今にも泣き出しそうな表情で女性は言います。
「どんなに顔が美しくなってもあなたの心は奪えないのね」
「前にも言いましたが、僕は美的感覚が普通の人とズレてるようなので、今のあなたの姿を美しいとは全く感じないのですよ」
「アウローラと体を交換したい」
「体を交換しても僕の心眼は騙せないので、無駄ですよ?」
「あなたに愛されるにはどうしたら良いの?」
「ローラは自己保身を考えないんです。常に他人の事を優先して考えてる。それはローラの父親のゲイザーも同じだった。僕もそうなりたいと思っているけど、僕は少し自己保身を考えるところがある…」
「自己保身…アウローラの誘拐に手を貸した事を言ってるのですか?」
「それもありますね。あなたに限らずほとんどの人が我が身可愛さで、他人を犠牲にして自分の身を守っている。ローラはそんな相手に対して気持ちを考えて傷付けないように振舞っていると言うのに、そいつらはローラを傷付けるのをやめようとしない…」
「あの時の事は本当に後悔しています…。どうしても許してもらえないのですか?」
「ローラは誰も恨まないし、誰も責めない。自分のしたくない事でも相手に合わせるところがある。僕以外の男がローラを妻にしたら、どんな不幸な目に遭わされるかわからない。だから僕はローラを妻にしたんだ。彼女の身を守る為に…。ただ僕がローラを不幸にしてしまわないか、不安ではあります」
「あなたからこんなに愛されて、アウローラが不幸になるはずがないじゃないですか?」
「僕が原因でアウローラがいじめに遭っていたのは僕のせいだから、僕がそばにいない方が幸せなんじゃないか、と思った事は何度もあります」
「私がアウローラならば、あなたの愛を受けられるなら、どんな不幸にも耐えられると思います」
「僕と体を交換したマキャヴェリに襲われそうになっていたと言うのに、あなたにはそれも耐えられると言うのですか?」
「それは…あなたの姿をしていても、あの日のあなたはまるで別人でした」
「僕は来年も同じ事をやらされる。その度にローラは危険に晒されるんだ」
「試験の日が来るのが怖くて仕方ないでしょうね」
「僕はこのままだと永遠に三級のままですし、家のローンの支払いが終わったら、ここを辞める事も考えてますよ?」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第303話。