真・恋姫無双 ~黄龍記~
序章
天(龍)の御使い 大地に降臨す
時は西暦百八十年
四百年の永きに亘って続いた漢王朝も崩壊の兆しを見せ始めていた。
時の皇帝『霊帝』は宦官の十常侍や重臣達の傀儡と化し、宮中は私利私欲の凝り固まった者達が自らの欲望を満たさんとする場と化してしまっていた。
世を憂う心ある忠臣達は遠方の地へと追い遣られ、残った侫臣達は自分達だけで好き勝手な政治をしていたのである。
上がそんな状態であるからして配下の官人や役人達もやりたい放題したい放題である。
不正や賄賂がさも当たり前であるかの様に横行し、力無き民衆に過酷な重税を課して苦しめていた。
結果、人心は荒れ果てて各地で数多の賊徒が横行する様になっていった。
しかもその賊徒を討伐するべき筈の官軍は余りにも脆弱で碌な戦果も挙げられない体たらく振り。
人々の悲鳴と嘆きの叫びは大陸全土を覆い尽くし、世は正に混沌と化していたのであった。
そんなある日、暗雲覆い尽くす空を切り裂くかの様に一筋の金色に輝く流星が大陸に流れ落ちた。
雲間を翔るその流星は光の加減に因る物か、あたかも金色の龍が天空を翔けているかの様に人々の眼には映った。
そして広大な大陸の各地で目撃する事の出来た龍の姿を見た人々は各州の都市を中心に風の如く流れる噂話を思い起こしていた。
『龍 暗雲を切り裂いて地に舞い降りる。
我の者 天の御使いにして龍の使いなり
龍の使い数年の時を経て天へと翔け昇り、絶望に沈み苦しむ人々を助けて世界を救うだろう』
有名な易者である管輅が立てた予言めいた占いの結果である。
世の行く末に不安を覚える多くの人々や、世を憂う者達は天空を翔けた龍の姿を見て英雄の誕生を予感した。
そして人々は混乱する世界を終息し、乱世を終結に導く英雄の一刻も早い誕生を願う様になるのだった。
「ん・・・・・・何処だ此処は?」
そして・・・・・・(龍)流星の落下から約四年の歳月が流れた。
西暦百八十四年
この年、大陸は未曾有の大混乱に陥った。
世に言う黄巾の乱の勃発である。
黄巾党、黄巾賊と呼ばれる髪を黄色い布で結わえた者達が起こした一斉武力蜂起による反乱。
この反乱は起こして間もない内に盗賊や山賊、更には過酷な税を取り立てられて田畑を奪われた農民達や飢饉や疫病と言った天災に見舞われて絶望に突き落とされ追い詰められた食い詰め農民達などが大挙して加わった事で大陸全土に及ぶ大規模な勢力の反乱に発展していった。
そして彼らは瞬く間に付近の邑や県城などを次々と攻略し、自らの勢力地を拡大していくのだった。
やがてこの反乱軍の総数は数十万に達し、戦火は青洲、幽州、徐州、冀州、荊州、楊州、兗州、豫州にまで及ぶのであった。
漢帝国の中心、洛陽にて暴政を振るう宦官や重臣達も、事がこの状況に至って漸く事態の深刻さを悟ったのか、遅蒔きながら盧植、朱儁、皇甫嵩と言った将軍達に数万の軍勢を預けて討伐に向かわせたのである。
そして冀州、荊州、豫州と言った黄巾賊が最も猛威を振るっている地域を中心に、官軍と黄巾賊は激戦を繰り広げる事になるのだった。
しかし碌な戦も経験していない脆弱な官軍は黄巾賊の勢力拡大を抑える事で精一杯。
そればかりか酷い所では逆に賊軍に討ち破られる始末であった。
そして混乱は更なる混乱を呼び、黄巾賊のみならず盗賊や山賊などが結託して暴れまわるに至って世は混迷の色を寄り一層濃くしていくのだった。
そんな時、并州において義勇軍が結成、組織される。
并州の各地から集まった志願者達を含む者達によって構成された義勇軍の兵数は約五千
だが、彼等は唯の義勇軍では無かった。
義勇軍の中核を成す二千人の私兵団兵士達は一人一人が並々ならぬ武芸者であり、更に二千人全員が完全武装に身を固めて騎馬を乗りこなす強者(つわもの)達。
その中でも大将格の数人の者達はそれぞれが様々な特技や技術を持っており、正に万夫不当にして一騎当千の猛者揃い。
脆弱な官軍などとは比べ物にならない錬度を誇り、義勇軍は瞬く間に并州各地に蔓延る賊徒達を次々と蹴散らし葬って行くのだった。
そしてその中でも特に、戦闘において常に義勇軍の先頭に立つ総大将の若武者は、他の馬と比べて一際大きい白馬を見事に乗りこなしつつ、圧倒的な武技を持って賊徒達を討ち果たしていった。
更に自軍の五倍の兵力を持つに至って冀州の本隊と合流しようとしていた二万五千の黄巾賊を騎馬による昼夜を問わない奇襲、強襲の一撃離脱の戦法で攻撃を続ける事で撃滅。
そして散り散りばらばらになって逃げようとする賊徒を疾風の如く追い討ちを掛けてこれを殲滅。
その追い討ちを逃れた者達さえも巧みに誘導、或いは逃走経路を的確に読み義勇軍で包囲、殲滅してしまうのだった。
しかして、それ程の武勇を誇りながらも義勇軍の者達は決して力無き民衆には手を出さず、それどころか逆に何処からとも無く届けられて来る薬や食料を賊の襲撃にあって餓えて苦しむ人々に惜しみなく提供して行くのだった。
結果、義勇軍の武名と限りない仁の心、そしてその義侠心は瞬く間に大陸各地に広くに鳴り響く事になる。
そして義勇軍に救われた人々は義勇軍が掲げる二種類の旗(一つは黒旗に白の十文字、その十文字の中央と四方にそれぞれ仁・義・礼・智・信の文字が描かれた牙門旗、もう一つが同じく黒旗に金色の龍が描かれた軍旗)を見て、彼の軍こそ乱世を終結に導く英雄の軍と思ってこう称する事となる。
即ち、五常の徳を持って大陸を覆う暗雲を切り裂く龍の軍と・・・・・・
そして何時しか軍を率いる総大将『北郷一刀』
約四年前何処からとも無く并州に現れて瞬く間に幾つもの新たな鉱山を拓くに至り、僅か数年で并州でも一、二を争う大富豪になった彼。
にも拘らず驕る事も無ければ傲慢になる様な事も無い彼は、并州各地の貧しい村々を回っては新たな農地開拓法や灰を用いた肥料等の知識を惜しげも無く農民達に与えていく。
またその傍ら、怪我で苦しむ人々には適切な治療を施し、疫病等の病で苦しむ人々には『金仙丹』『銀仙丹』『赤神丹』などの秘薬(仙薬)を与えるなど仁の心を持って接していく。
そして各地の邑や村を回る中、才ある若者を見つけて徴用しては自分の配下に加えて武芸を叩き込んで私兵団を形成し、周辺地域の治安維持に努める等の義侠心に溢れる行動をとったりもした。
しかしてその一方で目上の者に対する礼儀を忘れず、気さくにして分け隔ての無い性格から食客や侠客に慕われ、多くの民衆からも信頼を集めている青年。
そんな彼こそが管輅が予言した流星と共に舞い降りた天の、そして龍の御使いだと人々は噂し合う様になるのだった。
やがてその噂は各地で横行する賊の討伐に四苦八苦していた官軍の将や州の刺史達の耳にも入る事になるのであった。
真・恋姫無双 ~黄龍記~改訂版 いかがだったでしょう。
自分で読み返してみて矛盾している点や変更したいと思った点を改訂して投稿させて貰いました。
続く第一話から四話までも順次改訂版を出す予定です。
御読みになり、お楽しみ頂けたら幸いです。
ではまた近い内にお会いしましょう。再見!
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どうもアレクスです。
今回は真・恋姫無双 黄龍記の改訂版を投稿します。
自分自身で改めて読み直した所、色々不満な点や矛盾する点などを発見しまして改訂版を投稿する事にしました。
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