ナタが雑誌の取材を受ける事になりました。千ジェニーカットで子連れ主婦や男性客から人気を博していたからです。
「ではナターシャさん、質問です。千ジェニーカットを始められた理由はなんですか?」
「子供や男性は美容室の利用を躊躇って家庭でカットされる方が多いですが、銀貨一枚なら気軽にカット出来るんじゃないかな?と思いまして」
「なるほど、でも千ジェニーでは割に合わないのではないですか?他店は三千ジェニー以上していますし」
「女性客はシャンプーやカラーリングなどのオプションも利用されますし、男性もシャンプーと顔剃りのオプションを利用される事も多いので、三千ジェニー以上は使って行かれますよ」
「この美容室に男性客が増えたのは、ナターシャさんの美貌も要因になっているのでは?との声も記者は聞いているのですが」
「ふふ、もう三十過ぎのおばさんを目当てに来る男性なんているのかしら?お世辞でも嬉しいですね」
「少し店内の雰囲気を画家にスケッチさせて良いですか?」
「ええ、どうぞ。良い記事に仕上がるのを楽しみにしています」
しばらくして雑誌が発売されたのでナタは早速買って来て、家でゆっくり見る事にしました。
「えっ…。何、これ?美人過ぎるカリスマ美容師って。こんな見出しにしたら、クレームが殺到するに決まってるじゃない!」
「なかなか良い記事じゃないか?このナタの似顔絵は切り抜いて保管しておこう!」
「バカじゃないの!この記事読んだ女性客が気を悪くするのわからない?」
「ナタの事を美しいと褒めちぎってるから、僕には良い記事に見えるんだが…」
「こんな事、書かれるんだったら取材を受けるんじゃなかったわ…。褒め言葉が人を傷付ける場合もあるのよ」
「そうなのか?僕は最近、雑誌にロクな事を書かれていないが…。褒められていた頃の方が気分は良かったよ」
「イケメン特集はクレームは来ないわ。美女特集だとクレームが来るのよ」
「ナタの言ってる意味がよくわからない」
「男性は勝者を疎まないからよ?女性は勝者を疎むから、美女は女性から攻撃を受けやすい」
「そう言われてみれば確かにそうだったな…」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第160話。