話が済んでウィルスの部屋からローラが出て来ると、アークが待っていました。
「何もされなかったか?結界の張られた防音壁だから話は聞こえなかったが…」
「大丈夫ですよ。でもゲイザーの様子がなんだかおかしくて…」
「まさかまた記憶が戻ってしまったのか?ちょっと僕の執務室にゲイザーを連れて来てくれ」
執務室に連れて来られたゲイザーの目の前にアークは書類を見せつけました。ゲイザーはローラにしがみ付いたまま微動だにしません。
「無反応だな。奴がこれを見たら驚くだろう」
「それは一体、なんの書類なんですか?」
「獣人の人権を剥奪する為の計画のようだよ」
「えっ、それってマルヴェールに住む獣人たちに何か酷い事するって計画ですか?」
「フォンが生きているうちは怖くて攻め込めないようだがな。フォンの死後に獣人たちを皆殺しにする計画を立てているらしい…」
「お義父さんはそんな悪事に手を貸したりしませんよね?」
「その前に総帥を辞めるつもりだよ。これ以上ここにいても解決の糸口は掴めない」
「ルークがお義父さんなら魔術師連盟の人たちを皆殺しに出来るって言ってました」
「皆殺しにするのは簡単だが、その後が面倒なんだよ?今だってやりたくない仕事をやらされて、ストレスが限界なんだ」
「もしかしてフォン様なら魔術師連盟の人たちを倒せるのかな」
「フォンは第一級魔術師より強いよ?ユリアーノよりも強かったんだ」
「それじゃヴィッキーも勝てるのかな?第一級魔術師はかなり強いみたいだけど…」
「ヴィッキーの実力は全盛期の頃のフォン並だろうな。フォンは年老いて衰えて来ているが、まだまだやれるだろう」
「それで怖くて手が出せないんですね。よかった」
「この計画書によればサラを人質に取るつもりのようだが、サラはマルヴェールから出てこない。マルヴェールに侵入する為にはあの洞窟を通るか空から入るしかないが、ナタの使い魔のレッドドラゴンが監視しているよ?」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第326話。