リリムはゲイザーが生きていた頃を思い出していました。夜な夜なスラム街に行っては精気を吸って帰って来ると、ゲイザーが腕組みをして玄関先で待っています。
「こんな遅い時間まで帰らないから心配しましたよ?」
「ウフ、心配して待っててくれたんだぁ」
「一体、どこへ行ってたんですか?」
「ちょっとスラム街の方に用があってぇ」
「スラム街なんて!女性が一人で歩いていたら危険でしょう?」
「大丈夫よぉ?男なんてテンプテーションにかけちゃえば私には逆らえないからぁ。精気を吸わせてもらったら即去りだしぃ」
「いくらリリムさんが強いからと言って油断していたらゴロツキに捕まるかもしれないじゃないですか?」
「ゴロツキなんて魔法も使えないからぁ。私の敵じゃないわぁ」
「リリムさんにも結界石を持たせてあげたいですが、高価なので良いものがなかなか手に入らないのです」
「結界石なんていらないわよぉ。助けてもらう必要もないしぃ」
「とにかく夜遅くに一人だけでスラム街へ出かけるのは禁止ですよ?」
「それじゃ代わりに勇者様の精気を吸わせてくれるのぉ?」
「私の精気は…吸わせてあげられませんが…」
「精気を吸わないと、お腹がペコリンちょでイライラしちゃうのぉ!」
「精気を吸わない事で空腹になるのですか…」
「そうよぉ?精気を吸うの禁止されちゃったら餓死しちゃう…」
「魔族の感覚が人間の私にはよく理解出来ていませんでした。申し訳ない」
「良いのよぉ。パパなんて心配すらしてくれないしぃ」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第341話。