ウィルスは咳払いをしてから、演技がかった口調で周りの者に尋ねました。
「それが私は他にやる事が山積みでして、誰か手の空いてる者でルーク殿にご同行出来る者はおらんか?」
「私も手がいっぱいで行けそうにないですね」
「私はこの書類を今日中に仕上げないといけませんので…」
いつも暇そうにしている者まで真面目に仕事を始めます。ルークは溜息を漏らしました。
「仕方ないですね。父に相談してからでも構いませんか?」
「ルシファー様にもお願いに行こうと思っていたので、よろしくお願いします」
総帥のいる一番奥の部屋に行きました。ルークは顔パスで中へ通されます。
「お父さん、なんか魔物退治に行けって言われたんだけど、どうしよう?」
「やはり厄介事を押し付けてきたか…。最初からこうなると思っていたんだ!」
「おじさんのシナリオでは退治に行く事になってたよね?」
「ああ、とりあえず行くとしようか?ゲイザーのシナリオ通りに行くかはわからんが…」
「あれがもし当たったら、おじさんは預言者だよね…」
「どうなるか、この目で確かめてやる…」
「ミカエル様が来るんじゃないかなぁ?」
「そうなった時の為にゲイザーの遺言書の一部を持ち歩いている。裏に奴の直筆サインも入っているし、ミカエルなら鑑定可能だろう」
「タイプライターの文字だけだと証拠能力がないからね。遺言書は千枚以上あるのに全部、おじさんのサインが入ってるし…」
「ただの小説なら全ての原稿にサインを入れる理由もないはずだ。間違いなく遺言書だよ?」
アークは秘密結社の前で背中からコウモリの翼を広げてルークを抱えると飛び立ちました。秘密結社の窓から他の魔術師たちが見送っています。
「ルシファー様が行けば簡単に解決できるだろう」
「ルーク殿も一緒だからな。捕獲も容易いはずだ」
「あの強さの魔物を我々が相手にしたら命がいくつあっても足りないよ?」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第197話。