 

涼州の豪族の元締め、董仲穎。

 

西方の謀士、賈文和。

 

彼女達もまた・・・歴史に名を残す人物であったことを。

 

 

(十一)

 

「月、残念だけど時間切れよ・・・」

 

「そう・・・残念です。韓遂さん」

 

首を振る韓遂。

 

「董卓さん。この時代は力こそすべてなの・・・涼州の民と羌族で手を取り合えば、私たちの国ができる!平和な国ができるのよっ。腐った漢王朝から独立できるのにどうして解らないの!?」

 

「韓遂。官職が無かったとしても我が主、董卓は漢の家臣よ。独立の話は受け入れられないわ。・・・それから、よりにもよって私達と相性最悪な皇甫嵩が派遣されたそうよ。もうすぐ此処に来るわ。死にたくないなら、さっさと帰りなさい」

 

「嘘っ!」

 

慌てて韓遂という女性は帰って行く。

 

「皇甫嵩さん・・・」

 

「ふむ。皇甫嵩は漢の忠臣と聞く。相性が良いのでは?」

 

突然出てきた聞きなれない名前について俺は質問する。

 

「皇甫嵩って誰?」

 

「月がどうして官位を剥奪されているかは知ってるかしら?」

 

「あぁ、反乱鎮圧に失敗したからだろ?」

 

「失敗したわけじゃないわ!もう少しで落ち着くところだったのを、朝廷の命令だから逆らえないとか言って皇甫嵩が横槍入れて、あっと言う間に武力で鎮圧していったのよ!」

 

お陰で月が辱めを受けたのよ!っと拳を作り、プルプルと震わせていた。

 

「詠ちゃん。落ち着いて・・・でも今回は皇甫嵩さんには邪魔はさせません。朝廷の命令だからと言って、涼州の民を傷つけるなんて、絶対に許されることではありませんから」

 

兵士が入ってきて、俺たちに告げる。

 

皇甫嵩様、天水に参られましたと・・・

 

 

 

 

皇甫嵩と思われる人物が入ってきたのは良いが、目の前にいる董卓を素通りして、何故か俺と相対していた。

 

指揮官らしい重厚な赤い鎧を身につけて、真っ直ぐに腰まで伸びた黒い髪を揺らすと、黒い瞳に俺を映す。淡い桃色の紅をつけた口から、驚くべき一言を発する。

 

「清流派の拠り所・・・昇り竜店主、北郷一刀。突然の失踪と思えば、董卓に下っていたのか?」

 

「俺を知っているのか?」

 

「何を驚いた顔をしている?十常侍にまでも名を知られていると聞くぞ?・・・何故、軍人の癖に戦わずして反乱を鎮めようなどと言う甘い娘の下で行動している?」

 

「俺と話をしていて大丈夫か?話をする相手を間違えているんじゃないかな?」

 

おぅ、そうだったと、董卓に挨拶をする。

 

「久しいわね、董卓。元気にしていたのかしら?」

 

「はい。お陰様で・・・」

 

「そう、それは何より。なら、まず質問させてもらう。董卓・・・貴方は涼州の人間でしょう?朝廷の臣下として涼州の反乱を鎮めると言うのかしら?」

 

「はい・・・私は彼らを止めて、そして守る義務がありますから・・・」

 

「義務ねぇ・・・まぁ良いわ。貴方の志に、朝廷の命令が含まれているのならば・・・受け取りなさい」

 

そう言って、何やら書かれた賞状を董卓の目の前に出す。

 

「朝廷は貴方を再び中郎将として反乱鎮圧を命じたわ。この前みたいに、武力行使はできませんって突っぱねないでくださいね」

 

彼女はそれを大切に受け取る。

 

「それは約束できません。朝廷の政で民が苦しみ、反乱が生まれました。反乱させた張本人が剣を振り下ろして解決しようなんて・・・武力だけでは、民はついてきません!いつか民から見放されます!」

 

「なっ、何を甘い事を!貴方は十常侍とも話し合いで片付くと思っているの?そんなことあるはずないでしょう!」

 

「ちょっと、十常侍と民を一緒にするなんて・・・頭おかしいんじゃないの?」

 

「耳を貸そうともしないし、人の話も聞かないじゃない。私からすれば一緒よ。話し合いで解決できるのかしら?・・・できるはずがないわ。所詮理想論よ」

 

「まぁまぁ、落ち着いて・・・」

 

俺は脱線し始めた話を元に戻す。

 

「それに反乱分子に時間を掛けている時間は無いのよ。孫堅も長沙郡の太守に任命されて、武力で反乱を鎮圧していると聞くわ。・・・力が無ければ何もできない、そういう時代なのよ」

 

「ふむ。では漢王朝はすでに滅びの道を歩んでいるわけですな?」

 

「あら、子龍。そう思って折角の将校の道を蹴ったのかしら?・・・だとしたら残念だわ」

 

「はて?何の話やら・・・」

 

「皇甫嵩さん。一度流れ始めた民の気持ちを止めることは容易ではありません。ですが私はこの涼州の反乱を止めてみせましょう。必要ならば武力行使も止む無しと考えています。・・・今回は決して邪魔はさせません」

 

言葉を失った皇甫嵩が、彼女の瞳から逃げるように俺に向けられる。

 

「ど、どうやら目の前にいる董卓すらも変えたようね・・・袁本初を含め、清流派の第一人者達を十常侍の弾圧から守り、曹孟徳の瞳に青い炎を灯した男。その誰もが朝廷に仇をなす可能性を秘めている者ばかり。何者よ貴方・・・」

 

「はぁっ!?・・・アンタ洛陽で何やってたのよっ!?」

 

「え?飲み屋だけど?なぁ?」

 

「断言しよう。飲み屋だ」

 

趙雲が断言しても、賈駆さんは信じてないようだ。

 

「ただの飲み屋が、どう転んだら清流派や袁本初の命を十常侍の手から助けたりできるのよ!・・・しかも曹孟徳って、洛陽北部尉に赴任した当日に、十常侍に目をつけられた奴じゃない!・・・どういう関係よっ」

 

「何か勘違いしているようだが、俺は何もしてない。十常侍の弾圧からは集まった皆が力を合わせて乗り切っただけだよ」

 

趙雲が俺の横に立ち、肩に手を置く。

 

「それは違うぞ?・・・皆が集える場所を、北郷・・・お前が作ったのだ」

 

皇甫嵩がこちらに体を向けて、徐々に近づいてくる。

 

「その話が本当なら・・・ここで切り捨てたほうが漢の為ね。漢の為に死になさいなっ・・・北郷一刀!」

 

皇甫嵩が腰にある剣に手を掛けようとするが、それを笑う者が居た。

 

「はーはっはっは!・・・北郷の何に恐怖する!変わってしまうことがそんなに恐ろしいか!」

 

皇甫嵩から放たれた剣と趙雲の龍牙がぶつかり合い、重なった刃先が火花を散らす。

 

「邪魔をするか!不忠臣者めっ!」

 

「漢王朝など、舞台から引きづり下ろされること明白!―――北郷など関係無くなっ!」

 

趙雲が皇甫嵩を押し返し、俺の前に立つ。

 

「知った口を!危機なれど、長きに渡り栄えてきた漢王朝が滅ぶはずなどないっ!」

 

口で語るな武器で語れと、董卓の屋敷の中で二人の武人の舞いが始まる。

 

「ちょっと!月の屋敷で暴れるなんて、どれだけ常識ないのよ!外でやりなさい!月っ、こっちに来て!」

 

その時、伝令が入って来る。

 

「韓遂、決起!それに続いて、他の郡の涼州勢も決起!動き始めました!」

 

「ちっ、部隊へ戻るわ。・・・覚えておけ!」

 

どかどかと皇甫嵩が戻って行く。

 

「韓遂に助けられたわ・・・まさか屋敷の中で打ち合いが始まるなんて」

 

これだから武官は嫌なのよと、賈駆は伝令に合図する。

 

「月、行きましょう。皇甫嵩の部隊に当たる韓遂の部隊に横やりを入れるわよ!」

 

「皇甫嵩に本気になった董卓軍の戦いというのを、徹底的に味あわせてやるんだから!」

 

「・・・あれ?その言い方だと、皇甫嵩が敵見たいじゃない?」

 

「敵よっ!」

 

「ということは、韓遂は味方?」

 

「敵よ!」

 

「月に従わない奴は皆敵よっ!」

 

「詠ちゃん・・・できれば涼州の民には乱暴だけは」

 

その言い方だと、皇甫嵩さんには良いと聞こえるのは俺だけだろうか・・・

 

二人の会話を聞いて、呆気にとられているわけにはいかない。

 

「俺たちはどうする?」

 

趙雲にこれからの行動を尋ねようとした途端、賈駆が怒った様に俺たちに言う。

 

「どうするも何も、皇甫嵩を怒らせるわ、命を狙われるわ・・・さっさと涼州から逃げなさい!」

 

「えっと、私たちは大丈夫ですから。趙雲さん・・・主探しの旅、がんばってくださいね」

 

その言葉を聞いて、趙雲が俺に向かって頷く。

 

「共に闘えぬ事を許せ。・・・董卓殿、賈駆殿・・・世話になった」

 

そう言って、趙雲は宿に戻っていった。

 

「力になりたい時に、なれなくて・・・ごめん。でもいつか、必ず二人に会いに行くよ」

 

董卓は俺に微笑んでから部屋を出て行った。部屋に残されたのは、俺と賈駆の二人だけになった。

 

しばらくして賈駆が小さな声で呟く。

 

「あ、ありがとう・・・月を救ってくれたこと、感謝している。月がもう一度立ち上がってくれたのは、アンタのおかげよ」

 

「ん?俺は乗馬を教えて貰っていただけだけど?」

 

彼女はそんなことは無いと首を横に振る。

 

「私は月を天下人にするのが夢なの。アンタが手伝いたいって言うのなら、手伝わせてあげようかと思ったけど・・・・・・月に耳かきして貰って思ったわ。アンタ、月に何を教えるか分かったもんじゃないわねっ!アンタといると月が汚れるわ!」

 

顔を真っ赤にして、早口で捲し立てる。

 

「でも董卓さんに膝枕して貰って、優しく耳かきして貰えたんだろ?」

 

「うっさい、この色情魔!二度とボクと月の前に現れるなっ!」

 

俺の足に数回蹴りを入れて、逃げるようにこの場を後にする。

 

彼女たちと別れを告げて、宿に戻り趙雲と合流する。

 

後ろ髪を引かれつつ、俺たちは次の州へと歩みを進める。前漢の高祖劉邦が漢中王と称した場所へ。

 

 

あとがき

 

お楽しみ頂けましたか?

 

 涼州や董卓のこととか、知らないことだらけでして・・・調べたり、他の予定が入ったりと、中々小説のために時間を割くことができませんでした。前章より二週間ほど掛ってしまいました。

 

楽しみにしていてくれた方には本当に申し訳ありません。その割には量も少なめですけど、趙雲の絡みも入れられて自分では満足してます。・・・そろそろネタが尽きて来ましたが;

 

 そんな中の耳掻きネタなんですが、よく外国の方が耳かきして貰って驚いているのをTVなどで紹介されていますよね。耳掻きの習慣は日本だけかと思っていましたが、どうやら中国発祥のようです。これは予想外。

 

あの初めての驚き具合を趙雲で再現したかったのに・・・調べてみると、この時代より前にも耳掻きはあったそうです。でも耳かきの習慣があるのは、中国と日本ぐらいだそうです。(韓国や朝鮮もあるのかな?)

 

形もそれほど変わって無いそうですよ?・・・すごいな耳掻き。

 

 がらりと話は変わりますが、せっかく恋姫以外の登場キャラが出たのに、生かし切れていないのは作者の力不足かなと思う次第です。そして、皇甫嵩ファンの人には申し訳ない気がしてならない!

 

 最後の最後で登場した人ですが・・・官軍エースの皇甫嵩さん。遠征のときに、兵の皆が食べ終わったのを確認してから食事をし、賄賂を拒否して十常侍の嫌がらせを受けてもがんばり、人が尋ねてきても、俺は偉いからと言って門の外には待たせない。兵に慕われ、人に慕われ、清く生きて謙遜さを持つ。驚くべき聖人君子っぷりです。調べていると、全く非が見つからず、素晴らしい人な気がしてなりません。

 

まぁ、そんな優秀な人ですが、董卓と皇甫嵩が反乱鎮圧の命を受けて、二人はその戦略で揉めたりします。董卓の意見と反対のことをして上手く反乱を静めてしまったので、かなり恨みを買ったそうですが、最後は董卓を立てて、しっかり国のために働いているという・・・どれだけ人心掌握術を心得ているのだ皇甫嵩殿!

 

とまぁ、良い人過ぎても面白くないので、漢の敵はすべて敵みたいな性格にして、漢王朝破滅説を唱えた趙雲と打ち合せてみました。・・・四章はそんな人ばかりですね。

 

ちなみに、韓遂の反乱は黄巾の乱の最中に誘発されて起こったそうで、昇龍伝ではまだ黄巾の乱は起こっていません。時系列を無視してみました。ネタが無くて困っていたので助かりました。

 

 第四章を考えている最中、他の州の事も考えていました。中々面白い展開になります。そろそろ曹操は十常侍に疎ましく思われて、非も見つからないので、さっさと出世させて洛陽から飛ばした方が良くね?っと思われている頃でしょうし、作中に出てきた孫堅は荊州で大暴れ真っ最中。その陰にはちらちらと、袁家の影が・・・

 

と、気になるコメント返しです!

 

一刀、BAR開きました。洛陽ではその道の人達にはかなり有名なようですよ?違う意味で・・・

 

でも、前科持ちになったんですね。ご主人様は犯罪者で前科持ちですと・・・将来、天の身使いと名乗った時に、困りそうな話ですね。

 

華琳を振ったと取りましたか!本人は決意だったつもりです。振ったつもりはさらさらありませんwwwでも諦める華琳様ではありません。

 

それにしても一刀の鈍感さは素晴らしいですねw星もやってみたかったのでしょう。彼女とはいつの間にか友達になっていますし。・・・進展するのかなぁ?

 

恋姫時系列システム。便利で素晴らしい。これで行きます!そもそも真・恋姫の二次著作物ですもんね。

 

三国志自体が官軍歴史資・・・ふむ。ならば皇甫嵩という人物がまったく非がなく素晴らしい人物のように書かれている可能性が・・・(違

 

とまぁ、歴史に囚われず自由に書いて行きたいと思います!沢山のコメント、助言ありがとうございました!

 

それでは、第五章にまた。・・・うぅぅ、真っ白だよ。

 

 


 
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