試合開始と共に先攻のルークは巨大な結界を張りました。自分の周りに小さな結界を張っていただけなのに、リング全体を包み込むサイズです。
「なんだこれは?力がみなぎってくる…」
「僕の使える唯一の回復魔法だ。結界の中にいる者の体力を永続的に回復し続ける」
「なぜ敵に塩を送るような結界を張ったりしたんだ?」
「ベストコンディションで戦わせたいからさ?あんな弱っちいパンチじゃ僕は倒せない」
「こんな結界があったとはな…」
「戦場で役に立つ結界だよ?この中に入れば外から攻撃されても死ぬ事は絶対にないからね」
「お前、魔力を…使い切ったんじゃないか?」
「わかるのかい?この結界は最大マナを全部使い切るんだ」
「魔術なしで…俺に勝てるとでも?」
「勝てなくても良い試合はできるだろ?魔法なしで剣だけで戦う。剣術も習得してるからね」
「ふむ、思っていたより漢らしい奴だな」
ルークは電撃を纏っていないフルーレを構えました。ヴィッキーは体力が完全回復したようです。
「手加減なしで行くぞ!ルーク」
「本気でかかってこい!こっちも本気で行く」
しばらくは剣と拳で語り合っていましたが、プレジダンが突然、挙手しました。
「ラッサンブレサリューエ!有効ポイントが規定数まで貯まりましたので、判定に入ります」
ポイント集計係がプレートを掲げました。
「ルーク選手二百五十四ポイント、ヴィクトール選手二百五十五ポイントで、ヴィクトール選手の勝利です!」
「あの結界がなかったら負けていたよ?試合に勝って勝負に負けた気分だ」
「僕は本気を出して負けたんだから、君の勝ちだよ?」
「お前とは仲良くやれそうな気がする。漢の中の漢だった」
「それじゃこれからは友達になろうよ?」
真剣勝負の後、二人の間に友情が芽生えたようでした。熱く握手を交わします。
…つづく
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一応、新シリーズだけど本編の第3部・第74話。