パン屋の仕事が終わると、ゲイザーを迎えに行って、その足で秘密結社の方へ向かいました。受付で名前を言うと、ルークのいるオフィスとは逆方向の奥の部屋に通されます。廊下の途中でアークとすれ違いました。
「ローラ、なんでこんなところにいる?」
「えっと…、ウィルスさんに呼び出されて…。ちょっと大事なお話に来たの…」
「そうか…。飲み物には気を付けるんだ。何か仕込んでるかもしれないからな」
「えっ?何が仕込んであるんですか」
「まあ、ローラに毒でも盛ったら僕がただではおかないから、ウィルスに限ってそんな馬鹿な真似はしないとは思うが…」
ウィルスの執務室に通されると女性が紅茶を運んで来ました。ところがゲイザーが手を伸ばしてこぼしてしまいます。
「すみません!ダメでしょ?ゲイザー。いつもこんな悪い事しないのに…」
「すぐに新しい紅茶を淹れますので」
「いえ、もう紅茶は結構です…」
アークの言葉が少し気になっていたので、紅茶は飲みたくないと思って断りました。ゲイザーは不機嫌そうな顔でウィルスを睨んでいます。
「秘書になる件は考えてくださいましたか?」
「さっきの綺麗な女性が秘書をしているのに、なぜ私を雇おうと思ったんですか?」
「ステイシーは今ルーク殿のパートナーをしていて、新しい秘書を探していたんですよ」
「ステイシーさんって言うんですね。前にルークと食事してたのを見かけた事があるんです」
ステイシーは裏で紅茶に白い粉をパラパラと入れて持って来ました。ゲイザーがまたこぼします。
「ゲイザー!ダメだって言ってるでしょ?今日はどうしてこんなに悪い子なんだろう…」
「ハハハ!男の子はこのくらい元気な方が良いですよ」
「本当にすみません!普段は大人しくて、おいたはしない子なんです」
「しかし随分と魔力の高い赤ん坊ですね。将来が楽しみだ」
「時々、この子が赤ん坊じゃなくて、中身は大人なんじゃないかって思う時もあります」
「どうやらルシファー様やルーク殿と同じく、この赤ん坊も心眼を持っているようです」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第323話。