フラウは大きな満月の輝く夜道を歩いて、アラヴェスタ郊外の森の中にある闇市のテントの前まで急いでいました。闇市の元締が揉み手をしながら出て来ます。
「おや、初見のお客さんですかな?」
「あの…、実は生活が苦しくて、このカードを売りたいのです…」
「こ、これは…!このカードを売ってくださると言うのですか?こんな化け物みたいなステータスのカードは初めて見ました」
「おいくらで買い取っていただけます?」
「これなら十億でも買い取らせていただきますよ」
「えっ!十億も?そんなに高価なカードだったなんて…。どうしよう」
「十億でもダメなら十五億でいかがですか?」
「ご、ごめんなさい!やっぱりやめます…。夫に叱られてしまいそうなので…」
「そんな事おっしゃらずに!今すぐ現金をご用意しますので、ぜひ…」
フラウが自分の浅はかさに気付いて帰ろうとしても、元締が引き下がりません。
「出来心だったんです…。この事が夫にバレたら離縁されてしまいます…」
「盗難にあったとシラを切ればよろしいでしょう?こんな超絶ウルトラレアカード、滅多にお目にかかれないのに…。後生ですから帰るなんて言わないでください」
「ううっ…、離してください!家に帰ります」
様子を見ていたリリムが飛び出して来ました。
「そんなカードさっさと売っちゃえば良いでしょ?どうしちゃったのよぉ」
「あっ、あのビーストは!捕まえれば二十億にはなりそうだな。今夜はツイてる…」
「あなたバカなのぉ?捕まるわけないでしょ」
「そっちの天使のカードは三十億でも売れる!絶対に手に入れるぞ?」
「ミカエルより私の方が十億も安いわけないでしょ?失礼しちゃうわぁ!」
「ゲイザー様の使い魔がそんな高価なカードばかりだったなんて…。二人で五十億もするの!?」
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第158話。